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Vancouver designers
カナダ、バンクーバの精鋭達

ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー発:デザイン紀行


August 2001
ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーには、これといった名物はない。ロンドン橋やシドニー名物のオペラハウスもなく、東京タワーさえない。 さらに言えば、ニューヨークやミラノのような、ファッションの中心地でもない。それでも、この町は芸術面において地域的にだけではなく、多方面に影響を与えている。この町の書体デザイナー、ビデオゲーム・メーカー、そしてもちろん、確固たる地位を築いているWebカルチャー、こうした環境がこの町全体を、コンピュータで世界と結んでいるのだ。

古くからの住人にしてみれば、この成功には何の不思議もない。「この町には独特なライフスタイルがあって、多くの場合、キャリアがすべてというよりも、前向きの思考を持っている方が尊重されるわけなんです。まあ、生活におけるバランス感覚と言ってもいいかもしれませんね」と、Webデザイン会社ブラスト・レイディアスのチーフ・クリエイティブ・オフィサーであるリー・フェルドマンは話してくれた。

フェルドマンの話は、まさに的を射ている。バンクーバーという町は、確かに観光地ではない。しかし、とても住みやすい町なのだ。サイモン・フレイジャー川の河口に開けたこの町は、多少湿度は高いものの、温暖な気候で、アウトドア・ライフにももってこいの場所である。この町の住民は、朝スキーに出かけ、午後にはマウンテンバイクを楽しめるし、夜には一泳ぎすることだってできる。しかも、これだけのことをやっても、自動車の走行距離はほんのわずかなのだ。

Vancouver
Main art - Vancouver
画像をクリックすると、ポップアップ・ウィンドウが開き、バンクーバーの
デザイナー達の最新グラフィック・デザインを見ることができます
「自然と非常に密接に関わりあっていて、離れることなんてできないんですよ。午後にちょこっと遊びに出るなんてことは、ここでは当たり前のことで、そんな環境のおかげで我々も成功できたんです」と、フェルドマンは話してくれた。

訪れてみればすぐわかるのだが、バンクーバーは、またとても閑静な町である。そして、さまざまな文化的背景を持った人々が集まっている。そう、そのために、この町には、まるでコスモポリタンのような雰囲気が漂っている。アジア系の住民がほぼ半数を占めており、世界屈指の中華料理を食することができる町でもある。また、日本以外では、世界で一番おいしい寿司を食べることもできるのだ。

このように快適な居住環境に加え、この町には才能のある人々を呼び寄せる何かがあるようだ。その要因の多くはこの町に自生的に芽生えたものだ。まずは、バンクーバー映画学校とエミリー・カー・スクール・オブ・アート&デザインといった学校があげられる。さらには、(エレクトロニック・アーツ社を始めとして)巨大なビデオゲーム会社もいくつかこの町に本拠地を構えていて、地元の映画業界に加えて、こういった企業も、外部から人々を呼び寄せる要因となっている。荷物の積みおろしドックをベランダにした、イェールタウンのかつての倉庫から発信しているブラスト社は、今や全世界に顧客を抱え、オフィスを展開するまでに至っている。

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Full width Vancouver pics
しかしブラスト社のほかには、注目される商用のWebデザイン会社は、全くと言ってよいほど存在しない。どうやら地元のデザイナーはもっぱら、芸術的な発表の場をこの町以外に求めているようだ。「この町には、いいクライアントが少なくてね。個人サイトばっかりだろ」と、Mod7社のピート・ホアンは説明してくれた。
デイビッド・ユー、ヴィッキー・ウォンといった、ここでは名の通ったWebデザイナーたちの多くも、この町を出ていってしまった。だが、この町にとどまって仕事をしているデザイナーもいる。中でも著名なのは、フランス移民のアルノー・メルシエだ。彼はブラスト社のアート・ディレクターとして働いているが、フリーな時間には、エリクシール・スタジオという自分のプロジェクトを行っている。ホアン自身も、キイロイというデザイン・ポータルに参画している。一方でベントー・ボックスといった企業も、自社の商用サイトを、実験の場として利用するようになってきている。

だからといって、Webマニアばかりが幅を利かせているわけではない。「いやあ、思いがけないことではありますが、この町には書体に関心を寄せている人々もたくさんいるんですよ」とは、この町随一の書籍デザイン会社、カーディガン・インダストリーズ社の社長であるディーン・アレンの弁。この町で最も有名な活字鋳造所はタイロー・タイプワークスだが、アレン自身もWebサイトのテキストには大いに関心を寄せているようだ。彼がきさくな語り口で書いた、書体に関する解説と簡潔な歴史は、世界中にファンを獲得している。

もしバンクーバーに行く予定があったら、Webコミュニケーション、ヨガ、カヌー、スノーボード、そしてマウンテンバイクと、ぜひ、数多くの楽しみを満喫していただきたい。ここに滞在している間は、くれぐれもニューヨークにいる感覚は捨て去るように。

多くのバンクーバー在住者同様、Adobe.comのシニア・エディタであるジョー・シェプターもまた、実は、ニューヨークには住んでいないのである。