それがミステリアスだというなら、人生の意味には10点の評価がつく。そもそもピーナツバターをどうやって瓶に詰めるのかが9点。とすると、ザ・チョッピング・ブロック(The Chopping Block)の成功は9.5点だろう。
カオスがこれほど心地よく安住している場所はほかにない。壁の一面が鮮やかなオレンジに塗られ、デスクはハイテクのがらくた類で散らかっている。スタッフは内輪のジョークに夢中になっているあまり、チョップトークと呼ぶコンピュータを用ているほどだ。スピーカー1組とにわかメッセンジャーの手によってその装置が罪のない悪口を一日中つぶやいている。
「雇った人間がここにやって来ると、この環境をいいことに、なんにもしないことがある」とロブ・リードは言う。「でも、そういう人達は長続きしないね」。
その理由は、ブロックがデザインを行う場所だからだ。クーパー・ユニオン大出身のリードとマット・リッチモンド、マイク・エスル、トム・ローマーが1996年に設立したこの会社は、昨年あたりから目覚ましい勢いで頭角を表わしている。たとえばバイアロック・ドット・コム(Buyarock.com)、スクリーム3(Scream3、同名の映画のためのサイト)、あるいはニューヨークでのFlashフォワード2000でベスト・デザイン賞を獲得した フィッシュ・ファームハウス(Phish Farmhouse)を制作してきた。
「人がぼくらに依頼してくるのは、ぼくら独自のものを求めてのことなんだ」とリッチモンドは言う。「向こうがぼくらの自由に任せてくれるなら、それだけいい内容をサイトに注ぎ込める」。
手がけてきたプロジェクトから言えば、ブロックの傾向は、いかにも陳腐なアメリカ文化をテーマにして、それを笑い倒すことにある。たとえばスクリーム3のサイトは、インチキなB級映画のポスターまで用意した偽物の映画スタジオの歴史だと判明するしかけだ。バイアロック・ドット・コムは、バイアロック・セキュリティ・ガードとバイアロック・バンがいる。自社のスタッフをオレンジ農家として描いたブロック自体のサイトは、驚くようなしかけにあふれている。一見清純な印象の花のリースにネズミがいて、それが大きく開花して、回転し始める。小鳥をクリックすると、さえずりが聞こえる。トラクターのそばを通ると、それがもうもうと煙を吐き始める。
「彼らはポップ・カルチャー趣味に対する自らの解釈を上手にクライアントの作品に織り込んでいる」とワン9イン・スタジオズ(One9ine Studios)の制作ディレクター、ウォーレン・コービットは言う。「スタイルとコンテンツとのつながりのバランスを、実にユニークな方法で巧みに保っているんだ」。
「ぼくらのサイトは仲間ウケ的なところがある」とロブ・リードもうなずく。「でも気のきいたコピーもあれば、オブジェクト同士の素敵な遊びもある。そしてレイアウトは常に考え抜かれている。今言った仲間ウケ的なところをうまく作品にしているのは、デザインがよくできているからだと思う」。
収入にも賞にも恵まれ、ブロックは快調に進んでいる。スタッフは現在12名になり、現在のオフィスの壁に向かって懸命に働いている。次の目標は、と質問すると、マットは冗談混じりで答えた。「デザインのカルトになりたいね。誰にも理解できない妙ちくりんなアート・プロジェクトばかり一日中やっているだけなんだけど、それでもみんなに愛されるような」。それから、少し真顔になった。「ぼくらもちょっとばかり年をとってきている」と言う。「まったく新しい世代が登場しようとしている」と、彼はそこで間を置いた。「そう、ぼくらはデザイノザウルスになるんだ」。