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巨匠のひらめきで、Webに魂を込めよ
スーザン・デイビス

世界統一論者、Eコマース推進者、そしてデジタルホーム愛好者たちは、さかんにWebの無限の可能性について声高に騒ぎ立てている。だが、Web上の動画プロデューサーの第一人者と目される、デザイナーのヒルマン・カーティスはこのような騒ぎにはやや懐疑的だ。

「Webは限られた環境です。インタラクティブデザイナーとは言っても、実は工業デザイナーのようなことをやっているのです。つまり、制約を受けたなかで技術的な可能性を見つけだすというスリルはあるんですが、グラフィックスを読み込むのに時間がかかったり、ユーザのマシンが200MHz以下だったりしたら、そんな技術的可能性すら発揮することができないのです」


ダウンロードに30秒以上かけてまで、見る価値のあるアニメーションなんてものは一つもありません。

- ヒルマン・
カーティス


Intel、国連難民高等弁務官、Shockwave.com、英国航空などの動画スポットコマーシャルを手がけてきたヒルマンだが、「Webではおのずと本質に焦点を絞るようになります。クライアントが伝えたいメッセージが『パワフルなソフトウェアツール』だとした場合、花やカモメを画像に入れたりはしません。そんなことをすると、実際のパフォーマンスという点で失うものが多すぎるのです。

ダウンロードに30秒以上かけてまで、見る価値のあるアニメーションなんてものは一つもありません」と彼は話してくれた。

たとえば、Lycos向けにカーティスが作成したタイトルは、緑の線が画面を滑らかに横切り、それから“discover”の文字がspace-ageフォントで表示される。
これらの文字が“fun”に変わり、次に“educate”に変化するというものだ。スクリーンの一番下には一連のフレームが表示され、あるフレームには小さな女の子がラップトップコンピュータの蓋を開ける様子が映し出される。
さらにこれがカメラ、笑顔に変化する。さらに“Educate”の文字が“share”に変化し、彼女の画像が大きくなって消えて行く。
“research”“inspire”“interact”の文字が順に現れ、この間に下のフレームには20代の男の写真が表示される。“future”“headlines”“global”の文字が表示され、中年に近づいたビジネスマンが思案げに顎をさすっている様子が映し出される。
スポットコマーシャルの最後には、“travel”“leisure”“trading”“community”の文字が表示される。

これは単純で、しかもどこかのサイトのような見栄えの悪さもなく、ダウンロード時間の節約にもなる。電話代の請求書を見てビックリということもなくなれば、ポップコーンをほおばり、犬をブラッシングしながらひたすら待つこともなくなるのだ。
「エモーショナルなメッセージはズバリ、『Lycosにはみんなに打って付けのものがあるよ。あなたの娘さん向けのものもね』ということなんですが、私たちはあの単純な図柄に、とても前衛的なテキストをつけてみたわけです」とカーティスは語ってくれた。

カーティスが作ったスポットコマーシャルの多くは、文字が回転したり、膨らんだり、あるいは縮んだりと、文字の変化を強調しているが、これはカイル・クーパーの影響によるものだ。クーパーが作成した映画のタイトルは、独特な物語性を持っていて、ちょっと暗めなものが多い。
Lycos Interactive Zone(実際には市場に出なかった製品だが)のスポットコマーシャルでは、たとえば、カーティスは数種類の異なるフォントを使って言葉を表示してみた。それからポラロイド写真を撮って、再びその写真をスキャンした。「こうすると、文字が光を放射しているように見えます。そして、ちょっとおっかないような感じにもなります」とカーティスは語った。

カーティスは、今のデザイン業界では品質保証代わりに誰もが持ちたがる、美術やグラフィックデザインの学位を持っているわけではない。彼はサンフランシスコ州立大学でクリエーティブライティングと映画の勉強をしていたが、ドロップアウトして、80年代の半ばにロックバンドとヨーロッパツアーに出かけた。その後、短期間ではあるが“静止した”ページのデザイナーとして働いたことはあるが、動画の製作者としてのキャリアは皆無に等しい。

「アニメーションを好きなところでストップして、もっと手を入れるということもできるでしょう。そういう意味では、私たちは伝統的なグラフィックデザインの分野に属しています。でも、一方でそういった従来からある殻を、常に破ろうともしているんです」

カーティスは、Adobe Photoshop、Adobe Premiere、Macromedia Flashを巧みに操る一方で、表面的なけばけばしさや、派手さ、見かけだけの複雑さを避けることによって可能性を押し広げようとしている。
「コンピュータを利用する人間は、いわゆる『マルチタスクな注意散漫症状』を発達させてしまっています。コンピュータを使いながらヘッドフォンを聞き、その間にもオフィスではいろんなことが起こっています。そのようなマルチタスクな現実を考慮しないと、見る人が離れていってしまいます。必要もないアニメーションがついて、読み込みに時間がかかる、重いWebデザインはメッセージを伝えるたどころか、かえってメッセージを伝える邪魔をしているわけです」と彼は語った。

その意味でWeb向けにデザインをすることによって、「私もよりよいデザイナーになったんです。なぜかというと、Web向けのデザインをすることで、集中力が高まりました。この仕事は自分の中のミニマリスト的なものに訴えかけるんです」と彼は付け加えた。 カーティスのデザインチームが仕事をするときには、クライアントが一番多く口にする言葉を書き留めておくそうだ。
こうすることによって、グラフィカルエレメントで何を表したらよいか、焦点が絞られてくるのだ。「iomegaのスポットコマーシャルを作っていたときには、クライアントがいつも、『不安をかき立てるような』、『セキュリティ』、『アプローチング』といったような言葉を繰り返していました。つまり、ハードディスクがクラッシュしたときに、バックアップを取っていなかったら、恐ろしいことになるなといったことです。でも私たちはあまり怖さを強調しすぎないようにしました。最終的なメッセージとしては、iomegaはセキュリティを提供します、といったことにしたかったんです」。

できあがったオンライン広告、iomega ギャラリーページはすべて、「Y2Kが迫っている」というのが合い言葉になっている。さらに、巨大な波、雄牛の群、驀進する列車など、迫り来る危機に背を向けた、無邪気なコンピュータユーザの画像を見せる。画像はどれもユーモラスだが、メッセージは明確。みなさんのようなコンピュータユーザが、何か恐ろしいものに、まさに飲み込まれようとしている、というものだ。

広告は続いて、「情報を次のミレニアムまで安全に運びましょう」「バックアップ」「アップデート」「プロテクト」といったホッとする言葉で結ばれる。 カーティスは渦巻き状の幾何学模様やワイヤーフレームも活用する。「これはある意味で私たちのクライアントです」と彼は簡単に言ってのける。

「ヒューレット パッカード社は現在、マーケティングにガレージのメタファを使っています。3ComではHomeConnect製品のロゴに家を使っています。でも、別の意味もあります。幾何学的デザインを使うと、読み込みという点ですばらしいエフェクトが得られるのです。どういうことかというと、もし、画面の右側に読み込みが重いものがあったとします。その場合、3Dグラフィックを左に置き、見る人の視線を左に向けてやるんです。こうすると、重いエレメントを気付かれずにいつの間にか読み込ませることができます」。

最近カーティスが作ったヒューレット パッカード社向けのアニメーション HPギャラリーページは、回転する納屋の画像を特徴としており、HPの草創期の物語が語られている。これはシームレスに画像が流れるもので、彼の作ったスポットコマーシャルのうちでも、最も革新的で前衛的なものの一つだ。「すごくエキサイティングでしょう。テレビで流されていたものと歩調を同じくしているからです。このスポットコマーシャルでもまた、CEOがナレータをつとめています。このために本当にリッチなメディアになっているわけです。オンラインでもテレビに似たコマーシャルを体験できるようになってきたわけですね」と彼は語った。 確かにエキサイティングなコマーシャルだ。その上わかりやすい。実際のところ、あまりに率直で、スポットコマーシャルのあるフレーズを製作者に進呈したいくらだ。曰く、「あまりに単純だったので、それはラディカルであった」。

スーザン・デイビスは、『マドモワゼル』、『スポーツイラストレーティド』、Pets.comなどに定期的に記事を執筆している。彼女はヒルマン・カーティスにインタビューをして、その作品を見るまで、Webベースのアニメーションを嫌っていた。

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