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Ici la lune
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上から、ヴァンサン・ケギニェ、ブノワ・プルートル、アルノー・ル・ウェデク
使用したアドビ製品:
Adobe® Photoshop®
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名声と富への長い道のりを突き進む「月」の若者たち

ジョー・シェプター

人生は、テレビのドキュメンタリー番組のように、そう簡単にうまくいくものではない。たとえば、ブチ模様のサルを救出するという番組なら、まず、サルを取り巻く問題について延々と論じる。するとどこからか希望の光がさしてきて、音楽が高まり、
ナレーターが、ブチがあろうとなかろうと、すべてのサルに、明るい未来があるというようなことをしゃべりまくる展開になる。 

しかし、現実であるイシ・ラ・ルーン 社の物語では、このようなことにはならない。3人のデザイン専攻のフランス人学生、ブノワ・プルートル、アルノー・ル・ウェデク、ヴァンサン・ケギニェは、同世代の他の若者と同様、コンピュータと寝食を共にし、ニュー・メディアの世界で働くことを夢見ていた。

しかし、彼らの通う大学では、一部彼らを支持する教師もいたが、大部分は反対し、より伝統的なデザインに導こうとした。そのような中、1997年、3人は、インタラクティブなコンテンツの創作・配布に関わるプロが集まるMILIA会議で名誉あるヤング・アーティスト・パビリオンのプロジェクトに参加することにした。「Ici La Lune(仏語でここは月)」というこのプロジェクトで発表した、キュートというレベルを超越した彼らのイラストは、大ヒットとなった。

もし彼らがテレビドキュメンタリー中のブチ模様のサルであったら、ここでバイオリンが高らかに鳴り、声高々と新ミレニアムについてのナレーションが始まるのだろう。しかし、残念ながら彼らはまだ学生だったし、大学は彼らの将来について違った見解を持っていた。これに抗議する決心をした3人は、大学と対決し、その結果、2人が中途退学を余儀なくされた。

フランスで大卒の肩書を持たないということは、笑って済まされることではない。フランスでは、大卒の資格が履歴書の1部として一生涯ついてまわるのだ。にも関わらず、彼らはあえて会社を設立した。そのプランは、マルチメディア業界の一般例にもれず、大部分がWebであった。最初のクライアントは、一流香水メーカーのシャネル。その後も、プジョー、ロックバンドのエアーなど、有名クライアントのプロジェクトが続いた。

しかし、順風満帆というわけではなかった。「僕らの作品はとても高く評価されていたが、最初の数年間は苦しかった」とウェデクは言う。

その理由の1つは、彼らの仕事の多くが、広告代理店の下請けであったからである。イシ・ラ・ルーン社は非常に小規模であったため、プロジェクトの期間だけ広告代理店から事務所スペースを借りていた。プロジェクトが終了すると、広告代理店からその事務所スペースの購入を打診されたが、毎回その申し出を断わっては追い出されるということを繰り返していた。その結果、最初の1年だけで5回も住所変更をするはめになった。

イシ・ラ・ルーン社がようやくクライアントとの直接契約にこぎつけ、事務所遍歴を重ねなくてすむようになるには2年かかった。彼らはパリのしゃれた区画に明るい事務所をかまえた。今や彼らのクライアントには主に高級品を扱う企業が名を連ねているが、時々はフランス国鉄のサイト作成といった主流の仕事も引き受けている。

「僕らはいつもイシ・ラ・ルーン社の精神を守りたいと考えている。それが僕らにとってとても重要なことだから」と、プラトルは言う。

彼らの精神を理解するのは難しくない。彼らは確かによく働く。夜中に電話をかけても誰かが出るのが普通だ。しかし、彼らを本当に他と区別する要素は、喜びと完璧主義が奇妙に結びついていることと、もとより、ぶっとんでいるということ、つまり月にいるかのような感覚である。

あるデザイナーが彼らの作品を見て、お宅で働きたいと事務所に電話したとする。電話口から最初に聞こえるのは「はい、こちら月です」という言葉である。「ici」はフランス語では一般的な電話の挨拶の言葉であり、「Ici Fred」と言えば、「はい、フレッドです」という意味だ。「Ici la lune」とは、「はい、月です」とか、「はい、こちらは月ですが、どういったご用件でしょうか」という意味になる。そのデザイナーの入社についてのやりとりのメールの題名は「月からの報告」だし、採用を知らせるメッセージは、「月に着陸してください」だ。

彼らは今、もっと多くの自動車メーカー、エンターテインメント企業の仕事をしたいと考えている。ル・ウェデクはNASAのサイトを手がけたいと望んでいる。テレビドキュメンタリー調にまとめると、ここで美しい音楽が流れ、水平線に太陽が沈み始め、低音の男の声で「そして今、Ici La Luneの若者たちは、夢のすべてを手に入れた。運命に向かって飛び立った彼らの行き先は誰にも分からない。彼らはいつか空に到達するだろう。次の日には星に到達するかもしれない。いや、もしかしたら彼らの本来の居場所である『月』に行ってしまうだろう」というナレーションが入るところだ。

おしゃべりはこれくらいにしよう。とにかく、「月」に着陸してみてはどうだろうか。

ジョー・シェプター - Adobe.com のシニア・エディタ。数多くの障害を乗り越え、中間管理職の運命へ一直線に向かっている。

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