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※この記事は、2011年11月11日にアドビ システムズ社のMike Chambersのブログにポストされた記事を翻訳したものです。

モバイルブラウザー向けFlash Player、Flash Platform、Flashの今後について

【2011年11月17日】

私がFlashとFlashコミュニティに携わって、およそ12〜3年(そのうち10年以上はマクロメディアとアドビ システムズ社)になります。この間にはさまざまな変動がありましたが、この2日間は私のキャリアの中で最も困難なものでした。この数日間のニュースにおけるいくつかの項目を明らかにし、また状況がどのように進行しているかについて若干の背景をお伝えします。

まず、また最も重要なこととして、アドビ システムズ社は以下のことを発表しました。

  1. Flash Platformについては今後は以下の項目に注力します。
    • Adobe AIRで作成したモバイルアプリケーション
    • Flash Playerによるデスクトップブラウザー内での表現力豊かなコンテンツ(特にゲームとビデオ)
  2. HTML5のツール、ソリューション、ブラウザーに対する(資金と人員の両方の)リソース拡大
  3. モバイルブラウザーを対象としたFlash Playerの積極的な開発は行わない

この最後の項目が最大の関心を集め、また最大の混乱を生み、他のあらゆる情報を覆い隠してしまいました。さまざまな機器でのFlash Playerの状況が非常に幅広く報道されたことを考慮すれば、このような状況が発生したことに無理はありません。しかし、この戦略変更について十分なコミュニケーションが行われなかったことも明らかです。これがFlashコミュニティにとって苛立つ状況であったことも承知しており、謝らなければなりません。「何を」行おうとしているかを明確にお伝えようとしましたが、「なぜ」それを行うとしているかの説明が不足していました。

したがって今回は長い投稿になりますが、この「なぜ」についてお伝えすると共に、(特にHTML5と関連した)WebでのFlashの今後の役割についても説明したいと思いますのでお付き合いいただければ幸いです。

まず、アドビ システムズ社はモバイルアプリケーション向けのAdobe AIRへの取り組みを継続すること、ならびにAdobe AIRによって作成されたアプリケーションの成功事例が増えてきていることは明らかにしたいと思います。アドビ システムズ社が中止する予定のものは、モバイルブラウザー向けのFlash Playerプラグインの開発です。既存の機器コンフィグレーションに関しては重要なバグ修正とセキュリティアップデートを継続し、また現在のFlash Playerの配付も続けます。同時に、HTML5への(リソースと人員両方の)投資をさらに拡大します。これについては今回は深く触れませんが、おおまかにお伝えすると、アドビ システムズ社はFlash PlatformからHTML5へ一定のリソースをシフトします。

モバイルブラウザー向けFlash Playerの開発中止決定は、HTML5、Adobe Creative Cloudおよびそれに基づくサービスに対するものを含めた、アドビ システムズ社による大規模な戦略移行の一環として行われました。詳細については他の投稿で説明するつもりですが、アドビ システムズ社の戦略は数日前のファイナンシャル・アナリストミーティングの概要ビデオにてご覧いただけます(長いビデオですがご覧いただく価値はあります)。

なぜアドビ システムズ社はモバイルブラウザー向けのFlash Playerの開発中止を決定したのか?

この問題を取り巻く政治的な緊張を考慮すると、モバイルブラウザー向けFlash Playerの開発中止は容易な決断ではありませんでした。しかし最終的には、この開発の継続はリソースの有効な活用手段ではないと判断される複数の事項が明らかになりました。

Flash Playerがデスクトップと同等の普遍性をモバイルで獲得することはない

これは極めて明確なことと思われますが、モバイル市場の分断化および主要なモバイルプラットフォームのひとつ(アップル社のiOS)がブラウザーでのFlash Playerを許可しないことを考慮すると、Flash Playerがデスクトップと同等の普遍性を得る可能性はありません。

これはモバイル機器のブラウザー向けにFlashを使用してリッチなWebエクスペリエンスを提供したいと考えた場合、FlashベースとHTML5ベースの両方のソリューションを提供しなければならないことを意味します。最近のモバイル機器ではHTML5が幅広くサポートされている状況を考慮すると、HTML5ベースのソリューション提供の方が合理的です。今や、特に高度なビデオコンテンツなどに関して例外は存在するものの、さまざまなモバイル機器のブラウザーにわたってリッチなエクスペリエンスを提供したいと考えた場合、HTML5を使用すべきであることは明らかです。

この件について一点だけ明らかにすると、アドビ システムズ社による努力にかかわらず、Flash Playerがアップル社のiOSにおいて利用可能となることは当面はありません。

モバイルブラウザーでのHTML5の普遍性

上記に関連して、HTML5は最近のモバイル機器やタブレットに広くサポートされています。実際には、HTML5はFlash Playerがデスクトップにおいて達成したのと同等の普遍性をモバイル機器上で達成しています。性能や実装状況は機器によってさまざまであり、必ずしも優れたものではありませんが、それについては急速に改善が加えられています(Canvasの性能のiOS 4から5への劇的な改善はその一例です)。

(Apple iPhoneによって開始された)このスマートフォンとタブレットによる新世代は、登場からわずか2年しか経っていません。したがってこれらの機器に使用されている(大半はWebKitベースの)レンダリングエンジンも比較的新しくモダンなものです。このため、これらのモバイル機器やタブレット向けの開発では、デスクトップで行ったような古いブラウザーへの対応が必要とされません。

モバイル機器では、Flash Playerがデスクトップに提供したのと同様な普遍性がHTML5によって実現されています。これはさまざまなモバイルプラットフォームにわたってリッチなコンテンツを作成、展開するための最良のテクノロジーです。

私たちはモバイルブラウザー向けのFlash Playerにおいても同等な普遍性を目指しましたが、最終的には実現できず、今後も実現されることはありません。

モバイル機器とデスクトップでのリッチコンテンツ消費形態の違い

デスクトップでは、ユーザーはブラウザーとネイティブアプリケーションの両方での(ゲームやアプリケーションなどの)リッチコンテンツ消費に慣れています。しかしモバイル機器では、リッチコンテンツの消費はアプリケーションでのみ行われる傾向があります。モバイルプラットフォームではappストア(Apple App Store、Android Marketplaceなど)とモバイルOSとが緊密に統合されているため、新しいコンテンツやアプリケーションの発見が容易です。一般に、モバイル機器では(ゲームやアプリケーションなどの)リッチコンテンツの発見や消費にWebは考慮されません。

これには次のようなさまざまな理由が存在します。

  • モバイル機器とデスクトップPCでの画面サイズ、解像度、操作方法の違い
  • モバイル機器では一般にネットワーク接続が遅く、レイテンシーが高い(多くの場合は従量制の課金が行われる)ため、Webからリッチコンテンツをオンデマンドで取得することは面倒であり、場合によっては多大な料金が発生し、または取得すらできない場合もある
  • OSとネイティブアプリケーションとの緊密な統合
  • モバイルアプリケーションストアとモバイルOSとの緊密に連携しているため、新しいコンテンツを発見するにいたる障害がほとんど取り除かれていること

ユーザーがモバイル機器上でゲームを楽しみたい場合、そのプラットフォーム上のappストアが利用されます。これによる新しいコンテンツの発見とインストールは非常に容易です。アプリケーションはデバイスに既にインストールされているため、ネットワーク接続していなくてもコンテンツを楽しむことができます。

基本的に、ユーザーはモバイル機器ではアプリケーション経由によるリッチコンテンツの消費を好み、したがってモバイル機器でのFlash Playerに対する需要はデスクトップほど大きくありません。

モバイルブラウザー向けプラグイン開発の拡大は困難

モバイルブラウザー向けのFlash Player開発は予想よりもはるかに多くのリソースを要することが判明しました。デスクトップブラウザー向けのプレイヤー構築においては、ブラウザーから提供される明確に定義されたAPIをターゲットとすることができました。アドビ システムズ社はすべてのブラウザーベンダー(Google、Apple、Firefox、Microsoftなど)と密接な関係を維持していますが、一般に開発の大半は既存のAPIを使用して行うことができます。

しかしモバイルのエコシステムでは、複数のレベルで他社と密接に協力する必要があります。

  1. モバイルOSのベンダー(Google、RIMなど)
  2. ハードウェアメーカー(モトローラ、サムスンなど)
  3. コンポーネントメーカー(NVIDIAなど)

アドビ システムズ社はこのエコシステムの全レベルにおいて良好な関係を維持していますが、さまざまなOS、ハードウェア、イベントコンポーネントの組み合わせに対応するには多大なリソースが必要とされていました。新たにリリースされる機器、ブラウザー、OSごとに、Flash Playerの開発、テスト、維持に必要とされるリソースもまた拡大します。これを今後さらに拡大し、そして持続することは非常に困難であることがわかりました。

Adobe AIRがどのように違うかについては2~3質問がありました。AIRでの開発でははるかにわずかなリソースしか必要とされない理由は2つ存在し、ひとつはターゲットとすることの可能な明確に定義されたAPIがあること、もうひとつはブラウザー間の違いや新しいバージョンのブラウザー登場について心配しなくても済むことです。しかしAdobe AIRによって優れたアプリケーションが構築されていることは事実であり、これに対する投資を続けることにも意味があります。

FlashからHTML5へのリソースのシフト

最後に、モバイルとデスクトップ向けの両ブラウザーにおけるHTML5の成長に基づき、FlashとHTML5の間でリソース配分のバランスをとることにしました。

モバイル機器向けのFlash Player開発を中止することにより、HTML5(ツール、フレークワーク、ブラウザー)開発に必要なHTML5関連のリソースが解放されます。

上記の結論に全員が同意するわけではないことは理解しています。しかしこれらの点に基づき、またモバイルブラウザー向けのFlash Player開発に伴う複雑さとコストの増大という点においても、開発を継続することはエンジニアリング関係のリソースの最適な利用ではないと判断しました。

これはFlash Platform全体にとって何を意味するか?

モバイルブラウザー向けFlash Player開発中止に対しては不満の声もありますが、主な懸念や混乱は、この判断がFlash Platform全体に及ぼす影響なのかどうかについてのものです。すなわち、アドビ システムズ社はFlash Platformへの取り組みを継続するのか、デスクトップ向けFlash Platformの開発も中止されるのか、あるいはFlash自体が存在しなくなるのか、などの疑問が提示されています。

状況を明確にするために言えば、世間の噂とは逆です - Flashがなくなることはありません。その役割と中心となるターゲットはシフトしましたが、Webとモバイルプラットフォームの両方において満たしている役割の重要性に変化はありません。

Adobe AIR

Adobe AIRの開発は、デスクトップとモバイル機器の両方について継続します。事実、Adobe AIRはモバイルアプリケーションの制作に広く使用されており、Adobe AIRによって作られたモバイルアプリケーションのヒット作も多数存在します。Adobe AIRによってモバイル機器向けに作られた最近の事例には、MachinariumESPN、そして私が個人的に気に入っているtweet huntがあります。

デスクトップブラウザー向けFlash Player

FlashはWebにおいて、Flashでなければ果たせない機能を実現するという重要な役割を今後も担っていくと考えています。したがってデスクトップ向けのFlash Playerに関しては長期にわたる取り組みを行っており、次バージョンのFlash Playerも精力的に開発しています。

もちろん、HTML5の成長およびブラウザーによるサポート改善と共に、Flashの役割も変わります。例えば、Flashはセキュアなビデオ配信や、グラフィックを多用したリッチなゲーム向けのプラットフォームの提供等で力を発揮できるでしょう。Flash Playerの開発はこうした分野を中心に行っています。

現在取り組んでいるFlash Playerの機能には次のものがあります。

  • マウスロックのサポート
  • ActionScript Workers / 並列処理API
  • Telemetry / Monocle のサポート
  • オーディオAPIの改善、特に低レイテンシーオーディオの処理改善
  • ActionScript 3向けの新しいデータ型

また、現在アドビは長期的かつ重要なアーキテクチャ変更にも取り組んでおり、これはFlash Player(およびそのデベロッパー)に長年にわたって貢献することになります。これらの新しい取り組みについてはまだ初期段階にあり、今後何か月かのうちにさらに詳細をお伝えできる予定です。

Adobe Flex

Adobe Flexに関しては数多くの疑問があると思います。Flexだけを取り上げたブログ記事を現在作成しており、近いうちに投稿する予定です。投稿された時点でこちらの記事も更新します。

アップデート:Flexチームから詳細がこちらに発表されました。

Flash Professional

Flash Professionalの今後については、昨日別のブログ記事を投稿したのでここでは詳細には触れません。昨日の記事でお伝えしたように、Flash Professionalの次バージョンに精力的に取り組んでおり、この開発は長期にわたって継続します。

HTML5とFlash

最後に、FlashとHTML5に関する私の考えは以下の通りです。

Flashは当初から、他の手段では不可能なことをWeb上で実現させることを主な役割としていました。その歴史を通じて、アニメーション、ベクトルグラフィックス、音声、ビデオ、Webカム、マイクのサポートなどが追加されてきました。その普遍性と迅速な普及により、新しい機能をすぐにWebに紹介する際は、他にはまねのできない適性を備えていました。

こうしたFlashの機能の多くはブラウザーに加えられてきました。ブラウザーの成熟に伴い、かつてFlashのみで可能だったことがブラウザーでも行えるようになりました。そしてFlash Playerにはさらに新しい機能が追加され、同じサイクルがまた繰り返されました。これはFlashの歴史を通じて繰り返し発生し、今後もそれが続くと予想されます。これは(よりリッチなコンテンツをより早期に得られるため)ユーザーにとって良いことであり、(ツールやテクノロジーを販売できるため)アドビ システムズ社にとって良いことであり、また(Flash Playerにより人気と需要が立証された機能の開発に注力することが可能になるため)ブラウザーベンダーにとっても良いことです。

これはつまり以下のことを意味します。Flashのいずれかの機能が人気を集めた場合、それはいずれブラウザーに組み込まれ、デベロッパーやユーザーの間ではそれをFlashではなくブラウザーを通じて利用する傾向が次第に高まります。

ブラウザー市場での競争が改めて激しくなり、ブラウザーへのHTML5の新機能追加が加速していることに伴い、ブラウザーで行えることも劇的に増加しています。これにはかつてFlash Playerでしか行えなかったことも数多く含まれています。HTML5/CSS3の機能が現在のFlash Playerと同程度の普遍性を獲得するにはまだしばらく掛かると予想されますが、このトレンド自体は極めて明確です。かつてFlash上で実行されてきた多くのことが、HTML5とCSS3によりブラウザー内で直接実行されるようになる傾向がさらに高まると予想されます。

これは非常に大事なことなので繰り返しておきます。

かつてFlash上で実行されてきた多くのことが、今後はHTML5とCSS3によってブラウザー内で直接実行されるようになるでしょう。

これはFlashを使って仕事のキャリアを積み重ねてきた人には不安なことかもしれません。その不安は非常にもっともだと思います。しかしこれは同時にFlashコミュニティにとって極めて大きなチャンスでもあると私は考えています。ブラウザーによるリッチなコンテンツや動画の改善サポートに伴い、Web上の動画で経験を積んだデザイナーやデベロッパーに対する需要も高まります。Flashコミュニティの皆様は、まさにこういった分野でのクリエイティブに10年以上にわたって関わっており、ブラウザー内での同様な作業に関して、他の人が持たないノウハウを既にもっています。今日HTML5で作られた最先端の動画がFlashに関して豊富な経験を持つデベロッパーや制作会社(たとえばグラント スキナーブランデン ホールBig Spaceshipなど)の作品であることは偶然ではありません。

すべてのFlashコンテンツがHTML5で行われるべきであり、あるいは行われるようになるだろうと言っているのではありません。それぞれのプロジェクトについてケースバイケースで検討し、開発コスト、ターゲットプラットフォーム、ユーザーエクスペリエンスに基づいて判断を行わなければなりません。いずれにせよ、クライアントからはHTML5について尋ねられることは間違いなく、テクノロジーやプラットフォームにかかわらずクライアントのニーズに最適な形で応えられるようにしておく必要があります。

このブログ記事は予定よりもはるかに長いものになってしまいましたが、これはこの2日間に考えたさまざまなことをお伝えしたいと思った結果です。アドビ システムズ社が発表した事柄のコミュニケーションの仕方に関して、多くの方々が不満を持たれたことは、謝らなければなりません。Flashに関する発表とそれに関わるアドビ システムズ社の考えを十分にお伝えしていなかったことは明らかです。

投稿者:mikechambers
2011年11月11日1:32 pm

※この記事は、2011年11月11日にアドビ システムズ社のMike Chambersのブログにポストされた記事を翻訳したものです。

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