「Illustratorならデザインを差別化できる」木村宏明さんに聞くツールの重要性
アートディレクター・デザイナーとして、幅広いグラフィックを手がけるHAMMOCK Design・木村宏明さんは、20年以上にわたってデザインのほぼすべてを{{adobe-illustrator}}で制作しています。
プロのデザイナーとして、{{illustrator}}を使う理由はどこにあるのか、お話を伺いました。
木村さんにとって、{{illustrator}}はどのような存在ですか?
僕にとって、{{illustrator}}は自分の頭のなかをそのまま投影する、手足のような存在。“こんなものをつくりたい”というイメージを具現化するためには必要不可欠なツールです。
“神は細部に宿る”という言葉があるように、なんとなく作られたデザインと僕たちプロが作ったデザインの差は、たとえば文字ひとつとっても、文字間のバランスや余白、輪郭のディティール、質感など、細かなところに現れます。{{illustrator}}はそうした調整がどこまでもきめ細やかにできる。本気でデザインに取り組むなら、選ぶべきツールは{{illustrator}}以外にない。そう思っています。
いまのお仕事について教えてください。
アートディレクター兼デザイナーとして、広告やブランディングに関する仕事を行っています。手がけているのは、おもに平面のビジュアルデザインですね。
左:パーソナルジム「REDY」ロゴ/右:「豆腐アイスクリーム」CIデザイン&ブランディング
デザイナーを目指したきっかけは?
高校から始めたバンド活動です。当時は音楽のことしか考えられなくて、高校卒業後は進学せず、バンド活動を続けたいと思っていました。一方でバンドメンバーは進学を選び、それぞれに大学や専門学校で新しい知識や技術を身につけている。そこに温度差を感じて、“自分だけこのままでいいのか”と不安になってきたんです。でも特に勉強したいこともなく、バンドの活動も続けたかった僕が取り組んだのが、自分でバンドのプロモーションツールを作ること=デザインでした。
もともとはバンド活動のために始めたデザインでしたが、やり始めるとそのほうが楽しくなってきて(笑)。もっと本格的にデザインを学びたいと思い、バンド活動と並行して、美大向けの予備校に通うようになりました。
{{illustrator}}との出会いについて教えてください。
大学の課題制作で、初めて{{illustrator}}に触れました。
学生時代は、授業でデザインを学べることはもちろん、Mac、 {{adobe-photoshop}} 、{{adobe-illustrator}}に触れることが、とにかくうれしかったですね。
特に{{illustrator}}は、ただ開いているだけで楽しくて、デザインの課題制作だけでなく、ただのレポートまで{{illustrator}}で作っていました。もともとバウハウスのような、点、線、面で構成される幾何学的でシンプルなデザインが好きだったこともあり、そのままではただ黒い文字が並ぶだけのレポートを、グリッドデザインでとにかく見やすく仕上げるんです。自己満なんですけどね(笑)。
そうして使い続けるうちにさらにデザインにハマっていき、{{illustrator}}にも傾倒していきました。それからもう20年以上、{{illustrator}}を使っていて、いまでも仕事の95%は{{illustrator}}を活用して行っています。
学生時代から好きだったというバウハウスの資料
大学卒業後、どのようにキャリアを積まれたのでしょうか。
大学卒業後は空間デザインの会社を経て、広告系のデザイン事務所に務めました。いまでは考えられませんが、徹夜や泊まりは当たり前で、先輩がデザインを教えてくれるわけでもない。とにかく見て学ぶしかありませんでした。
先輩が作ったデザインと自分のデザインを見比べて、どこがダメなのかを考える。それを繰り返すことで、広告制作のノウハウを身につけていきました。
夢の中でもデザインを考えているような過酷な現場でしたが、このときの経験があったからこそ、デザインを見る目、違和感に気づく目が養われましたし、アイデアの引き出しも増えたと思っています。
2024年に書いた『プロっぽいセンスが身につく デザインのきほん』は、これまで身につけたデザインの手法や自分が過去に悩んだ課題の解決策を一冊にまとめた本なのですが、読者の方から“調べてもわからなかったことが書かれている”というコメントをいただいて。あのハードな時代は無駄じゃなかったんだと、報われたような気持ちになりました。
『プロっぽいセンスが身につく デザインのきほん』(ソーテック社)
デザイン・レイアウトのテクニックはXでも発信中
{{illustrator}}のいいところは?
とにかく作業スペースが広いこと。たとえばA4のデザインを作るときでも、アートボードの外まで自由に使って作業することができます。
僕にとって作業スペースの広さは非常に重要で、作業できる場所が狭いと、アイデアもそこに限られてしまいます。{{illustrator}}なら頭の中でイメージしているものをすべて投影して、ああでもない/こうでもないと試行錯誤できますし、デザインを複数案作り、比較・検討をするときも、ひとつのファイルで完結できる。
これは{{illustrator}}にしかない、一番の魅力だと思っています。
学生時代は、“まずラフを描いて、アイデアが固まってから{{illustrator}}に向かえ”と言われていましたが、いまはラフを描いたあとは{{illustrator}}上でアイデアを検討することも多いですね。そのほうが完成形をイメージしながら作業できますから。
1案件1ファイルで作業することもあるという木村さん。そのaiファイルにはそれまでのデザインの軌跡、思考の過程がすべて残る
プロのデザイナーを目指す人たちにアドバイスをお願いします。
いまは多様なデザインツールが登場し、誰もが気軽にデザインできるようになりました。“デザインが身近になった”という点では、いい時代になったと感じています。
でも、本当にこれから先、プロとしてデザインを仕事にしようと思うなら、そうした“なんとなく作られたデザイン”ではなく、物事の本質を見極めたうえで、クライアントの課題を解決する最適なアウトプットが求められます。
そうした要求に応えるためには、デザインの要素ひとつひとつを、細部にわたってきめ細やかに調整できる{{illustrator}}のようなプロフェッショナルツールを使い、しっかりと基礎を固めていくことが大切だと思います。
木村宏明
アートディレクター/グラフィックデザイナー
武蔵野美術大学卒業後、デザイン事務所・事業会社を経て、2022年にHAMMOCK Designを設立。グラフィックデザインをベースに ブランディングや販促プロモーション、パッケージやweb サイトなど、 幅広いジャンルのアートディレクション・デザインを手がける。
著書に『プロっぽいセンスが身につく デザインのきほん』(ソーテック社)がある。