作品の世界観を精緻に描き出す、團夢見さんの装丁&パッケージデザイン
コミックやアニメ、ゲームの分野を中心に、作品が持つ世界観を巧みに引き出し、デザインとして表現するグラフィックデザイナー 團夢見(だん ゆみ)さん。手がけるのは装丁、ロゴ、パッケージデザイン等、多岐にわたりますが、ほぼすべてが{{adobe-illustrator}}で作られています。
團さんにとって、{{illustrator}}はどのような存在なのか。その活用法や世界観を表現する工夫について伺いました。
デザイナーになったきっかけを教えてください。
もともとデザインに興味を持っていたので、高校からデザインを専攻し、美大に進学しました。当時はデザイナーになりたいと思っていたのですが、在学中、趣味で描いていたイラストをコンテストに出したことをきっかけに商業デビューすることになり、卒業後、最初はイラストレーターとして活動を始めたんです。ただ、イラストの仕事はまったく来なくて……友人の誘いで、漫画家のアシスタントをすることになり、それがきっかけで先生が懇意にされていた伸童舎というアニメ関連の企画やデザインを手がける会社にも通うようになりました。
伸童舎では修行として社内コンペに参加することになりました。未経験ということもあって最初はなかなか結果が出ませんでしたが、経験を積むうちに、少しずつ社内コンペにも通るようになり、徐々にほかの編集の方からも装丁のお仕事をいただけるようになったんです。そこで2年くらいデザインを学んだあと、2007年にデザイン事務所を立ち上げました。
團さんの制作環境。Mac Studioに4枚のディスプレイを接続
『しゅごキャラ! ジュエルジョーカー(1)特装版』カバーデザイン/著:PEACH-PIT/発行:講談社
いま手がけているお仕事と、デザインに使用しているアプリについて教えてください。
装丁、ロゴ、DVDやBlu-Rayのパッケージデザイン等、いろいろなジャンルのデザインを担当していますが、デザインに使うアプリはほぼ100%、{{illustrator}}です。
冊子の中面をデザインするときは、{{adobe-indesign}}を使うこともありますが、ちょっとした小冊子くらいなら{{illustrator}}で作ってしまいますね(笑)。
装丁をする際、作品がもつ世界観をどのようにデザインに展開していくのでしょうか。
装丁のご依頼をいただくときは、まずイラストからインスピレーションを得て、世界観に合ったフォントや配色、装飾を選びます。
ゴシックな雰囲気なら重厚な書体やダークな色味を、レトロなイメージなら柔らかいトーンやクラシックな装飾を意識しています。
フォントは自分でもどのくらいあるのか、わからないくらい入れていますが、{{adobe-fonts}}の豊富な書体コレクションが使えるようになってからは、さらに選択肢が広がりました。定期的に書体が追加されるので、{{adobe-fonts}}の情報は常にチェックして、気になるものはひと通りアクティベートするようにしていますね。
フォントはインストールしている書体を含め、世界観ごとにグループにして管理していて、デザインに合わせて、最適なものをスムーズに選べるようにしています。
あとは直感ですね。私の場合、お風呂に入っているときや寝る前にふわっとアイデアが浮かぶタイプなんです(笑)。
装丁を手がけた本が飾られたオフィスの本棚
作品の世界観を表現するために、{{illustrator}}で活用している機能について教えてください。
①「粒状効果」で不穏さや不思議な世界観を表現する
不穏な空気感を出したいときや、情報量を増やしたいときによく使うのがアピアランスの「粒状」効果です。イラストでも、ノイズやテクスチャで質感を加えることで完成度を高める手法がありますが、それをデザインに応用したかたちです。ザラッとした紙を使いたいけれど予算や色の再現性で難しいケースでもよく使う手法です。
こうした処理は{{adobe-photoshop}}のほうが得意なのかもしれませんが、私は{{illustrator}}でできることは{{illustrator}}で処理して、できるだけデザイン作業をひとつのアプリで完結させたいと思っているんです。そのほうがデータもシンプルになりますし、修正もしやすいですよね。
「江戸前エルフ」Blu-ray 1 パッケージデザイン
②「パターン」で作品が持つ空気感を表現する
「パターン」はここ数年、よく使うようになった機能です。模様があしらわれた包装紙やお菓子箱のデザインが好きで、そのイメージを{{illustrator}}で再現するために活用しています。
たとえば、『九龍ジェネリックロマンス』Blu-ray BOXのブックレットやサウンドトラックCDのレーベル面の模様には、作中のイメージに合ったパターンを取り入れることで作品の空気感がより伝わるようにデザインしています。
TVアニメ『九龍ジェネリックロマンス』Blu-ray BOX ブックレット(左)/サウンドトラックCDレーベル(右)
③「パスのオフセット」で文字の伝わりかたを変化させる
フォントの文字はそのまま使うのではなく、太さを変えて使うこともあります。そのままでは“ふつう”の印象になってしまうところを、文字を少し加工するだけで、どこか“ふつうじゃない”イメージに変えられるんですよ。
文字の太さを調整するときによく使うのがアピアランスの「パスのオフセット」です。たとえば文字に対してマイナス値で設定すると文字を細く、プラス値で設定すると文字を太くすることができます。特に女性向けのコンテンツで繊細さを出したいときには、タイトル文字を細らせることが多いです。
テキストに対して「パスのオフセット」を適用して文字を細らせた例/TVアニメ『九龍ジェネリックロマンス』Blu-ray BOX パッケージデザイン
文字の太さを変えたタイトルデザイン。モリサワのデザイン書体「赤のアリス」を細らせて使用している/『魔法少女事変』著:赤羽ぜろ/発行:KADOKAWA
④「クロスと重なり」でイラストと文字を一体化させる
今後使ってみたいと思っているのが「クロスと重なり」です。
『ZOMBIE-LOAN 新装版』のように、イラストと文字が入り組んだデザインをするとき、いつもならマスクした画像と組み合わせていたのですが、「クロスと重なり」を使えば、一瞬でできそうですよね。
團さんにとって{{illustrator}}はどのような存在ですか?
私にとって{{illustrator}}は、常に右手にある、生活の一部みたいなものですね。もう私の身体に染みついてしまっていて、{{illustrator}}以外でデザインすることは考えられません。
最近、{{illustrator}}の使い方をあらためて学び直しているんです。いまは、動画やXでいろいろなTipsがアップされていますし、本もたくさん出ていますよね。文字を立体的に見せるとか、そうしたアイデアはすぐに使えるものでなくても、試してみてデータとしてストックしておけば、次の仕事に使えるかもしれない。そういう学びかたができるのも、{{illustrator}}のいいところだなと思っています。
團夢見(imagejack)
グラフィックデザイナー。漫画や小説の装丁からCD・アニメのパッケージデザイン、ゲームやVTuberのロゴまで幅広く手がけている。
web|https://imagejack.wixsite.com/home
X|https://x.com/imagejack
Instagram|https://www.instagram.com/imagejack/