セキュリティの対応は? なにができるようになる?AdobeがおすすめするPDFとAdobe Acrobatの使い方
データの真正さを損なわず確認・シェアできるPDFデータと、その活用に特化したAdobe Acrobat。両者はどのような特徴があり、導入すると具体的にどういったことが可能になるのでしょうか。活用にあたっての疑問にお答えします。
ビジネスでも頻繁に利用されている「PDFデータ」。しかし、その特徴や活用法についてよくわかっていない……という人も多いのではないでしょうか。
「Adobe Acrobat」は、そのPDFデータの作成や編集、共有に特化したソフトウェアです。PDFとは具体的にどのようなデータ形式で、Acrobatを活用すればなにができるのか、両者を活用するためのヒントをご紹介します。
【目次】
3. Adobe Acrobatを活用して快適なビジネス環境を
まずは、文書をやり取りするときに欠かせない、セキュリティについての疑問や注意点を見ていきましょう。
履歴書などの重要書類はWordやExcelではなく、PDFで送付する
履歴書などの重要書類は、PDFファイルで送るようにするのがおすすめです。
WordやExcelなど、それぞれのフォーマットのまま送るケースも少なくありませんが、なるべくPDF化したうえで送付すると良いでしょう。その理由は2つあります。
1つは、書類の内容が改ざんされにくくなることです。たとえばWordファイルの場合、操作制限の設定をしないと、採用担当者の思わぬミスで内容が変更されてしまうことがあります。PDFの場合はAcrobatなどの特別なソフトを利用しなければ編集できないため、思わぬミスによる改ざんを防ぐことができます。
2つ目の理由は、エラーが発生しにくくなることです。履歴書をWordやExcelなどのファイル形式で送った場合、ファイルを読み取る環境によっては「レイアウト崩れ」や「印刷ズレ」などのエラーが発生する可能性があります。また、履歴書のデザインやこだわって選んだフォントが相手のPC上では正しく再現されない場合も。
一方、文書を元データどおり正確に再現できる特徴を持つPDFファイルで送った場合、それらのエラーが発生しにくくなるのです。エラーのないファイルのほうが、採用担当者によい印象を残せるでしょう。
PDFファイルは「編集可能なこと」を念頭に置いてセキュリティ対策を
PDFファイルは、専用のソフトを利用すれば加工・編集ができるデータ形式です。
「後から編集することができないデータ形式」だと理解している人も少なくありませんが、それは間違い。「思わぬミスによる改ざん」は発生しにくいものの、「悪意のある改ざん」からPDFファイルを守るためには、セキュリティ対策が必須です。
しかし、PDFに限らずほぼすべての電子データは、「悪意を持った改ざん」を完璧に防ぎ切ることはできないもの。ファイルの種類や使用方法、セキュリティ対策にかかるコストを考えた上で、必要な対策を行ないましょう。
データファイルのやり取りには、公開鍵と秘密鍵を使う
機密性の高いファイルをメールでやり取りする際に、「1本目のメールでパスワードロックをかけたファイルを送付」「2本目のメールで解除用のパスワードを伝える」といった、メールを分割することでセキュリティ対策としている企業も少なくありません。しかしこれは、セキュリティ対策としては疑問が残る方法です。
この方法がセキュリティ対策に利用されているのは、「添付ファイル」と「パスワード」の2つが通信経路上で盗聴されないようにするためです。しかし、添付ファイルと同じ通信経路上で、パスワードをほぼ同時に後送すれば、その両方を盗聴するのは難しいことではありません。また、添付ファイルとパスワードは第三者にも転送可能で、転送先で情報が漏れてしまうかもしれません。
パスワードロック以外の方法でセキュリティ対策を行うのであれば、Acrobatの「証明書による暗号化」がおすすめ。これは、ファイル送信者と受信者の双方が「公開鍵」と「秘密鍵」と呼ばれる2つの鍵を持つことで、ファイルを開く方法です。
ファイル受信者は「公開鍵」と「秘密鍵」をあらかじめ作成し、ファイルの送信者に公開鍵を送ります。送信者は、公開鍵で相手を指定してファイルを暗号化、それを受信者に送ることで、十分なセキュリティのもとファイルをやりとりできます。
公開鍵と秘密鍵は対になっており、秘密鍵を持っていない人は「公開鍵によって暗号化されたファイル」を開くことができません。一方、受信者は秘密鍵を持っているので、送信者から受け取ったファイルを開くことができます。これは特定の人とのファイルのやり取りが多い人にとって、とくに使える仕組みでしょう。
また、公開鍵と秘密鍵を使うのとは別にMicrosoft社が提供している「Azure Information Protection(AIP)」も活用できます。
これはファイルに対して閲覧や編集の権限、コピーの保護などを行なうことで、機密文書の保護を強化するソリューションです。許可されたユーザーのみ「アクセス権限をかけたファイル」を閲覧できる機能などがあり、これによってサポートされるファイルの対象にPDFも入っています。
このような高度な情報漏えい対策を行なうことで、機密性の高いファイルを保護できます。ただし、いずれも手間やコストがかかる対応ですので「コストをかける価値があるのかどうか」を判断しながら、必要な対策を行なうことです。
※ AIPで保護されたPDFファイルをAdobe AcrobatもしくはAcrobat Readerで閲覧するためには、プラグインが必要です。詳細はリンクをご参照ください。
ネット上にPDFをアップロードするときは、公開範囲に注意
何かしらの目的のもとでPDFファイルをインターネット上にアップロードする場合は、その公開範囲に注意するようにしましょう。一部の人にだけ見せたいファイルなのか、インターネット上で広く読んでもらいたいたいファイルなのかで、対応方法が変わります。
たとえば、ごく一部の人と共有したいPDFファイルをインターネット上にアップロードする場合。ファイルに保護をかけずウェブ上に公開すると、検索エンジンでファイルがヒットするようになってしまうことも。
外部の人に公開してはいけないファイルは、アップロードする前に必ず保護するようにしましょう。
つづいて、Acrobatで実現できる機能について解説していきます。
PDFからテキストだけを抽出するときは、「選択範囲を書き出し」
PDFデータ上のテキストは、Wordなどの文書作成ソフトと同様にテキスト部を反転させ、コピー・アンド・ペーストすることができます。
PDFから抽出したいテキストを選択後、その部分を別のファイル形式で保存したいときは、以下の方法を試してみてください。
Acrobatで抽出したいテキストの範囲を指定し、右クリック→「選択範囲を書き出し」→「ファイルの種類」で、WordやExcelなど保存したいファイル形式を選択すればOK。この方法を利用すれば、PDFファイル内の表を選択して、その部分だけをExcelに書き出す、といった動作も可能になります。
PDFのファイルを圧縮したいなら、「最適化」を使用する
文書内で使用する画像や図版が増えれば増えるほど、PDFデータの容量も大きくなっていきます。
ファイルの容量を抑えたいときは、Acrobatの「ファイルサイズを縮小」機能を利用します。これを使えば、システムが「閲覧に問題が生じない品質」を判断して画像サイズを下げて保存するため、大きな影響はありません。
ただし、このように圧縮したPDFであっても、メールで送るにはファイルサイズがまだ大きすぎることがあります。Acrobat Proを使用している場合は、画像サイズを調整してファイルサイズを縮小する「PDFを最適化」機能が利用できます。
PDFのファイルサイズの大部分は、画像やフォントが占めています。特に、写真や図版が多い資料の場合は画像の割合が大きくなるため、画像を圧縮することで、自ずとファイルサイズも小さくなります。その処理を行なう必要があるのかどうかを判断したいとき、Acrobat Proの「PDF の使用容量の調査」機能が便利です。
「ファイル」→「その他の形式で保存」→「最適化されたPDF」の順にクリックして表示されるPDF の最適化ダイアログボックスで、「容量の調査」をクリックします。すると、画像やフォントなど、PDFを構成する要素それぞれの使用容量が表示されます。
画像の項目が80〜90%の容量を占めていたなら、それは画像データの処理次第でファイルサイズをだいぶ軽量化できる、ということ。「PDFを最適化」機能で画像の解像度を低くすることにより、ファイルサイズを小さくできます。
※ 「PDFの最適化」はAcrobat Proのみで使用可能。
スマートフォンでPDFを作成・編集するなら、モバイル版アプリが便利
Acrobat Readerモバイル版アプリでは、PDFの表示や署名、注釈の追加などを行なえます。
また、Acrobat(または、Adobe PDF Pack)のサブスクリプション版を購入することで、PDFの作成や書き出し、結合、整理などの高度な機能をどこからでも実行可能です。なお、Acrobat Proのサブスクリプション版を購入した場合は、iPhoneやiPad、AndroidデバイスでもPDFのテキスト・画像を編集できます。
手書きの署名や、本人証明には「Adobe Sign」を使用する
書類に手書きのサインを付与しなければいけない場合は、Acrobatのツールパネルにある「入力と署名」機能を利用しましょう。
これを使えば、キーボード入力で名前や役職などの「テキスト」を入力できます。また、サイン代わりとなる「手書き署名」の記入や「署名画像」の挿入も可能です。
手書き署名を追加したい場合、そのイメージをあらかじめ登録しておきましょう。ツールバーの「署名アイコン」をクリック→「署名を追加」を選択することで、署名できるパネルが表示されます。ここにタブレット端末などのタッチパネルで署名を手書きすれば、登録完了です。
これは「手書き署名のイメージ」を貼り付けるだけなので、書類確認を簡易的に示したいときに活用できます。一方、「本人が作成した契約書であることの証明(本人証明)」と「契約書が改ざんされていないことの証明(非改ざん証明)」を必要とする書類には、Adobe Signを使った電子サインの付与がおすすめです。
その他のおすすめ
オフィスで使用する紙の書類を必要に応じてデータ化していく「ペーパーレス」の取り組み。
不安を感じる人も多いですが、上手く導入すれば大きなメリットを得られます。