デジタル時代の金融機関:データをつなげば、体験がつながる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金融機関にとって最も必要なことは、顧客との「つながり」です。銀行や資産管理会社、保険会社などの金融機関に顧客が接するのは、人生における大きな決断のタイミングだからです。そのため、金融機関の成功は、顧客とのつながり、つまり信頼と尊重のうえに成り立つ強固な信頼関係を築けるかどうかにかかってきます。
 
従来、この関係は個人的なものでした。住宅を購入するとき、あるいは不動産の管理が必要になったとき、顧客は実際に金融機関の窓口に足を運び、担当者に直接会って契約を交わしました。  
 
今日でも、顧客は信頼の置ける金融機関と取引したいと考えています。しかし、絶対に必要であると決断しない限り、実際の窓口に出向こうとはしません。今日の顧客は、自分がものごとの判断の主導権を持ち、企業が提供するチャネルのなかから、その時々の都合に合わせて利用することを当然だと考えています。中でも、携帯電話を用いるサービスの需要は、ますます高まっています。アドビのグローバル調査(Adobe Digital Insights、2017年)によれば、大手リテール銀行のwebサイトへのモバイルからのアクセスは2014年から121%増加し、今ではあらゆるトラフィックの26%を占めています。 
 
デジタルテクノロジーは金融業界においても有効です。店舗では提供することのできない、大規模で一貫性のある顧客体験を実現することができます。また、デジタル体験は自動化できるので、コストを抑えつつ、何度でも効率的に優れた顧客体験を提供できます。つまり、デジタルは顧客と金融機関の双方にメリットをもたらすのです。デジタル化を進めることによって、金融機関は効率性が向上し、顧客は利便性が向上するのです。 
 
しかし同時に、デジタル化を進める中でいくつかの課題も生じてきます。
 
一例を挙げれば、デジタルの台頭により、新たな企業競争が始まりました。異業種の企業や新興企業による、金融業界への参入です。いわゆるフィンテック企業と呼ばれる、デジタル化された金融サービスの提供を強みとした企業も含まれます。さらに大きな脅威となり得るのが、GoogleやAppleなどの巨大なテクノロジー企業です。これらの企業は、膨大な個人データを持ち、優れたデジタル体験を構築するノウハウを知り尽くしており、金融業界への参入を目論んでいます。アドビで金融サービス業界の戦略担当ディレクターを務めるChris Youngは、「新しい口座を開設するときに、銀行に足を運ぶ顧客は多いですが、その後、再び銀行に足を運ぶことはまれです」と語ります。
 
この事実は、収益にも反映されています。Econsultancyのレポートによれば、多くの金融機関の売上に占めるデジタルチャネルの割合は平均31%にとどまっています。デジタル化が進まない理由は様々です。従来の取引方法に顧客が慣れ親しんでいる、あるいは、オンラインでの金融取引を信用していない可能性もあります。しかし、ひとつ明確なことは、多くの金融機関が、デジタルの面で顧客の期待を裏切っているという事実です。金融以外の分野では、手軽で便利なデジタルサービスをよく見かけるようになりました。それらが、あらゆるサービスへの期待値を引き上げているのです。 
 
金融機関は、今まさに追い詰められた状態にあります。金融機関が競争の中で成長し、顧客の信頼を勝ち取るには、デジタルという難題に対処しなければなりません。そのためには、魅力的でパーソナライズされた、顧客の信頼に値する、連続性が保たれたデジタル体験を構築し、提供する必要があります。
 
そのスタート地点は、データです。連続性が保たれた顧客体験を提供するには、連続性を備えた顧客データが必要になります。オンラインの匿名データからオフラインの実名データまで、あらゆるチャネルから得られる顧客データを紐付ける必要があります。そうして包括的な顧客プロファイルを構築することができれば、既存顧客を満足させると同時に、新しい顧客を獲得できます。 

金融機関のデジタル成熟度に最も影響する要素

54%
 
オンラインとオフラインのデータを組み合わせたマルチチャネル分析
50%
 
統合された顧客プロファイル
出典:Econsultancy
あらゆるデータをひとつに
ベルギーで約1,100万人の顧客を抱えるBpost bank(ベルギー郵政銀行)は、新規顧客の獲得と既存顧客への幅広い商品の販売を目指していました。しかし、互換性の問題により活用できるシステムや情報が限られ、リードを増加させることが困難でした。そこで、Bpostは顧客情報を管理する単一のリポジトリーを構築し、Bpost(郵政サービス)とBpost bankの双方の既存システムを統合して、オンラインとオフラインのチャネルをまたぐマーケティングキャンペーンの運営を自動化しました。
 
オンラインとオフラインのあらゆるチャネルのデータを紐付けて統合することは、優れた顧客体験を構築し、ビジネスを拡大するための第一歩です。しかし、それが非常に困難であることは、金融業界でデジタル化のリーダーを自負するような大手金融機関も認めています。そうした金融機関を対象としたEconsultancyの調査によれば、「パーソナライズされた顧客体験を提供するにあたって最大の障害となるのは何か」という質問に対して、40%の金融機関が「チャネルをまたいだデータの共有ができないこと」と回答しました。また、42%は、「チャネルをまたいで個人を特定できないこと」を挙げました。
 
あらゆるチャネルのデータを統合することは容易ではありません。しかし、デジタル時代を制するためには避けて通れない道と言えます。データを統合すれば、チャネルをまたいで行動する顧客の実像を理解し、顧客の全体像を反映したプロファイルを構築することができます。そして、カスタマージャーニーと顧客接点を把握することにより、顧客一人ひとりにとって意義の深い、顧客中心型のコミュニケーションを実現することができるのです。それが、金融機関の顧客ベース拡大にも繋がります。

「顧客情報の一元管理を実現したことで、新たなキャンペーンの構築が容易になりました。顧客とのコミュニケーションを自動化して最大の効果を上げるクロスチャネルキャンペーン管理は、顧客との関係を深めるのに役立っています」

Julien Lebeau氏
Bpost bank、CRMエキスパート

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データを活用
データを統合することで、インサイトを獲得できるようになります。利用中の金融商品、問い合わせ内容、どのような情報をよく見ているか、ライフステージ、家計方針などの情報を組み合わせることで、顧客の動機や要望、ニーズなどが見えてきます。金融機関を取り巻く規制やプライバシーの問題により、データの取り扱いは難しくなっていますが、残高や収入、年齢などの個人情報をそのまま使用する必要はありません。優れたデータ分析ソリューションならば、こうした個人データは難読化されます。 
 
適切なデータを統合すれば、顧客の包括的なプロファイルを構築し、顧客との取引を有意義なものにすることができます。一人ひとりとの取引について、顧客が金融機関に接触した動機を見極めることができれば、顧客の要求に応える形へとサービス内容をパーソナライズし、顧客にとって連続性が保たれた顧客体験を提供することができます。
 
例えばScottradeは、店舗窓口、オンライン、モバイルといった顧客接点を通じて、パーソナライズされた仲介サービスを展開し、投資家ごとに最適な額の投資商品を紹介しています。データを統合するための努力が実り、どのような顧客セグメントに分類されるべきか、といった具体的なインサイトを獲得しています。マーケターやエグゼクティブは、アトリビューションモデルを使用することで、チャネルの可能性や、既存の投資家がどこからアクセスしているか、どのコンテンツに興味を持ったか、何が成果を生んだのかを確認できます。 
Michael O'Fallon氏

「オンラインとオフラインの情報を合わせて利用することで、口座開設などの成果に至るまでの過程を正確に把握できます。データワークベンチ機能により、成果を生んだマーケティング活動を正しく評価できます」

Michael O'Fallon氏
Scottrade、マーケティング分析マネージャー

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データにもとづいた行動
インサイトはアクションにつながります。データを統合する目的は、デジタルチャネルを通じて連続性が保たれた顧客体験を提供し、従来のオフラインチャネルと同等か、それ以上の価値を顧客と企業の双方にもたらすことです。連続性が保たれた顧客体験は、既存の顧客に対しても新規顧客に対しても提供できます。
 
信頼できるデータとしっかりとした顧客プロファイルは、カスタマージャーニー全体における顧客体験を向上させるための基盤となります。例えば、統合されたデモグラフィックデータや行動データ、企業特性などのデータにもとづいて、既存顧客や見込み客をセグメント化すれば、顧客の人物像や所在地、過去の取引履歴に沿った、説得力のあるコンテンツを配信できます。また、分析機能とオーディエンス管理機能(データ管理プラットフォーム、DMP)を連携させることで、顧客の真のニーズを満たすオファーを提供できるだけでなく、顧客の要望をきちんと理解していることを示すこともできます。
 
このような顧客体験こそが、金融機関と顧客との間に信頼関係を構築します。デジタルチャネルを介して提供される顧客体験は、拡張や再現が可能で、自動化することもできます。既存顧客の信頼を作り上げた体験を拡張することで、同様の信頼関係を新しい顧客とも築くことができます。
 
多くの金融機関では、オフラインチャネルと比べて、デジタルチャネルで獲得できるアカウントデータの品質は低くなっています。サービスの提供に必要なコストの面から見ても、デジタルチャネルのROIはオフラインチャネルより低くなる傾向があります。しかし、データを統合すれば、匿名の顧客に関しても有用なプロファイルを構築することが可能です。例えば、webサイトにおける顧客行動のデータにサードパーティのデータを追加し、情報を補足すれば、デジタルチャネルのデータを有効に活用できるようになります。データの量だけでなく、質に重点を置くことも可能です。
 
成功している多くの金融機関は、アルゴリズムにもとづくオーディエンスモデリング機能を使用して、価値のあるセグメントを把握し、同様の可能性を持つ類似(look-alike)オーディエンスを見つけ出しています。ここでいうオーディエンスとは、金融機関にとっては新規となる、オンラインの潜在顧客に該当します。類似オーディエンスを見つけ出すことにより、オーディエンスがたとえまだ匿名の段階でも、売上につながる可能性が最も高いオファーを提供することができるのです。
 
175年の歴史を有するDun & Bradstreet(D&B)は、顧客とパートナーの価値ある関係構築を支援しています。現在は、同社が見出した企業特性や予測属性、行動属性などのビジネス属性を評価し、類似オーディエンスの開拓に役立てています。 
Michael O'Fallon氏

「これらの属性には収益や業種も含まれていますが、所在地や重要顧客に対する支払履歴などの行動情報も含まれています。弊社では高度なマシンラーニング(機械学習)システムを活用することにより、通常のリスト作成ツールでは検出できないレベルの複雑な関係を識別することができます」

Brad White氏
Dun & Bradstreet、統計コンサルティングディレクター

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データの統合により、連続性の保たれた体験を構築
データを標準化、正規化し、統合データ基盤に取り込むことで価値のあるプロファイルを構築し、対応する戦略を策定するには、以下のステップを検討してください。 

1. 組織内を調整

金融機関のマーケターがしばしば頭を悩ませることに、「顧客は誰のものか」という問題があります。例えば、商品別にプロファイルを構築するとき、ひとりの顧客のデータがいくつもの業務分野や部門に分散していることがあります。利用価値の高い顧客プロファイルを構築するには、データの統合が必要です。そのためには、データの収集と使用に関して企業内で統一された指針を定めなければなりません。あらゆるオーディエンスデータを取得して使用し、全体を一元的に管理できる担当者やチームを割り当てる必要があります。

2. データを理解

データを統合するには、データについて深く理解する必要があります。文字通り「すべてのデータを統合」することが、必ずしも最善ではないかもしれません。活用目的を起点として、時間をかけて本当に必要なデータを見極めましょう。次に、選定したデータを取得できるオンラインおよびオフラインの場所を特定し、不足しているデータソースがないか確認しましょう。価値のあるデータがそれぞれどこで収集されたものなのか、チャネルやデバイス、顧客接点などを明確に把握する必要があります。さらに重要な点として、データセット同士の関係性を理解するために時間をかけることも大切です。単一の共通デジタル基盤に統合するといっても、あるチャネルのデータが自動的に他のチャネルのデータとうまく連動するわけではありません。多くの時間を費やすのは、多様なデータ同士をどのように紐付けるかを理解することにあります。つまり、データを共通の識別子でリンクすることが可能かどうかなどです。また、活用するためには、特定のデータセットを結合するべきか、分離するべきかの判断が求められる場合もあります。例えば、パーソナライゼーション施策では既存顧客のプロファイルを使用することになりますが、新規顧客の獲得施策では匿名顧客について扱うことになります。だからこそ、それぞれのデータセットの施策用途について、事前に計画することが重要なのです。 

3. データを統合

データを統合して有効に活用するには、事前の計画や指針に加えて、しっかりしたデジタル基盤が必要になります。その基盤に欠かせないのが、分析機能と連動し、リアルタイムに更新できるデータ管理プラットフォーム(DMP)です。管理者を指名し、価値あるデータの選定を終えたら、次にそのデータをDMPに取り込み、ID管理ツールを使用して一人ひとりのデータを分離します。

4. セグメントを構築

データをDMPに取り込んだら、データセットを結合します。オフラインとオンライン双方のデータ属性を、チャネルや組織の壁を越えて統合し、顧客ごとの全体像を構築します。金融機関自身で保有しているデータは、ファーストパーティデータと呼ばれます。また、提携先企業やデータ販売元企業のセカンドパーティやサードパーティのデータを統合し、データを補強するのも有効です。顧客像が完成したら、優れた顧客体験を提供するために価値のあるセグメントの構築を始めます。デモグラフィックや企業特性、CRM、サードパーティデータなど、取り込むデータが増えれば増えるほど、詳細かつ正確なセグメントを構築できます。

5. 既存顧客を魅了

セグメントが準備できたら、顧客接点をまたいでそのデータを活用し、顧客一人ひとりに適切なメッセージをタイミング良く提供します。予測モデリングや貢献分析などのテクノロジーをプロファイルに活用して、顧客のニーズを予測し、その要求に応えます。それぞれのセグメントや顧客に対して施策を実行したら、その結果がどうだったかをデータに反映し、セグメントとプロファイルを洗練させます。このようにデータの更新を繰り返すことで、顧客体験をさらに最適化していくことができます。

6. 新しい顧客を獲得

統合されたデータを利用すれば、金融機関にとって最も価値の高い顧客セグメントを参考にして、それらの顧客と特性の類似(look-alike)している見込み客にリーチすることができます。これは「オーディエンス拡張」と呼ばれます。そのためにはまず、最も価値の高い顧客を特徴付けている属性は何かを見極めることから始めます。次に、CRMデータを取り込み、個人顧客であればデモグラフィック情報、法人顧客であれば企業特性情報を組み込んで、類似した顧客を見つけ出します。サードパーティのデータセットを統合していれば、さらに多くの類似顧客を見つけることも可能です。準備を整えたら、その類似オーディエンスに最適なマーケティングメッセージを配信します。
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アドビがお役に立ちます
顧客とのつながりを確立することは、オンライン、オフラインを含め、あらゆるチャネルにおける顧客データを統合することから始まります。統合されたデータにもとづき、何が顧客の行動を促しているのかを見極め、そうして得られたインサイトをもとに施策を実施し、顧客との信頼関係を生み出す顧客体験を提供することができます。この点でマーケターの心強い味方となるのが、Adobe Experience Cloudです。

Adobe Experience Cloudは連続性が保たれた顧客体験の提供を可能にするために設計されました。Adobe Experience Cloudは、顧客エンゲージメントにおいて、あらゆるチャネルにおける顧客体験の管理と提供を支援します。またデジタル広告において、デバイスに応じた動画広告、ディスプレイ広告、検索連動型広告などの配信を容易におこなえるようサポートします。そして顧客を理解するため、あらゆるオーディエンスデータを統合し、深いインサイトと顧客インテリジェンスの獲得を可能にします。これらは、強力な共通基盤によって統合されています。これにより、顧客プロファイル、一元管理されたアセット、強力なタグ管理、アドビのソリューションの価値を拡張するパートナーやデベロッパーのエコシステムにアクセスすることができます。Adobe Experience Cloudは、優れた顧客体験の実現に必要となるあらゆる機能を備えたソリューションなのです。 

アドビ


データを統合し、顧客とのつながりを確立する準備が整ったら、Adobe Experience Cloudを活用する詳しい方法をご覧ください。

 

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Adobe Digital Index、インタビュー(2017年5月)

「Bpost Bank: Garnering New Customers, Deepening Relationships」、アドビのユーザー事例(2015年)

Chris Young、アドビ、個人インタビュー(2017年2月2日)

Denis Olcay、「3 Tips to Optimize Your Programmatic ABM Strategy in 2017」、Dun & Bradstreet(2016年12月14日)

「Digital Trends in the Financial Services and Insurance Sector」、Econsultancyとアドビ(2016年)

「Elsevier finds its one global voice」、アドビのユーザー事例(2015年)

Erin Wright、個人インタビュー(2017年2月)