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そのマーケティングは人工知能かもしれない

2016年05月19日


【POINT】

  • 人工知能は、獲得した知識から自ら学び、意味を推察し、それに基づきアクションを起こすことができる。
  • 広告主は、顧客がクリエイティブにどのように反応するのかを判断したり、一新したマーケットリサーチの手法を試すために、この新技術を活用できる。
  • マーケターは、人工知能の視覚認知能力や、自然言語処理能力を最大限に活用し、顧客とのパーソナライズされたやり取りの改善、調整に利用ができる。

 

グローバルテクノロジー企業は、熱い視線をもって人工知能に投資を続けている。2016年、人工知能が熱く注目されていることは間違いないだろう。頭角を現しつつあるこの技術が、マーケティングの分野でどのような存在感を示しているかについて考察する。

人工知能は、もはやSFの話ではない。すでに現実的な技術として、目の前にあるのだ。2016年に入ってからこれまでにも、人工知能に関する話題はいくつかある。たとえば、Appleが今年初の買収先として人工知能を手がけるEmotient社を選んでニュースの見出しを賑わせたり、FacebookのCEO、マーク・ザッカーバーグ氏が、自分の自宅やオフィスで活躍するAIアシスタントを開発すると表明したりといったことだ。

さらにGoogleで人口知能を開発するDeepMindチームは、ボードゲームの最後の牙城であった、難関の囲碁をついに攻略。人間の世界チャンピオンを打ち負かす人工知能プログラムを開発し、歴史に名を残した。これはIBMの人工知能「Watson」が2011年に米国のクイズ番組「 Jeopardy!」で人間の対戦者に勝利した歴史的瞬間を思い起こさせる成果である。

人工知能の開発を推進しているのは世界の名だたるテクノロジー企業だが、ではそれらの企業は、人工知能によって何を手に入れようとしているのだろうか。データサイエンティストは、機械学習、ディープラーニング、コグニティブコンピューティングなどといったさまざまな用語を使って、人工知能やその関連技術を表現している。

その中で共通しているのは、システムは一定のルールのもとでプログラミングできるものだったが、いまや視覚認知や音声認識、あるいは意思決定であるかを問わず、人間と同じような知能を必要とするものへとシフトしているということである。すなわちそれは、人工知能は獲得した知識から自ら学び、意味を推察し、それに基づきアクションを起こすことができるということだ。

人工知能は、この先もまだ進化を続けるだろう。しかしマーケティング分野では、すでにマーケットリサーチからパーソナライズにいたるまで、人工知能の浸透が進みつつある。マーケターは人工知能を活用して、不必要なコストをかけることなくインサイトを高度化し、顧客からの反応を評価する手段を求めているのだ。


マーケットリサーチの精度

Appleに買収された米国のEmotient社は、ディープラーニング、コンピュータービジョン、認知神経科学などの科学的アプローチを組み合わせることにより、喜びや怒り、驚きといった顔の細かな表情から、人間の実際の感情や注意、関心が向いていることを判断するソフトウェアを開発した。

広告主は、クリエイティブへの反応を判断したり、従来のマーケットリサーチ手法を一新したりするために、この新技術を活用している。

Emotient社のCEO、ケン・デナム氏は次のように話す。「消費は感情に左右されます。我々は、人の本当の感情を理解することにずっと苦戦してきました。顧客を獲得するために、あるいは顧客自身のことを知ろうとしたり、また、製品や顧客体験についてどう感じているかを理解するために毎年数十億ドルが費やされていますが、実際のところは憶測を重ねてきたに過ぎないのです」。

たとえば、このような例がある。とある日用品メーカーでは、洗濯用洗剤の発売にあたって、3つの香りの中からどの香りにするかを検討していたのだが、その際にEmotient社の人工知能を活用した。その方法は、芳香剤の1つをプレゼントすると伝えられたときの、参加者の顔の表情を測定するというもの。その結果、人工知能は芳香剤の好みを正確に予測したが、それは、フォーカスグループや参加者が事前に行った調査の結果とは異なるものだった。「人が、自分の本当の感情を誰かに伝えるのは非常に難しいのです」と、デナムCEOは言う。

また、イギリスの放送局BBCでは、法人向け営業活動の改善を狙い、マーケットリサーチの新たな手法として人工知能を活用している。ニュージーランドの人工知能開発メーカー、Parrot Analytics社が、BBCのワールドワイド部門と協力し、国際向け番組の一部について調査を行った。このBBCワールドワイドチームは特定の番組に対する視聴者の感情を、ソーシャルメディアやブログへの書き込みに基づいて評価。その結果、潜在的顧客と新たな対話を始める機会をつかんだのだ。

自然言語分析は、韓国の起亜自動車がIBMのWatsonを活用(英語記事)した際にも力を発揮している。また2016年のスーパーボウルにおいては、ソーシャルメディア上のどのインフルエンサーに協力を求めるかを決定する際に、人工知能が用いられた。

 

人工知能でリアルタイム処理の自動化を実現

プログラマティック(広告自動取引)の浸透によって、広告主やマーケターの間で、人工知能を活用した自動化ツールへのニーズが高まっている。

調査分析会社IHSと、動画広告在庫管理プラットフォームSpotXの調査によると、欧州では、2020年までにデジタル動画広告取引の売上の5割以上がプログラマティック型になると予測され、英国ではプログラマティック型デジタル動画取引の売上シェアが、2016年の32%強から今後4年間で60%を超えるレベルに拡大する見込みである。

このように、人工知能やその関連技術は、次第にマーケターが使う日常的なツールとなっているのだ。そしてこれに伴い、人工知能を用いてデバイスや閲覧者ごとに広告掲載場所を最適化するLoopMeといったようなモバイル動画プラットフォームも登場している。

プログラマティック型アドエクスチェンジとパブリッシャーが一体化することによって、マーケターには広告キャンペーンをリアルタイムで最適化できる新たな機会が生まれることになる。

 

大規模なパーソナライズも可能に

マーケターによって、人工知能が採用される機会はますます増えている。現在では進歩を続ける視覚認知能力や、自然言語処理能力などの技術を駆使することにより、顧客とのパーソナライズされたやり取りをさらに改善したり、調整したりするために役立てられている。

オンライン小売業者であるShoes.comは、Sentient Technologies社が開発した人工知能を使い、Shoeme.caユーザーの靴探しをサポートする仕組みを用意した。この販促アプリケーションは2015年11月にサービスを開始。利用者がいろいろなブーツを閲覧し、自分の好みの特徴のある製品をクリックしていくと、Sentient社の開発した、視覚を認識してフィルタリングをするツール「Sentient Aware」で、パーソナライズされたおすすめが表示される仕組みだ。

このように人工知能は、企業全体で活用できる詳細なインサイトを提供してくれている。「製品と合わせて使用することで、顧客の考えや好みの製品を把握することができます」と、Sentient社のCTO(最高技術責任者)、ナイジェル ダフィー氏は話す。

そしてこれによって企業は、ダフィー氏が言う「グルーパライズ(groupalisation:グループ化)」の「その先」へと進化できる。グルーパライズとは、利用者個々人の好みではなく、ある集団の平均的好みに基づいてパーソナライズされたおすすめ情報が届くことを指す。

会話型の人工知能は、顧客と企業の間のやり取りを処理し、高いレベルの顧客体験を実現する。この型の人工知能を採用したDigital Geniusによって、ユニリーバでは、クノールブランド向けに「シェフ ウェンディ」というSMSを利用した人工知能のパーソナルレシピアシスタントを開発した。これは、インターネットが利用しづらい新興市場において活用されている。

テキストベースの対話によって、ユニリーバは顧客の詳細情報や、将来のプロモーションに向けた詳細なデータベースを構築。その結果、大きなコスト増なしに顧客とのやりとりを拡大できるようになった。

もう1つ、人工知能による双方向コミュニケーションの事例に、アウトドアブランドの製造/販売を手がけるノースフェイスのケースがある。ノースフェイスでは、Fluidとのパートナーシップのもと、IBMの最先端テクノロジーであるWatsonを導入。利用客にさまざまな情報を尋ねて購入の手助けをする、双方向オンラインショッピングツールのβテストを昨年末に実施している。日常的な言語に対応したこのツールは、利用客の買い物をサポートし、店舗と同じような体験をオンラインで再現してみせた。

60日間の試用期間で、5万人の消費者がこのサービスを利用し、サイト閲覧時間が以前に比べて2分増加。満足度レベルは高く、利用者の4分の3がこのツールをまた使ってみたいと回答している。

「この結果を見る限り、ある種の人工知能については、消費者はさほど抵抗なく受け入れられると言えるのではないか」。ノースフェイスのシニアEコマースディレクター、カル ブシャール氏はこうコメントしている。



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