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経営陣にチーフ カスタマー オフィサー(CCO)を設置すべき7つの理由

2016年09月29日


 

かつて企業は市場を「面」としてとらえてきた。マスマーケティングの時代である。時代は移り、企業は顧客離れという不安感を抱えるようになった。顧客の期待に応えていない企業にとっては、それは深刻な現実となっているだろう。しばしば「顧客第一主義」「顧客中心主義」「顧客主導型経営」といったことが必要だと叫ばれている理由は、そこにある。

しかし、顧客中心主義の推進は、経営幹部(チーフオフィサー)のうち、誰が責任者となるべきなのか? それはチーフ マーケティング

オフィサー(CMO)の責任だ、と考える人が多いかもしれない。しかし、あらゆる業界の企業が、事業のあらゆる面で顧客中心のビジネスモデルを模索する中、経営トップにおける「顧客利益の代弁」という責任の所在は曖昧になったままだ。

さらに困ったことに、多くの企業は自分たちが「顧客中心主義」を貫いていると信じているが、実際のところ、それは幻想に過ぎない。

15年以上前に行われた Bain & Companyの調査では、80%の企業が「優れた顧客体験を提供している」と主張しているが、これに同意する顧客は8%に過ぎない、という問題が明らかになった。より最近のデータでは、2014年のCMO Council & SAP調査で、73%のマーケティング幹部が「顧客中心主義がビジネスの成功に不可欠だ」と回答しているが、実際に顧客中心の姿勢が会社の差別化要因になっているという回答は14%にすぎず、「そうした差別化が顧客にも認められている」という回答は、さらに少なくなっている(11%)。

CMOはマーケティングとブランドの戦略ビジョンを推進するリーダーである。その責務を効果的に果たしていく上で、顧客ニーズを理解することは欠かせない。しかし、顧客中心主義の理想と現実のギャップを直視し、真剣にこのギャップを埋めていくためには、経営幹部の中に「顧客の利益擁護」を担う責任者が必要となる。それがチーフ カスタマー オフィサー(CCO)だ。これは多くの役割から成る比較的新しい役職だが、すべての職務はひとつの目標に集約される。会社の業務、構造、プロセスを単に顧客中心なものに変えていくだけでなく、根底から「顧客の声」を取り入れていく、という目標だ。

残念ながら多くの企業では、CCOの必要性に気づいていない。しかし、CCOが必要であるという自社の兆候はあらかじめ見つけることが可能だ。どこにその兆候を探したらよいか、以下に解説しよう。

兆候1. 顧客の管轄が特定の部署やグループに委ねられており、それ以外の部署に顧客を重視する文化がない

マーケティング、顧客分析、顧客体験や接客などを担う「部署」のみに顧客を委ねていては、真の意味で顧客を中心に考える企業文化は育たない。そこで、顧客の持つアイデア、フィードバック、視点を自らのことのように理解し、顧客の代弁者たらんとするCCOを設置することが、その変革の糸口となる。そうすれば、CCOは「顧客の声」を自社のすべての部署、すべての職位階層へと拡散することができる。これは、どんな取り組みを行う場合でも、自社の一体感、協力体制、信頼関係の構築につながる。

兆候2. 四半期報告書が財務関連にしか触れておらず、顧客関連の言及がない

実際、大部分の企業は顧客の視点ではなく、会社の視点から報告書を作成している。CCOが存在すれば、数字の裏にある顧客の全体像を前提としてより進化した報告書の作成を推進し、社内を含むステークホルダーに理解させることができるのだ。「顧客は人間である」ということを忘れてはならない。CCOは、それを全社に広め、その重要性を説いていく上で最適な役職となる。

兆候3. 2016年米大統領選のごとく、密室政治、エゴ、競合する思惑が社内に満ちている

企業という迷宮の中で、妥協点や合意点を見出していくのは不可能に思えることもあるだろう。CCOはこうした企業の病理を和らげる存在となり得る。顧客のアイデアやリアルな視点を感情に訴える形で社内に伝達するCCOは、初心に返り顧客に奉仕するという目標のもと、社員を一致団結させることができるはずだ。顧客体験や顧客の不満への共感は、自社にとって究極の結束力となる。それは、大きな課題解決に向かい、社員が一丸となって真摯に努力するきっかけになる。そして、ビジネスの本質よりも短期的利益を追求しようとする勢力に対抗できる力も秘めている。

兆候4. 会社の内部改革の実績がお粗末である

自社における改革プロセスを考えてみよう。混乱に満ちている? いつも衝突が発生する? 失敗を恐れて優柔不断に陥ってしまう? 「イエス」がひとつでもあったのなら、CCOを検討すべきときだ。CCOは、顧客の力を借り、最善の方向性、つまり顧客が望む方向へと自社を導いていくことができる。協業と協力は、しばしば驚くべき結果を生み出す。もっとも素晴らしいインスピレーションは、顧客の持つ客観的な洞察力からやってくるものだ。

兆候5. 大量のデータに呆然となり、顧客が何を求めているかという統一見解がない

ビッグデータや顧客分析データの洪水に溺れ、何から着手すべきか全くわからないという状況は、よくある問題だ。CCOの仕事は、データの山から「自社にとって何を意味するのか」を導き出し、顧客ニーズを組織として理解できるように情報を活用することだ。顧客のリアルな生活を知ることができる店舗などの物理的な場所、動画や音声による生の声、写真などは、データの複製や模倣で伝えられるものではない。データの山ではなく、リアルな道具立てを使うことで、顧客の本能に訴える施策を導き出すことにより、顧客への共感力が高まり、変化の激しい市場で競争を続けていくための洞察力も培うことができる。

兆候6. 経営幹部の中に、顧客の総意を社内に伝えられる人間がいないので、目先の利益追求が止められない

これは明白な兆候だろう。顧客の声を代弁できる幹部がいないのであれば、そういう人材を設置するべき時なのだ。CCOは顧客に関わるすべての側面に携わり、顧客の視点や知識をエキスパートとして経営トップに伝えていく。文字通り、顧客の代弁者として最適な行動を取れる役職がCCOなのである。

兆候7. ライバル会社にまだCCOがいない

真の意味で顧客を理解している企業の施策が、あらゆる接点において業界標準となり、業界に対する顧客の期待値も上げていくことになる。今の時代、独自のやり方をごり押しして(あるいは金にあかせて)事業を推進することはできない。リサーチ会社C Spaceの調査では、ビジネスの持続的な経営を達成する上で一番手堅い道は「顧客」であると示している。

CCOへの投資は、顧客のニーズ、要望、生活に関する明確で深い理解につながり、顧客とともに将来的な方向性を形成していける企業が生まれる。それが究極的には競争力となる。特に、これまで顧客中心主義から目を背けてきた業界では、大きな力を発揮するだろう。

 


顧客第一主義を実践する経営とは? フィリップ・コトラーの思想を熟知する、早稲田大学教授 恩藏直人氏が解説。

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