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ヒースロー空港:オムニチャネルで最高の旅をもたらす英国流おもてなし術

2017年07月04日


 

【POINT】

  • ヒースロー空港は、webサイトやアプリをはじめ、あらゆる顧客体験最適化を進めている
  • ロイヤルティプログラムの利用者は200万人を突破し、小売店舗売上げは同規模の空港と比べて約3倍を達成している
  • 顧客の嗜好を知るために、webサイト「heathrow.com」を活用している

 


 

国際空港と聞くと、どのような情景を思い浮かべるだろうか。出発時は、チェックインして荷物を預け、旅客機に乗り長旅をはじめる前の、ひとときを過ごす場所。そこには免税店や書店、カフェ、レストラン、傷害保険のカウンター、両替、さらにはマッサージスペースなどがあり、旅行客はそうした店舗やサービスを楽しむことができる。また、到着時は、荷物を受け取り、そこから市内までの交通機関を利用する。

 

ロンドン ヒースロー空港は、そのひとときをより豊かなものにするために、さまざまな取り組みを進めている。ロンドン南西に位置するこの英国最大の空港は、1946年に開港した。その後、サッチャー政権時代の国営企業民営化政策の一環として、1987年に民営化。現在もターミナルを拡張し、世界のハブ空港として進化し続けている。

 

世界最高の空港サービスは、出発前から始まる

 

同空港の進化は、ハードウェア面だけではない。目指すのは、「空港を訪れる旅行客=顧客に世界最高の空港サービスを体験してもらうこと」だ。そのために、空港のwebサイト「heathrow.com」を刷新した。

旅行客は、PCやスマートフォンからこのサイトにログインし、搭乗予定の飛行機や目的地、同行者の人数や年齢などを登録する。旅行前には、旅先のおすすめスポットが案内されるほか、直前になると確認メールが届き、出発するターミナルの案内や、免税店のクーポンなども配布される。駐車場予約も簡単だ。ナンバープレートを登録しておけば、ゲートが自動で開き、ストレスなく駐車スペースまで運転できる。

そして、空港に入ればフリーWiFiが提供され、利用するターミナルへの行き方や、おすすめのショップやレストランの情報をプッシュ配信してもらえる。それらも割引クーポン付きだ。子連れの旅行であれば、ショッピングを楽しむ時間に子どもを預かってくれる場所が案内されるなど、至れり尽くせりのサポートがスマートフォンを通して受けることができる。

しかも、この仕組みには、ロイヤルティプログラムも組み込まれている。Heathrow Rewardと呼ばれるプログラムで、入会金や年会費は無料。空港施設を利用すればするほどポイントが貯まり、空港でのショッピングバウチャー(クーポン)やHeathrow Express(空港とロンドン市内を結ぶ列車)の割引券などに交換できる。2013年に始まったこのプログラムの利用者は200万人を突破し、ヒースロー空港の小売店舗売上げは、同規模の空港と比べて約3倍を達成している。

 

数多くのショップから、最も顧客の好みに合うものをおすすめするには

 

同空港のeビジネスとCRMを統括するサイモン チャットフィールド(Simon Chatfield)氏は、次のように話す。

「最大の課題は、データへの挑戦でした。顧客を深く知るためには、年齢や性別などの情報だけでは不足しています。私たちは、アドビのソリューションを活用するとともに、データパートナーの協力を受けて、顧客の興味や嗜好をつかもうとしています」

空港には数多くの小売店舗、レストラン、カフェなどがあり、すべてをおすすめすれば情報過多になってしまう。つまり、それらの中から最も顧客の好みに合うものをおすすめすることが不可欠で、そのためには顧客を知らなければならない。あるいは、市内と空港の移動においても、一人ひとり関心は異なる。ロンドン郊外の人なら自動車の駐車場、英国外からの訪問者なら公共機関の運行状況を知りたいだろう。そこで活用するのは、heathrow.comだ。

heathrow.comでは、コンテンツ表示エリアをタイルインデックスにしており、その部分を顧客とのコミュニケーション状況や、好みなどに合わせて変更する。そうして、顧客が興味を持ったコンテンツはどれか、ニュースレターや店舗キャンペーンなどの電子メールへの反応はどうだったのかなど、あらゆる角度から顧客のことを知っていくのだ。そして、旅行直前の対応、駐車場や列車の予約、買い物など、ニーズに合わせたきめ細かい対応を行うために、メールやwebやアプリなどを組み合わせている。空港に到着すれば、スパの割引、搭乗ターミナル番号など、その人のいる場所と時間に応じたプッシュ通知が届く。最適なメール配信やプッシュ通知はAdobe Campaign、サイトやアプリでのパーソナライズにはAdobe Targetが活用されている。セグメント単位ではなく、顧客一人ひとりが、旅のどの段階にいて、何を求めているか、どのような行動を取ったか、カスタマージャーニーに応じたきめ細かいおもてなしを行っているわけだ。

「webサイトのパーソナライズでは、顧客がどの部分をクリックしたかをヒートマップで分析しています。A/Bテストも積極的に行い、顧客に優れた体験を提供するために、heathrow.comを日々改善しています」(同氏)

さらに深い分析はAdobe Analyticsによって行い、その結果をコンテンツ配信に生かしているという。

 

ソーシャルメディアの活用など、顧客体験向上の取り組みは進化する

 

同空港が現在模索しているのは、ソーシャルメディアの活用だ。Heathrow Rewardに登録する顧客はもちろん、英国を初めて訪れた旅行客や、ヒースロー空港を訪れる機会が一生に一度しかない顧客に対しても優れた体験を提供するために、多くの人が使うソーシャルメディアに大きな期待を寄せている。同空港はAdobe Socialを導入し、顧客体験の向上にソーシャルをどう活用できるかを検討しているという。

また、顧客を知るトリガーを増やしていくことも検討している。駐車場でのナンバープレート読み取りは実現したが、さらにビーコンを活用し、空港に着けばスマートフォンに航空券を受け取り、自動チェックインできる仕組みを導入するなど、構想は広がる。ロンドンのパディントン駅でHeathrow Expressに乗車した顧客に対する社内サービスなども拡充したい考えだ。

 

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