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デジタルだけを考えず全体を見よ:日本マクドナルドのデジタル戦略

2017年10月24日


【POINT】

  • デジタル戦略を成功に導くポイントは「デジタルという言葉を使わない」「デジタルだけを考えない」「明確なKPIを設定する」の3点
  • キャンペーン実施の狙いは、消費者の“わくわく感”を演出すること
  • 初めから「デジタルマーケティング施策」について検討することは誤りだ

「マクドナルドが業績のV字回復を果たしたのは、消費者の“わくわく感”をかき立てるマーケティングの結果である」

そう語るのは、日本マクドナルドのマーケティング戦略をリードしている足立 光氏。同社が考えるデジタルの位置づけについて同氏は、2017年9月に行われたアドビ主催のイベント、Adobe Symposium 2017 初日基調講演において具体的に語った。

日本マクドナルドが考える、デジタル戦略を成功に導く3つのポイント

日本マクドナルド株式会社 上席執行役員 マーケティング本部長 足立 光氏

マクドナルドのコーポレートカラーは、赤と黄色だ。鮮やかな赤のスラックス姿で登壇した足立氏は、デジタル戦略を成功に導くポイントとして、次の3つを挙げた。

  1. デジタルという言葉を使わないこと
  2. デジタルだけを考えないこと
  3. 明確なKPIを設定すること

3つ目のKPI設定は、多くの組織が、たいていのプロジェクトで実行していることだろう。それがデジタル施策であれば、数字での評価も取得しやすく、KPI設定と測定は、他の施策分野よりも比較的容易であると想像できる。ただ、同社のKPI設定はもう少し練られている。そして、「デジタルという言葉を使わず、デジタルだけを考えない」という視点に、はっとさせられた聴衆も多かっただろう。同氏の言葉に耳を傾けてみよう。

デジタルを活用した消費者参加型キャンペーンで、“わくわく感”を創出

デジタルを活用した消費者参加型キャンペーンで、“わくわく感”を創出

マクドナルドの日本上陸は1971年。銀座三越の一階が国内創業地になった。2017年現在では、国内3000店舗に13万人のアルバイトスタッフが働き、1年にのべ13億人が来店する巨大チェーンへと成長した。しかし、足立氏の入社した2015年当時、同社は大きな逆風にさらされていた。売上げは減少し、連続赤字が続く見込みだった。必然的にマーケティング予算は限られてくる。そこで足立氏は知恵を絞った。

「当時からマス広告の影響力は低下していました。たとえば若い世代に対してテレビCMの効果はほとんどありません。大切なのはSNSで「バズる」こと。幸いなことにチャレンジが許される企業文化でしたから、遊び心とツッコミどころをふんだんに盛り込んだキャンペーンを実践することにしました」と足立氏は語る。

商品パッケージも「写真を撮ってSNSにアップしたくなる」ようなデザインへと変えた。同時にインターネット動画キャンペーンもスタートさせた。また、広報施策も工夫した。日々の広報発信で狙うのは、若い世代に直接ないしSNSを通じて間接的にリーチしやすいニュースメディア、Yahoo!ニュースやLINEニュースのトップに掲示されることだ。しかも、例えばYahoo!ニュースは記事のタイトルが13文字なので、その文字数以内に収まるよう、商品名をあえて省略することにも取り組んだ。

こうした積み重ねの集大成とも言えるのが、消費者参加型キャンペーンの「第1回マクドナルド総選挙」だ。マクドナルドの商品がそれぞれ公約を引っさげて選挙に挑み、最も投票数の多かった公約が実現されるというもの。優勝したダブルチーズバーガーは公約どおりトリプルチーズバーガー、2位のてりやきマックバーガーはダブルてりやきマックバーガーとして期間限定で発売された。

このキャンペーンで制作した動画は31本。過去の動画キャンペーンのノウハウを生かし、遊び心にあふれた動画を制作した。動画は消費者の心をとらえ、総投票ポイントは1億9385万383にも及んだ。また「食べて投票」(100ポイント)で店舗への来客を促進し、「ツイートで投票」(1ポイント)でバズらせるという仕掛けも成果を挙げた。

「このキャンペーンの広報活動は、FacebookとTwitterで告知したのみで、大規模なプロモーションを行っていません。広報活動でもプレスリリースを1本出しただけ。それでもメディアの皆さんも面白がってくれたのか報道数は多く、広い認知を得ることができました」。

デジタルだけを考えない価値

デジタルだけを考えない価値

同社はTwitterでは150万フォロワー、公式アプリは3,700万ダウンロードを記録している。どちらも国内企業としてトップ10にランクインする実績だ。

足立氏は、「これらはデジタルを有効に活用したマーケティング施策の成果ですが、私たちはデジタルマーケティングという言葉を使ったことがありません」と話す。「初めから“デジタルマーケティング施策”について検討することは誤りです。マーケティング目的がまずあるわけで、そこにデジタルを使うと効果的かどうかが自ずと決まってくるのです。私たちが成果を挙げたキャンペーンも、当初の目的にちょうどデジタルがはまっただけです」。

たとえば、同社では全体のマーケティング戦略の中に、SNSでバズらせるという戦術がある。それが枝分かれし、ニュースサイトのトップに掲載されることを狙う、という目的が生まれる。ここまではデジタルの領域だが、商品名を短縮するという戦術はデジタルの領域を離れる。デジタルだけを考えていれば、このような手法を採ることはできない

こうした広い視野でマーケティング戦略を組み立てるため、KPIはデジタルにも対応できるように見直した。メディアKPIには、「かけたコストに対する認知度の割合」を加えた。マーケティングスタッフに対して、低いコストでより多くの認知を取ることを重視せよ、というメッセージだ。売上げや来店客数、「プレバズ」などもKPIに加えている。プレバズとは、キャンペーン開始前のSNSでの盛り上がりのことだ。

「人は、“やりたいこと”か、“しなければならないこと”以外はしないものです。組織変革というほど大がかりではありませんが、明確なKPIを設定し、それらを周知することで、現場から優れたアイデアが出てくるようになります」。

足立氏の挙げた3つのポイントは、あらゆる企業にとって参考になるはずだ。

1.デジタルという言葉を使わない

言葉に縛られて思考が広がらないことを防ぐ。

 

2.デジタルだけを考えない

マーケティングの全体目的を第一に、デジタルがはまれば使うというスタンスで。

 

3.明確なKPIを設定する

旧来の施策評価ではデジタル施策が正当に評価されないため、目的から逆算した明確なKPIを生み出せる土壌を作る。

 

―――

上記の3点を自らの組織に当てはめ、デジタルを活かしたマーケティングに取り組むとよいだろう。

 

UNITE編集部


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