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モルガンスタンレー:アナリティクスとコンテンツでカスタマージャーニーの扉を開く

2017年12月19日



【POINT】

  • 金融機関幹部の34%が、顧客体験の最適化を「組織にとって唯一最大の刺激的な機会」であると考えている
  • 「だれが」「何を」読んでくれているのか。その情報を確実に把握することが重要
  • 読者についてのデータを常に信頼できるものに保つことができれば、適切なアルゴリズムを使うことで、本当に欲しい情報を自動的に得ることができる

顧客体験への取り組みは唯一にして最大の機会

顧客体験への取り組みは、金融業界にとって最優先課題になっている。Adobe / Econsultancy 2017 デジタルトレンド調査によれば、「組織を競合他社と差別化するための主要な方法」が顧客体験にあるとした金融機関幹部は32%、顧客体験の最適化が「組織にとって唯一最大の刺激的な機会」であるとの回答は34%に上った。

同調査では、金融業界の抱える課題も浮き彫りになった。

  • 「若い世代の消費者に対するアピール力不足」52%
  • 「他業界からの新規参入による市場シェアの減少」45%
  • 「自社製品およびサービスに対する需要の減少」36%

これらの課題を抜本的に解決する処方箋が、顧客体験の最適化であるというわけだ。

読者を中心に据えたコンテンツマーケティング

こうした顧客体験への認識は、決して世迷い言ではない。モルガンスタンレーは、コンテンツを柱とする顧客体験向上施策によって、大きな変革を果たした。

webサイトを二次的なコミュニケーションチャネルと位置づけるのをやめたのだ。同社は優秀なアナリストを多数抱えており、良質なコンテンツを制作する能力があった。かつてはwebサイトにコンテンツを並べていただけだったが、読者のプロフィールを考えながら、適切な人に、適切な情報を発信する仕組みに変えた。デザインも一新した。2016年には、“インターネット界のアカデミー賞”と呼ばれるウェビー賞(金融サービス部門)を受賞。現在、年間の訪問者は750~800万。ソーシャルメディアのフォロワーは150万人に及ぶ。

同社 マネージングディレクター デジタル戦略統括責任者 ブライアン ヴァンダイク氏は、「ソーシャルメディアで情報を配信して、私たちの語るストーリーへの関心を高めてもらいます」と語る。

「webで情報配信する出版社のような存在を目指しています。訪問者が欲しいのはコンテンツですし、優れたコンテンツの提供はモルガンスタンレーというブランドの価値をアピールすることにつながります」。

だれが、何を読んで、どこに価値を感じてくれるか

ヴァンダイク氏が2013年に入社した当時、マーケティング部門は“パンフレットを作る部門”という認識だったという。市場予測や経済トレンド分析など、人気のコンテンツは各部門が制作し、それぞれが独自にwebサイトにアップしていた。コンテンツの閲覧数はわかったが、読者の姿は見えなかった。

「すばらしいコンテンツと洗練されたデザインだけでは不十分です。だれが、何を、読んでくれているのか。その情報を確実に収集することが必要でした。コンテンツがフォーカスしているテーマやトピック、情報源、そしてコンテンツが提供している価値などのメタ情報と、それを読んでくれている顧客を結びつける“オントロジー(文脈)”を発見したかったのです」(ヴァンダイク氏)

同社のデータ アナリティクス チームが、その役割を担う。主に行っている業務は、次の5つだ:

(1) ビジネス インテリジェンス
ログ情報にもとづき、「だれが」「どのコンテンツ」を見て、「どんなインサイト」を得ているかをつかむ。

(2) キャンペーンの最適化
検索広告やバナー広告などキャンペーンの結果を分析し、よりトラフィックを稼ぐ戦略を立案する。

(3) プラットフォームの運用および管理
DMP(Data Management Platform)およびアナリティクスプラットフォームのブラッシュアップを行う。

(4) コンテンツ戦略の立案
掲載コンテンツの内容を把握した上で、そのパフォーマンスを分析し、コンテンツ制作者にフィードバックする。

(5) レポーティング
日々の成果をまとめ、報告する。

 

これらの活動を通して読者のセグメント化を行う。セグメントに対して何らかのアクションを行い、反応を見ることで、さらに精緻なセグメント化が可能になる。読者が興味を持つ対象は移り変わるため、これは永遠の繰り返しになる。そして、この作業によって、読者データは常に一定レベル以上の正確性を保つことができるのだ。正確で信頼性の高いデータがあれば、アルゴリズムを使った自動化プログラムを実行しやすくなる。

より洗練されたプログラマティック広告を

モルガンスタンレーでは、自社で保有する読者データが高い信頼性を保てるようになった現在、さまざまなことが可能になった。A/Bテストの実施やパーソナライズによるコンテンツの出し分けなどがその代表だが、サードパーティデータを活用したプログラマティック広告(複数のアドネットワークを総合的に管理し、自動でメディア買い付けを行い、広告を出稿する手法)への取り組みは興味深い。
 

「単なるバナー広告の出稿ではなく、もっと洗練された方法を採用したかったのです」と、ヴァンダイク氏は話す。

アナリティクスチームは、DMPに登録された情報からターゲットを抽出する。そして、広告内容を出し分ける。面白いのは、彼らの興味を持っているカテゴリに合わせて、最適な投資商品や資産運用サービスを紹介するバナーを表示させるのではなく、それらの商品やサービスにつながるコンテンツへと誘導。コンテンツの読者を増やし、顧客へと育成する。そして、カスタマージャーニーの扉が開かれる。

干し草の中の針は見つかる

モルガンスタンレーは今後、3つの分野に注力するという。まずは、アカウントベースマーケティングの強化だ。デジタルマーケティングで得た知識を、販売パイプラインでも活用する。次に、レコメンデーションエンジンのさらなる活用。読者の反応を見ながら、カスタマージャーニーの次の段階へと進んでもらいやすくなる仕組みを、より洗練されたものにする計画だ。最後に、コンプライアンスの強化。すでに社内のルールにもとづき、たとえば「住宅ローン商品をレコメンドするのは登録読者に限る」などのルールは徹底しているが、これをEUのGDPR(ジェネラル データ プロテクション レギュレーション:一般データ保護規則)に準拠する、より厳格なものにする。

「私たちの取り組みは、干し草の中から針を探すように、気の遠くなるような作業です。ただ、データを常に信頼できるものに保つことができれば、適切なアルゴリズムを使うことで、本当に欲しい情報を自動的に得ることができます。私たちは、そこを目指しているのです」(ヴァンダイク氏)

 

UNITE編集部


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