表示中
  • 1 AI、無人店舗、バーチャルコマース…小売業界のデジタル戦略を考える
次の記事

AI、無人店舗、バーチャルコマース…小売業界のデジタル戦略を考える

2018年04月12日



【POINT】

  • 多様な接点を統合的に管理し、一貫したメッセージを、「高頻度すぎて不快にならない程度」に発信しなければならない
  • 顧客の選択を先取りし、それにフィットする商品を位置づけ、顧客の心に刻み込む戦術が求められる
  • 顧客の期待を正確に知るためには、顧客の「人となり」まで踏み込んで理解しておくことが望ましい


【RESOURCE】

 


「デジタルディスラプション=デジタルによる破壊」がさまざまな業界で進んでいる。小売業界もその例外ではなく、変革の大波が打ち寄せてきている。ただ、「破壊」という言葉をネガティブにとらえる必要はない。ドラスティックな変化はすべて、既存の価値観を壊し、それを再構築することで生まれる。小売業界の変化は、どのように起きていて、今後どこへ向かうのだろう。本稿では、3つの代表的な変化とそれによって生まれる課題を取り上げ、解決の方針を探る。

■小売業界の変化と課題(1):顧客接点の多様化

■小売業界の変化と課題(1):顧客接点の多様化

かつての小売業界にとって、顧客に情報を届けるために最も有用な手段は、折り込みチラシとダイレクトメールだった。これらは、店舗を訪問してくれる可能性の高い顧客を絞り込み、彼らに直接アプローチできる手段として活用されてきた。しかし、デジタルの進化が顧客の姿を変えた。顧客の過半が、PCやスマートフォンを常時使うようになったのだ。そのため、既存のやり方だけでなく、webサイト、メール、SMS、SNSなど多様な手段で顧客とコンタクトを取れるようになった。

顧客との接点はますます多様化している。顧客との接点は、多ければ多いほど良さそうに思えるが、一概には言えない。個々の担当者がそれぞれのやり方で管理しているなど、実際には課題も多い。

例えばweb広告では「会員セール開催。全商品10%引き」と表示されているのに、別途届いたメールには「特別なお客様だけに10%引き」と書かれていた場合、顧客はどう感じるだろうか。少なくとも、自分が“特別なお客様”ではないと感じ、矛盾した表現で接してくる企業に良い印象を抱くことはないだろう。

とはいえ、せっかくの顧客接点を絞り込むことは得策でない。多様な接点を統合的に管理し、ぶれのない一貫したメッセージを、「高頻度すぎて不快にならない程度」に発信しなければならない。

■小売業界の変化と課題(2):モバイル、IoTの普及

■小売業界の変化と課題(2):モバイル、IoTの普及

デジタルの普及は、ショッピングの楽しみを変えた。たとえばアパレルなら、かつてファッション好きな人たちは、お気に入りの店舗や気になるショップで実際に商品を手に取り、購入を決めていた。しかしデジタルの時代の今では、空き時間にスマートフォンで好みの商品を検索し、あらかじめ候補を決めてから店舗を訪れるようになっている。そのままECサイトで購入することも増えた。ブランドの提案する選択肢は変わらなくても、顧客が選択肢を狭めてから購入するようになったのだ。

これは、一般消費財になるとより大きな課題になる。「1円でも安いものが欲しい」顧客と、「全く同じものを同じ場所で買う」顧客が一定数存在するものの、「必要最低限の機能が充たせれば、特にブランドにこだわらない」という顧客も多数を占める。この市場に、デジタルスピーカーが参入してきたらどうなるか。たとえば、「キャンペーン中ですので、いつものAでなくBを買ってみませんか?」と音声だけで商品をおすすめされ、「じゃあそれにしておいて」と答える顧客の姿は容易に想像がつくだろう。

このような時代になると、マーケティングの戦いは、顧客の購買プロセスへの上流へと推移する。顧客の選択を先取りして、それにフィットするように商品を位置づけ、顧客の心に刻み込む戦術が求められることになるだろう。

■小売業界の変化と課題(3):カスタマージャーニーの変化

■小売業界の変化と課題(3):カスタマージャーニーの変化

カスタマージャーニーの変化は、前述した顧客接点の多様化とデジタルの普及と関連して生まれた。顧客は、多様化した接点に慣れ、デジタルによって購買行動を変えたのだ。そうなると、企業側もカスタマージャーニーを見直さなければならない。

以下に、現在の顧客の6つの類型を示す。

購買行動 6つのタイプ

かつて、「カタログを取り寄せ」ていた顧客は、企業との距離が近くなったことから、「メーカー/販売店と直接コミュニケーションを取る」という手段を使うようになった。また、顧客の購買意思決定が購買プロセスの上流に移動していることもわかる。実際に、「店舗で販売員の意見を聞く」という行動はこの6つの類型にランクインしていない。販売員のおすすめは、web広告や企業の用意した顧客向けコンテンツに置き換わったと考えられる。

今後は、購買プロセスの上流に焦点を絞ってカスタマージャーニーを定義することが求められる。店舗の役割も変わってくるだろう。ブランディング拠点のような店舗を検討するのも1つのアイデアかもしれない。

■小売業界の課題解決に向けて

■小売業界の課題解決に向けて

これらの課題はすでに顕在化している。多様な顧客接点を使った顧客アプローチ=メディアミックスについて、自社がうまくやれていると考えている企業の割合が低下傾向にあるのだ。

カスタマージャーニーの多様化と複雑化は共通課題

では、どうすればいいのか。まずは目指す姿を考えて見よう。顧客は、多様な接点を通じて企業と接触するたびに、何らかの体験を得ている。その体験が心地よいものであれば、顧客は良い体験をしたことになる。「心地よさ」がぼんやりとした表現であるならば、「期待を上回る体験」と定義してみよう。そうすれば、答えは見えてくるはずだ。

期待を上回る体験を提供するためには、顧客の期待が何なのか知っておく必要がある。顧客の期待を正確に知るためには、顧客の「人となり」まで踏み込んで理解しておくことが望ましい。顧客がどんな人で、どんな期待を持って、自社に接してくれているのか。それを正確に把握することで、やるべきアクションが見えてくる。

購買において顧客が重要視する要素

顧客は価格の次に、体験を重視している。ブランドイメージの露出は一定の効果を挙げるが、それは信頼性の担保という意味で重要なのであり、意思決定にあたっては実際に得られる体験が重視される。

デジタルによる破壊は、既存のやり方の破壊だ。デジタル時代にふさわしい、新しい施策が次々と生み出されてくるだろう。そのときに本質論として理解しておくべきことは、顧客一人ひとりを深く知り、彼らの期待を上回る体験を提供し続けることなのだ。

 

UNITE編集部


この記事を共有する: 

 RSS配信中:

関連資料

いまや多くの小売事業者が、パーソナライゼーション、モバイル対応などを目的として、デジタルテクノロジーを実店舗に導入しています。マルチチャネル、オムニチャネルにわたるカスタマージャーニーのあらゆる段階で、デジタルと実店舗の両方で魅力的なエクスペリエンスを構築するには、何が求められるでしょうか? 百貨店、専門店、チェーンストア、小売スーパー、コンビニエンスストアなどの小売事業者のヒントとなる、6つの戦略をご紹介します。


おすすめ情報