最新マーケティングトレンドに見る近未来

2018年06月15日



【POINT】

  • マーケターを単純作業から解放するAIの活用が、2018年に成果を結び始める
  • 家庭用音声認識スマートスピーカーなど、スマート家電への注目が広がる
  • どの企業も他社のビジネスに関わるようになり、競合でありながらパートナーでもあるという状態が当たり前になる
 

10の注目トレンド

マーケティング業界では、ここ何年もディスラプション(破壊的な変化)を話題にしてきたが、いまや、これまでの議論を仕切り直す段階にある。ここ1年の間に、今後のマーケティングの方向性に影響すると見て間違いない、多くの進展があった。

まず人工知能。この技術はクリエイティブ革命の導火線として、既成概念を打ち破るマーケティングにつながっていくだろう。また、ほぼすべての消費者がスマートフォンを携帯するようになったという事実は、これからの戦略に影響してくる。消費者の新たな期待値や行動様式も今後を左右し、2018年はパーソナライゼーション戦略が必須となるだろう。

業界リーダーたちの談話から見えてきた10の注目トレンドを、以下にまとめる。

マーケティングトレンド(1): AI、ロボット、ボットなどのテクノロジーがもたらすクリエイティブ改革

AI、ロボット、ボットなどのテクノロジーがもたらすクリエイティブ改革

人工知能に関するさまざまな議論の中でも、マーケターを単純作業から解放するテクノロジーの活用は、2018年に成果を結び始めると期待されている。企業と代理店では、データ処理や反復作業においてマシンラーニング(機械学習)の試験的な導入を行っている。これによって、人間はインサイトの追求や創造的な作業に注力できると見込まれる。

「データ処理やキャンペーン展開に関わる作業の大部分をテクノロジーで自動化できるようになれば、マーケターは本来のクリエイティブな仕事に立ち戻ることができる。この動きは、データに裏打ちされた、かつてなく有意義なルネッサンスの訪れを促すだろう」と、デジタルエージェンシーAlbertのCMO、エイミー インロウ氏は述べている。

アドビのコーポレート戦略ディレクターであるマーク アッシャー氏も、この点に同意している。「AI、ロボット、ボットは、人間をつまらない仕事から解放してくれる。マーケターでもクリエイターでも、その他どんな仕事をする人間でも、それぞれの持ち場でよりクリエイティブな、知恵を使う部分に専念できるようになる」とアッシャー氏は語る。「知恵にもとづく判断は、人間が担当する仕事だ」

マーケティングトレンド(2): モバイル体験の未来予想

 モバイル体験の未来予想

モバイル端末の普及が飽和点に近づき、業界は次に何が来るかを考え始めている。UI(ユーザーインターフェイス)がまったくゼロになる時代が来るという予測も出ている。端末搭載の画面があまり使用されなくなり、現在のスマートフォンを構成する要素は、日常のあらゆるデバイスに埋め込まれ搭載されていくという見方だ。

「いつかは(モバイル)体験が変わると考えなければならない」と、コンサルティングPalmer Groupのシェリー パーマーCEOは述べる。

モバイルでのUIゼロ化が実現するシナリオの最有力候補は音声だ。当然ながら多くの消費者が、スマートスピーカーのような音声テクノロジーを受け入れるかどうかにかかってくる。UIがないデバイスでは、音声コマンドによる操作がメインになるからだ。

「スマートフォンといえば、今はポケットに入れて持ち歩くものだ」とアッシャー氏。「しかし、将来のスマートフォンは、今とはまったく姿を変えている可能性がある。それは、進化したスマート眼鏡のようなものになっているかもしれない。あるいは、現状のモバイルを構成する要素が分散し、体のあちこちに目立たないよう身につける形になるかもしれない」

マーケティングトレンド(3): プラットフォームによる市場独占

プラットフォームによる市場独占

2017年は、消費者の費やす時間が少数のプラットフォーム(つまりGoogle Facebook)に偏り、その傾向が加速していった。

「2018年、モバイルファーストな今どきの消費者とつながるには、まずはGoogleとFacebookという二大プラットフォームから始めるのが定石だ」と、モバイルエージェンシーFetchのCEO兼共同創設者であるジェイムズ コネリー氏は述べている。

しかし、業界ウォッチャーの間では、第三の勢力が揺さぶりをかけてくるという憶測が広がっている。広告ビジネスの売り上げが10億ドルに達したアマゾンだ。アマゾンは、GoogleとFacebookの二強による寡占状態を切り崩すことができるのか。業界は成り行きを見守っているが、少数のプラットフォームによる今の独占状態は、小規模のデジタルネットワークにとっては良くないニュースだ、とコネリー氏は述べる。

マーケティングトレンド(4): 小売業の激変

小売業の激変

テクノロジーが小売業のあり方を根本から変えつつあることは、疑いの余地がない。小売全体では、今でも実店舗からの売り上げが多いとはいえ、オンラインショッピングは爆発的な成長を続けている。

「eコマースはすっかり定着した。現在我々は、小売業の大変動を目の当たりにしている。業者が生き残っていくには、販売のプロセスを再考し、新しい価値提案を行っていかなければならない」と、アドビのアッシャー氏は述べている。

小売業のマーケティングは、新興のeコマース企業の特徴や施策にならう傾向にある。例えばウォルマートはJet.comを買収し、米国市場でアマゾンとの競争に乗り出した。デパート大手のメイシーズでは2017年初頭にデジタル事業で大規模な再編成を行っている。他のデパート各社もこれに続くと見込まれている。

ウォルマートeコマース部門VP、スメイヤ  ボルデール氏は、こう述べる。

「小売が感じている不安は現実のものだ。しかし、不安がっていても埒が明かないので、各社ともマーケットの変化に適応する方向に向かっている。未来型ショッピングに賭けてみるチャンスは誰にでもあるだろう」

マーケティングトレンド(5): 業界プレイヤーの多様化

業界プレイヤーの多様化

どの企業も他社のビジネスに関わるようになり、マーケティングの世界では、競合でありながらパートナーでもあるという状態が当たり前になるだろう。広告の製作展開よりもユーザー体験がマーケティングで重視されるようになった今、コンサルタント、クリエイティブエージェンシー、大手広告代理店グループ、デザイナー、それぞれの境目が曖昧になりつつある。

米業界誌Advertising Ageが毎年発表しているエージェンシーランキングの最新版では、コンサルティング数社がトップ10にランク入りした。アクセンチュア、デロイトなどのマーケティングユニットが、WPPグループやオムニコムなど大手広告代理店のすぐ後につけたのは初めてのことである。

「彼らは新しいタイプの業界プレイヤーを代表している」と、メディアコンサルティング企業MediaLinkのダナ アンダーソン氏は述べる。どの企業も独自の強みを持っており、マーケターは協業するパートナーの数を減らしたがってはいるが、すべてのニーズに応えられるタイプは存在していない。

「実際、あらゆるパートナーとうまくやっていく術を身につけなければならない。いまどきのマーケターは、パートナー各社がどの部分で力を発揮できるか理解する必要がある」とアンダーソン氏は語る。

マーケティングトレンド(6): リビングルームの覇権争い

リビングルームの覇権争い

全世界のデジタル広告収益は、2018年にテレビを抜くというニュースがあるが、旧来型のメディアもアメリカの家庭における地位を諦めたわけではない。しかし、消費者のネット動画への移行が進み、ネット動画しか知らない層も増えるなか、従来のテレビは苦戦を強いられるだろう。

「過去3年の間に、その前の60年間よりも大きな変化があった」と、米テレビ局CBSで広告とクライアント関連を担当するデーブ モリス氏は述べている。

テレビは、市場シェアを拡大する上でデータとテクノロジーを頼みにしている。「スマート広告は始まったばかりだ」と、Turner Ad Salesのドナ スペシアル社長。「プログラマティックTV広告は、世帯ではなく視聴者の数をカウントし、視聴者の行動と広告枠の購入を連動させるものだが、これは単に可能性の話ではなく、すでに始まっている」と同氏は語る。

さらに、パーソナライゼーションの進化も始まっている。「世帯という捉え方があるが、世帯の中の誰が視聴しているのか? 13歳の子どもなのか、それとも他の誰かなのか? この点が、メディアにおける個人化の次なる大きな波となるだろう」(アドビ アッシャー氏)。

また、テレビデータを専門とするiQ Mediaのケビン コーンCEOは、テレビ視聴と特定のオフライン行動の相関を計測する技術も登場すると考えている。

「20年前にデジタルが登場したころ、テレビはいつか絶滅するものとして見放されていた。ところが2018年、テレビはデジタル施策を担う重要なチャネルになるだろう。結果としてマーケターはテレビでの戦略を軽視できなくなるのだ」とコーン氏。

マーケティングトレンド(7): ミニ広告 

ミニ広告 

何年も前の話になるが、スーパーボウル開催中にマスターロックが出した「1秒コマーシャル」が話題になった。スーパーボウルのコマーシャル枠が驚異的に高額な故に取られたそんな変則技が、スタンダードとして定着する可能性がある。メディアの断片化が進み、消費者に注目してもらえる時間が極めて短くなっているせいだ。

南京錠などのセキュリティツールのメーカー、Master Lockが、米スーパーボウルで放送し話題を読んだ1秒の動画コマーシャル。

YouTubeでは2017年、6秒広告枠を作ったが、大方に疑問視されていた。しかし、6秒では何も伝えることができないのでは?という広告主の疑問にもかかわらず、6秒広告はヒットした。テレビ局Foxは、2017年夏、受賞イベントなどのライブ番組で同じフォーマットを導入した。

「6秒広告は我々の大好物だ。ブランドにとっては難しいチャレンジだが、やり甲斐のあるチャレンジだ」と、アルコールメーカー Anheuser-Busch InBevの、ビクトリア ベンベルグ氏は述べる。「6秒という小さな枠でも、驚くほどクリエイティブな仕事ができる」

Googleの製品マネジメントを統括するスコット スペンサー氏も、6秒でのストーリーテリングは可能だと同意する。6秒広告は非常にコスト効率が高いと同氏は述べているが、これは2018年を通じて議論の対象となるだろう。

マーケティングトレンド(8): ミレニアム世代、ゼニアル世代 成人の多層化

ミレニアム世代、ゼニアル世代 ― 成人の多層化

過去5年ほど、マーケティング議論とメディアプランは、偏執的なまでにミレニアル世代に集中していた。2017年、はじめて「ミレニアル疲れ」の兆候が見え始め、業界は、大学に入ったばかりの層と30代を一緒に考えることはできないと気づくに至った。その結果、ミレニアル世代の一番若い層と年上の層を切り離す見方が進んでいる。この世代が成人としての節目を迎えるにつれ、さらにセグメンテーションの見直しが進んで行くだろう。

世代間の区別もまた、微妙になってきている。2017年の終わりにJWT Intelligenceが発表したレポートでは、「ゼニアル世代」という新しい区別を打ち出した。ゼニアル世代は、「ジェネレーションX」世代のなかでも30 ~ 40代の若い層と、ミレニアル世代のなかでもすでに成人した20~30代といった年上の層を合わせた世代を指す。

また、データ分析等を行うJWT Intelligenceのルーシー グリーン氏によると、こうした新しい区別によって、ベビーブーマーとミレニアルの間にいる「ジェネレーションX」は、「失われた世代(ロストジェネレーション)」以上の価値があるとして、市場でのその存在を再考されているという。全人口の25%を占めるジェネレーションXは、全米の収入の31%を得ており、人口に占める割合とは一致しない稼ぎと購買力を有している。

グリーン氏によると、より年上のミレニアルとジェネレーションXには、共通点が多く見られるという。どちらの層も2008年の不況で不安を経験した結果、今は安定を欲している。ミレニアル世代のステレオタイプとは裏腹に、ゼニアル世代は堅実な金銭感覚を持ち、財を成そうとする意志があるという。その結果、成人としてのあり方により微妙なアプローチが見られる、とJWTの調査は記している。

マーケティングトレンド(9): 「ミッションを持つ企業であること」を重視

「ミッションを持つ企業であること」を重視

企業の多くが、社会的な課題に対する立場を明らかにするようになっている。このトレンドは、2018年も続くと予想される。McCann Truth Centralのブランドジャーナリストであるアーヴィン ラマン氏は、「84%の消費者は、企業はよりよい世界の実現にむけての責務があると感じている」と述べている。

この数字はさらに増えるだろう、と同氏。同エージェンシーによる調査「Truth About America(アメリカの真実)」によると、マーケティングにおいてブランドが社会的な立場を明らかにすべき、と答えた消費者は19%にすぎないが、ミレニアル世代ではこの数字が30%となっている。

企業は社会における目的意識を持つべきであり、マーケティングの「M」は、”Making a difference” (世直しに一石を投じる)のMであるべき、と広告代理店GSD&M創立者のロイ スペンス氏は述べている。

「我々はデータや分析のみによって動くべきではない。究極の目標として、強い目的意識、高邁な理想、インスピレーションがなければ、データと分析に没頭しているうちに世間に忘れられてしまうだろう」

マーケティングトレンド(10): 意外性と面白みのある広告

意外性と面白みのある広告

業界がより顧客中心なビジネスアプローチに向かう中、広告もまた同様の進化を続けると見込まれる。消費者を喜ばせ、感情に訴えるキャンペーンが増えて行くだろう。

テレビ局Comedy CentralのマーケティングEVPであるジョッシュ ライン氏は、以下のように述べている。「消費者は我々が言いたいことを聞きたがっているはずだ、と勘違いするマーケターは多い。それなりのことをしなければ、消費者が時間を割いて見てくれるはずもない。面白い広告(コンテンツ)を作り、コンテクストに即した対象にリーチできるようにすることが肝要だ。これは非常に基本的なことに思えるかもしれないが、プラットフォームの増加に伴い、今や実に難しい仕事になった」

多くの企業が、消費者の心を掴むための戦略として、娯楽要素の強い広告体験を打ち出している。アウトドアブランドのL.L. Beanでは、ニューヨークタイムズに「太陽光の下でしか見えない広告」を掲載した。人々を「アウトドアに連れ出す」のが目的だ。またディスカウント小売のTargetは、第59回グラミー賞でのコマーシャルとして、カーリー レイ ジェプセンとリル ヨッティーのミュージックビデオを放映している。英ファッションブランドのTOPSHOPは、ロンドンの旗艦店で「夏の訪れ」をテーマにVRを用いた広告を展開した。

2018年は、ほかのブランドもこれらに続き、さらにイマーシブな体験を打ち出していくだろう。「より優れた、価値ある広告が増え、消費者の心を掴んでいくと考えている。その結果として、広告の効果は上がっていくだろう」とライン氏は述べる。

近未来を見据えるこれら10のマーケティングトレンドを、いま自社がとるべき打ち手の参考として欲しい。

 

UNITE編集部


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