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基礎から押さえる「CDP」: 包括的に顧客を理解する最適解なのか

2018年10月19日



【POINT】

  • CDPの定義は明確に定まっておらず、推進を促す各ITベンチャーなどが、各社バラバラの見解を出しているのが現状
  • CDPは主に「ファーストパーティデータ活用」の文脈で語られている
  • CDPという分野は、パーソナライズの重要性、データ活用の重要性という意味では、DMPと同じ命題をもっている

マーケティングや広告に携わる人たちの間で、「CDP(Customer Data Platform/カスタマーデータ プラットフォーム)」というキーワードが注目を集めている。

「また英語3文字のマーケ用語が現れた…」
「顧客データ(Customer Data)というなら、CRMのようなものなのでは?」
「DMPの進化系?」

など反応はさまざまだ。「2018年の業界流行語になる」という声も聞こえるが、CDPとは何を指し、何を可能にするものなのか。その真相について紐解きたい。

CDPの定義とは?

CDPの定義とは?

冒頭から提題を覆すようだが、結論から述べるとCDPの定義は明確に定まっていない。CDPの推進を促す各ITベンチャーなどが、各社バラバラの見解を出しているのが現状だ。そのような状況で、ある程度中立性を保った業界の共通解は、Customer Data Platform Institute(CDP Institute/CDP協会)の、以下の定義だろう。


 

"A Customer Data Platform is packaged software that creates a persistent,

 unified customer database that is accessible to other systems"

  • マーケティング担当者など、誰でも管理できるシステム(パッケージソフトウェア)であり、
  • 顧客データを永続的かつ包括的に管理できるデータベースであり、
  • 他のシステムからも簡易にアクセスでき、連携できるもの

 


「顧客に関するあらゆるデータを統合/連携でき、かつ、フレキシブルに活用できるもの」と捉えられている。

もう少し詳細に踏み込んでみよう。CDPは主に「ファーストパーティデータ活用」の文脈で語られている。ファーストパーティデータとは、自社の持つ顧客の氏名、メールアドレス、購買履歴、コールセンターなどへの問い合わせ履歴など、顧客を特定できる「実名データ(PII=Personally Identifiable Information)」を指す。これをIDとして、セカンドパーティデータ、サードパーティデータと連携し、顧客をセグメントではなく、一人ひとり、すなわち“個客”として分析、明確化することができるという。CDPベンダーの多くは、「CDPは実名データ管理に最適であり、ダイレクトマーケティングなどに活用できる」と主張している。

顧客と直接接触する企業にとって、最適な顧客体験を提供するために「一人ひとりの顧客像を理解する」ことは極めて重要だ。しかしファーストパーティデータは、主にIT部門の管轄するCRMなどで“固く”管理されていることが多く、マーケターにとっては「必要なデータを柔軟かつスピーディーに活用できない」という“ストレスの歴史”が長かった。

この状況が、「誰もがフレキシブルに活用できる」ことをうたうCDPの登場背景だろう。CRMとは異なりCDPであれば、マーケター自身が実名ベースのデータを扱い、POSデータ、サイトアクセス、広告クリック、問い合わせ等、さまざまな行動を顧客IDに紐づけて把握/分析し、フレキシブルに活用できる、という絵を描く。マーケターには待ちに待った朗報と映るだろう。

CDPは顧客理解の最適解か?

CDPは顧客理解の最適解か?

しかし、「顧客一人ひとりを知り、その顧客に最適な顧客体験を提供する」という本来の目的において、CDPが最適解なのかどうかは検討が必要だ。

その理由の1つは、すでに啓発期から普及期へと移りつつあるDMP(Data Management Platform/データ管理プラットフォーム)の存在だ。

DMPも語義によって理解のブレを起こしやすい用語だが、ここでは事業会社が自社のために構築する「プライベートDMP」を指す。この場合のDMPとは、オンライン/オフラインを問わず様々な顧客データを取り込み、整理し、活用できるようにするための仕組みだ。DMPはPIIを直接保管しない替わりに、「匿名の潜在顧客」から「既存顧客」までを扱う。PIIの保管と管理はCRMにまかせ、DMPは個人を特定しないIDを扱う。「匿名」と「実名」ではデータの深さが当然異なるものの、DMPは両者を集約し、セグメント化やターゲティングなどに活用する。
またDMPの特長として、ファーストパーティデータだけでなく、セカンドパーティ、サードパーティデータも扱う。そのため、より顧客理解の深度を進めることができる。

つまり、CDPが謳うことの多くは、既にDMPが実現している内容と重複しているのだ。

CDPとDMPにおける「データの考え方」の違い

CDPとDMPにおける「データの考え方」の違い

CDPとDMPで大きく異なるのは「実名データ」「匿名データ」に対する考え方だ。

CDPは「実名データ」活用に重きをおいた仕組みとして語られている。これまでCRMや顧客サポートセンター等で“厳重に保管”されていた「実名データ」を扱いやすくし、他のデータとも結びつけ、マーケティングに活用するという考え方だ。

一方のDMPは、オンラインデータ、セカンドパーティやサードパーティデータを含む、「匿名データ」を軸として進化してきた技術だ。Cookieデータや広告識別子といった個人を特定しない情報をもとにIDを統合し、あらゆるデータを結びつけて分析することで、顧客一人ひとりの理解を深める。年代や購買頻度のような「実名の既存顧客」だからこそ存在するデータを、「匿名データ」とともに一元化し、施策に活用できるように進化を遂げてきた背景がある。

「企業にとってファーストパーティデータを活用する価値は大きく、私はそれを強く支持している。しかし、業界はときどき、同じものに違う名前をつけようとする」とは、チューズル(Choozle)の共同創設者兼最高製品責任者、ジェフリー フィンチ氏のCDPに対する弁だ。

「永続的かつ包括的に顧客を知る」ためには、「データを分断させず、ひとつにまとめる」ことが重要だ。仕様の見極めをせず、課題を避けるため場当たり的に導入するのは、再びデータのサイロ化を引き起こすことにつながりかねないだろう。

適切な顧客理解と体験の提供において、大切なことは何か

そもそも、一人ひとりの顧客に適切な体験を届けるためには、それぞれのカスタマージャーニーに沿って「その人を知り」「適切なタイミングで」「適切な施策を打つ」ことが必要だ。

顧客がアクセスするデバイス、チャネル(SNS、web、モバイルアプリ、コールセンター、実店舗など)は急速に多様化した。しかし、これまでのテクノロジーでは、デバイス単位、チャネル単位で捉えるしかなく、企業側からは、デバイス、チャネルの向こう側にいる顧客像を捉えることが難しかった。

適切な顧客理解と体験の提供において、大切なことは何か

それが今はテクノロジーの進歩によって、さまざまなデータを連係させ、一人ひとりの顧客像を明確にしていくことが可能になった。CDPもこの文脈において、企業の”悲願”を叶える存在と認識され、注目されているのだろう。

「実名顧客」は深いデータを持てることから、重要であると認識されやすい。重要であることに間違いはないが、「匿名顧客」も当然重要であり、カスタマージャーニー全体にわたる顧客体験を相手にするならば、両者は同じデータベース上で扱う必要がある。

たとえばAさんが何らかのきっかけではじめて自社サイトを訪問したとする。
Aさんは企業がまだリーチできていなかった潜在顧客だと判定したら、新規訪問者としてIDを発番し、「匿名訪問者」としてデータベースに記録するとともに、再訪問時に判別できるよう、AさんにはCookieを渡す。今後Aさんと適切にエンゲージメントし関係性を深めていけば、優良顧客となってくれるかもしれない。しかし、データベースにAさんのIDが記録されていなければ、Aさんがカスタマージャーニーに沿って再訪問したことを判別できず、適切な施策を打っていくことができない。

適切な機能を備えたDMPであれば、たとえば、Aさんがとあるメディアに掲載されたバナー広告を見て自社サイトを訪れてくれたのだとしたら、オープンDMPを活用しメディアの持つ読者属性を活用してセグメントを行い、プライベートDMPで既存顧客の似たセグメントの人たちのデータと付け合わせ、効果的な結果が出ている施策を導き出すことができる。そして、アクティベーションツールと連携し、最適なタイミングで施策を打っていくことができるだろう。

施策という点から見ても、多くのCDPはそれ単体では施策が打てないことが多い。CDPベンダーはデータの連携が可能と謳っているが、様々なデータをつなぎこむ際にはデータのフォーマット問題などが都度生じることになると見込まれる。

理想的なツールとは

理想的なツールとは

調査会社フォレスターは、マーケティング、それに製品担当、顧客サポートなどのあらゆるチームが様々な顧客のタッチポイントで顧客を追跡し、エンゲージするプラットフォームを「デジタルインテリジェンス」と称している。

そして、デジタルインテリジェンスは大きく、管理/分析/施策の3つの技術分野で構成されるとしている。


1)デジタルデータ管理(データウェアハウス、タグ管理)

2)デジタル分析(アプリケーション分析、デジタルパフォーマンス管理、インタラクション分析など)

3)デジタルエンゲージメント最適化(行動ターゲティング、レコメンデーション、オンラインテスト)


大切なのは3つの技術分野全てを備えることであり、CDPが担う範囲はそのなかの一部に過ぎない。

CDPという分野は、パーソナライズの重要性、データ活用の重要性という意味で、DMPと同じ命題をもっており、補完関係にあると言える。ただ、まだまだ未確立の分野であり、現状、単独では使い道が限定されてしまうだろう。

新しいトレンドに踊らされず、自社に本当に必要なツールは何か、そのツールはデータを一括して適切に活用できるものなのか、冷静に判断する視座が必要と言えるだろう。

 

UNITE編集部


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