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三越伊勢丹:創業350年の老舗小売企業は、EC改善サイクルをいかに強化したか

2019年9月17日



【POINT】

  • 課題解決のためにプロジェクトを立ち上げ、優先事項に適したメンバー(部門横断且つ少人数)、ツール、協力会社を選定し、ぶれずに実行する
  • スピード、再現性、継続性、確実性、拡張性を重視し、選択、判断を行う
  • 社内全体には時間をかけて丁寧に共有し、ゴールイメージを持ったデータに基づいた仮説検証型のPDCAを行う風土を作る
 

これまで日本の大企業の多くは、新卒採用が中心であり、外部から中途入社で人材を迎え入れることが少ない傾向にあった。株式会社三越伊勢丹(以下、三越伊勢丹)も同様で、ECビジネスの領域でも、デジタル領域の専門職人材ではなく、総合職の人材が担う。とはいえ専門性を要する領域のため、即戦力としての対応が求められる。Adobe Symposium 2019に登壇した同社 デジタル事業部 プランニングリーダー 和田 真由美氏の講演には、総合職人材の力を活かし、うまく新しいビジネスを運用するヒントがあった。

ECの特性である部門を横断した顧客体験設計や機動性の高さを生み出せていなかった

ECの特性である部門を横断した顧客体験設計や機動性の高さを生み出せていなかった

講演の冒頭で和田氏は、「私たちの事例は決して先進的なものではありません」と前置きした。同社は「三越伊勢丹オンラインストア」をはじめ、ラグジュアリー専門のストアなどを運営している。中途採用の同氏は、大きな課題に直面することになる。

「ジョブローテーションがあるため、リアル店舗の経験者が、デジタル事業部に配属されてきます。“良い商品をできるだけ実店舗と近い形で見せれば、売れる”というスタンスになりがちで、静的ページをどんどん増やす方向へ進んでしまいます。メンテナンスの負担も高まり、デジタルにおける最適化には逆行してしまいます。配信していたAdobe Analyticsのアクセス解析レポートもほとんど見られていない状況でした。」(同氏)

商品カテゴリーごとにサイト運営が行われており、横の連携が希薄なことや、承認プロセスが複雑なことなども、ECの特性である部門を横断した顧客体験設計や機動性の高さを生み出せない要因になっていた。

一方、明らかな長所も見られた。小売業界のECで課題となりがちなリアル店舗とのカニバリゼーション問題はすでに解決されていたのだ。また、「三越伊勢丹」という強力なブランド力によって、ページビューとユニークユーザー数はボリュームある数字が得られていた。

データドリブンにPDCAを回す

データドリブンにPDCAを回す

そこで三越伊勢丹のEC運営部門は、強みを生かし、課題を解決するという方向性を打ち出し、複数のプロジェクトを立ち上げた。その中でも重要な位置を占めたのがサイト分析だ。データドリブン型でPDCAサイクルを回し、LTV、ROI、CVRをいずれも向上して、より良いサイトを目指そうとした。

興味深いのは、「良い商品があれば、売れる」というリアル店舗の考え方が、目的買い顧客の期待にもマッチしていたことだ。積極的に打っていた広告も、ページビューおよびユニークユーザー数という目に見える効果を生み出していた。一方で問題は、各担当者が実施するさまざまな施策が連動しておらず、横の連携が希薄なために、せっかく得られた顧客を広い視野でつかみ、より良い関係を築くという視点が備わっていないことにあった。

とはいえ、何かツールを導入すればすぐ解決できるものでもない。現場で運用する担当者は、商品知識は豊富で売れ筋への嗅覚も備わっているが、デジタルマーケティングの専門家ではない未経験者が多い。

彼らに早く業務理解をしてもらい、デジタルの戦力としても活躍できるようにしなければならない。
まずは外部の協力会社を選定し、アクセス解析チームを構築した。

1.サイト分析のチーム立ち上げ
完全な外部への業務委託はせず、スキルある協力会社に「スキルの高いチームメンバー」としてプロジェクトに加わってもらうイメージでチーム化する。

2.チームコンセプトの徹底
データを出すだけではなく、アクションするためのサポートを行い、現場と並走して課題解決するというコンセプトを浸透させる。

3.定型業務の棚卸
業務のマニュアル化の実施やタスク管理など、業務の定型化を進め、リソースを確保する。

4.KPIの再定義
改めてビジネスについて考え直し、デジタルに知見のない人にもわかりやすいレポートを作成する。

その上で、チームが主導してECサイトを分析し、改修案を作成し、検証。アクションを可視化するところまで行った。これは、初期に「成果を見せ、感覚をつかんでもらう」ためだ。

徹底した現場との並走で現場レベルを底上げ

徹底した現場との並走で現場レベルを底上げ

その後、運営現場担当者の教育、分析、アクションのサポートを行うフェーズに進んだ。

ツールの使い方をレクチャーし、データ抽出のリクエストを単純に打ち返すといったアクセス解析チームとしてよくあるプル型のやり方ではなく、担当者と同じ目線で目的、課題をくみ取り、見るべきデータを見極め、アクションから効果検証に至るまでの一連のプロセスに丁寧に並走するやり方を取り、それを徹底して行った。

仮説検証型でPDCAサイクルを回すという理念を体感してもらう。定型以外のレポートが欲しいというニーズが発生すれば、チームと議論する。課題の詳細や仮説、レポートの目的、そして想定するアクションなどについて深く話し合うのだ。初回の分析はチームと共に行い、施策の実行と結果レビューまで伴走する。

「時間はかかりますが、この部分をきちんとやることで、確実に身につきます。また、それらのやりとりを可視化し、月に1度の全体ミーティングと半期の個別ミーティングで、あまり活用ができていない他のカテゴリー担当者への共有も行い、担当ごとの状況を確認し、解析チームとしてやるべきことの見直しも行います。」(同氏)

現場のレベルや課題を吸い上げた上で、分析のためのワークスペースやテンプレートを作成し、いまでは現場の担当者たちが、自らPDCAサイクルを回し始めている。

LTV、ROI、CVRを上げるためのアクションとして、他にもプロジェクトを遂行していたが、その中で、MAメールやフロントのパーソナライズなども実行することとなった。

そこで同社はアドビをパートナーに選んだ。採用したのは、Adobe AnalyticsAdobe CampaignAdobe TargetAdobe Audience Managerだ。

「時間を買う」ことを重視したソリューション導入

「時間を買う」ことを重視したソリューション導入

和田氏は、「既存のAdobe Analyticsで分析を行っているので、EC事業部としては精度高く早く連携した導入ができ、一気通貫の分析もしやすいAdobe製品が選択されました。費用は高いですが、プロジェクトメンバーに他社経験がある中途のシステム担当もいて、アドビ様チームとの協業で早く実現できると判断されました。」と明かす。豊富な実績と再現性、継続性、確実性、そして拡張性を評価した上で、最も短期間に導入でき、活用できるソリューションを採用したという。

目に見える成果も出てきた。マーケティングオートメーション分野で、カート落ちおよび2回目購入促進のメールは、開封率が50%を超える。Adobe Targetによるパーソナライズも、小さなプロジェクトを作り、PDCAを高速に回すアプローチで取り組んでいる。顧客の閲覧状況に応じてブランドを出し分ける施策では、対象エリアクリック率が16.8%アップした。これらの成果により担当者もデジタルの効果について実感したことで、現場が活気づいてきた。

和田氏は、「優先事項を決めること、ぶれないこと、事例共有とサポートを丁寧にやること、そして、ゴールイメージを持ちデータに基づいた仮説検証型のPDCAサイクルを時間をかけても浸透させていくことが大切だと実感しています」と現時点のプロジェクトを総括してくれた。

とかく「専門人材が不足している」と言われがちだが、質の高い総合職人材と、プロセスや業務フローの標準化の組み合わせは、不足を補って余りある。となれば、デジタル変革において人材不足は、日本企業の課題ではない。目線を高く持ち、戦略を組織に行き渡らせるリーダーシップとスピード感こそが、デジタル変革への近道ではないだろうか。

 

UNITE編集部


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