モダンなCMS活用の秘訣:ユーザー同士の相互学習が顧客体験を磨く

2019年12月17日



【POINT】

  • 優れた顧客体験の提供を目的としたモダンなCMSは、格段に広い役割を持ち、それを活用する企業の各担当者には幅広いテーマへの対応が問われる
  • 非機能要件を含めた各担当者のチャレンジを支援するため、アドビはユーザーコミュニティを設け、知見やノウハウを共有している
  • モダンなCMSの提供する機能要件と、実務の中で見られる業務プロセスの課題や関係者間の衝突などの非機能要件を、相互学習によって組み合わせを見つけ、解決策に導くことができる
 

CMS(コンテンツ管理システム)は古くて新しいデジタル基盤だ。かつてCMSは、webサイトを構成するページや画像などを組み立て、公開するための仕組みだった。今ではデジタル顧客接点の多様化、顧客ニーズの多様化、求められるスピード感、それに関わるワークフローの複雑化などにより、CMSの果たすべき役割も格段に広がっている。このトレンドにより、モダンなCMSが、従来のweb CMSに替わり注目されている。

一方、コンテンツを中心とした優れた顧客体験の提供という目的を持つ、高度でモダンなCMSを企業が活用するうえでは、極めて広いテーマへの取り組みが求められる。クラウド基盤やアプリケーション開発とプロビジョニングから、大量コンテンツの制作ワークフロー、多言語対応、UXデザイン、効果測定とコンテンツの最適化、新興チャネルへの対応まで、幅広いレイヤー構造が内包されているのだ。

それに対し、企業の中でそれぞれのレイヤーを担う各部門の担当者やパートナー企業は、業容拡大、次世代製品のグローバル同時ローンチ、季節毎に繰り出すキャンペーンへの対応といったビジネスゴールに向け、一丸となってより良いものへと顧客体験を磨くことになる。その取り組みを推進するには、業務設計のあり方や部門間で合意したほうがよいことなど、非機能要件の整理が欠かせない。

こうしたチャレンジに立ち向かう人々を支援するために、アドビは「Experience League」という、製品毎の知見やノウハウを相互学習するコミュニティを設けている。モダンなCMS市場の中でも突き抜けた存在となっているAdobe Experience Managerについても、ユーザー間で情報共有するユーザーコミュニティをアドビは立ち上げた。そこで、2019年11月に開催されたAdobe Experience Managerコミュニティイベントの模様から、ユーザー同士の学び合いの様子を探る。

運用度の自由度と、コストのバランスをどうとるか

運用度の自由度と、コストのバランスをどうとるか

アドビはクラウド製品ベンダーであるだけでなく、当然ながら事業会社のひとつでもある。そこでコミュニティイベント第二回では、ユーザーからの要望が多かったトピックとして、事業会社としてのアドビが、自社サイト「adobe.com」の顧客体験をどのように最適化しているかを披露した。

アドビは2012年、自社のビジネスモデルをサブスクリプションにシフトした。これにより、「購入してもらうこと」のみを目的としていたadobe.comは、集客から販売までを担う存在へと、役割が多様化。制作体制もそれに対応することが必要となったのだ。

この急激なビジネス変革を支えたのがAdobe Experience ManagerとAdobe Targetだった。アドビでは『カスタマーゼロ』という考え方が根付き、自らが自社製品の最初のカスタマーとして実践していくことを大切にしている。

特に参加者の興味を引いたのは、Adobe Experience Manager運用の「自由度」の定義についてだ。どんな企業にも起きやすい“社内の衝突”と、その解決方法の事例が赤裸々に語られた。

Adobe Experience Managerでは、テンプレートとコンポーネントと呼ばれる「部品」を組み合わせてサイトコンテンツを作る仕組みになっている。コンポーネントを多く用意し、運用の自由度を高く定義すれば、マーケターは自由な発想にもとづいて柔軟にサイトをデザインできる。

一般的には、設計工程では一定範囲のデザインを想定した一連のコンポーネントを揃え、コンテンツ制作工程ではなるべくその範囲でデザインする。ただ、発生しうるすべてのニーズをあらかじめ想定するのは難しい。制作工程で「どうしてもこのようなデザインをしたい」というケースが発生してしまう。しかしデザインの自由度だけを追求すると、コンポーネント開発コストが積み上がる、時間を要する、全体の統一感が失われる、といった難点がある。

当時、この衝突が特に起きがちだったのが、Adobe Targetを使ったA/Bテストだった。現場ではより良い体験を求めて自由にデザインし、テストする。訪問者の反応が良ければ当然、勝者となったデザインを定常化したい。しかし、規定と異なるデザインを定常化するには、新しいコンポーネントを開発しなければならない。

アドビの日本法人でも同様のことがあった。A/Bテストの結果、売上が20%アップしたデザインがあるにもかかわらず、そのデザインを許容できるコンポーネントがなかったのだ。「adobe.com」の場合、開発と運用を担う規定者は米国本社であり、日本国内のA/Bテストの結果を見せて理解してもらっても、なかなか開発に着手してもらえないという課題を抱えていた。

プロセスを変え、A/Bテストの設計段階から意識合わせを

運用度の自由度と、コストのバランスをどうとるか

そこで、アドビはプロセスそのものを変えることにした。A/Bテストの前に規定者サイドと現場サイドの意識合わせを行うのだ。

それまでは、まず現場サイドだけで「最適と思われるデザイン」をA/Bテスト。勝者のデザインを定常化したいとき、既存コンポーネントで許容できなければ、規定者サイドにコンポ―ネントの新規開発依頼を行っていた。一方、開発側では常にバックログを抱えており、その状況と優先順位によって工期は変動し、公開までには数カ月の時間を要していたという。

改善後のプロセスでは、テスト前に両サイドの意識合わせを行うようにした。場当たり的に「開発案件」を作らないよう、基本的には既存コンポーネントという制約を所与とし、テストをデザインするようにしたのだ。無論、制約よりも顧客体験を重視すべき場合もある。その場合は、開発工期が発生しうる前提で、テストを行う。これにより、多くの場合は定常化しやすくなり、開発案件になったとしても、定常化までに一定期間必要となることに合意しやすくなった。

結果、定常化しやすいA/Bテストを数多く実施できるようになり、テストの結果から勝者が特定されてから定常化するまでの作業も、1週間以内になったという。

参加者からは「私たちも取り入れたい施策」という声や、A/Bテストの設計に関する質問などが上がった。また、2018年のリリースからAdobe Experience Managerに追加されたデザインを部品化する機能(エクスペリエンスフラグメント)とAdobe Targetの組み合わせにより、テストから定常化までが一連の作業として効率的に実施できるようになったことにも、参加者から関心が寄せられた。

プロセスを変え、A/Bテストの設計段階から意識合わせを

TIPSの共有による新たな気づき

TIPSの共有による新たな気づき

その他にも、Adobe Experience Managerの最新バージョンの機能紹介や、いくつかのTIPSが披露された。

クラウドベンダーとしてのアドビの本社は米国にあるが、製品開発はグローバル主要拠点でも行われており、日本にも開発チームがある。アドビはこれまで、日本語の処理や日本語を含むデザインなど、フォント制作やDTP開発を通じて日本市場固有の知見や技術を培ってきた。これはAdobe Experience Managerにも活かされており、ビジネスユーザーでも日本語を編集しやすくなるよう、日本ならではの機能開発にも力を入れている。そして、日本のユーザーからの声が、日本語処理の開発強化につながるのだ。

またTIPSでは、「フォントサイズ」に関して参加者の頷く姿が多く見られた。ダブルバイト文字である日本語と、シングルバイトの英字では、視覚的な印象が異なる。「adobe.com」の場合、ベースは米国本社が作っているため、日本のwebサイトではそのフォントサイズを規定の89~93%に落としているという。

「これまでは国内ユーザーをターゲットにしていたため、気づかなかった部分でした。ちょうどいま、インバウンド需要への対応にあたって多国語化に取り組んでいる最中なので、さっそく試したいです。私たちの場合は日本語がベースですから、今日ヒントをもらわず、そのまま多国語化してしまっていれば、英語圏のお客様にとって文字が大きすぎるデザインになってしまっていたかもしれません」(参加者)

TIPSの共有による新たな気づき
TIPSの共有による新たな気づき

最後にAdobe Experience Managerの運用と開発を簡素化するサービスも紹介された。アドビに「運用をお任せ」できるクラウドサービスの「Adobe Managed Services」だ。開発環境に気を配らなければならない参加者は、クラウドオンリーの運用に加え、開発をオンプレミス環境で行い、ステージングサーバーと本番サーバーだけをAdobe Managed Servicesで運用できるという話に関心を寄せていた。また、自社内に保守要員を抱えることに懸念を持つ参加者からは、高負荷になりがちなキャンペーン時期にも安定運用を可能にするアーキテクチャに、興味を持つ姿が見られた。

「いままさにAdobe Experience Managerを導入している最中です。サーバー構成について検討しているので、Adobe Managed Servicesの話が聴けたのはありがたかったです。Adobe Managed Servicesとともに、運用のベストプラクティスについても、これから学んでいきたいと感じました」(参加者)

TIPSの共有による新たな気づき
TIPSの共有による新たな気づき

情報共有の後には懇親の場も設けられ、ユーザー同士が交流して知見の交換をしたり、アドビの担当者に質問したりする姿も見られた。気づきの共有が、共に成長することにつながっていく。今回はビジネスユーザー向けのものだったが、アドビはデベロッパー向けの技術寄りのセミナーも別途開催している。

 

UNITE編集部


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