Premiere Proでは、カラーマネジメント設定が強化され、素材、シーケンス、モニター、書き出し時のカラー設定を一元管理できるようになりました。カラーの自動検出により、LOGやRAW素材の取り扱いがさらに簡単になり、作業スペースが「ACEScct」に対応することで、LOGやRAW素材の広いダイナミックレンジを活かし、HDR/SDR作品もスムーズに編集・書き出し可能になりました。このアップデートにより、カラーコレクションやグレーディングをより効率的に行えるようになります。以下の動画で一連の制作工程をご確認いただけます。
手順
①サンプルファイルをシーケンスに配置
②カラーマネジメントを表示
③クリップのカラー管理
④シーケンスとモニターのカラー設定
⑤トーンマッピングを活かしたカラー補正
Premiere Proを起動し、左上の「新規プロジェクト」ボタンをクリックします。プロジェクト名と保存場所を設定した後、「作成」ボタンをクリックします。次に、ダウンロードしたサンプルファイルを選択し、「読み込み」ボタンをクリックします。シーケンスが作成され、サンプルファイルがタイムラインに配置されます。

今回使用するサンプルファイルは、Apple iPhone 15 ProおよびSony FX3で撮影されたLOG形式の映像素材です。シーケンスを開いてプログラムモニターで確認すると、各クリップの色が適切に表示されていないことがわかります。

Lumetriカラーパネル内の「設定」をクリックすると、カラーマネジメントの設定が表示されます。

Premiere Proではカラーマネジメント設定が強化され、素材、シーケンス、モニター出力時のカラー設定を一元管理できるようになりました。これにより、カラー設定に関わる一連の作業が、よりスムーズに行えるようになっています。

「プロジェクト」項目内にある「自動検出されたログとRawメディアのカラー管理」にチェックを入れると、各クリップのカラーが自動で変換されます。

プログラムモニターで確認すると、素材の色が適切に表示されていることが確認できます。これにより、従来のようにクリップごとのLUT適用などの変換作業が不要になりました。

クリップを選択した状態で、「ソースクリップ」内の「カラースペースを保持」を確認すると、そのクリップの記録形式が自動で認識され、適切なカラースペースに変換されていることがわかります。もしカラースペースが自動で認識されない場合や、手動で変換したいときは、「カラースペースを上書き」から任意のカラースペースを選択できます。また、「RGBを保持」にチェックを入れることで、自動変換を無効にすることも可能です。
「シーケンス」から、作品の形式や出力モニターに合わせてシーケンスのカラー設定を変更できます。「カラー設定」では、「ダイレクト Rec.709(SDR)」、「ダイレクト HLG(HDR)」、「広色域 (トーンマップ済み)」などが選択可能です。「広色域」を選ぶと、作業カラースペースが「ACEScct」に設定され、各クリップのカメラの特性が共通のACES空間に変換され、色のばらつきが軽減されるのでおすすめです。

「出力カラースペース」では、出力するモニターに合わせて設定変更が可能です。一般的なモニターでは「Rec.709」を選び、HDRモニターをお持ちの方は、「Rec.2020」や「Rec.2100」など、モニターに最適な形式を選んでください。

クリップを選択した状態で「シーケンスクリップ」を確認すると、それぞれのクリップがどのように変換されているかを確認できます。

出力カラースペースは、カラー補正などのエフェクトを適用した後でも、いつでも変更可能です。従来のように、SDRやHDRなどの複数の形式に対応するために、新たなシーケンスを作成し、作業を一からやり直す必要はありません。
作品形式の違いにもスムーズに対応できるため、ワークフロー全体の効率が大幅に向上します。
「カラー設定」で「広色域(トーンマップ済み)」を選択すると、クリップごとの色のばらつきが軽減されるだけでなく、カラー補正時に自動トーンマッピングが適用され、白飛びなどのクリッピングを防ぐことができます。実際に「Lumetriスコープ」パネルで確認すると、同じ補正内容でも「ダイレクト Rec.709(SDR)」では高輝度の雲のディテールがクリッピングされているのに対し、「広色域(トーンマップ済み)」ではそのディテールがしっかりと保持されていることがわかります。LOGやRAW素材のダイナミックレンジの広さを最大限に活用できるので、おすすめです。

Premiere Proでは、カラーマネジメント機能が大幅に強化され、素材、シーケンス、モニター出力時のカラー設定を一元管理できるようになりました。SDRやHDRなど複数の作品形式にもスムーズに対応できます。カラー編集作業の自由度と効率が大きく向上するため、ぜひご活用ください。