肌や髪の毛をきれいにレタッチ・加工するには

友人や家族同士でレジャーや食事を楽しむ場面で、お互いを撮影した写真を送り合うケースは良くあることだと思います。そこで、写りがイマイチだった場合、「このまま送るのは申し訳ない」「もっと良い感じに加工してから送りたい」と、写真を編集したい感情が湧くでしょう。

 

写真編集の中でも、人物の肌や髪の毛をきれいにしていく“レタッチ”は初心者には難しい作業です。どのようなことを意識すればうまくできるのでしょうか。

 

今回は、プロのフォトグラファー・レタッチャーとして活躍されている井上依子さんに、人物写真のレタッチの考え方や加工方法についてお話を伺ってみました。

顔の肌をきれいにレタッチ・加工するには

 

まずは人物の顔をレタッチするためのポイントを説明します。

 

 

肌の明るさと色味を整える

 

人物写真において、仕上がりを左右する一番のポイントは「肌の色」です。屋外で撮影した際、見返してみると記憶よりも暗く、そして血色も悪く写ってしまっているケースがありますが、そこで顔色を良い方向に加工してみると、それだけでかなり印象が違って見えるはずです。カメラとの相性によって肌の色がくすんで見えてしまう人もいるので、その場合は色味の調整もしてみてください。

 

本来の肌の色よりも極端に赤く写っていると顔が火照っているように見え、土色や黄色っぽく写っていると不健康そうに見えます。そのように肌が不自然な色味になってしまった場合、彩度を下げて出すぎている色を消していく、あるいは色合いを別の色に寄せてみて、自然に見えるところを探してみると良いでしょう。

 

【井上さんのワンポイントアドバイス】

明るさや色味を極端に変えると、後戻りできなくなってしまう可能性がありますので、最初は明るさを適正するところからスタートして、その次に色味を調整する順で進めていくと迷いも少なく、やりすぎも防げます。

毛穴やシミなどを消す

 

最近では、毛穴やシミを目立たなくする美肌加工の機能を備えたスマートフォン用アプリがいくつも登場しています。ただし、調整項目が大まかで、微調整ができないことから不自然に仕上がることも少なくありません。

 

Adobe PhotoshopやAdobe Photoshop Lightroomなどの高機能な編集アプリには、周辺の肌のデータをコピーして、シミやホクロなど消したい箇所の上にペーストすることで、一部分だけを自然に隠す機能などがあります。

 

【井上さんのワンポイントアドバイス】

毛穴を消す加工は肌をなめらかに見せる効果がありますが、やりすぎるとのっぺりと厚塗りしたような不自然さが出てしまうので、ほどほどに留めておきましょう。広告写真の場合、モデルの肌にあるシミやホクロは修正で消したほうが良いと考えられていますが、その人のアイデンティティになっている箇所などはあえて残すこともあり、ケースバイケースです。

 

 

ニキビや傷、クマもチェック

 

さらに高度なレタッチをするのであれば、肌荒れによるニキビや傷、クマなど「本来無くてもいいもの」を消してみましょう。ここまで細かい加工になると、スマートフォン用アプリでの修正は難しく、写真編集に特化したパソコン用アプリが必要になります。いずれ写真の仕事に就きたいと考えている方は、レタッチしたほうが良い項目として覚えておくと良いでしょう。

手や首をきれいにレタッチ・加工するには

 

顔のレタッチを中心にお伝えしてきましたが、顔以外の箇所はどうでしょうか。

 

 

手や首のレタッチも「肌の色」が重要

 

人物写真は「肌の色」が大事と説明しましたが、これは顔だけでなく手や首など写真に写るすべての肌に対しても言えることです。

 

人物写真は、顔のアップ、上半身、全身と、写す範囲にバリエーションが多くあり、服からのぞく手元や首など、顔以外の肌も写っています。顔の肌の色を編集した際に、手や首も自然な色になっていれば問題ないでしょう。

 

不自然な色になってしまった場合は、部分ごとに加工する方法もありますが、プライベートの写真では、ここまで細かなレタッチは必要ないかもしれません。高度なレタッチスキルを身に付けたい方はチャレンジしてみてください。

 

手や首のシワは年齢が出るところ

 

手の甲や首のシワは年齢が出るポイントともいわれています。ただし、シワをキレイに消せば良いというわけではなく、写真の伝えたいテーマや使用場面に合ったレタッチをしなくてはいけません。シワを消す加工はやりすぎが不自然になる最たる項目でもありますので、用途によって判断することが重要です。

 

【井上さんのワンポイントアドバイス】

レタッチができるようになると、つい良かれと思ってあれもこれもと加工をしてしまいがちですが、やりすぎない判断もレタッチにおいて肝要なことです。常に、何のためのレタッチなのかを作業前に確認しましょう。

 

 

髪の毛をきれいにレタッチ・加工するには

 

髪の毛も、その人の印象を決定づける重要な項目です。しかし先程の手や首と同じく、高度なレタッチ作業になりますので、参考程度に覚えておくと良いでしょう。

 

 

髪の毛をレタッチ・加工する際のポイント

 

まず、1本だけピョンと飛び出している髪の毛を頭の輪郭に沿って消していきます。これだけでも印象がグッと良くなります。消す方法としては、背景をコピーしたあとに、髪の毛の上にペーストして隠す方法が一番わかりやすいと思います。背景は単色の壁だと加工しやすいです。

 

 

髪にツヤを出す

 

髪にツヤを出したい場合は、明るさや色味を調整して、光が反射しているハイライトを強調する方法があります。プロのレタッチャーであれば、髪に白く反射している箇所をペンツールで書き足して、頭全体がキレイに光を反射している状況を作り出すこともできます。やりすぎると白髪のようになる可能性がありますので、ほどほどに。

 

前髪の割れを直すには

 

こちらも高度なテクニックが必要になります。近くの髪の毛のデータをコピーして、長さや太さをその場所に合うように変えてからペーストする方法があります。かなり繊細な作業となりますので、Photoshopのパッチツールなどが有効です。

 

【井上さんのワンポイントアドバイス】

このコピー&ペーストの作業は、分け目や頭頂部など髪が薄い部分を隠す際にも応用されます。写真では平面に写っていても、実際の頭部は立体的な形をしており、髪の毛の細さやピントの合い具合い(例えば前髪と頭頂部では合う具合いが異なります)など場所によって違うので、ペーストする場所に合わせてコピー元のデータの加工が必要となり、根気のいる作業です。

 

 

自然な仕上がりにするコツ

 

過度な加工は逆効果とお話しましたが、どうすれば「やりすぎ」を防ぐことができるのか初心者はわからないものです。ここでは、自然な仕上がりにするコツを紹介します。

 

 

加工する場所の優先順位を決める

 

写真編集アプリの中には、PhotoshopやLightroomのように加工する範囲を選択できるものもありますが、一方で写真全体にその編集結果が反映されてしまうアプリもあります。後者の場合、まずは「肌の色」を優先して明るさや色味を調整すると失敗しにくいでしょう。

 

 

プロの写真を真似して加工してみる

 

自然な仕上がりにするコツとしては、やはり「やりすぎない」ことに尽きます。プロの写真をたくさん見て加工の感覚をつかみ、真似をすることで慣れていくことが大切です。

高機能な写真編集アプリを使う

 

スマホに標準装備された写真管理アプリでも基本的な加工はできます。しかし、加工する範囲や加工の具合を細かく調整できないため、思い通りの写真に仕上がらないことも。

服や手など、それぞれのパーツを個別にレタッチしたいと思ったら、LightroomやPhotoshopをはじめとする高機能の編集アプリを活用してみてください。

 

【井上さんのワンポイントアドバイス】

Photoshopでは顔のパーツごとに大きさや場所を変えられる機能もありますが、顔のパーツの変形機能を使うと、まるで別人のような仕上がりになってしまうケースもあります。被写体の魅力を損なう加工になっては意味がないので、やりすぎには注意が必要です。

 

 

肌や髪の毛をレタッチして、ワンランク上の写真に仕上げよう

 

今回は人物写真のレタッチ方法について紹介してきましたが、肌や髪の毛など、部位によって編集で意識するポイントが違うことをハッキリと理解できたのではないでしょうか。

 

人物のレタッチは高度な編集スキルが必要となりますが、今はシンプルなレタッチしかできなかったとしても、「できる範囲で相手の魅力を引き出すには?」という視点で写真の加工にチャレンジしてみると、喜ばれる機会も増やせるはずです。

 

シンプルな加工から一歩進んだレタッチまで、さまざまな写真編集に挑戦したい方は多彩なツールやメニューが用意されているPhotoshopやLightroomで、より自由度の高い操作を体感してみてください。

 

Photoshop

Lightroom

 

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取材協力:井上依子(いのうえ・よりこ)

日本大学芸術学部写真学科卒業、広告写真制作会社を2社経由後、フリーランスでフォトグラファー/レタッチャーとして雑誌、広告、web媒体で活動中。2021年から、CCCフロンティアデザイン株式会社にてフォトディレクターとして撮影に関わる窓口も業務委託で行っている。

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(取材・執筆:赤坂太一 編集:ノオト)

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