モーションブラーとは?写真・動画をあえてブレさせる意味や効果を解説

静止画なのに、ダイナミックな動きを感じさせる写真。まるで映画のように滑らかな動きを表現する動画。こういった作品には、実は「モーションブラー」と呼ばれるエフェクトが用いられています。
「ブラー」は日本語で「ぼかし・ぼやけ」のこと。つまり、「モーションブラー」とは動きのあるものを撮影した際に生じる「ブレ」を意味します。
ではなぜ、本来敬遠されがちな「ブレ」があえて使われているのでしょうか?
本記事では、事例を使って、モーションブラーの意味や効果をわかりやすく解説します。記事の後半では、アプリを使って写真や動画にモーションブラーをかける方法も紹介しますので、ぜひ試してみてください。
モーションブラーとは
モーションブラー(motion blur)とは、動いている被写体を撮影したときに生じる「ブレ」のことです。カメラのシャッター速度が被写体の動きに追いつかないために起こる現象で、被写体が動いた方向に沿って像がぼやけます。
スポーツシーンや乗り物、動物の撮影など、動きの速い被写体を撮影する場合、モーションブラーが発生しやすくなります。
下の写真は、モーションブラーの写真例です。
街中を走っている車、しかもなかなかのスピードで走っているように見えます。
それでは、以下の写真はどうでしょう?
少し構図は異なりますが、同じように街中を走る車の写真です。
こちらは車に動きやスピード感は感じられず、停車している、もしくは、ゆったりと進んでいるように見えます。
この2枚の写真の違いである「ブレ=モーションブラー」によって、私たちは動きやスピードを感じていることがわかります。
モーションブラーがないとどうなる?
モーションブラーがないと、動いているものがブレたりぼやけたりせず、すべての動きがくっきりと見えることになります。実際にすべての動きが見えるのであればそれがよいようにも思えますが、実はそんなことはありません。
私たちの目や脳は「動いているものはブレるのが自然」という認識があるため、ブレやぼやけがないと、その認識とのギャップでかえって不自然さを感じてしまいます。
例えば、アニメーションやCGの世界では、すべての動きがクリアに見える「モーションブラーのない世界」を作ることも可能です。しかし実際は、より自然な動きに見せるため、アニメーションやCGにはあえてモーションブラーが使われています。
モーションブラーを用いることで、「リアリティを演出している 」といえるでしょう。
モーションブラーの効果
モーションブラーには、主に以下の3つの効果があります。
- 速さを表現する
モーションブラーは、動いている被写体のスピード感を表現するのに効果的です。例えば、スポーツや乗り物の写真で、被写体の動きをより速く、より迫力ある様子に見せるために用いられます。
- 動感を強調する
被写体の動きを強調したい場合にもモーションブラーが役立ちます。例えば、水しぶきや髪の毛の瞬間的な揺れを表現したり、ダンスやスポーツの動きをよりダイナミックに見せたりできます。
- 動きを滑らかに見せる
モーションブラーによって、被写体の動きがより滑らかに見えます。特に、映画やアニメなどの映像作品では、モーションブラーが動きにリアリティや自然な美しさをもたらし、より作品の世界に没頭してもらえる効果があります。
このように、モーションブラーを利用することで、写真や動画にスピード感や躍動感、滑らかさを与えられます。
それでは次の章で、実際にモーションブラーを使った写真を見てみましょう。
モーションブラーの例
ここからは、モーションブラーを使った写真の例をいくつか紹介します。被写体の動きの速さやカメラのシャッタースピードによって生じる、モーションブラーの効果を実際に見ていきましょう。
スポーツの写真
モーションブラーは、スポーツシーンのダイナミックな動きや力強さを表現するのにぴったりです。動きをぼかすことでアクションの一瞬を捉え、さらにスピード感や躍動感が伝わる写真になります。
海や滝の写真
海や滝の水の流れや躍動感を表現するのにも、モーションブラーは効果的です。流れ落ちる水や波の動きをぼかすことで、水の力強さや滑らかさ、自然の美しさを生き生きと表現できます。
車や電車の写真
車や電車の写真にモーションブラーを取り入れると、スピード感を強調できます。車体そのものや車輪の回転をぼかすと、動きの速さが表現されより臨場感を感じさせる写真になります。
人が行き交う写真
モーションブラーによって、人の動きも表現できます。例えば、交差点での人々の動きや雑踏をぼかすことで、街の活気までが生き生きと伝わってくるような写真に仕上げられます。
夜景の写真
モーションブラーによって車のヘッドライトやアトラクションの光源が美しい模様を描き出します。光の軌跡からスピード感や時間経過が伝わり、幻想的な雰囲気を演出します。
星空の写真
モーションブラーを使うことで、夜空に煌めく星の軌跡を美しく表現できます。地球の回転により星が移動する様子を捉え、宇宙の壮大さを感じられる神秘的な写真になります。
ここまで、モーションブラーを使った写真の例を紹介しました。
こんな写真を撮ってみたいと思った方は、次の章で紹介する、モーションブラーを使った撮影のコツをぜひ参考にしてみてください。
モーションブラーを使った撮影のコツ
モーションブラーの写真を撮影する方法やコツはいくつかありますが、ここではそのうちの2つを紹介します。
【コツ1】シャッター速度を遅くする
カメラのシャッター速度が遅ければ遅いほど、光を多く取り込み、モーションブラーを強く表現できます。被写体の速度によっても異なりますが、1/60秒以下にするとよいでしょう。
【コツ2】三脚を使用する
シャッタースピードを遅くすると、手ブレの影響を受けやすくなります。そのため、カメラが不意に動かないよう三脚を使用してカメラを固定しましょう。意図したとおりに撮影しやすくなります。
他にも、様々なコツを以下のページで紹介しています。参考にしてモーションブラーの写真を撮影してみましょう。
もう少し手軽にモーションブラーをかけたい方は、アプリを使う方法もあります。次の章では、既に撮影した写真にアプリを使ってモーションブラーをかける方法を紹介します。
【写真】Adobe Photoshopを使ってモーションブラーをかける方法
アドビの画像編集アプリ「Adobe Photoshop」を使えば、既に撮影した写真や画像に、後からモーションブラーをかけられます。
Photoshopは、世界中のクリエイターに使われているPC向けの画像編集アプリで、デスクトップアプリ版とweb版があります。インターネット環境やPCのスペックにあわせて、使いやすい方で作業可能です。
ここからは、デスクトップアプリ版のPhotoshopを使って、写真にモーションブラーをかける方法を解説します。
7日間の無料体験が可能ですので、以下のリンクからアプリをダウンロードして、早速モーションブラーを試してみましょう。
【手順1】Photoshopで写真を開く
Photoshopでモーションブラーをかけたい写真を開き、レイヤーのロックアイコンをクリックしてロックを解除します。次に、メニューの「レイヤー」から「スマートオブジェクト」→「スマートオブジェクトに変換」を選択して、画像を変換します。
(こうしておくと、拡大・縮小をしても元画像の画質が維持されます)
【手順2】ぼかしを加える
メニューの「フィルター」から「ぼかしギャラリー」→「パスぼかし」を選択して、画像全体をぼかします。次に、ぼかしの方向や強さを調整するために矢印線を加えていきましょう。矢印線はドラッグして向きを変えたり、曲線にしたりできます。
ぼかしが調整できたら「OK」をクリックします。
【手順3】ぼかさない部分を指定する
最後に、ぼかさない部分を指定していきます。レイヤーパネルで、「スマートフィルター」のマスクサムネール(白い四角部分)をクリックします。次に、ブラシツールを選択し、ぼかさない部分を黒のブラシでなぞりましょう。
顔や胴体などをブラシでなぞると、ぼかしがなくなりました。
これで完成です。被写体の瞬間的な動きや速さが強調され、躍動感が感じられます。
ここまで、写真にモーションブラーをかける方法を紹介しました。
次の章では、アニメーションや映像などの動画にモーションブラーをかける方法を紹介します。
【動画】Adobe After Effectsを使ってモーションブラーをかける方法
アドビの動画編集アプリ「Adobe After Effects」は、豊富なエフェクトが揃っており、プロフェッショナルな動画編集やモーショングラフィックスの作成をしたい方にオススメのツールです。
ここからは、After Effectsを使って、モーションブラーをかける方法をわかりやすく解説します。動画でも操作方法を解説していますので、お好きな方でご確認ください。以下のリンクからご覧いただけます。
また、After Effectsも7日間の無料体験が可能です。以下のリンクからアプリをダウンロードして、使い勝手をぜひ試してみましょう。
【手順1】After Effectsに動画ファイルを読み込む
メニューの「ファイル」から「読み込み」→「ファイル」を選択して、動画ファイルを読み込みます。読み込みが完了すると、画面左側のプロジェクトパネルにファイルが表示されるため、画面下のコンポジションパネルへ移動させましょう。ファイルは、ドラッグ&ドロップで移動できます。
【手順2】モーションブラースイッチをオンにする
モーションブラーをかけたいレイヤーをクリックして選択します。次に、スイッチパネルで、モーションブラースイッチをオンにしましょう。
モーションブラースイッチが表示されない場合は、画面下の「スイッチ/モード」をクリックして表示を切り替えます。
モーションブラースイッチをオンにしただけでは、映像には何も変化は見られません。次に、タイムラインの上部にある、モーションブラーを適用するボタンをクリックしましょう。ボタンが青くなれば、モーションブラーがかかっている状態です。映像が変化しているのがわかります。
スペースバーを押して、動画のプレビューを見ると、モーションブラーがかかった状態で再生されます。
これで完成です。被写体の動きにブレが加わることで、本当に回転しているように見えます。
ここまで、After Effectsでモーションブラーをかける方法を紹介しました。
なお、撮影した映像にモーションブラーをかけたい場合は、After Effectsの「ピクセルモーションブラー」という機能が便利です。
詳しい方法や手順は、以下のリンクから5分ほどのチュートリアルを参照してください。
アドビのアプリで手軽にモーションブラーをかけてみよう
世界中のクリエイターに活用されているアドビの編集アプリを使えば、手軽にモーションブラーをかけられます。「Adobe Photoshop」や「Adobe After Effects」を使って、写真や動画にスピード感や躍動感を演出をしてみましょう。
写真にモーションブラーをかけるなら「Adobe Photoshop」
Adobe Photoshopは、プロのフォトグラファーから趣味で写真を楽しむ人まで、幅広いユーザーに支持されている画像編集アプリです。
Photoshopを使えば、写真にモーションブラーをかけるほか、彩度や明度を細かく調整したり、生成AIを使って編集したりといった画像加工が手軽にできます。
そのほか、Photoshopでできることを知りたい方は、以下のページを参照してください。短いチュートリアル記事や動画が充実しているので、Photoshopの機能や使い方がカンタンにわかります。
動画にモーションブラーをかけるなら「Adobe After Effects」
Adobe After Effectsは、映画やCM、アニメーションなどの映像制作に携わるプロに愛用されている動画編集アプリです。
After Effectsを使えば、モーションブラーをかける以外にも、動画内で雷を落としたり、大雨を降らせることもカンタン。また、After Effectsのみで3Dアニメーションを作成することも可能です。
After Effectsを使ったことがない方は、以下のページをご覧いただくのもオススメです。わかりやすいチュートリアルを見ながら、自分のペースでAfter Effectsを使った動画制作にトライできます。
Photoshop、After Effects共に7日間の無料体験が可能です。
この機会にぜひ、アドビのアプリを使って、モーションブラーをはじめとする写真や動画の編集を自由にお楽しみください。