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ラスタライズの意味とPhotoshopでのやり方、注意点などを解説

ラスタライズの意味とPhotoshopでのやり方、注意点などを解説

「この画像を編集するには、ラスタライズが必要です。」

Adobe Photoshopを使っている最中に、こんなメッセージを見て戸惑った経験はありませんか?「ラスタライズって何?そのまま進めても大丈夫なの?」と疑問に思ったことがある方もいるでしょう。実はこの「ラスタライズ」というプロセスは、デザインや画像編集においてとても重要な役割を果たしています。

この記事では、ラスタライズの基本的な意味から、関連する「ラスター」「ベクター」「スマートオブジェクト」についての解説、さらに具体的な操作手順まで、わかりやすく解説します。これを読めば、ラスタライズが何なのか、そしてどのように活用するのかがきっとクリアになるはずです。

※この記事の情報は2024年9月時点のものです。アプリケーションのバージョンにより、操作画面のUIや機能が異なる場合がありますので、ご了承ください。

目次

ラスタライズとは

【Photoshop】ラスタライズのやり方

ラスタライズをする前には「複製」を忘れずに

ラスタライズをショートカット登録する方法

Photoshopがあれば、どんな画像編集も思いのままに。

ラスタライズとは

ラスタライズとは、「ベクター形式をラスター形式に変換すること」です。Photoshopにおいては「スマートオブジェクトをラスター形式に変換すること」までの意味を含みます。

では「ベクター形式」「ラスター形式」「スマートオブジェクト」とは一体何なのでしょうか。以下でわかりやすく解説します。

ラスター形式とベクター形式の違い

ラスター形式とベクター形式の意味は以下のとおりです。

ここでは、黒い円を例に、両者の違いを見てみましょう。

ラスター形式の円は、輪郭部分を拡大すると、黒い点の濃淡と密度の差で曲線が形成されていることがわかります。

一方、ベクター形式の円は、拡大しても滑らかな曲線のままです。これは、ベクター形式が直線や曲線、色などのデータから計算によって描画されているためです。

ラスター形式とベクター形式の違い

小さなピクセルが集まったラスター形式の画像は、写真や複雑なグラデーションを含む画像を描画するのに向いています。また、互換性が高く、様々なソフトウェアで開けるという特長もあります。デメリットは、上述のとおり拡大すると画質が粗くなってしまう点です。また、非常に多くのピクセルデータが含まれるため、ファイルサイズが大きくなる場合があります。

それに対して、ベクター形式の画像は、色数が少ないロゴやイラストなどを描画するのに適しています。どんなに拡大しても粗くなることがなく、膨大なピクセルデータを持たない分ファイルサイズも小さく収まります。一方、写真や複雑なグラデーションを含む画像の表示には不向きです。また、ベクター形式に対応したソフトウェアでないと開けず、ラスター形式と比較すると互換性が低いこともデメリットといえます。

以上を踏まえてラスター形式とベクター形式の違いを整理すると、以下のようになります。

形式
用途
ラスター形式
色数が多く複雑な画像(写真やグラデーションを含む画像など)
ベクター形式
色数が少ない画像(ロゴやアイコンなど)
形式
メリット
ラスター形式
複雑な画像を精細に表示できる、様々なソフトウェアで開ける
ベクター形式
拡大しても粗くならない、ファイルサイズが小さい
形式
デメリット
ラスター形式
拡大すると粗くなるほか、ファイルサイズが大きくなりやすい
ベクター形式
写真や複雑なグラデーションを含む画像の表示には不向きで、ラスターと比べると対応しているソフトウェアが限られる
形式
制作に適したAdobeのサービス
ラスター形式
Adobe Photoshop
ベクター形式
Adobe Illustrator
形式
主な拡張子
ラスター形式
.jpg、.png、.gif、.psdなど
ベクター形式
.svg、.eps、.aiなど

スマートオブジェクト

スマートオブジェクトは、Photoshopにおける元データの情報を保持しながら画像を編集できるレイヤーのことです。通常のラスター形式のレイヤーと違い、スマートオブジェクトなら編集後にいつでも元の状態に戻せます。

例えば、写真を白黒に変換する場合を考えてみましょう。まず、通常のラスター形式の写真を白黒にした場合、その画像からは元の色彩情報は失われます。「取り消し」の履歴が残っていれば、白黒に変換する前までファイルの状態を戻せますが、そうでなければやり直しは効きません。

それに対して、スマートオブジェクトであれば、そのレイヤーの中で「元の状態」と「加工後の状態」を分けておけるので、いつでも元の状態に戻せます。

スマートオブジェクトに変換すると、元の状態を残しておけるため、いつでも加工をやり直せる

そして、Photoshopでは、スマートオブジェクトを通常のラスター形式に変換することも「ラスタライズ」といいます。

このように、ラスタライズは、ベクター形式やスマートオブジェクトをラスター形式に変えることを意味するのです。

ラスタライズが必要な場面

Photoshopでラスタライズが必要になるシーンとして、主に以下の3つが考えられます。

  1. ベクター形式やスマートオブジェクトには適用できない処理が必要な場合
  2. 印刷用のデータを作成する場合
  3. ファイルサイズを小さくしたい場合

まず「1」について、Photoshopではブラシや消しゴムなどの「画像のピクセルデータを直接編集する処理」は通常のラスター形式のレイヤーにしか適用できません。そのため、ラスタライズが必要になります。ラスター形式の画像にしか適用できない処理の代表的なものとして、例えば以下が挙げられます。

なお、フィルターは、スマートオブジェクトに変換すれば適用できるものも多数あります。その場合は、元データを保持できるスマートオブジェクトの使用が望ましいです。フィルターを適用しようとして、「ラスタライズ」と「スマートオブジェクトに変換」の両方の選択肢が表示されるときは、後者を選んでください。

次に「2.印刷用のデータを作成する場合」について、Photoshopでは主に、印刷の過程でフォントが別のフォントに変換されないよう、ラスタライズを要求されるケースがあります。ラスタライズすることで、テキストが「打ち換えられない画像」に変換されるため、別のフォントに置き換わってデザインが崩れる心配がなくなります。

最後に「3.ファイルサイズを小さくしたい場合」について、通常のラスター形式とスマートオブジェクトを比較すると、後者の方がファイルサイズが大きくなる傾向があります。特に複雑な画像のスマートオブジェクトが大量にあると処理が重くなる可能性があるため、必要に応じてラスタライズして軽量化することがあります。

アウトライン化との違い

アウトライン化はPhotoshopではなくIllustratorで使われる用語で、フォントの文字情報を破棄してパスで構成された図形に変換する処理を指します。アウトライン化するとテキストとしての編集はできなくなりますが、フォントデータに依存しなくなるため、意図せず他のフォントに差し替えられることを防止できます。

テキストとして編集できなくなる点はラスタライズと同じですが、ファイル形式がベクター形式のままである点はラスタライズと異なります。

【Photoshop】ラスタライズのやり方

この章では、Photoshopでラスタライズする方法を実際の画面とともに解説します。

まずはラスタライズが可能なレイヤーかを見分ける方法を説明し、そのうえで特定のレイヤーとすべてのレイヤーをラスタライズする方法をそれぞれ紹介します。

ラスタライズが可能なレイヤーを見分ける方法

ラスタライズできるのは、ベクターレイヤーやスマートオブジェクトのレイヤーです。既にラスター形式のレイヤーは、当然ながらラスタライズできません。レイヤーの種類はレイヤーパネルのサムネールにカーソルを合わせると表示されるので、カンタンに見分けられます。

レイヤーパネルのサムネールにカーソルを合わせると、ラスタライズ可能なレイヤーかどうかがわかる

特定のレイヤーをラスタライズする場合

特定のレイヤーをラスタライズするには、以下の3つの方法があります。

1.レイヤーパネルから操作

レイヤーパネルで対象の画像を右クリックして、「レイヤーをラスタライズ」をクリックするとラスタライズできます。

レイヤーパネルで対象の画像を右クリック > 「レイヤーをラスタライズ」を選択する

2.メニューバーから操作

ツール上部のメニューバーから「レイヤー」 > 「ラスタライズ」 > 「レイヤー」を選択すると、選択中のレイヤーをラスタライズできます。

ツール上部のメニューバーから「レイヤー」 > 「ラスタライズ」 > 「レイヤー」を選択する

3.ダイアログから操作

ベクターレイヤーやスマートオブジェクトに対して、ラスタライズしなければ実行できない処理を適用しようとすると、以下のようなダイアログが表示されます。ここで「OK」をクリックすることで、そのレイヤーをラスタライズできます。

「スマートオブジェクトをラスタライズする必要があります」というダイアログが表示される

すべてのレイヤーをラスタライズする場合

ツール上部のメニューバーから「レイヤー」 > 「ラスタライズ」 > 「すべてのレイヤー」を選択すると、ファイル内のすべてのレイヤーをラスタライズできます。

ツール上部のメニューバーから「レイヤー」 > 「ラスタライズ」 > 「すべてのレイヤー」を選択する

ラスタライズをする前には「複製」を忘れずに

画像をラスタライズして加工する際には、後から元に戻せない点に注意が必要です。こうした編集を「破壊編集」と呼びます。例えば、スマートオブジェクトからラスタライズした写真を一度縮小したら、その時点で元のサイズの情報が失われるため、そこから拡大すると粗くなってしまいます。

ラスタライズした写真を一度縮小し、再拡大すると画質が粗くなる

後からやり直しができるよう、ラスタライズする前には、元のレイヤーを複製して保持しておくことがオススメです。レイヤーを複製するには、レイヤーパネルで対象のレイヤーを右クリックして、「レイヤーを複製」をクリックします。

レイヤーを複製するには、レイヤーパネルで対象のレイヤーを右クリックして、「レイヤーを複製」をクリックする

ラスタライズをショートカット登録する方法

Photoshopには、デフォルトでラスタライズのショートカットは存在しません。しかし、Photoshopには独自のショートカットを登録する機能があり、これを活用すればラスタライズのショートカットを実行できるようになります。

まず、画面上部のメニューバーから「編集」>「キーボードショートカット」を開きます。

画面上部のメニューバーから「編集」>「キーボードショートカット」を開く

その中の「レイヤー」>「ラスタライズ」>「レイヤー」を選択します。すると「ショートカット」の列に入力欄が表示されるため、任意のショートカットキーを入力します。(登録済みのショートカットの場合は、アラートメッセージが表示されます)ショートカットが決まったら「確定」をクリックしてください。

「キーボードショートカットとメニュー」のウィンドウ内の「レイヤー」>「ラスタライズ」>「レイヤー」を選択。入力欄に任意のショートカットキーを入力し、「確定」を押す

以上でショートカットの登録は完了です。

このように、ラスタライズの操作一つとっても、Photoshopなら細かな調整が思いどおりにできるのが魅力です。例えばベクター画像の一部を編集したいとき、Photoshopの豊富なツールと柔軟な機能を駆使すれば、ピクセル単位で微調整ができ、あなただけのオリジナルなデザインが作れます。

画像編集を進める中で、「もう少しこうできたら・・・」と感じるシーンが多い方も、Photoshopであれば自由度の高い編集作業を実現できます。

Photoshopがあれば、どんな画像編集も思いのままに。

幅広いユーザーに支持されているPC向けの画像編集アプリ「Photoshop」

Photoshopは、プロのフォトグラファーやデザイナーから趣味で写真を楽しむ人まで、幅広いユーザーに支持されているPC向けの画像編集アプリです。画像の補正やエフェクトの追加はもちろん、合成や生成AIを使った画像生成など多彩な画像編集が可能で、プロフェッショナルな仕上がりを実現できます。

高度な写真補正ができる

Photoshopなら、写真の明るさや色味の微調整はもちろん、不要な要素の消去や高度な合成もカンタンです。精密な画像調整が必要なときも、Photoshopなら自由自在に編集が可能です。ピクセルレベルでの調整や、異なるフォーマットの画像の統合もスムーズに行え、思い描くビジュアルを直感的に作り上げることが可能。色や形、構図の細部までこだわり抜いた一枚を、理想どおりに仕上げられます。

多彩なデザイン制作に役立つ

SNS用のバナー、ポスター、webグラフィックなど、Photoshopにはクリエイティブを形にするための機能が多数備わっています。写真やテキストを自由に組み合わせ、プロ仕様のデザインが誰でも手軽に作成できます。

リアルなイラスト作成にも使える

Photoshopのブラシツールは、使う人の感性をそのままに表現します。水彩画や油絵のような繊細なタッチ、筆圧感知や傾きに反応するリアルな描画で、手描きの風合いをそのまま再現できます。

魅力的な写真・画像をシンプルに共有

Photoshopで仕上げた写真は、最適なサイズや形式で出力でき、SNSやウェブでの共有もスムーズです。プロフィール写真からカバー画像まで、思い通りにカスタマイズできます。

Photoshopがあれば、今回ご紹介した方法や豊富な機能を使って、画像をイメージ通りに仕上げられます。この機会にぜひPhotoshopを使って、想像を超えた新しいクリエイティブの世界をお楽しみください。

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