動画や3DCGコンテンツで使われるレンダリングとは?
動画や3Dコンテンツの制作には欠かせないのがレンダリングという作業です。レンダリングの基礎知識や、Adobeのソフトウェアでレンダリングする方法などを紹介します。
レンダリング(rendering)とは、あるデータを処理または演算することで画像や映像を表示させることです。動画制作などにおいては、さまざまな形式のデータに処理を加えることによって、映像や画像や音声などを生成する作業を指します。また、ウェブブラウザがHTML(ハイパーテキスト・マークアップ・ランゲージ)と呼ばれる言語で記述されたテキストを、人間が見てわかる文字や色などに変換して表示させることもレンダリングといいます。
本来、レンダリングとは、数値データを元に3DCGコンテンツを生成することでしたが、最近ではこちらの作業を「3Dレンダリング」と呼ぶことで、そのほかのレンダリングと区別しているケースが多いです。
動画制作で行われるレンダリングの目的
動画制作の現場で行われるレンダリングとは、映像データに追加したエフェクトと呼ばれる効果や静止画、字幕テキスト、音声といった複数のデータを、1つの動画として統合することです。
このレンダリング作業をすることで、視聴者が映像やエフェクト、静止画や字幕テキストを1つの動画として視聴できるようにするのが目的です。
動画をレンダリングする際の注意点
レンダリングは動画制作に欠かせない作業ですが、行う際にはいくつかの注意点があります。続いては、動画をレンダリングする際に気をつけたいポイントを2つ見ていきましょう。
動画を高品質にレンダリングする場合はデータが大きくなる
映像にさまざまなデータを加えて制作した動画の場合、高品質なレンダリングをするとデータが大きくなってしまいます。また、作業時間も、データの量に比例して長くかかります。
ですから、レンダリングする際には、どこまで高品質なレンダリングを行うのかに注意する必要があるでしょう。
レンダリングスピードはパソコンの性能が影響する
レンダリングは大量のデータを処理する作業です。そのため、パソコンの性能がレンダリングの処理スピードに影響します。高性能なパソコンがないと、レンダリングに多くの時間がかかってしまうのです。
より良い動画制作環境を整えるためには、高性能なパソコンを準備したほうがいいでしょう。
Adobe Premiere Proで動画をレンダリングする手順
Premiere Proでは、編集時と書き出し時のレンダリング作業を行うことができます。ここでは、それぞれのレンダリング作業の手順についてご紹介しましょう。
編集時のレンダリング
編集時のレンダリングは、編集した動画の内容を反映させるために行います。編集時にレンダリングを行わなくても書き出しの時点で自動的にレンダリングされるので、必須の作業ではありません。
Premiere Proでのレンダリングについては、下記の記事で詳しく説明しています。
書き出し時のレンダリング
書き出し時のレンダリングを行うことで、書き出す動画の品質を上げることができます。Premiere Proで動画を書き出す際に、「書き出し設定パネル」で、「最高レンダリング品質を使用」を選択します。
動画制作以外のレンダリング
前述したように、レンダリングは動画以外でも行われる作業です。ここでは、音楽、WEBページなど、動画制作以外のレンダリングについてご紹介しましょう。
音楽のレンダリング
パソコンとソフトウェアなどを用いて音楽制作をするDTMで制作した音楽を書き出す際にもレンダリングが使われます。DTMとは「Desktop Music(デスクトップミュージック)」の略です。
DTMのソフトウェアでは、「ピアノ」「ギター」「ドラム」「ベース」「SE(効果音)」など複数のデータを使用しますが、このデータの中にはMIDIファイルもあります。MIDIは、コンピューターで使用する音楽データのひとつです。これらをまとめて音楽データを生成する場合、レンダリングが必要になるのです。
WEBページのレンダリング
ブラウザで閲覧するWEBページも、レンダリングが行われています。WEBページは、さまざまな言語で構成されていますが、言語のままでは文字の羅列になります。
そこで、Google Chrome、Safari、Firefoxといったブラウザがデータをレンダリングして、人間が見てわかるWEBページとして表示しているのです。
3Dレンダリングの種類
立体的なコンピュータグラフィクスである3DCGコンテンツを制作する際には、3Dレンダリングが必須です。
3Dレンダリングは、データを基にリアルタイムに3D画像を生成する「リアルタイムレンダリング」とリアルタイムに行わない「プリレンダリング」の2つに分けられます。従来は、リアルタイムレンダリングとプリレンダリングのあいだには、品質の差がありましたが、リアルタイムレンダリングの技術が進化し、その差は小さくなってきています。
ここでは、3DCGコンテンツの制作で、レンダリングがどのように行われているのかを紹介します。
リアルタイムレンダリング
リアルタイムレンダリングが利用される場面としては、ゲームがあります。ゲームで使う3DCGのキャラクターなどは、プレイヤーの操作に合わせて形状を変化させ続ける必要がありますので、リアルタイムレンダリングが必要になります。なお、リアルタイムレンダリングには、速度が求められるため処理能力の高いハードウェアが必要になります。また、テレビのテロップなどにも、リアルタイムレンダリングは使われています。
プリレンダリング
プリレンダリングは、リアルタイムにレンダリングする必要がないため、精密に作り込まれた2DCGや3DCG、映像などの作品データの生成に使われます。データによっては処理をするための時間が必要です。
Adobe Dimensionのレンダリング
2Dと3Dの合成デザインツールであるAdobe Dimensionでは、作成した3Dシーンで実世界の光の挙動を計算し、シミュレートした反射や影を再現した2D画像をレンダリングにより生成できます。
Dimensionのデザインモード(左)とレンダリングプレビュー(右)を比較すると、デザインモードでは影や反射の質感は描画されていませんが、レンダリングプレビューではライティングやマテリアルが表現されていることがわかります。これは、Dimensionのデザインモードでは、パソコンへの負荷を低く抑えながら作業を優先的に行えるリアルタイムレンダリングで描画しているためです。ですから、Dimensionのデザインモードでは、ガラスなどの透過性のある表現や、影や反射などの表現は行えません。
そこで、Dimensionでは、レンダリングの結果がすぐに確認できるように、レンダリングプレビューを用意しています。
Dimensionによる3DCG制作
Dimensionには、よく利用されるモデルやマテリアル、ライトなどをあらかじめ用意しています。モデルやマテリアルの配置や設定を行うだけで、簡単に3Dシーンを作成することができます。
Dimensionで3Dシーンが完成したら、レンダリングを行うことで、静止画像として書き出すことが可能です。書き出すときに、ファイル形式にPSD形式を選択すると、背景とレンダリングされた画像をレイヤーとして分割してレンダリングし、各モデルを色分けした階層(レイヤー)なども作成されます。そのため、レンダリング後に、Photoshop上での補正や修正がしやすくなるのです。
Dimensionで画像を書き出す際にレンダリングする手順は以下のとおりです。
Dimensionでのレンダリングと書き出し | Adobe
DimensionとAdobeソフトウェアとの連携で幅広い作品制作が可能
Dimensionは、3DCGを制作できるソフトウェアから書き出した3Dデータを読み込んだり、Adobe Stockから購入した3Dモデルを追加したりできます。さらに、Adobe IllustratorやAdobe Photoshopで制作したグラフィックを、3Dモデルにデカール(転写)として配置する機能があります。
そのほか、アニメーションデータや音声データなど、3DCGを制作する上で必要な素材をまとめた3Dアセットに立体物の質感を表現できるAdobe Substance 3D Painterで作成した素材を読み込むこともできます。
このように、Dimensionでは、ほかのAdobeソフトウェアと連携することで、3DCG作品づくりも行えるように設計されています。
レンダリングの処理速度が速くなれば、クリエイティブの幅が広がる
レンダリングの技術が進化することで、3DCGの映像はより現実に近い映像を作り出すことが可能になります。
リアルタイムレンダリングの処理速度が速くなれば、より繊細な表現が可能になり、クリエイティブの幅が広がっていくでしょう。