写真編集ソフトの基本ツール

初心者が写真編集ソフトを使用する場合、最初に着手するとよいのはどのようなポイントなのでしょうか。今回は、プロのフォトグラファーとして豊富な経験を持つ栃久保誠さんにインタビュー。知っておきたい基本的な編集の方法や注意点、編集する際に使うツールについてご紹介します。

初心者がまず押さえておきたい写真編集のポイント

 

写真編集を何から行ってよいかわからない場合は、まず以下の5つのポイントから着手してみましょう。

 

明るさ

「明るさ」は写真の印象を決定づける重要な要素です。基本的には、全体をやや明るめに調整すると見た目の印象が良くなるケースが多いです。ただし、例えば「山奥の森の鬱蒼とした雰囲気を演出したい」といった狙いがある場合など、あえて暗くするケースもあるでしょう。また、意図せずに明るく写りすぎてしまった場合、肉眼で見た通りの明るさに近づけるために、あえて暗く調整する場合もあります。

  

色味 

「色味」とは、写真全体の色合いのことです。写真は、撮影する環境によって偏った色味で写ることがあります。例えば、レストランで食べ物を撮ると照明の影響でオレンジがかった色になりすぎたり、照明や壁の色によっては不自然に赤みまたは青みがかったりして写ることもあります。そのような場合は、自然な色合いになるよう調整してみましょう。

 

自然な色合いにするコツは、写っているものの中で本来白いもの(白い壁や白い洋服など)がなるべく白く見えるよう調整することです。それが出来るようになったら、あえて赤っぽくする、青っぽくするなど自分の表現したい世界観を目指して色味を寄せてみましょう。色味を調整することで見た人に与えるイメージを変更できます。

 

画角 

写真の用途や与えたい印象にあわせて、大きさや縦横比率の変更、傾きの調整を行います。例えば画角を狭めて写真の端に写り込んだ不要な物をカットする、長方形の写真を正方形にする、斜めに写ったテーブルの縁などの線を真っすぐにするといった具合です。写真の中に小さく写っている物や人を大きく見せるように切り取ることも可能ですが、切り取った分だけ画質も低下するので切り取りすぎには注意しましょう。

 

コントラスト 

コントラストとは明るい部分と暗い部分との「明るさの差」を指し、 コントラストが強いほど明暗のはっきりとした写真になります。見た目の印象を力強くしたいとき、くっきりと見せたいときに強めるのが基本的な使い方です。

 

不要なものを除去 

写真の中から不要な物を消すことで、メインの被写体に注目しやすくする効果があります。例えば赤いカラーコーンなどは小さく写り込んでいるだけでも目立ってしまいますが、そうした物を編集で消すことができるのです。また、山や森などの風景に写り込んだ人物や電線を除去して大自然の雰囲気を演出するなど、写真で表現したい世界観を完璧に演出するためにも重宝する機能です。

 

【栃久保さんのワンポイントアドバイス】

人の顔のほくろや傷なども除去することが可能ですが、やりすぎると不自然になったり、被写体の人に不快な思いをさせたりすることもあります。その方の持つ本来の魅力を大切にするためにも、私はあまり手を加え過ぎないようにしています。

 

写真編集ソフトの基本ツール・機能 

 

ここまでに紹介したポイントを押さえて編集を行うには、写真編集ソフトのどのツールを使えばよいのでしょうか。プロフォトグラファーがよく使う編集ツール・機能を紹介します。

 

露光量 

露光量とは、明るさを調整する機能です。基本的には、写真の印象を良くするために全体の明るさを底上げするときに使います。明るく写りすぎてしまったときや白飛びした部分を見えるようにするためにあえて露光量を下げるといった使い道もあります。

 

【栃久保さんのワンポイントアドバイス】

「白飛び」とは写真に写っている白いものや明るい部分が明るくなりすぎて、真っ白でのっぺりとした状態になってしまう現象です。露光量を上げる際には、白飛びがなるべく起きないように注意しながら調整します。また、もともと暗い部分を明るくするとノイズ(ザラザラして画質が悪く見える状態)が発生しやすいので注意しましょう。

 

コントラスト

コントラストは、先述したとおり明るい部分と暗い部分との「明るさの差」を調整する機能です。コントラストを強めることで、明るい部分はより明るく、暗い部分はより暗くなります。広く普及している写真投稿SNSにも搭載されている機能なので使い慣れている人も多く、初心者でも簡単に調整が行えるでしょう。

 

【栃久保さんのワンポイントアドバイス】

人物の写真でコントラストを強くしすぎると、肌がオレンジ色がかって見えたり、髪の毛が黒く塗りつぶされたように不自然になったりすることがあります。コントラストに限ったことではありませんが、加工しすぎないようにすることを私はいつも心がけています。また、反対にコントラストを弱めることで、白飛びしていた部分や黒く潰れてしまっていた部分が改善する効果も望めます。

 

色温度 

光の色を調整する機能で、ホワイトバランスともいいます。数値を上げると赤みがかった色合いに、下げると青みがかった色合いになります。写真編集アプリによっては「暖かみ」という名称になっていることもある機能です。

 

【栃久保さんのワンポイントアドバイス】

まず先述したように白い物が白く見えるように調整します。Adobe Photoshop Lightroomではホワイトバランスのスポイトという機能を使って、白もしくはグレーの部分をタッチすると、自動で白い物が白くなるように調整してくれます。そのうえでメインの被写体に合わせた色温度を調節してみましょう。例えば料理は、赤みがかった暖かみのある色合いに寄せたほうが食欲をそそります。。人物もそのようにすることで温もりのある印象になり、反対に青みがかった色合いにするとクールかつ透明感のある雰囲気を演出できます。

 

彩度

調す。使す。

 

【栃久保さんのワンポイントアドバイス】

Lightroomには「自然な彩度」と「彩度」という2種類の機能があります。「彩度」は全体の色合いを強めて鮮やかさを高めますが、「自然な彩度」は写真の中でも鮮やかではない部分の彩度を緩やかに上げることでマイルドに仕上がります。まず「自然な彩度」を使って調整し、それでも足りなければ「彩度」を使って鮮やかさをさらにプラスすることをおすすめします。彩度を上げすぎると不自然さが強くなりがちなので気をつけましょう。

 

トーンカーブ

明るさ、コントラスト、色味などを細かく調整する機能です。主に、上記に挙げた個別の機能を使って基本の編集を行った後の微調整に使用されます。

 

【栃久保さんのワンポイントアドバイス】

私はトーンカーブを使うことがあまりないのですが、使っているプロのフォトグラファーは多いようです。写真編集の初心者は、これまでに紹介した基本の編集に慣れてきた段階でトーンカーブを駆使した細かな調整にチャレンジしてみることをおすすめします。

 

切り抜き 

画角を調整して、背景の広さや被写体の位置を調整できる機能です。

 

【栃久保さんのワンポイントアドバイス】

「三分割法」といって、写真を縦3マス×横3マス=9マスに分けるよう線を引き、線がクロスしたところに撮影したい対象物を置くとバランスが良くなるという法則があります。この三分割法の構図になるように画角を調整するのも、見映え良く編集する一つの方法です。

 

スポット修正 

スポット修正は、写り込んだ不要な物やレンズのゴミなどを消したいときに使います。

 

【栃久保さんのワンポイントアドバイス】

私が普段Lightroomでスポット修正をするときは、コピースタンプの中の「修復」というモードをよく使います。貼り付けた部分が周囲と馴染むよう自動で補正してくれるため自然な仕上がりになり、とても便利です。

 

同期 

最後に、編集作業を効率よく行うための機能を紹介します。Lightroomにある「同期」という機能を使うと、1枚の写真に適用させた露光量やコントラストなどの設定を、他の写真にも一括で適用させることができるため、同じ環境で撮影した大量の写真をまとめて編集する際に役立つのです。また、自分がよく使う設定をいくつも保存しておける機能もあります。

 

【栃久保さんのワンポイントアドバイス】

私は「屋外」「風景」「料理」など撮影シチュエーション別の設定を保存しておき、それを適用させた後で必要に応じて個別に調整しています。これで作業効率が格段に上がるとともに、自身のオリジナリティの確率にもなります。

 

 

写真編集ソフトを活用して写真のクオリティを上げよう 

 

​​写真編集ソフトのさまざまな機能を使うと、写真のクオリティを高められるようになります。豊富な機能を備えたプロ仕様でありながら、初心者でもチャレンジしやすい手軽さを持つ Lightroom。各機能を活用して、写真編集の一歩を踏み出してみてください。

 

Lightroom

 

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取材協力:栃久保誠(とちくぼ・まこと)

フォトグラファー / ビデオグラファー

1982年生まれ、東京出身。南品川の日本茶カフェ「茶箱」共同オーナー。

世界一周中に撮ることの楽しさを覚え写真家を志す。現在は映像制作にも携わる。

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(取材・執筆:北村朱里 編集:ノオト)