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魅力的な手の描き方

漫画やイラストを描く時に、「手がうまくかけない」という悩みを持っている方は多いと思います。

今回は、基本の練習編から、ポイント編、応用編などを、簡単に解説してみました。これから絵を描き始める初心者の方や、魅力的な手を描きたいと考えている経験者の方の手助けになれば幸いです。

目次

手の描き方・基本編「3つのパーツで把握」

手の描き方・練習編「鏡や写真を見て描こう」

性別や年齢による手の描き分け方

手を使ったディティールの表現

手の描き方・応用編「手を使った関係性の表現」

手の描き方・基本編「3つのパーツで把握」

人体デッサンを学んだことがある方なら、「人体を描く時は骨から描く」という方も多いでしょう。手の形はまさに骨の形。動きは関節の可動域です。常に骨を意識して手を描く練習ができればベストですが、それはなかなかハードルが高いことです。

そこで、手の構造に基づいた「3つのパーツで把握」する描き方を紹介します。

図のように、手を「親指とその付け根」「手の平」「人差し指から小指まで」という3つのパーツに分けて、細長い円形などで大体の大きさを決めます。手の平の部分と指の部分の比率は1対1くらいです。リアルな人間の手よりも、やや横幅を抑えたバランスにすると、「きれい」な印象になるため、少女漫画など女性向けの漫画やイラストでは指の部分が長めにとられることが多いようです。

円形で大体の大きさをとったら、次に指ごとに長さを変えた円を描き、最後に指を描いていきます。指を描く時は関節の位置を意識しておきましょう。

手は3つのパーツを意識して描きます。指の長さは円をイメージするとよいでしょう(イラスト:Saku.U)

ポイントは、正面から見た手の平の場合でも、親指は少し内側を向いているということ。指は閉じても開いても長さや関節ごとの比率は変化しないということ。親指とその他の指の可動域のちがいを理解することなどです。

指にある関節ごとの長さの比率は、リアルな人間の手の場合は爪先側にいくほど短くなりますが、漫画やイラストの場合は同じか逆に先に行くほどやや長めに描かれることがあります。

指先が長い方が、手の動きを目立たせやすいため、作者によってさまざまなデフォルメがされているということでしょう。

基本的な手が描けるようになったら、自分の絵柄に合わせて、工夫していきましょう。

手の描き方・練習編「鏡や写真を見て描こう」

広げた手をくり返し描く練習をすることで、「3つのパーツ」の大きさやバランスを把握してから、握った手や物を持つ手などバリエーションを増やしていきましょう。

手のポーズや向きが変わっても、たとえば、親指が動く時には付け根の下ごと動くなど、「3つのパーツ」を意識して描くことでバランスのよい手になります。

実際に手を描く時は、鏡でポーズをつけた自分の手をいろいろな角度から確認し、写真に撮って見本にするとよいでしょう。さまざまなポーズが集められたカット集なども便利ですが、自分自身が描く人物とカット集の中のサンプルの人物は同じではないため、そのまま写すと不自然に見えてしまうことがあります。そのため、ある程度自分で基本の手が描けるようになり、カット集を参考に自分の絵としてアレンジできるようになってからの活用をオススメします。

自分の手を観察するとよくわかりますが、手には凹凸が意外とたくさんあります。手の平には筋肉による凹凸があり、手の甲には骨と筋肉、場合によっては血管による凹凸があります。漫画などでは、手の甲側から描く場合が多いので、指を開いた時や曲げた時に骨や筋肉がどのように動いて凹凸をつけるのかをしっかり観察しましょう。

指はつい反らして描いてしまいがち。自分の手をよく観察してみましょう(イラスト:Saku.U)

たとえば図のように、細くて長い指を表現するためにすべての節と節の間を反らしてしまうと、不自然なバランスになってしまいます。逆に握った手や物を掴んだ手の大まかな輪郭線の凹凸がきちんととらえられると、細かく描き込まなくても「らしく」見えます。引きのコマで手を描く時には、輪郭線を意識しましょう。

また、左右どちらの手も自由自在に描けるようになることが理想ですが、どちらか描きやすい方向が決まっていれば、描きやすい方の手をPhotoshopなどで反転してもよいでしょう。

手だけを描く時も、その手には腕がつながっており、その腕はさらに身体につながっているということを意識することが大切です。

漫画の中など連続したコマの中で描く場合は、物を持つ手の方向が変わったり、指輪や腕時計などのアクセサリーのついた手が入れ替わったりしないかにも注意しましょう。

性別や年齢による手の描き分け方

手は、性別や年齢によるちがいが明確に出るパーツです。手をアップで描く時はもちろんですが、大きさや形の特徴を掴んでおけば、引きの構図で描く時にもそれぞれのニュアンスのつけ方がわかります。

特に手の甲側は、関節の凹凸や爪があるため特徴がはっきりと出ます。もちろん、「女性にしては肉厚な手」、「男性にしては細い手」、「年齢を感じさせない若々しい手」、「大人なのに子どものような手」など、描く人物の造形によって、さまざまな手が存在しますので、基本をおさえた上で、その人物の個性に合った手を描きわけられると理想的です。

女性の手は曲線、男性の手はごつごつしているといった描き分けポイントは、腕を描く場合も同様です。

さらに、腕から肩にかけては、手とちがい筋肉のつき方で見た目が大きく変わります。袖などで見えない場合も、腕の太さのちがいなどは忘れないようにしましょう。

男性、女性、老人、子どもの手の例とその特徴(イラスト:Saku.U)

そのほか、描き分けをする際に、ポイントとなるのは大きさです。

たとえば、考えごとをする際に顎や口元に指先を添えたり、頬杖をついたり、額に手を当てて熱を測ったり、涙を拭ったりと手と顔が接するポーズは数多くあります。こうしたケースでは、顔と手の大きさのバランスに気をつけるとよいでしょう。

頬杖をつくポーズは、腕が軸となって頭部の重さの一部を支える状態になるため、手と顔の大きさのバランスだけでなく位置関係にも注意が必要です。

成人男女の場合は、広げた手の大きさはそれぞれの顔の大きさと同じくらいです。男性の手が女性の顔の横にある時は手の方がやや大きく。逆に女性の手が男性の顔の横にある時は手の方がやや小さくなります。子どもは、年齢が低いほど身体全体の比率の中で頭部が占める割合が大きいため、顔に対する手の大きさが年齢によってどんどん変化します。育児書のイラストなど厳密な描き分けが必要なもの以外は、あまりこだわり過ぎる必要はありませんが、年齢相応の子どもらしさを表現するテクニックの一つとして覚えておくとよいでしょう。

着彩時にも、描き分けたポイントを意識して、肌の色の濃淡や凹凸の陰影をつけていきましょう。男性の手は女性よりも凹凸があるので、陰影がしっかりとつきます。女性の爪は、マニュキュアなどで色をつけていない場合も、少しピンクっぽくするとやわらかな印象になります。

老人の手は男女ともに肌色がくすみがちですが、あまりリアルにすると目立ち過ぎるため、特に意図して描き込む場合以外は、適度にデフォルメするとよいでしょう。子どもの手も女性と同じく、少しピンクっぽい色合いにすると、やわらかく可愛い印象になります。

年齢や性別による着彩の違い(イラスト:Saku.U)

手を使ったディティールの表現

性別や年齢によって手の大きさがちがうため、顔や身体とのサイズ感のバランスに注意する必要があることは先に解説した通りです。

一方、身体の大きさに対しての手の大きさは、読者が感覚的にイメージしやすいものです。そのため、手は物の大きさをわかりやすく伝える定規のような役割を果たします。

たとえば、カップだけのイラストでは、マグカップなのか、普通のコーヒーカップなのか、デミタスサイズのカップなのかがわからなくても、手で持つことで大きさが一目瞭然になります。

カップを持つ手のイラスト。実物のサイズ感を意識して描くようにしましょう(イラスト:Saku.U)

性別や年齢によって手の大きさがちがうため、顔や身体とのサイズ感のバランスに注意する必要があることは先に解説した通りです。

一方、身体の大きさに対しての手の大きさは、読者が感覚的にイメージしやすいものです。そのため、手は物の大きさをわかりやすく伝える定規のような役割を果たします。

たとえば、カップだけのイラストでは、マグカップなのか、普通のコーヒーカップなのか、デミタスサイズのカップなのかがわからなくても、手で持つことで大きさが一目瞭然になります。食器や飲食物、文房具、カード類、スポーツ用品、スマホなど、手と一緒に描く小道具は、手の大きさと比べたサイズ感を意識しましょう。

また、手すりやつり革など、固定されたものは、大きさだけでなく、高い位置にあるのか低い位置にあるのかなど、身体に対しての位置関係も手の向きや持ち方などからわかります。位置関係を把握するには、手だけでなく腕の角度がどうなっているのか、身体はどちらを向いているのかも考えていきます。漫画などでは、アップのコマと引きのコマで、物の大きさと身体(特に手)の大きさのバランスや位置関係がちぐはぐにならないように注意しましょう。

こうしたディティールは、絵を描く上で注意するべき点ですが、逆に考えれば、それだけ多くの情報を読者に伝えることができるアピールポイントでもあります。小さなコマに描かれたボールでも、手に持っていれば、それが卓球のボールなのか、テニスボールなのか、野球のボールなのかを伝えることができます。カップなら、持ち方によって、熱いコーヒーがなみなみと入っているカップなのか、飲み終わってほとんど空に近いカップなのかをさり気なく表現することができます。

そのほかにも、たとえばティーカップを片手で持つ性格なのか、慎重に両手で持ち上げる性格なのか、といった人物描写に活かすことも可能です。

手と共に描くものが、身近なものの場合は、持ち方などを自分で実践し、写真に撮って参考にすることができますが、たとえば、楽器の演奏など身近にないものやテクニカルな動きを必要とする手を描く時は、演奏会の映像やレッスン動画など実際に動きがわかる資料を参考にしましょう。

「なぜこうした手の形になるか」、「どこに力が入っているのか」という意味がわかると、絵の説得力が増します。

手の描き方・応用編「手を使った関係性の表現」

手は物だけでなく、他の人物に触れることが最も多い身体の一部分です。同じ動作でも、相手との関係性によって、その触れ方は変化します。

漫画のような一連のストーリーを描く中での表現はもちろんですが、1枚もののイラストでも、構図の中の人物と人物の関係性を掘り下げた上で、どんな風に触れ合っていればその関係性が表現できるかを考えて描くと、物語性がぐっと深まります。

図は2組のつないだ手です。お互いにしっかりと指と指を絡ませてつなぐのか、一方は相手に少し預けるようにして一方はその手を包むようにしてつなぐのかで、それぞれの関係性のちがいが出ています。

つないだ手を引き寄せたり、揺らしたりといった、手の動作の描写を続けるだけでも、登場人物の感情の動きや関係性の変化が表現できます。

大人と子どもが手をつないで歩いている時も、大人が子どもの手を引くのか子どもが大人の手を引くのかで、その時々の状況や感情のちがいを表すことができます。

実は「つないだ手」というものは、いくつかある手の構図の中でも難易度が高いものです。2人の人物の手の大きさや位置関係を確認し、前にある手と後ろにある手がそれぞれどんなポーズで組み合わさっているのかしっかりと把握して描くのはなかなか大変です。

でも、「人物Aは相手をこう思っているからこんな手の動き、人物Bは相手をこう思っているからこんな手の動き」と、ひとつひとつの意味を考えながら描くことで、ディティールだけではなく想いがこもった仕上がりになるのではないでしょうか。

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