このレイアウト、どっちが正解？レイアウトのセンスを磨いておこう
現場で使えるデザインセンスを、2択クイズで身に付ける「デザインクイズチャレンジ」。
デザイナーのでざいん姉さんこと佐野五月です。
今回、私は「レイアウト」についてのクイズを出題します。
早速ですが、3問クイズを出します。
以下の3つの作例を見て、AとB、あなたはどちらの「レイアウト」がよいと感じますか？
1問目「情報がスッと入ってくるのはどっち？」（難易度★）
椅子のカタログ、パッと見て情報を把握しやすいのはどっち？
2問目「情報の流れがスムーズなのはどっち？」（難易度★★）
イベントのチラシ、情報がスムーズに入ってくるのはどっち？
3問目「洗練されたデザインはどっち？」（難易度★★★）
ドーナツのカタログ、違和感のないデザインはどっち？
いかがでしたか？
私が考える答えは……
1問目の答え：B
2問目の答え：B
3問目の答え：A
以上が私なりの解答です。
あなたがよいと感じたレイアウトは、それぞれAとBどちらでしたか？
ではここからは、それぞれの作例AとBで、何が異なっていたのか？を説明し、作例で用いられていたデザインテクニックについて紹介していきます。
1．“関係ある情報”は近接を意識してまとめる
まず、1問目から振り返っていきましょう。
私が選んだ答えは「B」でした。
作例AとBの違いは「情報のグルーピング」です。
作例Aのレイアウトでは、商品写真と商品名・価格がそれぞれ離れて配置されています。
そのため、どれがどの商品に対する情報なのかが直感的にわからず、見る人が戸惑ってしまいます。
一方、Bのレイアウトでは、商品写真のすぐ下に商品名・価格が配置されています。
関連する情報の位置が近いため、商品名・価格が商品写真に関連付けられていることが一目でわかります。
作例Aのようなレイアウトを作らないためには、次にご紹介する、デザインの4つの基本原則を知っておきましょう。
デザインは「4つの基本原則」を意識する
デザインには4つの基本原則があります。
近接、整列、反復（繰り返し）、対比（コントラスト）というものです。
それぞれを図にまとめてみました。
この基本原則のうち、作例Aは「近接」への配慮が足りていませんでした。
近接とは、関係のある情報は近くにまとめ、関係のない情報は離して配置するという考え方です。
デザインを見る人は、要素同士が近いと自然に「同じグループ」であると認識します。
逆に、離れているものは「別の情報」と判断します。
そのため、近接を意識したレイアウトを組むことで、情報のまとまりがひと目でわかりやすくなり、見やすいデザインになります。
近接は「近づける」だけでなく「離す」の視点も大切
近接を意識するうえでは、要素を近づけたほうがよいのはもちろんですが、実は「どれくらい離すか」も大切です。
まず、近しい要素をまとめる。
そのうえで、まとまった要素を、ほかのまとまった要素と離すことで、よりわかりやすく近接を実現できます。
例えば、見出しと本文を近づければ「この文章はこの見出しの説明だ」と認識され、逆に章やカテゴリーを分けたいときは、余白を広くとることで「別の内容だ」と感じさせることができます。
このように、近づける距離と離す余白のバランスを意識することで、情報のまとまりがより明確になり、全体の読みやすさが大きく向上します。
2．視線には“流れ”がある
次に2問目を振り返ります。
私の答えは「B」でした。
作例AとBの違いは「視線誘導」です。
人はデザインを見るとき、無意識に目を動かしています。
実は、この視線の動きには一定の「流れ」があり、どの順番で情報を目にするかによって、デザインの印象や情報伝達が大きく変わります。
作例Aのレイアウトでは、要素がそれぞれ独立して配置されており、視線があちこちに散らばってしまいます。
一方、Bのレイアウトでは、視線が自然に左上から右下へ、Zの形のように流れるように配置されています。
これは「Zの法則」と呼ばれるレイアウトの基本を応用したもので、視線の流れに沿って重要な要素が並んでいるため、情報がスムーズに伝わります。
また、見る人にとっても視線の動きが整理されているため、情報を自然に追いやすく、理解の負担が少なくなります。
一見するとAのデザインは整って見えますし、決して悪いわけではありません。
例えば、重要な情報である展覧会名が左上に配置されている点は、視線の入りとして理にかなっています。
ただし、「情報をどう読ませたいか」という観点で見ると、展覧会名からほかの詳細情報への視線の流れが途中で分断されてしまっています。
その結果、全体としての伝達力がやや弱くなっています。
もちろん、“意図的にあえて視線を散らすデザイン”が効果的に使われる場面もありますが、基本的なレイアウトでは、情報をどんな順番で見せたいかを意識して設計することが大切です。
また、視線誘導を意識する際は、紙媒体とウェブで視線の動き方に違いがあることも覚えておきましょう。
視線誘導は媒体によっても変わる
紙媒体は「面」で見る
ポスターやチラシのような紙媒体のデザインは、1枚の紙面という限られた領域の中で全体を「面」として構成する傾向があります。
多くの場合、視線は左上から右下へと自然に移動し、文字を読むように情報を追っていきます。
ウェブは「流れ」で読む
一方で、ウェブデザインではページをスクロールしながら閲覧するため、縦方向への流れが中心です。
しかし、単にページの上から下にまっすぐ目を動かしているわけではありません。
実際には、大きな見出しや写真、ボタンといった目立つ要素があるたびに、視線はそこへ引き寄せられます。
このように、ウェブデザインでは全体の流れを作るだけでなく、「どこでユーザーの目を止めたいか」を意識して配置を設計することが重要です。
ちなみに、以下の記事ではチラシをデザインするコツや、Illustratorでチラシをデザインする方法を解説しています。
レイアウトについても触れているので、興味がある方はぜひチェックしてください。
3．整列で“見えない線”を揃える
それでは最後の3問目です。
3問目はどこが異なるかわかりましたか？
私が選んだ正解は「A」でした。
この作例AとBの違いは「統一感」です。
作例Aのレイアウトでは、ドーナツの横幅をすべて同じサイズにそろえるというルールを設けています。
さらに、ドーナツを縦に見たときに中央の軸にきちんと揃えて配置しています。
一方、Bのレイアウトでは、ドーナツの大きさがバラバラで、中央軸から左右にズレて配置されてしまっています。
作例Bのようなズレが積み重なると、見る人に「なんとなく落ち着かない」「見にくい」という違和感を与えてしまいます。
実はこの問題3は、先ほどご紹介したデザインの「4つの基本原則」のうち「整列」に関するものです。
ではここからは、レイアウトデザインにおいて重要な「整列」のテクニックについて解説していきます。
「整列」の基本は、ルールを一貫させること
整列で大切なのは「ルールを決めて一貫させること」です。
ルールとは、中央揃え・左揃え・右揃えなどの位置だけでなく、サイズ（大きさ）や間隔など、いろいろな要素を指します。
テキストや図形、写真などを配置するときは「見えない基準線」を用いて、「どの要素をどの位置に揃えるか」を決めます。
以下の図は、揃え方の例です。
実は2問目のデザインも「見えない基準線」に沿ってレイアウトをしていました。
それにより、全体に統一感のある、整ったデザインを実現していました。
Illustratorを使ってレイアウトしよう
Illustratorを使えば、レイアウトデザインの強い味方。
上記の作例のような「整列」を実現するのもカンタンです。
その方法についてご紹介します。
1. 整列パネルを活用する
ウィンドウメニューにある「整列」から開ける整列パネルを使うと、オブジェクト同士を正確に中央・左・右などに揃えられます。
目視での調整よりも、正確で美しいレイアウトが実現します。
2. スマートガイドで“見えない線”をつかむ
表示メニューの「スマートガイド」を使うと、、オブジェクトを動かす際に自動で基準線が表示されます。
基準線を意識したレイアウトデザインに欠かせない機能です。
3. ガイドを活用する
デザインを進める前に、ガイドを作成して基準線を引いておくのもオススメです。
まず、線や図形などのオブジェクトを選択した状態で、表示メニューの「ガイド」から「ガイドを作成」を選択します。
選択したオブジェクトがそのままガイドになり、位置の基準として固定されます。
あらかじめガイドを引いておくことで、「どこを揃えるか」「どこを起点に配置するか」が明確になり、配置の迷いを減らせます。
整列を意識した配置については、以下のクイズでも取り扱っているので、ぜひチャレンジしてみてください。
このデザインの配置、どっちが正解？整列のセンスを磨いておこう
今回のデザインクイズのまとめ：「レイアウトの基本」を磨くポイント
今回はレイアウトにまつわるクイズと、デザインテクニックを取り上げました。
最後に今回のノウハウのまとめです。
1．関連する情報はまとめて配置しよう（近接）
「近接」は、関係のある情報を近くに、関係のない情報を離して配置する考え方です。
関連する情報がまとまっていると、視線の移動が少なくなり、内容を直感的に理解できます。
見出しと本文、写真とキャプション、メニューと価格など、「セットで見せたい情報」同士を近づけることが基本です。
2．視線の流れを意識してレイアウトしよう（視線誘導）
人の目は、無意識に一定の順番で情報を追っています。
視線誘導を意識したレイアウトをすると、視線が自然に動いて情報が伝わりやすくなります。
要素をランダムに置くのではなく、「どこから見て、どの順で読んでほしいか」を考えて配置するのがポイントです。
3．見えない基準線でそろえて配置しよう（整列）
「整列」は、テキストや写真などの要素を見えない線に沿って配置する考え方です。
基準線をそろえることで視線が迷わず、レイアウト全体がすっきり整って見えます。
すべての要素は、他の要素と何らかの視覚的なつながりを持つように配置するのが理想です。
レイアウト全体で大切なのは、ルールをもって要素を配置すること。
そうすることで、整ったレイアウトデザインを実現でき、見る人に安心感を与えます。
お相手は、デザイナーのでざいん姉さんこと佐野五月でした。
このコーナーでは、あなたのデザイン力アップに役立つ様々なクイズをお届けしています。
よかったら、ほかのクイズにもぜひ挑戦してみてください。
※本コンテンツは、デザイナーがそれぞれの視点で理想とするデザインを語っています。
クイズの正解はひとつではなく、あくまで参考としてご活用ください。
アートディレクター、ブランディングデザイナー、irohazum代表
ONLINE上司グラフィックデザイン課チーフ。著書に『デザインはヒアリングからはじまる』（2025年11月発売予定）