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Jan. 2005

スタジオジブリ


生き生きと動く城や舞台はどうやって表現されている?
各シーンに使われたジブリ独自のデジタル制作手法

まるで生き物のように動くハウルの城。絵画のような質感でありながらスクリーンで縦横無尽に動く意外さに驚いた人も多いだろう。この表現は、ここで紹介するデジタル技術によって実現されていた。

「ハーモニー処理」で描かれた質感豊かな城の動きをデジタルで表現

スタジオジブリでは、3DCGなどで処理する工程を「デジタル作画」と呼んでいる。ここから想像できるように、3Dなどのデジタル技術は従来の作画で表現しきれない部分を補完する意味合いが強いため、「いかにもCG」と感じられる場面はほとんどない。その中で、今回デジタル技術が活用された代表的なもののひとつが「動く城」。本編開始早々に登場する城は、質感豊かに描かれた各パーツが、全体にひとつのキャラクターとしてまとまりながら、生き物のような独自の動きを展開し、観る者を圧倒していく。ここに、アナログの利点とデジタル技術を融合させた技術が用いられている。

分割した城の各パーツに個別に動きを設定

城の表現は、ジブリ独自の特殊技術「ハーモニー処理」と3DCGによる立体表現、動きの設定などを合わせて実現された。ハーモニー処理とは、セルに絵画的なタッチで描き込んでいく特殊なテクニックで、平面的な従来のセル画のタッチとは異なる、手描きの質感をもった動画の作成が可能だ。実際にどのような仕組みで城が表現されていったのかを大まかにみてみよう。まず、ハーモニー処理で描かれたセル画の城がデジタルカメラで撮影される(図1)。このデータをデジタル作画担当者がAdobe® Photoshop®でパーツごとに分割し、バラバラの状態に調整したあと(図2)、「SOFTIMAGE|3D」で作成した板状のポリゴンにそれぞれ貼り込む(図3)。ここでパーツが重なっている部分をずらしたり、揺らしたり、持ち上げたりと、個別に動きを設定していく。手描きの質感表現を損なわずに生き生きと動く立体的な城の表現は、こうして行われている(図4)。
パーツごとの処理のしかたを検討
図1 デジタル化されたハーモニー。パーツごとに処理のしかたが検討され、赤で書き込まれている。このハーモニー処理を行うには、絵の具の重なりを反転した状態でセルに描く特殊な技術がスタッフに要求される。今回の作画は、ひとりの専門スタッフによりすべて行われた

Photoshopのレイヤーマスクを使って、城をパーツごとに分割 Photoshopのレイヤーマスクを使って、城をパーツごとに分割
図2 Photoshopのレイヤーマスクを使って、城をパーツごとに分割していく。制作中「作業用途のほとんどはマスキング」といってもよいくらい、Photoshopではマスク機能がよく使われたそうだ。バラバラにしたパーツを動かすテクニックは、『風の谷のナウシカ』の「王蟲」を動かす際に使った「ゴムマルチ」という手法にヒントを得て採用された
SOFTIMAGE|3D」で作成された板状のポリゴンに、各パーツを張り込む
図3 「SOFTIMAGE|3D」で作成された板状のポリゴンに、各パーツを張り込む

完成した城
図4 完成した城。重厚な絵画タッチの質感と立体感を保ちながら、生き物のようにスクリーン上を動き回る


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