
業務の中で、文書を比較して確認する機会は意外と多いものです。契約書の監査、記事の原稿チェック、デザインデータの確認など、様々な場面で文書の違いを正確に把握することが求められます。しかし、目視での確認は時間がかかるうえ、見落としのリスクもあります。効率的かつ正確に比較するためには、PDF比較ツールを活用するのが有効です。
Adobe Acrobat Proの「ファイルを比較」ツールを活用すれば、 2つのPDFファイルを解析し、テキストはもちろん、画像の差異もカンタンに確認できます。フォントの置換や細かなレイアウト崩れなど、デザインに関わるチェックにも有効です。
本記事では、 Acrobat Proを活用したPDFの比較の手順を詳しく解説するとともに、比較がうまくいかない場合の解決策も紹介します。PDFの差分を正確かつ効率的に確認する方法を理解し、業務の精度向上に役立てましょう。
Adobe AcrobatでPDFファイルを比較する手順
Acrobat Proを使ってPDFを比較する手順を、実際の画面のキャプチャとともにわかりやすく解説します。直感的なUIで操作が非常にカンタンなので、初めての方も安心してお進みください。
まずはソフトを無料でダウンロードしましょう。Acrobat Proの公式サイトにアクセスして、「無料で始める」をクリックしてください。
任意のプランを選択して「続行」をクリックしてください。
なお、どのプランにも7日間の無料体験が付いており、期間中に解約した場合は料金が一切かかりません。書類業務全般に役立つ機能が搭載されていますので、ぜひご活用ください。
支払い情報を登録してソフトをダウンロードできたら、アイコンをダブルクリックして起動させてください。
ここから、Acrobat ProでPDFを比較する手順を以下の2工程に分けて解説します。
- 【手順1】比較対象のファイルを開く
- 【手順2】比較結果を確認する
【手順1】比較対象のファイルを開く
今回は以下の2つのPDFファイルを実際に比較しながら解説を進めます。
目視しただけではわかりづらいですが、実は上の文書には以下の差分が存在します。
- 「発注書」の書体の変更
- 金額の変更
- 印影画像の変更
- 「メールアドレス」の挿入
- 「支払い方法」の削除
このように、パッと見ただけでは気が付かないような細かい箇所も、ツールを使えば精密に洗い出せます。
それでは手順を見ていきましょう。
まず片方のPDFファイルをAcrobat Proで開き、「すべてのツール」から「ファイルを比較」を選択します(項目が一部しか表示されないときは、「さらに表示」をクリックしてください)。
元々開いていたPDFファイルが、「古いファイル」として選択されます。
変更したい場合は「ファイルを変更」から別のファイルを選んでください。
「新しいファイル」の「ファイルを選択」をクリックして、比較したいPDFファイルを選択します。
サムネイルの間の矢印をクリックすると、古いファイルと新しいファイルを入れ替えられます。
「テキストのみを比較」にチェックを入れると、画像やフォントなどの視覚要素の差分を無視し、テキストの差分のみを比較できます。文書の内容面のみに注目したいときはオススメです。
なお、ここでチェックを入れなくても、比較を実行した後にテキストの差分のみを絞り込んで表示することもできます。
「設定」をクリックすると、ポップアップが開き詳細な設定を行えます。
- 「比較するページ範囲」:入力したページ番号同士を比較できます。ファイル内の一部のページのみを比較したい場合にオススメです。
- 「文書の説明」:比較するPDFの種類を指定して処理を最適化できます。
- 「自動検出」:文書の種類がAcrobat によって決定されます。迷ったらこちらを選択すれば問題ありません。
- 「レポート、スプレッドシート、雑誌レイアウト」:PDF内のコンテンツを1つの連続したテキストとして扱い、最初から最後まで比較します。
- 「プレゼンテーションスライド」:ファイル内の各ページを1つのミニ文書として参照し、比較対象のPDFファイル内の類似したページと比較します。ファイル内でページが移動されていても、類似したページ同士を比較可能です。
- 「スキャンした文書、図面、イラスト」:スキャンして作成したPDFファイル同士のピクセルを比較します。テキストデータを持たないPDFファイル同士の差分を発見可能です。
- 「レポートで表示」:比較結果のレポートページで表示する項目を設定できます。
設定が完了したら「OK」を押してポップアップを閉じてください。
「比較」ボタンをクリックすると、PDFファイルの比較処理が始まります。
【手順2】比較結果を確認する
処理が完了すると、2つの文書が左右に並び、差分がハイライトされます。
また、最上部のレポートからは比較結果の概要も確認できます。
今回の例では7件の置換、1件の挿入、1件の削除、1件のスタイル変更が見つかりました。
ページ上でハイライトされている箇所をクリックすると、具体的な差異の内容を確認できます。例えば、書体を変更した「発注書」という見出しをクリックすると、「フォント「NotoSnasJP-bold」が「ZenOldMincho-Black」に変更されました。」と表示されます。
さらに、差分にコメントを付けて、スレッド形式で他の人とやりとりすることも可能です。
例えば、商品単価の箇所をクリックすると、「[旧] : 「¥50,000」 [新] : 「¥40,000」」と表示されます。この状態で「返信」を押すと入力欄が表示され、コメントを付けられます。これに対して他の人がさらに返信できるため、チェックバックのやりとりが格段に効率化されます。
また、テキストだけでなく、画像の差分も比較できます。今回の例では印影内の文字のフォントが変更されており、画像としての変化はわずかですが、差分としてしっかり検出されています。
表示したい差分の種類を指定したいときは、メニューバーの「フィルター」から任意の項目を選択できます。
以上のように、Acrobat Proを使用すれば、テキストの比較だけでなく、書体の変更や画像の置換まで正確に検出できます。契約書の変更点の確認、マニュアルの差分検証、デザインデータの修正チェックなど、様々なシーンで役立ちます。
次の章では、PDFの比較がうまくいかない場合の解決方法を紹介します。
PDFの比較がうまくいかない原因と解決策
PDFファイルの比較がうまくいかない場合、主に以下の3つの原因が考えられます。
- テキストデータがない
- ファイルサイズが大きい/ページ数が多い
- Adobe以外のソフトで作成された
以下で、それぞれの解決方法を紹介します。
テキストデータがない
PDFには、テキストデータを含むものと含まないものがあります。例えば、紙をスキャンして作成したPDFや画像データから変換したPDFにはテキストデータが含まれていません。そのため、通常の比較では正しく差分を検出できない可能性があります。
この問題を解決する方法として、以下の2つが考えられます。
1.比較の設定で「スキャンした文書、図面、イラスト」を選択する
「Adobe AcrobatでPDFファイルを比較する手順」の章でも解説したように、Acrobat Proでは比較対象のファイルの文書形式を指定できます。このときに「スキャンした文書、図面、イラスト」を選択すると、テキストデータではなくピクセルデータを比較し、視覚的な差分を検出できるため、テキストデータのないPDFでも正しく比較できます。
2.OCRでテキストデータを生成する
OCR(Optical Character Recognition / 光学文字認識)とは、印刷された文字や手書きの文字をデジタルテキストに変換する技術です。これを活用すると、文字情報を持たないPDFからテキストデータを生成できます。
Acrobat Proでは「スキャンとOCR」機能からカンタンにOCRを実行できます。また、無料のオンラインツール「Adobe Acrobat オンラインツール」にもOCR機能が備わっており、ブラウザーでアクセスするだけですぐに使えます。
なお、以下の記事では無料のオンラインツールを使って、PDFをOCRでテキスト認識・検索可能にする方法を紹介しています。ぜひ、あわせてご覧ください。
ファイルサイズが大きい/ページ数が多い
PDFファイルのサイズが大きかったり、ページ数が多かったりすると、デバイスのメモリが圧迫されてソフトが停止したり、処理に時間がかかりすぎてエラーが発生したりする可能性があります。
この問題を解決する方法として、以下の2つが考えられます。
1.比較する要素を限定する
「Adobe AcrobatでPDFファイルを比較する手順」の章でも解説したように、Acrobat Proで比較の設定を行う際に「テキストのみを比較」にチェックを入れると、画像やフォントなどの視覚要素の差分を無視し、テキストの差分のみを比較できます。その分、処理の負荷が軽減され、比較が失敗する可能性が低くなります。
比較したい要素がテキスト以外の場合は、「設定」の「レポートで表示」から対象の要素を選択しましょう。この設定はレポート上の表示にのみ影響するため、チェックを入れていない要素も比較自体は行われます。
しかし、レポートの表示負荷が軽減されることで、処理の負担を抑えられる可能性があります。
2.比較するページを限定する
Acrobat Proの「設定」から比較するページ範囲を指定できます。ページを絞ることで処理の負担が減り、比較の成功率が高まります。
Adobe以外のソフトで作成された
Adobe以外のソフトで作成されたPDFはファイルの仕様が異なるため、比較がうまくいかない場合があります。
PDFを作成する前の元データ(Microsoft Word、Microsoft Excel、画像など)が手元にある場合は、Acrobatを使ってPDFに変換するのがオススメです。
Acrobat Proでは、画面上部の「変換」メニューから「PDFへの変換」を選択し、対象のファイルを指定するだけで、カンタンにPDFに変換できます。
また、無料のAcrobat オンラインツールにもPDFへの変換機能が備わっています。
PDFの比較に関するよくある質問
ここからは、PDFファイルの比較に関するよくある質問に回答していきます。気になる項目をチェックしてみてください。
- デザイン要素も比較できますか?
- 比較がうまくいかないときはどうすればよいですか?
- スキャンしたPDFも比較できますか?
デザイン要素も比較できますか?
はい、Acrobat Proなら画像やフォントなどのデザイン要素も比較可能です。これにより、デザインデータの差分チェックがカンタンに行えます。テキストとデザイン要素の両方を比較することはもちろん、デザイン要素のみを抽出して比較することもできるため、用途に応じて柔軟に使い分けられます。
比較がうまくいかないときはどうすればよいですか?
PDFの比較がうまくいかない場合は、以下の方法を試してみてください。
- テキストデータがない:Acrobat Proの比較設定で「スキャンした文書、図面、イラスト」を使うか、OCRでテキストデータを生成する
- ファイルサイズが大きい/ページ数が多い:比較対象の要素やページを限定する
- Adobe以外のソフトで作成された:AcrobatでPDFを作成する
詳細は「PDFの比較がうまくいかない原因と解決策」で解説しているので、合わせてご覧ください。
スキャンしたPDFも比較できますか?
はい、Acrobat ProならスキャンしたPDFファイルでも比較できます。
「Adobe AcrobatでPDFファイルを比較する手順」で解説したとおり、比較設定で「スキャンした文書、図面、イラスト」を使うと、テキストではなくピクセルデータを比較して視覚的な差分を検出できます。
また、「スキャンとOCR」機能を活用し、文字情報を持たないPDFからテキストデータを生成することも可能です。
Adobe AcrobatならPDFの管理がカンタン
Acrobatなら、PDFファイルの比較はもちろん、PDFに関するあらゆるニーズにお応えできます。
有償版のAcrobat Proは、電子署名や生成AIによる要約といった高度な機能を含む約30個のツールを回数無制限で利用可能です。7日間の無料体験があるので、ぜひお試しください。
また、ブラウザー上で使える無料のAcrobat オンラインツールもオススメです。インターネット環境があれば、WindowsやMacといったOSや、スマホやタブレットといったデバイスを問わず使えます(一部の機能は、スマホやタブレットで使う際にアプリのインストールが必要です)。
適切な文書管理が求められる場面では、Acrobatの高度なセキュリティ対策と多彩な機能が大きな強みになります。あらゆるPDF関連業務をスムーズかつ安全に進めるために、ぜひ活用してみてください。
(編集:ウェブライダー)
https://milo.adobe.com/libs/img/mnemonics/svg/acrobat-pro-64.svg
ぜひAdobe Acrobatオンラインツールをお試しください
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