建設業界でPDFを活用した書類を作成する方法
これまで土木や建築などの建設業界では、おもに紙の図面や書類を利用されてきました。しかし、最近では建設業界でも業務のデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)化が進み、PDFデータを利用するシーンも増えています。
そこで本記事では、申請する機会が多い「道路使用許可申請書」をはじめ、建設業界でPDFを活用した書類を作成する方法をまとめてご紹介します。
建設業界でPDFファイルが必要となるケースとメリット
建設業界では、後述する「道路使用許可申請書」をはじめ、作業内容に応じて行政への申請書類が必要になるケースが多くあります。以前は紙でのやりとりが一般的でしたが、最近はDX化に伴い、WordやExcel様式の申請書類も増えてきました。
また、コロナ禍による在宅ワークや電子署名の普及から、これまで印刷しての押印が求められてきた稟議書や請求書などもPDF上(ペーパーレス)で管理することが増えています。
ほかにも、測量図やCADで作成する特殊な図面などにおいて、PDFファイルを利用するケースも多くあります。こうした背景から建設業界においては、今後より一層PDFファイルの利用シーンは増えていくでしょう。
紙の書類は、誰でも手軽に扱えるのがメリットですが、一方で保管コストがかかる、劣化しやすいといったのデメリットもあります。
PDFファイルを使用すれば、こうしたデメリットを解消できるだけでなく、「閲覧環境が違っても、同じ図面を閲覧できる」「情報共有・複数人での作業も進めやすい」「パスワードを設定できるため、セキュリティを担保できる」といったの効果も得られます。
また、PDFファイル内のテキスト検索や、改ざん防止など、ビジネスシーンで役に立つ機能が使用できることも大きなメリットです。
PDFファイルの申請書類を作成する方法
PDFファイルの申請書類を作成するには、PDFファイルのまま編集する方法やWord・Excelに変換して編集する方法などがあります。以下にて、PDFファイルを作成する際のポイントや注意点と併せてご紹介します。
記載時のポイント
前提として注意したいのは、「PDF様式の申請書類を編集してもよいかどうか」です。申請書類の中には、確定申告書のようにPDF上での編集を禁止されている公的文書もあります。記載の際は、そのような注意書きがないかどうかあらかじめ確認しておきましょう。
また、「記載漏れがないか」「編集後にフォーマットに大きなズレが発生していないか」「申請理由を適切にアピールできているか」「手書きの際は読みやすい字を意識しているか」といったことも、申請を通過させるために重要なポイントです。
PDFファイルのまま編集する方法
PDF様式の申請書類は、異なる形式に変換すると、フォーマットがズレてしまうことも多いため、PDFファイルのまま編集するのが一番おすすめの方法です。
Adobe AcrobatのWeb版にある「入力と署名」機能では、無料でテキストに下線やハイライトを引いたり、枠線で囲んだりすることができます。また、ソフト版の「編集」機能(有料)を使用すれば、テキストや画像の変更なども可能となります。
ただし、PDF文書が保護されている場合、その作成者でなければ編集できません。作成者に連絡して、PDF ファイルのパスワードを取得しましょう。詳細は「セキュリティ保護された PDF の編集」をご確認ください。
印刷して手書きする方法
PDFの編集機能を利用しない場合は、印刷して手書きすることになります。フォーマットのズレを気にせずに、確実に提出できるのがメリットです。
一方、書き間違えてしまうと、再度印刷して書き直しが必要となってしまいます。申請書類の記入項目が多い場合、書類作成に時間がかかってしまうため、PDFファイルのまま編集することがおすすめです。
Word・Excelに変換して編集する方法
あらかじめMicrosoft Officeをインストールしておけば、PDF様式の申請書類をWordやExcelファイルに変換し、ファイル上に情報を入力することができます。
効率的に情報を入力できる一方で、WordやExcelファイルに変換すると、フォーマットがズレてしまうケースがあります。その際には、申請書類の様式に合わせて調整が必要となるため要注意です。
AdobeAcrobatには、Word/Excelの変換機能もあります。Web版では「PDFをWordに変換」、「PDFをExcelに変換」ページにPDFファイルをアップロードすると、無料でWordやExcelファイルに変換してくれます。もちろん、ソフト版の有料機能でも変換可能です。
PDFを回転する方法
上記がPDFを様式の申請書類を編集する方法となりますが、申請書類が複数ページある場合、本来は縦向きであるべきページが横向きになっていたり、横向きであるべきページが縦向きになっていたりするケースがあります。この場合、Adobe Acrobatの回転機能を使えば、正しい向きに戻すことができます。もちろん、ソフト版の有料機能でも回転可能です。
道路使用許可申請書のPDFを作成する際のポイント
上記でご紹介した申請書類の作成方法をもとにして、建設業界で必要となることが多い「道路使用許可申請書」も作成できます。道路使用許可申請書はWebからダウンロードが可能となっており、PDFやWordの申請様式が用意されています。
添付資料も提出することが必要
道路使用許可申請書の申請には、以下3つの資料提出が必要です。ただし、都道府県・市区町村によって、必要書類の詳細は異なります。
1. 道路使用の場所又は区間の付近の見取図のほか、道路を使用して行う行為の内容(例:路上工事等)が分かるもの
2. 工作物を設ける場合は、その設計図及び仕様書
3. その他、警察署長が許可を行う上で必要と認める書類
なお、警視庁では確認可能なファイル形式が定められていますが、PDF様式であれば問題ありません。
道路占用許可申請書も必要となるケース
国や都道府県、市区町村が管理する道路に足場や看板、日除けなどを設置する場合には、道路占用許可が必要です。また、警備員の人数やロードコーンの有無など、安全性が確保できているかどうかが重要視されます。書面もしくはオンラインで申請でき、「占用許可申請書」はWordやExcelだけでなくPDF様式も用意されています。
建設業界でPDFファイルを活用する方法
建設業界では、申請書類の作成のほか、PDFファイルを活用すると便利なシーンが多くあります。以下では、Adobe AcrobatのWeb版におけるPDF編集機能と主な活用方法を紹介していきます。なお、ソフト版(有料)ではいずれの機能も完備しており、編集・変換・署名の一連の作業をシームレスに行うことができます。
PDFへ変換
建設業界では、手書きの図面を利用したり、CADといった業界特有のソフトで図面を作成したりするケースが多くあります。これらの図面をPDFへ変換することで、多くの人が異なる環境でも閲覧しやすくなります。
JPGをPDFに変換
JPGファイルをアップロードすればPDF様式に変換してくれます。スマートフォンで撮影した施工現場の記録写真や、スキャンした画像などを、PDF変換するのに便利です。
WORDをPDFに変換
請求書や委任状などのWordファイルをアップロードすればPDF様式に変換してくれます。
ExcelをPDFに変換
Excelファイルをアップロードすれば、自動的にPDF様式に変換してくれます。図や表を用いたExcelファイルをメールなどで送るときに便利です。
PowerPointをPDFに変換
PowerPointファイルをアップロードすれば、自動的にPDF様式に変換してくれます。PowerPointファイルをPDF化して共有する際に便利です。
それ以外の形式をPDFに変換
ファイルをアップロードすれば、自動的にPDF様式に変換してくれます。以下の拡張子を持つファイルの変換に対応しています。
DOCX、DOC、XLSX、XLS、PPTX、PPT、TXT、RTF、JPG、PNG、TIFF、BMP、AI、INDD、PSD
なお通常、CADの拡張子はDWF、DXF、DWGで作成されます。これらをPDFファイルに変換する方法は、以下を参考にしてください。
PDFを微調整
図面や書類の用途に合わせて、PDFファイルの微調整を行わなければいけないケースもあります。回転や複数のPDFファイルの結合、特定のページの追加や削除などの機能をご紹介します。
回転
以下ページよりPDFをアップロードし、回転させたいページを選択。上部のツールバーから「左回転」または「右回転」のアイコンをクリックし、保存すれば完成です。スキャン時に向きが変わってしまった場合などに便利です。
不要なページを削除
以下のページでファイルをアップロードしたら、削除させたいページを選択して、上部のツールバーにある「ゴミ箱」のアイコンをクリックします。必要なページのみを新しいPDFファイルとして保存できます。
特定のページを抽出
こちらのページでファイルをアップロードしたら、抽出したいページを選択し、「抽出」を選択します。必要なページのみを新しいPDFファイルとして保存できるので、必要なページのみ申請したいときに便利です。
新しいページを追加
PDFファイルに必要なページが不足している場合、ページの追加ができます。こちらのページでファイルをアップロードしたら、追加したいページを選択し、追加する位置を決めます。追加後に順序の入れ替えも可能です。
ページを並び替え
ファイルをアップロードしたら、移動させたいページのサムネイルを選択し、新しい位置にドラッグ&ドロップします。複数の文書をPDF化した後に、ページを並び替えたい場合に役立ちます。
ファイルを分割
ファイルをアップロードしたら、分割させたい箇所を選択し、「保存」をクリックします。ひとつのPDFファイルを、複数のPDFファイルにすることも可能です。発注先に必要なPDFファイルだけを渡したい場合などに有効です。
ファイルを結合
ファイルをアップロードしたら、必要に応じて順序を並び替え、「ファイル結合」をクリックします。Webで申請する場合など、アップロードが1つのファイルしか許容されていないときに役立ちます。
PDFから変換
フォーマットの都合上、PDFのままだと編集が難しいケースもあります。その場合、図面や書類の内容に合わせて、PDFファイルをJPEGやWordといった様式に変換すると良いでしょう。以下の各ページを利用すると、PDFそれぞれの様式に変換できます。
PDFを圧縮
画像やページが多いと、ファイルのサイズは大きくなります。作業現場ではWi-Fi環境がないケースも多いので、必要な図面や資料をダウンロードしやすくするためにも、PDFファイルの容量を軽くしておくと安心です。下記ページでPDFファイルをアップロードすれば、自動的に圧縮してくれます。
PDFに署名
ペーパーレス化が進まない要因のひとつに、複数のメンバーや部門にまたがっての確認や回覧の際の押印作業が挙げられます。
PDFファイルを使えば、デジタルで自身の署名はもちろん、他者に署名を依頼することもできます。電子契約には印紙代がかからないというメリットもあるため、契約書を結ぶときに発生する印紙代のコスト削減にもつながります。
以下ページでファイルをアップロードした後、ツールバーを使用してフォームフィールドに入力するだけで、PDFに署名を追加できます。
PDFへの署名を依頼
確認を依頼する際など、他者に電子署名をしてほしいときに役立ちます。ファイルをアップロードしたら、署名者の電子メールアドレスを入力して、「次へ」をクリックします。入力と署名が必要な箇所をマークし、「送信」をクリックするだけで、PDFファイルへの署名を依頼できます。
事業を行う上では情報漏洩などのリスクも懸念されていますが、PDFファイルはパスワードをかけられるので、セキュリティ面でも安心です。パスワードを知っている特定の人しか閲覧できなくなるので、特定の人以外からのアクセスを防ぎたい、などのケースにも役立ちます。
以下ページでファイルをアップロードしたら、パスワードを入力し、確認のために再入力します。その後、「パスワードを設定」をクリックすると、簡単にパスワードを設定することができます。
デジタル化で日々の業務を効率的に
建設業界においても、書類のデジタル化はメリットが多い取り組みです。従来のような紙での保管と違って、劣化することもなく、場所の心配もありません。また、特にPDFのように異なる環境でも同一のファイルとして扱える様式であれば、さまざまな場面でのトラブルも回避しやすいです。ぜひPDFを活用して、業務をより効率化させていってください。
(編集:ノオト)