基礎から押さえる「コンテンツマーケティング」 (1): 定義と意義をとらえ直す

2018年07月24日



【POINT】

  • コンテンツマーケティングは、「マーケティング活動を包括するもの」ととらえることができる
  • オウンドメディアのように、コンテンツマーケティングの思想にもとづくマーケティング施策が行われるようになってきている    
  • コンテンツマーケティングの実行には、ブランドメッセージ構造の明確な定義が欠かせない

「コンテンツマーケティング」への取り組みを喫緊の課題に挙げる企業が増えてきた。一方で、「成果を明確化しづらい」、「適切なスキルを備えた社内人材が不足している」などの理由から、着手に二の足を踏んでいる企業も多い。果たして、コンテンツマーケティングは極めて困難なチャレンジなのだろうか。実は、視点を少し変えてとらえるだけでよい。なぜならそれは、マーケティング活動を包括するものだからだ。

そこでこの基礎から押さえる「コンテンツマーケティング」編では、連載を通じてコンテンツマーケティングの定義をとらえ直し、マーケティング活動におけるその役割を明確化する。さらに推進体制、推進を円滑にするデジタル基盤について解説する。この第1回では、コンテンツマーケティングの役割について述べる。

コンテンツマーケティングの「思想」

コンテンツマーケティングの「思想」

コンテンツマーケティングについての一般的な理解は、対象顧客の興味や関心を引きつけるコンテンツを制作し、それを利用する人たちに何かを感じてもらうことで、最終的に自社の製品やサービス購入につなげる、というものになる。

そして、コンテンツマーケティングには重要な思想がある。「コンテンツに接した対象顧客へ、直接的に売り込まない」という考え方だ。彼らが自発的に購入するように「動機付け」「促す」ことが大切になってくる。

代表的な例が、航空会社の機内誌だろう。ほぼすべてのコンテンツが旅情を誘うもので、直接的に「自社便を利用してほしい」とは書かれていない。あるとすれば、知る人ぞ知るような土地を紹介する特集の隅に、そこへのアクセス方法が掲載される程度。デザインだけ変えれば、ライバルがそのまま利用できそうなほどだが、コンテンツマーケティングではそれが美徳になる。読者は、愉しんだコンテンツをだれが提供してくれたかを知っている。それで十分なのだ。

また「ミシュランガイド」も、コンテンツマーケティングの例としてよく知られる。ミシュランはタイヤを直接的に売り込むのではなく、車を運転して目指すべき「行先」を紹介したのだ。タイヤの売り込みを喜んで見聞きする人は少なそうだが、世界有数の味が楽しめるとなれば、誰もが興味を持ち、読んでくれるだろう。

ここで、コンテンツマーケティングとは何か、この用語を造ったとされるContent Marketing Institute(CMI)の定義から、改めて確認しておこう。

コンテンツマーケティングとは、明確に定義された対象顧客を魅了し、獲得し、利益につながる顧客行動を促すことを目的として、価値があり、関連性があり、一貫性のあるコンテンツを制作、配信する、戦略的なマーケティングアプローチである。

オウンドメディアはあくまでコンテンツマーケティングの手段のひとつ

オウンドメディアはあくまでコンテンツマーケティングの手段のひとつ

こうした性質から近年では、コンテンツマーケティングはオウンドメディア(自社が所有する独立したメディア)として展開するものと認識されることがある。実際に、オウンドメディアで展開されるコンテンツは、カタログやwebサイトで商品そのものの機能や効用を紹介するコンテンツとは一線を画す。しかしながら、オウンドメディアはコンテンツマーケティングを実行する手段のひとつに過ぎない。実際には、手段としてのチャネル、顧客接点は多様に存在する。

例として動画コンテンツを考えてみよう。すぐ思い浮かぶのは映像を使ったテレビ広告だ。かつては商品名を連呼したり、軽妙な音楽に乗せて商品をアピールしたりして、視聴者に記憶を刷り込むコンテンツが、テレビ広告の主流だった。これは、ブランド想起によって購買行動が決まる商品には有効かもしれない。しかし今では、商品サイクルは短くなり、企業の経営計画の周期も短期化している。また、「自分らしさ」の重視される商品なら、記憶だけでは選ばれない。

現在、徐々に浸透してきているのが、視聴者の心情に訴えたり、好奇心を刺激したりするコンテンツを届ける動画広告だ。その配信手段も、テレビCM枠では尺が決められているため難しかったが、YouTubeなどの動画広告枠では実現できる。そして、長尺の動画広告であっても、視聴者に関連するもの、価値があると感じさせるものは見られているのだ。中にはドラマ仕立てのものもあり、商品名が出てこず、最後にロゴだけが表示される広告もある。これらは、コンテンツマーケティングの思想を多分に含んでいる。

主にB2C企業が制作している「利用者の声」や、B2B企業が制作しているユーザー事例は、境界領域にあると言えそうだ。商品やサービスを活用してくれている消費者や顧客企業に、その使用法や使い勝手、効果などについて話してもらう。それを映像やカタログ、webコンテンツなどへと展開するわけだが、コンテンツの中身は消費者の使用効果やライフスタイルの変化、ユーザー企業の業務効率化や経営改善などの紹介であり、直接的に商品やサービスを売り込むものではない。

ブランドメッセージ構造を明確化する

ブランドメッセージ構造を明確化する

このように、様々な顧客接点でコンテンツマーケティングの思想にもとづくマーケティング施策が行われるようになってきたのが現状だ。

ブランドメッセージ構造を明確化する

そして、「コンテンツマーケティングを始めたい」と考える企業にとって難しいのが、コンテンツマーケティング担当人材の確保や部門間の役割分担などだ。またコンテンツをオウンドメディアとして展開する場合、コーポレートサイトとのメッセージ性や運用の住み分けが問われる。大規模な組織になると、意思決定主体が分散するケースが多い。自社のオウンドメディアが人気を集め始めると、コンテンツの内容に関連部門が口を挟んでくることもある。たとえば、「新商品が出るから告知“記事”を掲載してほしい」といった要請などだ。

そうした際に、絶対的な拠り所となる「法律」が必要になる。そこで、ブランドメッセージ構造を改めて見直してほしい。企業ブランドを頂点とし、事業ブランド、ファミリーブランド、商品ブランドがひも付く構造を定義する。たとえば以下の例のように、構造のどの領域について語るのかを定義し、何をどのように伝えるのかを明確にする。そして、その価値について関連部門間で合意する。

ブランドメッセージ構造を明確化する

その際に、コンテンツマーケティングを広義にとらえてしまった方が納得感を得やすい。「企業が外部に公開するすべてのコンテンツはコンテンツマーケティングの対象であり、それぞれに役割がある」という定義だ。その上で、どのコンテンツが、どんなミッションを担当し、そのために何をするのか、を共有する。
ポイントは、カスタマージャーニーの各段階に寄り添うブランド構造、いわば「コンテンツジャーニー」を設計することだ。ブランドストーリーと言い換えてもよいだろう。

コンテンツの役割と実行手段を規定する

コンテンツの役割と実行手段を規定する

ブランドメッセージ構造が合意できていれば、

  • いつ誰に(どの段階の顧客に)
  • 何を(どの内容のコンテンツを)
  • どこで(広告、オウンドメディア、コーポレートサイト、店頭など)

 

も、おのずと決まってくる。「顧客とどう寄り添うか」がポイントだ。先に挙げた、「オウンドメディアで新商品の告知をしたい」という要請が不適切なのも明確だ。「新商品の告知はニュースリリースの役割で、新商品の価値は商品カタログとwebサイトで紹介する」という具合に、目的とコンテンツの役割、実行手段の組み合わせは自然と決まる。

それだけではない。価値と役割が共有されていれば、「新商品の対象顧客は○○な人たちで、生活の中の○○なシーンで役立つものだから、それに関連するコンテンツを作れないか」といった、対象顧客の明確な定義や、目的に応じたコンテンツのアイデアが産まれてくるはずだ。

コンテンツマーケティングでは、読者や視聴者がその時点で欲している情報を提供することが第一になる。その情報によって相手を魅了し、自社へと振り向かせる。その結果として、自社のブランド認知や信頼感を深め、動機付けし、購買や継続利用などの自社の利益につながる顧客行動を促すことにつながる。また、「相手は誰か」を明確に定義しておくべきである。いわゆる「ペルソナの定義」だ。対象顧客を明確に定義することで、その人物は普段何を考え、欲しているか、どう行動するかが明確になり、コンテンツとして何を語るべきかが導かれる。

商品宣伝を全面に打ち出したコンテンツがだめなわけではない。しかし、その内容は、対象顧客の欲しがっている情報でなければならない。そうしたコンテンツを提供することで、対象となる一人ひとりの知識欲を満足させ、カスタマージャーニーを少しずつ先へ進めていく。

コンテンツマーケティングは、すぐに成果の出る取り組みではない。それなりにコストもかかる。しかし、マス広告より低コストに実行でき、カスタマージャーニーの各段階にある相手に固有の情報ニーズを充たす効果的なマーケティング手法だ。ブランド構造を明確に定義し、ぜひ実行に向けて動き始めてほしい。

第2回では、具体的なコンテンツの制作体制について取り上げる。

 

UNITE編集部


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