
重要な内容を含むPDFファイルを共有する際は、情報の流出や改ざんを防ぐための対策が不可欠です。特に、契約書や社外秘の資料などは適切な管理が求められます。
そして、その有効な方法のひとつが「透かし」の活用です。
透かしとは、文書に半透明の文字や画像を追加し、情報の所有権や利用条件を明示するものです。透かしを設定することで、「著作権の保護」や「機密情報の流出・改ざんの抑止」などが可能になります。
Adobe Acrobat Proを使用すれば、表示内容やデザインを自在に調整しながら透かしをカンタンに追加できます。無料体験期間が用意されているため、気軽に試せることも利点です。
本記事では、まずは透かしの効果を解説したうえで、Acrobat Proを使った設定手順を詳しく解説します。PDFファイルの管理精度を高め、安全性を確保する方法を見ていきましょう。
PDFに透かしを入れる目的・効果
PDFファイルに透かしを入れることで、文書の内容や取り扱いのルールを一目で伝えられ、情報の管理を強化できます。
例えば、「社外秘」や「Confidential(機密)」といった透かしが入っていれば、受け取った相手はその文書が機密情報であり、無断共有や外部公開は避けるべきだと即座に理解できます。また、契約書や証明書に透かしを入れることで、改ざんを防ぎ、文書が発行時の状態のままであることを示せます。
このように、透かしは単なる視覚的な装飾ではなく、受け取る側の認識に働きかけ、文書管理の安全性を高めるための重要な仕組みです。この章では、透かしを活用することで得られる具体的な効果を、以下の6つのポイントに分けて紹介します。
- 著作権・所有権の明示
- 機密情報の保護
- 改ざん防止
- ブランディング
- 文書のステータスの明確化
- 文書の識別
1.著作権・所有権の明示
コピーライト(©)や著作権者の情報を透かしとして入れることで、PDFファイルの所有者を明確にできます。例えば、イラストレーターやデザイナーが作品を公開する場合、透かしに「© 作成者名」といったテキストを追加することで、第三者による無断使用を抑止できます。
2.機密情報の保護
企業では、機密情報を含むPDFファイルを関係者に共有することがあります。
その際、「社外秘」や「Confidential」といった透かしを入れることで、受け取った相手はその文書が慎重に取り扱うべきものであると一目で認識できます。これにより、不適切な第三者への共有や不注意による誤送信などのリスクを抑えられます。
3.改ざん防止
PDFは編集可能なフォーマットですが、透かしを配置することで不正な変更を抑止できます。例えば、重要な契約書や証明書に透かしを入れておくと、改ざんが行われた際に透かしが消えたり位置がズレたりするなどの痕跡が残りやすくなります。
これにより、不正な編集の発見が容易になり、結果的に文書の改ざんを防止しやすくなります。さらに、透かしによって文書の正当な所有者が明示されることで、改ざんに対する警告効果も期待できます。
4.ブランディング
社外に公開する文書に自社のロゴや社名を透かしとして配置すると、作成元を明示でき、企業の認知度向上に役立ちます。特に、ホワイトペーパーやノウハウ資料などの文書において有効です。
また、資料を引用する際にも、透かしがあることで出所が明確になり、企業の存在をより意識してもらいやすくなります。特に、専門性の高い資料では、企業の信頼性を高める効果も期待できるため、戦略的な透かしの活用がオススメです。
5.文書のステータスの明確化
業務で触れるPDFファイルは、必ずしも完成版とは限りません。まだ他の人が編集中であったり、上司によるレビューが行われている最中であったりする可能性があります。
そうした場合に、例えば「下書き」「未承認」「レビュー中」といった透かしを入れておけば、文書のステータスを明確にできます。その結果、関係者が誤って未完成の文書を正式なものとして扱うリスクを抑制でき、文書管理の安全性が高まります。
6.文書の識別
PDFファイルを特定の相手にのみ共有し、それ以上の拡散を防ぎたい場合、氏名や企業名、メールアドレスなどの透かしを挿入するのがオススメです。
例えば、企業向けのセミナーや社内研修で配布する資料に、受講者ごとの情報を透かしとして追加すると、万が一参加者が資料を第三者と共有しようとした場合でも、自分の名前やメールアドレスが記載されていることで心理的な抑止効果が働きます。
以上の6つの理由により、適切な場面でPDFファイルに透かしを入れることは非常に重要です。次の章では、実際にPDFファイルに透かしを入れる手順を解説します。
PDFに透かしを入れる手順
この章では、Acrobat Proを使ってPDFに透かしを入れる手順を、実際の画面のキャプチャとともにわかりやすく解説します。Acrobat Proは直感的なUIで操作がカンタンなうえ、透かしのテキストや画像を、デザインを調整しながら柔軟に配置できます。
まずはソフトを無料でダウンロードしましょう。Acrobat Proの公式サイトにアクセスして、「無料で始める」をクリックしてください。
任意のプランを選択して先に進んでください。
なお、どのプランにも7日間の無料体験が付いており、期間中に解約した場合は料金が一切かかりません。書類業務全般に役立つ機能が搭載されていますので、ぜひご活用ください。
ソフトをダウンロードできたら、アイコンをダブルクリックして起動させてください。
ここから、Acrobat Proで透かしを入れる手順を以下の3工程に分けて解説します。
- 【手順1】編集メニューから「透かし」を開く
- 【手順2】表示内容とデザインを設定する
- 【手順3】PDFファイルを保存する
【手順1】編集メニューから「透かし」を開く
透かしを入れたいPDFファイルをAcrobat Proで開き、画面上部のメニューバーにある「編集」をクリックします。
ツールの一覧が開いたら、「透かし」から「追加」を選択します(項目が一部しか表示されないときは、「さらに表示」をクリックしてください)。
ポップアップが開くので、ここで透かしの設定を行います。
【手順2】透かしの表示内容とデザインを設定する
テキストを透かしとして配置する場合は、「ソース」のエリアで「テキスト」を選択し、入力欄に任意の文字を打ち込みます。
すると、ポップアップ右側のプレビューに即座に反映されます。
透かしのフォントやサイズ、色、下線の有無、文字揃えの向きなども、ここで設定可能です。
画像を透かしとして配置する場合は、「ファイル」を選び「選択」ボタンからファイルを指定してください。なお、透かしとして利用できるファイル形式は、JPEG・PDF・BMPです。
「テキスト」と「ファイル」のいずれの方法でも、下の「表示方法」エリアから透かしのデザインを調整できます。
初期状態だと不透明度が100%で、テキストまたは画像の背後にある要素が見えないので、50%程度まで下げるのがオススメです。また、45°斜めに回転すると「透かし」らしい印象になります。
そして「表示方法オプション」をクリックすると、透かしの表示条件を設定できます。
印刷時にだけ透かしを表示したい場合は、「印刷時に出力」にチェックを入れて、「画面で表示」のチェックは外しましょう。もちろん、逆の設定も可能です。
PDFファイル内にサイズの異なるページが混在している場合は、「異なるページサイズ〜」にチェックを入れましょう。透かしの表示サイズが揃い、統一感が出るのでオススメです。
「配置」エリアでは透かしの表示位置を細かく設定できます。
また、「ページ範囲オプション」からは、透かしを表示するページの範囲を指定できます。
ポップアップの中で設定した内容を後で再利用したい場合は、「設定を保存」をクリックし、任意の名前を付けて「OK」を押してください。
保存した設定内容は、「プリセット」から呼び出せるようになります。
すべての設定が完了したら右下の「OK」をクリックしてください。
【手順3】PDFファイルを保存する
透かしの配置が完了したら、変更を保存しましょう。
元のPDFファイルと別のファイルとして保存したい場合は、「ファイル」から「別名で保存」を選択してください。
PDFに透かしを入れる手順の解説は以上です。
透かしと合わせて使える便利な機能
Adobe Acrobatには、PDFの編集や管理に便利な機能が多く搭載されています。
この章では、透かしと関連性の高い機能を2つピックアップして紹介します。
- PDF を保護
- PDF を墨消し
PDF を保護
PDFにパスワードを設定できる機能です。前提として、PDFのパスワードには以下の2種類が存在します。
1.PDFファイルを開くときのパスワード
「ユーザーパスワード」とも呼ばれ、PDFファイルを開くときに必要となるパスワードです。このパスワードを設定すると、PDFファイルを開く際にパスワードの入力を求められ、パスワードを知らない第三者はファイルの中身を閲覧できません。
2.編集・印刷・コピーを制限するパスワード
「権限パスワード」とも呼ばれ、PDFファイルの編集や印刷、内容のコピーを制限できるパスワードです。このパスワードを設定すると、PDFファイルを閲覧できても、テキストの追加やコピー、印刷はできないといった細かな制限をかけられます。
PDFファイルを閲覧するためのパスワードは、有償版のAcrobat Proはもちろん、無料の「Adobe Acrobat オンラインツール」でも設定可能です。Acrobat オンラインツールは、ブラウザーでアクセスするだけですぐに使えるので、ぜひチェックしてみてください。
以下の記事では、「Adobe Acrobat オンラインツール」を使って、PDFにパスワードをかける安全な方法を、実際の操作画面付きで紹介しています。
なお、編集・印刷・コピーを制限するパスワードは、有償版のAcrobat Proで設定できます。
PDF を墨消し
PDFファイルに含まれる機密性の高い内容を安全に墨消しできます。
例えば、身分証明のために健康保険証やマイナンバーカードなどをPDF形式で第三者に送付しなければならないときに、見せる必要のない箇所を隠すことができて非常に便利です。
他のソフトを使って視覚的に黒い四角形を被せるだけだと、PDFファイル内に情報が残っている場合があり、何らかの方法で閲覧できてしまう可能性があります。
それに対して、Acrobatの墨消しツールなら完全に情報を削除できるので安心です。
なお、墨消しツールは有償版のAcrobat Proで使用できます。
以下の記事ではPDFのテキストを墨消し(黒塗り)する方法をわかりやすく解説しているので、文書の情報漏洩対策にお悩みの方はぜひご覧ください。
Adobe AcrobatならPDFの編集・管理が自由自在
Acrobatなら、透かしの追加はもちろん、PDFに関するあらゆるニーズにお応えできます。
有償版のAcrobat Proは、電子署名や差分確認といった高度な機能を含む約30個の機能を回数無制限で利用可能です。7日間の無料体験があるので、ぜひお試しください。
また、ブラウザー上で動く無料のオンラインツール「Acrobat オンラインツール」も、PDFを使った業務にオススメです。インターネット環境があれば、WindowsやMacといったOSや、スマホやタブレットといったデバイスを問わず使えます(一部の機能は、スマホやタブレットで使う際にアプリのインストールが必要です)。
直感的に操作できるうえに、PDFをMicrosoft WordやMicrosoft PowerPointに変換し、大幅な編集もできます。そのほかにもPDFファイルの圧縮や結合など、PDFに関する25以上の機能を使うことが可能です。セキュリティ面にも配慮されていて安全に使えるので、日々の業務にぜひお役立てください。
適切な文書管理が求められる場面では、Acrobatの高度なセキュリティ対策と多彩な機能が大きな強みになります。ビジネスや個人のあらゆるPDF関連業務をスムーズかつ安全に進めるために、ぜひ活用してみてください。
(編集:ウェブライダー)
https://milo.adobe.com/libs/img/mnemonics/svg/acrobat-pro-64.svg
ぜひAdobe Acrobatオンラインツールをお試しください
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