契約書や請求書、社内資料などに含まれた機密情報は、外部に共有する前に削除する必要があります。特に近年は、個人情報保護法やGDPR（General Data Protection Regulation：一般データ保護規則）などの法規制が強化され、コンプライアンス遵守の重要性が高まってきました。

しかし、テキストを黒塗りするだけではデータがファイル内に残り、何らかの方法で復元できてしまいます。情報を確実に保護するには、該当データそのものを削除することが重要です。

そこで活躍するのが「PDFの墨消し機能」。墨消し機能を使えば機密情報を完全に削除でき、意図しない情報漏えいを防げます。

この記事では、PDFの墨消し機能や「Adobe Acrobat Pro」を使った墨消しの方法を解説します。また、セキュリティ強化のための関連機能も紹介するので、安全に情報を管理したい方はぜひ参考にしてください。

目次

PDFの墨消し機能とは

【無料で試せる】PDFファイルに墨消しをする方法

PDFの墨消しに関するよくある質問

PDFの安全性を高めるAcrobat Proのオススメ機能

PDFの墨消し機能とは

墨消し機能とは、PDFファイルに表示されているテキストや画像などを、「完全に削除」できる機能です。

墨消し機能は、単なる黒塗りとは違い、該当部分のデータ自体を削除します。

そのため、機密情報や個人情報などを適切に管理し、情報漏えいのリスクを最小限に抑えられます。

また、墨消し機能を活用することで、個人情報を適切に管理するための法律（個人情報保護法やGDPRなど）や、コンプライアンスに対応した情報管理が可能となります。

さらに、業務効率化の側面においてもPDFの墨消し機能は有効です。例えば、以下のようなシーンで墨消し機能が活用されています。

マーカー機能との違い

PDFの墨消し機能と混同しやすいものに、「マーカー機能」があります。

マーカー機能とは、PDF上のテキストや画像などを「見えないようにする」機能です。

マーキングの方法には以下のようなものがあります。

• テキストの上に色を重ねて見えなくする方法
• 隠したい情報に色付きの図形を被せる方法
• テキストの色を背景と同色にして、読めなくする方法
• テキストをぼかして視認性を下げる方法

これらの方法では、見えなくした部分のデータは削除されておらず、ファイル上に残ったままの状態です。

そのため、コピー＆ペーストやテキスト検索などで、容易に情報を取得・復元されてしまう可能性があります。

関連：【無料】PDFにマーカー（ハイライト）を引く方法とうまく引けない時の対処法

以上のことから、機密情報を確実に削除するには、マーカー機能ではなく「墨消し」機能を使うことが重要です。

それでは実際に、PDFファイルに墨消しする方法を解説していきましょう。

【無料で試せる】PDFファイルに墨消しをする方法

ここからは、Adobe Acrobatのデスクトップアプリ「Acrobat Pro」を使って、PDFファイルに墨消しする方法を解説します。

Acrobat Proは、墨消し機能をはじめとする高度なPDF編集機能を備えたツールです。Acrobat Proの墨消し機能を使えば、特定のキーワードを一括で選択して墨消ししたり、ページ全体を墨消ししたりといった作業を効率よく行えます。

なお、Acrobat Proは7日間の無料体験期間があり、今回ご紹介する墨消し機能のほか、PDFに関するすべての機能をお試しいただけます。

墨消し機能を7日間の無料お試し期間で使ってみる

【手順1】PDFファイルを開き、墨消しツールを選択する

まずは、Acrobat Proで墨消しを適用したいPDFファイルを開きましょう。

「すべてのツール」＞「PDFを墨消し」＞「テキストと画像を墨消し」の順にクリックし、墨消しツールを選択します。

【手順2】墨消ししたい箇所を選択する

次に、墨消しをしたいテキストや画像などをドラッグして選択しましょう。

すると、選択した箇所が赤い枠で囲まれます。

また、PDF内のテキストや画像を指定し、右クリックで「テキストを墨消し」を選択する方法でも可能です。

この状態で「適用」をクリックすると、「墨消しを適用」ウィンドウが表示されます。

墨消し箇所に間違いがない場合は、「続行」を押してください。

「非表示情報を完全に削除」のトグルボタンをオンにしておくと、目視では確認できない情報（隠しオブジェクトや非表示コメントなど）やメタデータ（※）を一括で削除できます。

これらの情報を完全に削除することで、知らず知らずのうちに情報を漏えいさせてしまうリスクを防げます。

そのため、特別な理由がない限りはオンのままにしておくのがオススメです。

PDFファイルにメタデータが含まれているかを確認する方法は、記事後半の「よくある質問」で解説します。

_{※メタデータとは、ファイル作成者の名前や編集履歴などのことです}

なお、墨消しを適用したファイルは、元ファイル名に「_墨消し済み」という接尾辞が自動的に追加され、別のファイルとして保存できます。

元のファイルは墨消し前の状態で保持されるため、誤った箇所を墨消ししてしまった場合も安心です。

墨消しの基本的な手順解説は以上です。

ここからは、特定のキーワードを一括で墨消しする方法や、ページ単位で墨消しするテクニックを解説します。

墨消し作業を効率的に進めたい方は、ぜひチェックしてみてください。

【応用編1】特定のキーワードを一括で墨消しする方法

PDFファイル内に複数回使用されているキーワードを一括で墨消ししたい場合は、「テキストの検索と墨消し」が便利です。

この方法では、目視による見落としを防ぎつつ、正確かつ効率的に墨消しを適用できます。

例えば、ページ数の多い資料から特定の取引先名を削除したい場合や、電話番号やメールアドレスなどの個人情報を検索して墨消ししたい場合にオススメです。

【手順1】「テキストの検索と墨消し」ツールを選択する

まずは、「すべてのツール」＞「PDFを墨消し」＞「テキストの検索と墨消し」の順に選択しましょう。

【手順2】「検索する場所」と「検索対象」を指定する

検索ウィンドウが開いたら、以下の項目を設定してください。

• 検索する場所：現在の文書／以下の場所にあるすべてのPDF文書
• 検索対象：1つの語または句／複数の語句／パターン（電話番号・メールアドレス・日付など）

今回は、検索対象に「1つの語または句」を選び、「商品サンプル」というキーワードを一括で墨消しします。

指定したキーワードを完全一致で検索したい場合や、大文字や小文字を区別したい場合は、それぞれにチェックを入れてから、「テキストを検索して削除」ボタンをクリックしましょう。

【手順3】墨消ししたい箇所をチェックし、墨消しを適用する

検索の該当箇所が一覧で表示されたら、墨消ししたい箇所にチェックを入れましょう（「すべてをチェック」をクリックすると一括で選択できます）。

墨消し箇所を指定できたら「チェックした結果を墨消し用に設定」をクリックしてください。

すると、指定した箇所が赤い枠で囲まれました。間違いがなければ「適用」を押しましょう。

「続行」をクリックすると墨消しが適用され、PDFファイル内から該当のデータが完全に削除されます。

それでは、実際に指定したワードが削除されているかを確認してみましょう。

虫メガネアイコンをクリックし、今回指定した「商品サンプル」をテキスト検索します。

以下のようなポップアップウィンドウが表示されたら、適切に墨消しができています。

特定のキーワードを一括で選択して、墨消しする方法は以上です。

【応用編2】ページ単位で墨消しする方法

複数ページある文書や資料の中から、ページ単位で情報を削除したい場合は、「ページを墨消し」機能を使ってみましょう。

「ページを墨消し」は、墨消ししたページの存在を残しながら、重要な情報を秘匿できる方法です。

墨消し後もページ数は変わらないため、ページ番号の整合性を保ちながら、資料の一部を隠したい場合にオススメです。

【手順1】「ページを墨消し」機能を選択する

「すべてのメニュー」＞「PDFを墨消し」＞「ページを墨消し」の順にクリックします。

【手順2】ページ範囲をマークする

「ページ範囲をマーク」のポップアップウィンドウが表示されたら、「現在のページ」または「特定のページ範囲」のどちらかを選択し、「OK」をクリックしましょう。

【手順3】墨消しを適用する

指定したページが黒く塗りつぶされたのを確認し、「適用」＞「続行」の順にクリックしてください。

すると、このように指定したページ全体を黒く塗りつぶすことができました。

内容に問題がなければ、墨消ししたファイルを保存してください。

◼️「ページを整理」からページ自体を削除する方法

PDFファイルのページを墨消しする以外にも、指定したページ自体を削除する方法もあります。

この方法は、不要なページを完全に削除することでファイル自体を軽くし、ファイルの共有をスムーズにしたい場合に有効です。

ただし、ページが抜けることで文書の流れが不自然になってしまうことがあります。

その場合は「ページを墨消し」の方法をお試しください。

ページ自体を削除する方法は以下のとおりです。

1．「すべてのツール」から「ページを整理」を選ぶ

2．削除したいページを指定して、ゴミ箱アイコンをクリックし、「OK」を押す

3．ページを削除したファイルを保存する

このように、指定したページを削除できました。

墨消ししたい文書や共有の状況に応じて、墨消しとページ削除を使い分けましょう。

関連：【無料】PDFの不要なページをオンラインで削除する方法

PDFの墨消しに関するよくある質問

最後に、Acrobat Proの「PDFの墨消し」機能に関するよくある質問をご紹介します。

「Acrobat Reader」でPDFファイルに墨消しできますか？

Acrobat Proの「墨消し」機能は、有償版限定の機能です。

そのため、無償版のAcrobat Readerで、PDFファイルに墨消しを適用することはできません。

ただし、Acrobat Proには7日間無料の体験期間が用意されており、期間中は墨消し機能をはじめ、PDF編集機能やセキュリティ機能をお試しいただけます。

（※Creative Cloudのコンプリートプランを既にご契約中の方も、全機能をお使いいただけます）

間違った場所を墨消ししてしまいました、墨消しをやり直せますか？

「情報を保護する」というツールの性質上、一度墨消しした情報は復元できません。

しかし、Acrobat Proでは、墨消ししたファイルを別のファイルとして保存します。

編集前のファイルは保持されるため、誤った箇所を墨消ししてしまった場合も、何度でもやり直しが可能です。

PDFファイルにメタデータが入っているかを確認する方法はありますか？また、削除できますか？

はい、メタデータ（PDFのファイル作成者の名前や編集履歴などの情報）は、以下の手順で確認・削除できます。

●メタデータを確認する方法

1. Acrobat Proで該当のPDFファイルを開く
2. 「メニュー（Macの場合：ファイル）」＞「文書のプロパティ」の順にクリックする
3. 「概要」タブの「その他のメタデータ」を開く
4. 各項目の記録内容を確認する

●メタデータを削除する方法

1. 「すべてのツール」＞「PDFを墨消し」の順にクリックする
2. 「非表示情報を完全に削除」を選択する
3. 「すべてを削除」または「選択的に削除」を選択して実行する

Acrobat Proには、テキストや画像を墨消しする際、同時に「非表示情報を完全に削除」する機能が備わっています。

こちらの機能をオンにしておけば、メタデータからの情報漏えいのリスクを最小限にできます。

機密文書を取り扱う機会の多い方は、Acrobat Proの墨消し機能を便利に使っていただけるはずです。

PDFの安全性を高めるAcrobat Proのオススメ機能

PDFファイルは、契約書や請求書などの重要な情報を含むフォーマットとして、広く活用されています。

特に、機密情報や個人情報が記載された文書を取り扱う場合は、十分なセキュリティ対策が必要です。

情報漏えいや不正アクセスを防ぐためには、PDFファイルの適切な管理や保護を行ったうえで共有することが重要です。

Acrobat Proには、この記事で紹介した「墨消し」の他にも、PDFファイルの安全性を高めるための機能が揃っています。

ここでは、特にPDFファイルの保護や管理に役立つ、3つの機能をピックアップしてご紹介します。

「PDFを保護」でPDFファイルにパスワードをかける

「PDFを保護」は、機密情報が含まれるPDFファイルに、パスワードをかけてセキュリティを強化できる機能です。

PDFファイルにパスワードを設定することで、第三者による不正な閲覧や、内容を改ざんされるリスクを軽減できます。

Acrobat Proで設定できるパスワードの種類は以下の2つです。

1．PDFファイルを開くときのパスワード

PDFファイルを開くときに必要なパスワードです。

このパスワードを設定すると、PDFファイルを開く際にパスワードの入力を求められるため、第三者による不正な閲覧を防げます。

2．編集・印刷・コピーを制限するパスワード

PDFファイルの編集や印刷、内容のコピーを制限できるパスワードです。

このパスワードは、「PDFファイルを閲覧できるが、テキストの追加やコピー・印刷はできない」といった細かな制限をかけられます。

例えば、このようなシーンで「PDF保護」の機能が役に立ちます。

• 顧客の個人情報が含まれる請求書を、安全に送付したいとき
• 取引先に共有する文書に制限をかけ、意図しない変更を防ぎたいとき
• 社内向けの企画書や提案書をプロジェクトメンバーのみに共有したいとき

PDFファイルにパスワードを設定する方法は、以下の記事で詳しく解説しています。

【無料】PDFにパスワードをかける方法（Windows・Mac対応）

「透かし」を入れて機密情報をわかりやすくする

「透かし」は、PDFファイルに「社外秘」や「Confidential（機密）」といったウォーターマークを追加して、受け取った相手にファイルの取り扱いを注意喚起するための機能です。

透かしを追加することで、不適切な第三者への共有や不注意による誤送信などのリスクを抑えられます。

また、契約書や証明書に透かしを入れることで、改ざんや不正利用を防ぐ効果もあります。

例えば、以下のようなシーンで「透かし」の機能を活用できるでしょう。

• 機密情報を共有する際、相手に慎重な取り扱いを促したいとき
• 契約書や証明書の発行元を明示したいとき
• 社内向けの研修資料や内部向け資料を、誤って社外に共有されないようにしたいとき

以下の記事では、PDFに透かしを入れる効果や方法を詳しく解説しています。

PDFに透かしを入れる安全でカンタンな方法【無料で試せる】

「電子署名」で文書の改ざんがないことを保証する

「電子署名」は、重要な文書にデジタルで署名やサインを付与する機能で、紙の文書における印鑑やサインと同じ役割を果たします。

電子署名を付与することで、「誰が署名したのか」「文書が改ざんされていないか」を、暗号技術により正確に証明できます。

例えば、このような場面で「電子署名」の機能が便利です。

• 発注書に電子署名を入れ、正式な承認を行いたいとき
• 最終版の契約書に電子署名を入れ、署名後の変更がないことを証明したいとき
• 遠方の取引先と、オンライン上で正式な契約を交わしたいとき

電子署名の使い方やメリットについては、以下の記事で詳しく解説しています。

PDFに電子署名するやり方と仕組みを解説（無料で電子サインする方法も）

このほかにも、Acrobat ProにはPDFに関する多彩な機能が揃っています。

墨消し機能をはじめとするPDF編集機能を、実際に試しながら導入をご検討ください。

便利なツールを活用し、PDFを安全かつ効率的に管理しましょう。

Acrobat Proを7日間の無料お試し期間で使ってみる

（執筆：ウェブライダー）

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