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半年で売上30%増を達成した統合型リゾート企業MGM:そのデジタル変革とは(インタビュー)

2017年03月14日


MGM Resorts International(以下MGM)は、世界最大級の統合型リゾート(IR:Integrated Resort)企業だ。全世界に18のリゾートを展開し、従業員数は6万人を超える。本拠地のラスベガスでは、MGMグランドをはじめ、ベラージオ、ザ ミラージュ、ルクソールなど、多くのリゾートブランドを運営し、ストリップ(ラスベガスのメインストリート)に並ぶリゾートの約60%はMGMグループに属している。

その同社が、デジタル変革に着手して約1年。すでに大きな果実を手に入れつつある。

来日したメディア マーケティング戦略担当バイスプレジデント、メーガン エストラダ氏に話を聞いた。


MGM メーガン エストラダ氏

 

ブランドごとにバラバラだった組織、顧客体験、予算…。「各ブランドと顧客」の関係性を「企業全体と顧客」に変えた

――MGMのデジタル変革プロジェクトは、世界的に大きな注目を集めています。すでに業界のリーダーとして十分な成功を収めているにもかかわらず、このプロジェクトをスタートさせようとした背景は、どのようなものだったのでしょう。

エストラダ氏:大きな目的は、投資の見直しとビジネスの俊敏性向上です。以前は、リゾートごとに縦割りで予算を組んでいました。その結果、メディアプランは75以上になり、メディアエージェンシーも5社以上。この状態では、投資分野が重なってしまいますし、MGMとして戦略的にメディアプランを策定できませんでした。プロセスが分断されており、企画から実行までに時間がかかることも課題でした。

 

分断されたエコシステム
■分断されたエコシステム 当初、MGMのエコシステムは分断されており、プロセスの企画~実行に時間がかかっていた

 

――ブランド別でなく、MGMとして統合的に戦略を立案するメリットをどう定義しましたか。

エストラダ氏:ブランド対顧客ではなく、MGM対顧客として顧客体験を考えた方が、より良い提案をすることができます。たとえば、ビジネス目的でラスベガスを訪れる顧客には、1階にカジノがなくても割安な価格で宿泊できるホテルを提案する方が喜ばれるかもしれません。一方、その顧客が私たちのサービスやラスベガスを気に入ってくれて、今度は家族で再訪したいと考えたときには、レジャーを楽しめる提案内容が良いでしょう。こうした一連の顧客戦略を、総合力を生かした顧客体験を軸に立案するメリットは大きいと考えました。

――具体的に、プロジェクトはどのように進めましたか。

エストラダ氏:2015年の12月までに、メディアエージェンシーを1社に絞りました。その後、2016年の上期に予算計画を策定し、私たちのすべてのブランドが、同じデジタル基盤を使ってマーケティング活動に取り組む土台を整えました。プロジェクトは大規模で、私のチームだけで40人。マーケティングとITに強い外部の専門コンサルタントにも入ってもらい、最終的には社内外の100人を超えるスタッフがかかわりました。なお、システムのセットアップは、すべて社内の情報システム部門が行い、稼働後の運用も彼らに任せています。新たな体制とシステムで本格的にスタートしたのは下期です。

 

MGM デジタル変革への道筋
■MGM デジタル変革への道筋 上期に新システム活用の土台を整え、下期に本格運用をスタート

「デジタル変革における必要な領域を、1つの基盤ですべてカバーできることを重視した」

――アドビのデジタル基盤を選択した理由は?

エストラダ氏:ホスピタリティ業界では、滞在前、滞在中、滞在後とすべてのタイミングで顧客に心から満足してもらうことを理想としています。その顧客体験をより良いものにするためには、私たちが顧客をより深く理解しなければなりません。実行した施策を評価し、顧客に最適なメッセージや提案を届けるパーソナライズの仕組みも必要です。そのほかにもさまざまな細かな要素があるのですが、そうしたことを含めて私たちのやりたかったことを、アドビのデジタル基盤はすべて備えていました。私たちの考え方が、アドビが提供する世界観と合っていたのでしょう。また、情報システム部門側も、1つの基盤上で完結させる方が良いという意見でした。個別にソフトウェアを購入し、それらを接続して機能を充たすための追加開発コストが不要になることに加え、実績が豊富で統合されたソリューションを採用する方が、安定して稼働しやすいためです。

 

消費者中心のアプローチ
■消費者中心のアプローチ MGMが理想とする消費者中心のアプローチに、アドビのデジタル基盤がフィットした

――顧客体験を最適化するために、最もやりたかったことはどのようなことでしょう。

エストラダ氏:大切なのは、顧客が現在どの段階にいるのかを見極めることです。バカンスを予定している人々には、ラスベガスの魅力とともに私たちのリゾートのすばらしさを伝えるために、ボリューム感のあるコンテンツを用意します。ラスベガス旅行を予定している人々には、彼らのニーズを深掘りして、私たちのリゾートの中から、最もフィットする施設を提案します。そして、私たちのリゾートへの滞在を予定されている方には、滞在中のアクティビティをイメージして、滞在前からワクワクしてもらえるような情報を提供します。滞在中には、モバイルチェックインや動画コンテンツを提供するなど、ラスベガスを存分に楽しんでいただくためのサポートをデジタル環境で提供。それらの体験もしっかりとデータとして蓄積します。こうした情報にもとづき、滞在後にきちんとフォローアップして再訪を促します。毎回新鮮さを求める顧客に別のリゾートを提案できるのも、ブランド別のマーケティングではできない大きなメリットになります。

――こうした一連の流れを、アドビのデジタル基盤なら最適化できるのでしょうか。

エストラダ氏:アドビのデジタル基盤を選択したことで、これらのすべてのポイントで、データにもとづく最適なパーソナライズが実現できました。たとえば、滞在前の顧客の部分についてお話すると、広告出稿のやり方は大きく変わりました。これまで私たちのメディアチームは、キーワード選定や顧客属性の定義などを、すべて手作業で行ってきました。75のメディアプランが同時に走るような状態で、それぞれについて手作業で最適化するわけですから、作業量は膨大になります。実際に、1つのキャンペーンの実行に約2週間の準備期間が必要でした。アドビのデジタル基盤が稼働してからは、システムが自動的に最適化してくれるため、手作業は必要ありません。顧客側のパーソナライズに加え、メディア側の広告出稿対象サイトや入札価格も最適化し、出稿費用を33~60%抑えられました。その結果、同予算でより多くの広告を出稿することができました。

 

新たなエコシステム
■新たなエコシステム 統合されたデジタル基盤により、広告費用の節約と顧客側のパーソナライズ化を実現

稼働後半年で売上30%の増加を達成

――それらの成果は、目に見える結果として現れていますか。

エストラダ氏:売上の30%増加という結果を得ることができました。広告出稿量を増やせたことに加え、パーソナライズの最適化と自動化によって、現在走っているキャンペーンは3,000を超えます。こうしてそれぞれの顧客にとって最適なキャンペーンを届けることにより、反応率が高まりました。また、キャンペーンの企画から実行までの期間を大きく短縮できたことも、売上アップに大きく寄与したと考えています。

――デジタルな顧客体験では、コンテンツの改善にも取り組みましたか。

エストラダ氏:コンテンツは、ビジュアルやコピーをより良くしただけではありません。たとえば、宿泊料金を期間限定の特別価格でオファーをするなど、遊び心を加えた取り組みを実施しています。滞在中に利用してもらうホテルのポータルも、より使いやすいように改善しています。こうしたすべての取り組みが、競争優位性の獲得へとつながっていくと考えています。

イノベーションを起こしていく企業文化

 

メーガン エストラダ氏

――こうした成果は、今後さらに拡大するのでしょうか。

エストラダ氏:たとえば、いま取り組んでいる「デジタルな顧客体験の向上」には、滞在中に楽しんでもらうコンテンツなども含まれています。まだスタートしたばかりですので、それらの成果は来期以降の再訪率として顕在化してくるでしょう。また、最適化は永続的に行うものですから、一気に30%の売上アップというドラスティックな効果はなくとも、徐々に拡大させていけると考えています。

――同地域のライバルとなるリゾート会社が、全く同じアプローチで、同じことをした場合、どのように競争優位性を維持していくのでしょう。

エストラダ氏:現時点で私たちは先行しており、数多くのノウハウを蓄積しています。ただ、先行者利益を得られる期間はそれほど長くなく、ライバルは将来同じことをやってくるでしょうし、やらなければならない状態になるでしょう。「ライバルも同じことをやるべきだ」と声を大にして言えるほど、私たちの施策は成功しています。その際に優位性として明らかなのは、私たちの施設そのものです。複数ブランドの総合力を生かす施策は、ライバルにはまねできません。さらに、例えばVR(仮想現実)のような新しいものを積極的に取り入れ、イノベーションを起こしていく企業文化が、私たちのデジタル変革戦略を加速してくれます。これからも、新たなテクノロジーやコンセプトを取り入れながら、顧客体験をより良くする改善活動を続けることで、マーケットをリードし続けていきます。

――本日は、どうもありがとうございました。


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