レタリングアートのスタイルと上達のコツ
アーティストやデザイナーはさまざまなスタイルのタイポグラフィで創作を行ないます。作品に合うスタイルを選ぶ前に、レタリングアートのさまざまなスタイルについて学びましょう。
レタリングをデザインに取り入れる
Adobe Illustratorでは、パソコンにインストールされているフォントを使わなくても、お洒落なレタリングアートを作ることができます。レタリングによる文字は、ビジネスレターヘッドやサイネージ、ブックカバーなど、各プロジェクトごとに作成されることが多く、フォントを使った文字よりもデザイン上の融通が利くというメリットがあります。
「プロジェクトや人に合わせたデザインを作っているときは、フォントを使うよりレタリングのほうが文字の書きかたをより細かくコントロールでき、レイアウトスペースに合うように文字を成形することができるからです。そうした調整を加えていくことによって、よりデザインに個性、独自性を持たせることができます」(手書きのレタリングアーティスト/Jen Krauseさん)。レタリングならば、すべての文字、形状をクライアントのニーズやプロジェクトのビジョンに合わせてカスタマイズできるわけです。

レタリングによる文字とフォントによる文字は、しっかりと区別しておくことが重要です。レタリングはそのプロジェクトに合わせて個別に描かれたタイポグラフィを指すのに対し、フォントはスタイルとサイズが統一された文字のセットとして定義されます。レイアウトアプリケーション上で文字のカーニングやサイズを調整することはできますが、手描きのレタリングほどの融通は利きません。ただし、レタリングの文字を描くときにも、各文字をゼロから描き始めるのではなく、フォントで入力した文字から始めると、時間を節約でき、レタリング文字を作成するための新しいアイデアのもとにもなります。「最初は一般的なフォントを参考にするという考えは悪くありません。レタリング文字を描くうえでのベースにすることもできます」(デザイナー兼アーティスト/Robin Caseyさん)
さまざまなレタリングスタイルを探索する
伝統的なカリグラフィー
カリグラフィーとは、筆やペンを使った手書き文字によるデザインです。伝統的なカリグラフィーは、独特のストロークとフォーメーションで作成された、カッパープレート体やスペンサリアン体のような手書きのスタイルを指します。文字のかたち、書きかたはルールによって決められています。
ゴシックレタリング
カリグラフィレタリングの伝統的な形式のひとつがゴシックレタリングで、「ブラックレター」と呼ばれることもあります。このスタイルは中世ヨーロッパ全体で広く使用されており、筆による重い下向きのストロークを使用して書かれました。また、このスタイルの文字は初期の印刷でも使用されていました。最近ではタトゥーや看板でブラックレターをよく見かけます。
現代のカリグラフィー
現代のカリグラフィーは、より緩やかで有機的なスタイルを備えています。スクリプト、ブラシレタリングはすべて現代のカリグラフィーと見なされ、近年のカリグラフィー人気の高まりに貢献しています。カリグラフィーは伝統的に紙にインクや筆ペンを使用して描かれていましたが、Adobe Frescoのようなアプリの登場によって、デジタルの世界でも取り入れることができるようになっています。
セリフ体レタリング
直線的なサンセリフ体に対して、画線の両端にセリフ、ケルン、テールといった装飾的な処理を施したセリフ体は、レタリングをよりフォーマルに見せることができます。画線の処理に飾りを加えることで華やかさを増し、よりスタイリッシュな外観に仕上げることもあります。
サンセリフ体レタリング
セリフのないレタリングは、サンセリフ体に分類されます。このレタリングスタイルはモダンでクリーンな印象を与えます。線がすべて同じ太さのモノライン、文字がつながったり触れたりしないブロック文字のようなスタイルは、このカテゴリに分類されます。
新しいレタリングスタイル
新しいレタリングのトレンドは常に現れ、変化しています。文化的なトレンドから発展したグラフィティレタリングやバウハウスフォントなど、さまざまなスタイルを研究してみましょう。日々のできごとはデザインに影響を与えます。生まれ続ける新しいフォントとレタリングスタイルに注目し、トレンドを常に意識しておきましょう。
デジタルツールですぐれたレタリングを実現する
レタリングの世界に入ることは芸術を追求する第一歩とも言えます。そしてレタリングはデジタルを活用するとさらにクリエイティブに仕上げることができる分野でもあります。ソフトを使ってあらゆる直線、曲線をコントロールすることで、必要な文字のかたちを正確に作り上げることができるからです。レタリングを始めてみたいと思ったときに参考になる、チュートリアルとアドバイスを紹介します。



- このデジタルカリグラフィーの手引きを参考に、手書きのレタリングをカリグラフィーに変換する方法を確認しましょう。文字を微調整し、狙ったストロークを作成していきます。
- アーティストのMartina Florさんは、手描きのデザインから、Adobe IllustratorとAdobe Photoshopを使用して芸術の概念を洗練されたすばらしいグラフィックを作成しています。
- アーティストのEsther Loopstraさんのように、手描きのスケッチをAdobe Captureを使用したデジタルデータに変換することもできます。
- すぐにデジタルで始めたいなら、Adobe Frescoを使用して、フリーハンドでレタリングデザインをしてみましょう。何千ものブラシが利用できるので、想像できるあらゆる種類のカリグラフィーを作成することができるでしょう。
「レタリングを学ぶのに正しい方法も間違った方法もありません」(Caseyさん)。
まず始めてみましょう。そうすれば、自分に最適な方法も見つかるはずです。
レタリングのインスピレーションを見つける
新しいレタリングのアイデアを探すときは、クリエイティブなあらゆるものに目を向けましょう。「私の場合、古いレシピカードや手書きの手紙に書かれた文字を調べたりしています」(Krauseさん)多種多様なレタリングの世界に触れて、想像力を刺激しましょう。
- アーティストのDavid Bramsonさんの『365日間のレタリング(LETTERING 365)』を見てみて 、気になる新しいスタイルがあるかどうか探してみましょう。
- Mateusz WitczakさんがBehanceのレタリングデザインでセリフ体と西洋の世界観をどのように活用したかをご覧ください。
- さらなる多様性を求めているなら、Jessica Graciaさんの個々の文字デザインが創造力を刺激するかもしれません。
- Jamie Clarkeさんの複雑な文字デザインには美しいディテールがあります。簡単な字形を詳細なイラストに変換する様子をご覧ください。
Krauseさんは、「完璧ではなくても、レタリングスキルは常に向上し、完璧に向かっている。」と言っています。レタリングを習得するには練習が必要です。粘り強く取り組んで、楽しみながら新しいものを創造していきましょう。
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