

どのような機器でも良い写真を撮影することはできます。ただし、焦点距離の異なるレンズが多いほど、写真の幅は広がります。
焦点距離のしくみと、ポートレートや風景写真などそれぞれに最適な焦点距離がわかると、表現の幅が広がるだけでなく、専門的な撮影能力も身につけることができます。それはアスリートが競技に最適な靴を選ぶようなものです。サッカー選手は草をつかむクリートシューズを着用しますが、バスケットボール選手には硬い木の床ですべらない靴底が必要です。撮影においても同様に、レンズの焦点距離を必要な画角(レンズが捉える範囲)に合わせる方法を知り、被写体や撮影環境に合ったレンズを選ぶことで、どのような撮影にも十分な装備で臨むことができるようになります。
焦点距離を理解する
18mmなどの短い焦点距離のカメラレンズを使用すると、撮影した写真の画角が広がり、200mmなどの焦点距離が長いレンズでは画角は狭くなります。
レンズの焦点距離とは、レンズ内で光が出会う地点からカメラのセンサーまでの光学距離(通常はmm単位)のことです。

焦点距離の見つけ方
特定の被写体が遠くにあっても近くにあっても、最適に撮影するには焦点距離を決定する必要があります。簡単な式で計算できますが、自分から被写体までと、レンズからカメラセンサーまでのおよその距離が必要です。
焦点距離 = 被写体からレンズまでの距離 + レンズからカメラセンサーまでの距離
焦点距離を決定するには、レンズが凹面か凸面かを知っておく必要もあります。凸レンズ(収束レンズとも呼ばれる)と凹レンズ(発散レンズとも呼ばれる)では、光の焦点が異なります。そのため、どちらのレンズかにより焦点距離の計算が変わります。この計算には、オンライン焦点距離計算ツール(英語)を使うと便利です。
レンズが遠くの光源に焦点を合わせる距離を測定(または光学ベンチと呼ばれるツールを使用)することによって焦点距離を決定することもできます。しかし実際には、焦点距離と絞りの関係を理解した上で、撮影する写真のタイプがわかっていれば、焦点距離は決まってきます。重要なのは、ツールに関する知識と試行錯誤、経験を組み合わせることです。
技術的な側面はここまでです。次に、実践的側面を説明します。
単焦点レンズについて
レンズは望遠レンズから超広角魚眼レンズまで、外観も用途も多種多様です。人生にも写真にも、スパイスとなる選択肢があるのはよいことです。一方、特定の焦点距離内で知識とスキルを磨くということになると、プライムレンズは最高のトレーニングになります。



プライムレンズは固定焦点距離レンズです。つまり、ズームや拡大が無く、単一の焦点距離での撮影に固定されます。
「プロとして写真を撮影したいのなら、自分の好きな焦点距離、快適に使える焦点距離を選び、それだけでしばらく撮影することをお勧めします」とBoydは提案します。「1つの焦点距離のみで創作するようにしてみましょう。そうするとカメラについて色々と考えるようになります。設定についてさらによく考えるようになります。より時間をかけるようになって、ゆとりが持てるようになります。ズームレンズを使用していると、ただズームする誘惑にかられます。でもプライムレンズを使用している場合は、自分が動かなければなりません」
「1つの焦点距離のみで創作するようにしてみましょう。そうするとカメラについて色々と考えるようになります。設定についてさらによく考えるようになります。より時間をかけるようになります」
外出して、好奇心が赴く場所に行き、単焦点レンズで継続的に撮影の練習をすることは、写真家としての自分の目を理解するための重要なステップです。
「選ぶレンズの種類と焦点距離は、自分のスタイルを表現するのに役立つでしょう」とウェディング写真家のKilen Murphyさんは言います。「それは撮影法や写真の仕上がりにも影響します」
自分のスタイルが固まってきたら、視野を変化させてみましょう。様々な焦点距離を試して、スタイルをさらに確立する啓発的なプロセスを踏むことができます。バットマンのユーティリティベルトのようなレンズの装備を駆使してより複雑な撮影をすることが目標である場合は、様々な焦点距離の利点を理解することは特に重要です。
焦点距離を変えると、大変革も起こる
ライブイベントの写真撮影をすると、焦点距離が撮影に与える影響をよく理解できます。完璧な角度を探して会場を動き回ったり、時には最善の撮影をおこなうために焦点距離を変更する必要があります。
「撮影の被写体についてと、どのレンズなら上手く撮影できるかを知っている必要があります」と著者、デザイナー兼写真家のKhara Plicanicさんは説明します。「現場では被写体がどこに向かっているのか、次に何が起こるのかを予測しようとしています。そして、シャッターチャンスの時に都合の悪い場所にいて後れを取ることがないように、できれば有利な環境にいたい思っています」
こういうときに、スーパーヒーローのユーティリティベルトのように頼りになる予備レンズは必携です。
結婚式を撮影するとき、Plicanicさんは50mm、16-35mm、70-200mmの3つのレンズを準備します。イベントや撮影には様々な条件があり、キャディが次のショットをグリーンに着地させるために適切なゴルフクラブを選択するのと同じように、焦点距離を見分ける能力があれば、完璧な写真も実現可能になります。


長い焦点距離と短い焦点距離
焦点距離が長いと遠くの被写体が大きく見え、焦点距離が短いと画角が広くなります。様々な写真撮影に適した焦点距離のガイドを以下に紹介します。
長い焦点距離:
- スポーツ写真
- ワイルドライフ写真
- ライブイベント写真
短い焦点距離:
- 建築・不動産写真
- ドキュメンタリー写真
- 風景写真
レンズと焦点距離の早見表

- 魚眼レンズ: 7〜16mmでは、レンズの視野は非常に広くなり、端で曲がったり歪んだりします。広い街並みを撮影したり、水平線を曲げたりするのに最適です。
- 広角レンズ:10〜42mmのレンズは、広い風景や大規模な集合写真の撮影に最適です。
- 標準レンズ: 固定焦点距離が50mm、85mm、100mmのレンズは、ポートレートやライブイベント写真、スチル撮影で頼れるレンズです。
- 望遠レンズ: 100〜800mmまで距離は様々です。長いレンズでは数百m離れた被写体も撮影できますが、そのぶん、狭い視野、浅い被写界深度で撮影することになります。
ほかにもティルトシフトレンズやマクロレンズなど、用途に合わせて多くのレンズがありますが、まずは上記のリストから自分の目的に合ったセットを揃えていくとよいでしょう。
この技術的なノウハウをポケットに入れていけば、どのレンズが自分に合っているかを確かめることができます。その後は、知識を活用するだけです。結婚式写真カメラマンのAnna Goellnerさんは次のようにアドバイスしています。「とにかく実験をするに限ります」すべての場所が実験の舞台です。外に出て、実験してみましょう。