馬のように筋肉組織が複雑な大型の動物は、描くのが難しいモチーフのひとつです。しかし、ポイントを抑えれば、写実的な馬を描くのは決して不可能なことではありません。
プロのアーティストはどのような方法で馬を描いているのでしょうか。プロの描きかたから学びましょう。参考写真を見てスケッチし、その後、馬の各部分を基本形に簡略化します。一歩ずつ手順を踏んでいけば、複雑な馬も描けるようになります。さっそく始めましょう。
ほかの対象物を描くときと同様に、馬を描くときもやはり観察することから始めます。実際の馬を観察できない場合には、参考になる写真やイメージを収集しましょう。かんたんに見つかる参考イメージで構いません。本や写真、極端な話を言えばおもちゃの馬でもいいのです。また、Adobe Stockのようなリソースを活用すれば、何千もの参考画像を見つけることができるでしょう。
ここで収集する参考画像は、トレースするためのものではなく、観察して学ぶための資料です。描く対象物をよく観察すると、対象物特有のかたち、特性を記憶することができます。たとえば、馬の首がどのくらい長いのか、タテガミが頭の上にどのように生えているか、といったことを実際に確認しながら覚えることができるのです。あいまいな記憶に頼って、間違ったディテールを描いてしまうこともありません。
参考画像を見つけたら、早速Adobe Fresco を使ってデジタルで、もしくはペンを使って紙に描いてみましょう。Adobe Stock で画像を見つけた画像は、ハートのアイコンをクリックしておけば、Adobe Creative Cloudのライブラリを経由してAdobe Fresco ドキュメントでも利用できるようになります。参考画像を自分のドローイングスペースの横に並べることができれば、対象をしっかりと観察しながら描くことができるでしょう。
参考画像を見ると、それぞれの馬の体は似たようなかたちでできていることがわかります。スケッチした馬の骨格は、円形、曲線、そして直線でできた偏った感じの四角でできています。ちょうど逆さまにしたティーカップのようです。手順を追いながら、単純なかたちを使い、馬の基本形を描く方法を学びましょう。
まずは馬の体から
円を 2 つ描いて、斜めの線でつなぎます。ほとんどの馬は、上の線が背骨の曲線を作りながら、地面に向かってなだらかに下がっています。下の線も同じ方向にカーブしていて、肋骨と腹部を描き出しています。
頭に着目する
馬の頭は 2 つの円を線でつないでスケッチします。耳はゆるやかにカーブする三角形で描きます。線で描いたかたちと円同士の距離を変えることで、描いている馬を特定の品種のように見せることもできます。このような何気ない違いが、最終的なドローイングに大きく影響を与えます。たとえば、運搬用の大型馬の頭は、もっと円が大きく、互いに接近させて描きます。アラビアンのような軽量の馬の場合は、もっと小さな円を互いに距離をおいて描きます。
馬の足を描く
2 つの円を斜めの線でつないで、前足と後ろ足を描きます。ヒズメは逆3さまのティーカップの形にします。円の位置を変えることで、足を曲げる、足の位置を変えるといったアレンジも可能です。前後の足では動きが違います。参考画像をよく見て、動いているとき、立っているときによって、前後の足にどのような違いがあるのか、よく観察しましょう。
おもな部分のかたちが描けたら、馬の基本構造はできあがりです。何を使って描いていても、ここから基本形にディテールを加えていきます。デジタルのすばらしい点は、レイヤーを使ってかんたんに、すばやくドローイングできることです。レイヤーは言うなれば、透明の紙を何枚も重ねることができる機能です。レイヤーを使うとスケッチの上からトレースする、修正するといった作業も容易になるほか、絵が仕上がったときに、消しゴムで余分な線を消すという煩わしさもありません。手順に沿って指示にしたがい、レイヤーを使って馬のドローイングの仕上げをしましょう。
レイヤーの不透明度を調節する
レイヤーのプロパティを使って、馬の体のスケッチを描いたレイヤーの不透明度を下げ、ガイドとしてのスケッチが見える程度に調整します。
新規レイヤーを作成
「+」ボタンを押して新しいレイヤーを作ります。スケッチの上に新しいレイヤーが現れるので、好きなブラシを使って、このレイヤー上に馬のディテールを描いていきましょう(図のサンプルイメージでは 7 ピクセルの「鉛筆」ブラシを使用しています)
参考画像にしたがって描いてみる
本物の馬の参考画像をよく観察し、頭のスケッチで描いた円のどこに目、鼻、口をつけるかを決めましょう。馬の足のディテールやかたちについても同じことが言えます。単純な円や線で描いたかたちをトレースして、馬の足の筋肉をつけていきます。さらに体やたてがみといった馬のそのほかの部分にも同じプロセスで作業します。スケッチの一部が気に入らなければ、最初の骨格から別に描いていくこともできますし、消して、やり直しても構いません。デジタルなら調整はかんたんです。
馬の色やその他のディテールを加える
馬のディテールまで描けたら、「+」ボタンを押して新しいレイヤーを作ります。この新しいレイヤーは、スケッチの上、ディテールを描き込んだレイヤーの下に配置します。こうしておけば、修正した線と最初のスケッチの間に色を塗ることができ、色が線を塗りつぶしてしまうこともなくなります。
デジタルで絵を描くときは、いろいろなブラシを使って、色に深みと質感を持たせましょう。鉛筆からペン、水彩、油彩まで、Adobe Fresco ならたくさんのすばらしいブラシを使えます。想像している効果が得られるように、異なるブラシも試してみましょう。下の動画は同じサンプルイメージですが、ここではベースの色は「ソフトチョーク」ブラシを使い、別のレイヤーにライブブラシにある「水彩」ブラシで白の斑点を加えています。毛皮は新しいレイヤーに「粗い鉛筆」ブラシで描き加えます。レイヤーやブラシの使いかたに、正しい/間違いということはありません。創造性を広げていくために、限りないオプションや組み合わせが用意されているので、自分に合う表現手法を探し出しましょう。
デジタルでも従来のスケッチ方法でも、参考写真・資料を見ながら時間をかけて練習すれば、誰でも馬の絵が描けるようになります。犬やバラにも同じことが言えます。次はこうしたモチーフにチャレンジしてみましょう。
日本の漫画風のイラストに挑戦してみましょう。
水彩画のブラシストロークと表情豊かなテクスチャを表現するためのヒント