カット割りで動画の完成形をイメージしてみよう
動画を編集する上でカットを割ることは最も基礎的な事ですが、とても奥が深いものです。同じストーリーでもカット割りの決め方次第で伝わり方が全く違います。
カットを割ると一口に言っても、カット編集には無限の選択肢があり、これから紹介するどの種類のカットを使うかによって最終的なアウトプットに違いが生まれてきます。動画をはじめたての方はどのような選択肢があるのにかも戸惑うのではないでしょうか。
カットは、撮影前の絵コンテを作る段階で「どのようなカットにするか」という方向性が大方決まります。そのため、どのようなカットの種類があり、それぞれどのような効果があるのかを知っておくと作品のイメージが作りやすくなります。撮影現場でもよく使われる概念なので現場に携わる方も理解しておくとよいでしょう。
ここでは基礎的なカットの種類、180度や30度ルールなどの撮影時のルール、それらの活用の仕方、そして初心者からスキルアップするためのコツを紹介します。
カットの種類
映画制作者は、様々な意図を持ってカットをつなぎます。対話の場面での切り返しや、引きからの寄りなどのカット繋ぎは非常によく見る手法です。先述の通り、カット割りは動画編集においておさえておくべき重要ポイントですが、手法の種類は多くないので安心してください。
1. スタンダードカット
トランジションを使わずにカットする所謂、普通のスタンダードカットです。
唯一の欠点はこれから紹介する他のカットと比べ意味を持たせにくいカットということです。
2. ジャンプカット
ジャンプカットのジャンプは時間の経過を表します。同じシーン内で経過した時間にカットすることをジャンプカットと言います。
インタビュー動画で良く見られるのが異なったアングルでのジャンプカットです。
別アングルにカットすることによって違和感をなくすことができます。
3. Lカット、Jカット
Lカットは読んで字の如く、タイムラインがLの形になっています。
Lカットとは映像が次のカットに行っているのにも関わらず、音声だけ前のカットのままの状態です。例えばキャラクターが語りに入ったままその言葉は流しつつ、周りの状況カットに移る等です。
ドキュメンタリーでとてもよく使われる手法です。喋っている人の上に色々なインサートが入るのも一種のLカットです。
JカットはLカットの逆でタイムラインがJ型になっています。
次の映像が流れる前に次の音声が聞こえる手法です。音声によって次の状況がある程度、予知できるので異なる場所のショットをトランジションに頼らずスムーズに繋げるのに役立ちます。
4. アクションにカットする
アクション映画で良く目にするのがアクションカットです。勿論、他の多くのジャンルにも使われます。あるアクションに対してまた他のアクションに繋げます。
動画のフロー(流れ)を意識したカット手法です。
https://www.youtube.com/watch?v=eDPrmilr_Wk&t=7s
5.クロスカット
クロスカットは二つの異なる場所で同時に起きているショットを交互にカットすることを言います。
一瞬で状況を説明できる上に臨場感と緊張感を生み出すことができます。
6. カットバック(カットアウェイ)
続いて、カットバックは似ていますが、場面Aと場面Bを時間の連続性を持って繋げることで、時間がAとBが平行的に続くクロスカットとは異なります。日本の撮影現場でよく聞くのがこのカットバックです。ドラマや映画等で頻繁に使われます。二つ以上のショットを交互に切り返す事です。
7.モンタージュ
モンタージュは上記のカット手法に比べて
高速で連続のイメージカットを流すことによって時間の経過を表したり、映像の内容を伝えるカット手法です。
8. マッチカット
日本では同ポジ(同ポジション)とも呼ばれることの多いカットの種類です。
まったく異なるショットですが、似た構図(同じポジションや同じフレーミング)にすることで半ば強引にカットを繋げる手法です。意図的に使われればとても効果的で、まったく異なる場面であってもシーンに連続性をもたらします。
以上、8つの基礎的なカットについて説明しましたが、意外と主要なカット手法というのは少ないことに気づくはずです。テクニック自体はとてもシンプルなものですが覚えているときっと役に立つでしょう。上記のカット手法をなんとなしにやっていた方も多いのではないでしょうか。意図的にカットを駆使できるようになるとさらに良いでしょう。
180度ルール、30度ルール
続いては初心者からスキルアップを目指す方が、カットを作る上で知っておくと便利な180度ルールと30度ルールについて説明します。
1. 180度ルール
二人が対面して会話をしているとき、二人を結ぶイマジナリーライン(想像上の線)のどちらか片方に一旦カメラを置くと、続くカットも同じ側にカメラポジションを構えなければなりません。
なぜ同じエリアにカメラを置かないといけないかというとカットが繋がらなくなってしまうからです。以下の図をご覧になってください。
編集上、イマジナリーラインをどうしても越えたい場合は途中に聞き手のうなずきや手元、もしくは話し手の持ち物など、かぶせられる映像(インサートカット)を挟むなどして工夫しましょう。
勿論、例外的にこれを意図的に越えて撮影することもあるのですが、基本的にはイマジナリーラインは越えずに、180度ルールに沿って撮影を行うと自然につながりやすいです。
2. 30度ルール
30度ルールとは、あるカットは前のカットよりカメラポジションが30度以上異なっていなければならないというルールです。
前述の180度ルールほど重要ではありませんが、メリハリをつくるためには30度以上カメラポジションを動かすと良いでしょう。
ポジションがあまり変わっていないと観ている側が違和感を覚えてしまうので、ルールというよりは視聴者を飽きさせない為の工夫とも言えます。
他の作品も参考にしよう
上記のカット手法と180&30度ルールを踏まえた上で今後いろいろな映像作品を観ると、吸収できるものがたくさんあるでしょう。「なるほど、ここはこういうカット手法を使っているから、こうなっているのか」といった気づきの度に必ず自分の作品にも活かせるようになります。
様々なカットを効果的に使えるようになるには、インプットとアウトプットを重ねることが第一の近道ですまず、様々なカット手法があると知った上で色々な作品を観て、自分の作品にも活用してみましょう。
[取材協力:ニコラス・タケヤマ]