漫画やイラストで人物を描く時に、顔とともに人物の個性を際立たせるのが髪です。
同じ顔の人物でも、髪型や髪色によって雰囲気は大きく異なります。
髪を描く時の基本的な手順や、髪型による髪の描き方のちがい、自然に見せるポイント、色の塗り方などを解説します。
まずは基本をおさえて、さまざまな髪型の描き方をマスターしましょう。
人体を描く基本は骨格を意識するところから始まります。
髪を描く際にも、最初に頭蓋骨の形をきちんと把握する必要があります。
そのため、どのような髪型を描く場合でも、まずは髪のない頭部の素体を描くことから始めましょう。
きちんと頭部を描いておくことで、角度や髪型によって頭の形が変わってしまうことを防ぐことができます。
頭部の素体を描いたら、次につむじの位置に目印をつけます。
このつむじの位置を起点にして、前髪、サイドの髪、後ろ髪と大まかに3つのパーツに分けて髪の毛を描いていきましょう。髪の毛は頭部の丸みに沿って描くようにします。
図の髪型はセミロングですが、ショートやロングでも同様の描き方をします。
毛先にいくほど髪の毛の量は減るため、ある程度の毛束ごとに先が細くなるように描くと自然に見えます。
漫画やイラストでは、いわゆる「パッツン前髪」など直線的にカットされた髪型の表現として、毛先まで毛量を均一に描く場合もあります。その際は、毛束ごとの流れの線や、頭部にぐるりとかかる光の艶などで丸みを表現すると、頭部が平坦に見えることを防ぐ効果があります。
ポニーテールとは、後頭部の高い位置で髪の毛を一つに束ねた髪型です。
ポニーテール(馬の尻尾)の名前の通り、高い位置で束ねた髪が尻尾のように首や肩下あたりまでふさふさと垂れ下がった状態になります。
ポニーテールの人物のイラストを描く時のポイントは、後頭部にある髪を束ねている場所を確定しておくことです。漫画やイラストでは、前向きで人物を描くことが多いですが、ポニーテールを束ねる場所は前から見えない位置にあります。顔の向きによってブレないように、頭部の素体に、顎先から鼻を通る頭部の中心線上につむじとともに最初に位置取りをしておきましょう。
束ねる髪は、後ろ髪とサイドの髪が基本ですが、サイドの髪のうち顔の左右の一束のみ顔の横に垂らしておくパターンや、逆に前髪もふくめてすべての髪をまとめるパターンなどもあります。いずれの場合も、前髪、サイドの髪、後ろ髪の3つのパーツの髪の流れを意識しましょう。
ツインテールとは、頭部の両サイドの高い位置で左右均等に分けた髪を2つに束ねた髪型のことを指します。
ツインテールは、低年齢の女の子の髪型として使われるほか、特徴的な見た目などから、漫画やアニメ、ゲームのキャラクターなどによく使われます。
ツインテールの人物のイラストを描く時のポイントは、ポニーテールと同じように髪の毛を束ねる場所を頭部の素体を描いた段階で、きちんと決めておくことです。
左右にあるため、顔の向きによって高さがちぐはぐにならないように気を付けましょう。
また、高い位置で髪の毛を束ねる場合は、ヘアゴムなどを使い根元で強めに束ねる必要があるため、根元までの髪の流れをしっかり描いておくと、ポニーテールやツインテールらしさが出ます。
漫画やイラストで描かれるツインテールは、実際よりも髪の毛のボリュームが増えていたり、現実には難しいフォルムで描かれたりするなど、デフォルメした表現が加えられていることがよくあります。どの程度正確性を反映させるかは、絵柄や作品の世界観に合わせて調整しましょう。
基本の三つ編みは、1束の髪の毛を3つに分けて順に編んでつくる髪型です。
髪の毛全体を1つまたは2つに分けて編んで、後ろや横に垂らすほか、編んだ髪を輪状にしたり、束の根元に巻きつけてお団子状にしたりする場合もあります。また、サイドの髪のみを編んで垂らしたり、カチューシャのように頭に巻き付けたりと、三つ編みを使ったヘアアレンジは豊富にあります。
三つ編みを描く時には、ポニーテールやツインテールを描く時よりも、頭部からの髪の毛の流れをゆるやかにすると自然な雰囲気になります。
三つ編みは楕円を繋げたような輪郭線で表されることが多いですが、3つの髪を順に編んでいくため正確には楕円のような左右対称にはなりません。ただ、ツインテールなどほかの髪型を描く場合と同じように、絵柄や作品の世界観に合わせてデフォルメは可能です。
髪の毛の色の塗り方にはさまざまな方法があります。
今回は、頭部の立体感や髪の毛の空気感を出す塗り方を簡単に紹介します。
まず、基本となる色で髪全体を塗ります。
Photoshopなどで色を塗る場合は、線画とは別にレイヤーを追加しましょう。
今回は全体的にピンクブラウンの髪色にするため、暗めのピンク色にしました。
次に毛先を中心に、基本の色よりも薄い色をのせていきます。
この時、光が当たっている部分にも大まかに薄い色を置いておきます。色の境界部分はぼかしておきましょう。
新規レイヤーをつくり、影の部分を別の色で塗ります。今回はうすい紫を使用しました。このレイヤーは乗算にします。
さらに新規レイヤーをつくり、光の当たっている部分を、白に近いピンク色で艶を描きこむようなペンタッチで描き加えていきます。このレイヤーはオーバーレイにします。
仕上げに、もう1つ新規レイヤーをつくり、暗い色で髪の流れを描き足していきます。
最後の全体の色の調整をして完成です。柔らかな光のイメージする背景効果も書き加えました。
こちらはあくまでの、塗り方の一例です。ぼかしなどの効果を入れずに色の境界をはっきりさせたままの塗り方などもあります。ぜひ自分の絵柄に合った塗り方を見つけてください。
(作画・取材協力:Saku.U)
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