さあ、デザインしよう！ と思ったとき、あなたは何からはじめますか？
どういう意図で、どういう表現をするかを考えないままいきなり手を動かしてしまうと、デザインの方向性が定まらず、迷子になりやすいもの。例えば・・・

「朝ごはん」をテーマにした３つのデザインのうち、どれが一番『良いデザイン』だと思いますか？

正解は、「わからない」です。
ただデザインだけを並べて見ていても、それぞれに一長一短があり、どれが「いちばん」かなんて選べるわけがありません。良いデザインとは「目的にあったデザイン」です。
デザイン制作を始める前に、目的、優先順位、イメージを事前に整理することで、デザインの良し悪しを判断するための「軸」をもち、デザイン迷子にならないようにしましょう。

目的は２つの方向から考えます。
① いまから作ろうしているモノにはどんな目的があるか？　
たとえば「イベントチラシ」をデザインするとき。集客に使うというのが目的なら、どんな情報が伝わればイベントに来たいと思ってもらえるのか？ を先に考える必要があるでしょう。イベントテーマがわかる目を引くビジュアルや、タイトルがメインになりそうです。一方、当日会場内を回るときに使ってもらいたいなら、内容が網羅されていて、場所やタイムスケジュールがわかりやすいチラシをデザインするのが有効かもしれません。

② いまから手を動かそうとしているあなた自身には、どんな目的意識があるか？
仕事としてデザインを請けている、もしくはこれから請けられるようになりたいのであれば、依頼主がやりたいことを実現するためにデザインがどうあるべきかを考えることが重要でしょう。もし「企画書をつくる」という会社の業務を改善するのが目的なら、繰り返し使いやすいフォーマットを考える必要があるかもしれません。

上に挙げた「朝ごはん」の写真。こんな目的があったら、良いデザインといえるのではないでしょうか？

A=基本的な料理の作り方を理解してほしい

３つのデザインのなかでは一番シンプルな印象。手順を説明する文章はなるべく短くし、そのぶん写真や文字のサイズを大きくすることで、難易度が高くみえないように構成されています。

B＝レシピのバリエーションを楽しんでほしい

写真がはみ出すくらいに動きのあるレイアウト。楽しげな書体とカラフルな配色で、とてもにぎやかな第一印象です。思い切って文字量を減らし、その分メニューの数を増やしました。

C＝ゆったりした朝の時間を味わってほしい

料理はここでは主役ではなく脇役。数あるライフスタイルの小道具のひとつとなりました。風景の中に入り込みやすいよう、他のデザインのような切り抜きはせず、四角いままの写真が配置されています。

扱っている題材は同じ「朝ごはん」であっても、目的が違えば、必要な写真・文章・色・レイアウトがまるきり違う結果となりました。このように、目的を明らかにすることで、自然とデザインの方向性を絞りこむことができるのです。

下の3つのデザインは、それぞれどんなメッセージを伝えるのが目的でしょうか？

デザインをはじめる前の準備として、参考になるイメージ・ビジュアルを集めることも大切です。インターネット上でもたくさんの画像が集められますが、誰かがなんらかの意図を持って作ったリアルなモノも参考になるでしょう。雑誌や書籍、映画や美術館・ギャラリー、風景やモノの写真など、さまざまな方面のものを眺めてみると、アイデアがさらに広がります。

まさにこれだ！というデザインが1つか2つ見つかったとしても、そのまま参考にしてはただの真似になってしまいます。プラスの印象を受けたものをなるべくたくさん集めて、それらに共通するものはなにかを考えましょう。「色合い」であったり、「余白の取り方」であったり、「情報量」であったり、プラスの印象を受けた理由を自分なりに言語化してみるとヒントが得られます。

デザインする前に、判断の軸をつくる
目的、優先順位、イメージを事前に整理しておくことで、デザインの良し悪しを判断するための「軸」を持つことができ、効率よくデザイン制作ができるのです。
ただし、どんなに準備をしたとしても、なにかをつくるという行為は一直線には進まないことがほとんど。考えること・つくることを交互に行き来しながら、螺旋階段のように少しずつ上に上がっていくようなイメージ。けれど「先にやると良いこと」と「あとからやると良いこと」といった順番は多少なりとも存在します。
まずは、判断の軸を持つための下準備からはじめてみましょう。