※ 本記事は「デジタルカメラ・マガジン」2020年11月号(発行:株式会社インプレス)の特集記事を抜粋したものです。
写真・文 ● 上田晃司

撮影画像では背景の建物に照明が当たっており、テントが白飛びをしている。カラーではあまり気にならないが、モノクロにすると明部が目立つため気になってくる。また、主題は黒いクラシックカーなのでディテールがつぶれないように注意しながら、車の艶も一緒に表現する必要がある。色ごとのトーンをしっかりと調整していくことがポイントとなる。

ニコン D780/AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G/35mm/絞り優先AE(F1.4、2/250秒、±0EV)/ISO 4500/WB:オート
「基本補正」のプロファイルから白黒03を選択して、モノクロ化する。適用量は100のままで良い。モノクロのプロファイルにはAdobe Raw、5種類のカメラマッチング、17種類の白黒が用意されている。
<色の調整>
かすみの除去を使って、やや明るくなり過ぎた空の明るさを抑えて空の高さを表現する。かすみの除去は赤系統以外の色の明るさを補正するのに効果的なため、青い空の明るさを抑えるには使いやすいツールだ。しかし、調整し過ぎると空のトーンに不自然な境界が現れる。また彩度も高くなるので、補正のし過ぎには注意したい。

車の背景の建物には照明が当たっているため、「基本補正」で露光量だけを下げて暗くしてしまうと車が黒つぶれしてしまう。そこで、露光量は−0.40、コントラストは+4の補正にとどめて、ハイライトを−100まで最大限に補正する。暗くなってしまった車がはっきり分かるようにシャドウを+50にアップして暗部のディテールを引き出す。
車の黒いボディは艶やかで街並みが反射している。STEP2もシャドウを上げたことで少しメリハリがなくなっているので「基本補正」の明瞭度を+20上げて車のボディの艶やかさをアップ。テクスチャも合わせて+10にアップすることで車に反射している光や街並みがシャープになる。
パリの街並みはレッド、オレンジ、イエローで構成されているので、「B&W」でレッドを−5、オレンジを+6、イエローを−20にして整える。パープルとマゼンタも+5に微調整する。
<明るさの調整>
白黒ミックスは色ごとの明るさを自由にコントロールできる機能。オレンジのスライダーを動かすと画像内のオレンジ色の部分だけの明るさをコントロールできる。各色を別々にコントロールできるメリットはあるが、1色だけを大きく動かすと階調が不自然になるので注意したい。今回はパリの街並みがレッド、オレンジ、イエローで構成されていたため、この3色を調整した。加えて、中央付近にマゼンタとパープルのネオンが光っていたため、明るさのバランスを整えた。

白黒ミックスは近似色を調整する
白黒ミックスは色相環に沿っているので近似色を調整すると、トーンがなだらかになる。例えば、パープルを調整するときは、マゼンタやブルーも調整して、トーンジャンプを抑える。

「効果」の切り抜き後の周辺光量補正の適用量を−15に下げる。適用量がは好みで大丈夫だが、ぎりぎりまで下げてトンネル効果により被写体が目立つように調整している。ポイントは、表現したい部分に影響しない程度に周辺光量補正をすること。効果が強過ぎると周辺が目立ってしまうので注意。
ノイズが少ないと、分かりづらいので少し強めに「効果」の粒子を乗せる。ここでは適用量を50にしてザラつきが感じられるほどほどの効果とした。ノイズを加えるときは拡大して粒子感を見極めると良いだろう。見極めのポイントは壁などフラットな部分に少し粒子が目立つようになる程度がベストだ。
