事業計画書とは?書き方・作り方・作成例をわかりやすく解説

事業計画書は、企業が成長戦略や将来の展望を示すための重要な書類です。
特に融資や出資を受けたい企業にとって、事業計画書は投資家や金融機関に事業の将来性を効果的に伝え、信頼を得るための大切な役割を果たします。
しかし、収益予測や市場分析、成長戦略をバランスよくまとめるのは難しいものです。
そこでこの記事では、説得力のある事業計画書を作成するための実践的なポイントをわかりやすく解説します。ビジネスの将来をしっかりと描き、次のステージに進むための道筋を確認していきましょう。
目次
事業計画書とは
事業計画書は、事業のビジョンや戦略、収益の見通しを整理した計画書です。
形式は多様で、企業全体の運営方針を示すものや、特定の事業に特化したものなど、用途に応じて使い分けられます。
また、新たに会社を立ち上げる際には「創業計画書」として作成されることもあります。
事業計画書を通じて事業計画を明確に示すことで、関係者からの理解と信頼を得やすくなります。その結果、ビジネスプランとしての説得力をさらに高められます。
事業計画書の目的と役割
事業計画書の主な目的は、投資家や金融機関から融資を受けるために、事業の将来性を具体的かつ説得力のある形で示すことです。
そのため「どんな価値をどの顧客に提供するのか」「その戦略が成功する根拠は何か」「どれくらいの利益を見込めるか」といった重要なポイントを整理し、誰にでも理解しやすい形で伝えることが求められます。
そして、事業計画書には商品やサービスの詳細、ターゲットとなる市場、さらにはマーケティングや販売戦略といった多様な情報を記載します。あわせて、売上予測や必要なコストを具体的に見積もり、事業をどう実行していくかを示すことも欠かせません。
また、事業計画書は社内においても大きな役割を果たします。従業員や経営陣が同じ目標を共有し、統一された方向性で進むための「共通の指針」として役立ちます。
事業計画書が必要になる主な場面
次に、事業計画書が用いられるケースを確認していきましょう。
具体的には、以下のような場面で必要になります。
1.融資を受けるとき
金融機関から融資を受ける際に必要になります。
事業計画書を通じて、借入金を利息込みで確実に返済できる見込みを具体的に示すことが求められます。
そのため、損益計画や資金計画は現実的かつ実現可能な内容であることが重要です。売上や費用に関する根拠を明確に示し、計画に対する信頼性を高めなければなりません。
なお、融資の審査は複数の担当者が関わるため、誰もが納得できるよう、わかりやすく説得力のある内容に仕上げることも重要です。
2.出資を受けるとき
将来的に上場を目指している場合、ベンチャーキャピタルや個人投資家からの出資を検討することもあるでしょう。
こうした際にも事業計画書は必要です。なお、このケースにおいて投資家が注目するのは、事業の収益性やビジネスモデルの強み、そして将来のリターンなどです。
そのため、事業計画書の作成にあたっては、成長戦略や収益予測について具体的な根拠を示し、事業の将来性を説得力のある形で伝えましょう。
3.補助金や助成金を申請するとき
開業資金や事業運営のために補助金や助成金を申請する場合にも、事業計画書の提出が必要です。
補助金制度の要件に沿って計画書を作成し、事業の目的や意義、期待される成果をわかりやすく伝えることが採択の鍵となります。
なぜその事業に取り組むのか、どのような効果が期待できるのかを明確にし、説得力のあるストーリーとして描くことで、申請審査での評価を高められるはずです。
以上が、事業計画書が必要になる主な場面でした。
解説したように、一口に事業計画書といっても、提出する目的に応じて、厚みをもたせる箇所は異なります。協力を得られるよう、伝える相手を意識して計画を作成しましょう。
事業計画書を作成する3つのメリット
事業計画書のメリットを理解することで、計画書の目的が明確になり、効果的な内容を盛り込みやすくなります。
続いては、事業計画書がもたらす3つの具体的な利点を確認していきましょう。
【メリット1】事業内容を可視化できる
第一のメリットは、事業計画書の作成を通じて、事業の進め方や抱えている課題が可視化され、客観的に分析しやすくなることです。
事業計画書には、事業を始める背景や目的を整理して記載するため、作成する過程で自社の強みや他社との差別化ポイント、潜在的な課題が明確になり、具体的な戦略を描きやすくなります。
「何を目的として事業を行うのか」「どのような顧客に、どのような価値を提供するのか」「売上目標や戦略は何か」「競合の状況はどうか」といった要素を俯瞰でき、将来の見通しをより立てやすくなるのです。
また、事業の構想を言語化する際に必要な手順や進行の流れも整理されるため、現場レベルで日々行う仕事の改善点を発見しやすくなることも大きな利点です。
【メリット2】融資や出資を引き出す材料になる
二つ目のメリットは、金融機関や投資家からの融資や出資を引き出す際の根拠となる点です。
事業計画書を通じて、事業の収益性や安定性を具体的に示すことで、現実的な成功可能性を伝えられます。
そのため、内容が整理された計画書は、審査をスムーズに進め、承認の可能性を高める要因にもなり得ます。
【メリット3】社内外へ認識を共有できる
社内外を含む、ステークホルダーに対して認識を共有できることも、事業計画書を作成するメリットです。
会社や事業を立ち上げる際、全員が同じ目標を共有していることが、事業を進めるうえで欠かせません。
特に複数のメンバーで事業を進める場合、事業の方向性がメンバー間で食い違うと、計画が思わぬ方向に進んでしまうこともあります。
しかし、事業計画書を通じて具体的な計画や目標を文書化し共有しておけば、認識のズレが減り、統一感のある事業運営がしやすくなります。
結果として、チーム全体の結束力が高まり、効果的に事業を進める土台が整うのです。
さらに事業計画書を通じて、業界の状況や競合、ターゲットとする顧客層、事業の目的を明確に共有できれば、従業員の意識を統一でき、業務の進行や判断のブレをなくせます。
そのほか、事業の意義を理解することで、自分たちの取り組みがどのように成果に結びつくかが明確になり、モチベーションが向上する効果も期待できます。
これらのことから、事業計画書の作成によって、単に融資や出資を受ける以上のメリットがあることがご理解いただけたはずです。
それでは次に、具体的に事業計画書に盛り込む項目や作成方法について確認していきましょう。
事業計画書の基本構成
事業計画書の様式や目的にもよりますが、多くの場合、以下の12項目が盛り込まれます。
それでは、各項目で何を書くのか、そして情報をどのようにまとめ、どのようなポイントを押さえるべきかを確認していきましょう。
会社概要
「会社概要」セクションには、企業の基本情報と事業の全体像を簡潔にまとめます。
企業名・所在地・連絡先・設立年月日・代表者名・資本金など、企業の基礎データを漏れなく記載しましょう。
企業理念(MVV/ミッション・ビジョン・バリュー)
事業計画書の「企業理念」セクションでは、企業の存在意義や目指す方向性を伝えるために、ミッション(使命)、ビジョン(将来像)、バリュー(価値観)の3つの要素を整理して記載します。それぞれが一貫していることで、企業の方向性をより鮮明に伝えられます。
■ミッション(使命)
企業が何を目的に活動し、どのような価値を社会に提供するのかを示します。
例えば「高品質な製品で安心を届ける」「革新技術で人々の暮らしを豊かにする」といった形で、企業の役割を明確に表現しましょう。
シンプルで力強いメッセージが、企業の存在意義を読み手に伝えるポイントです。
■ビジョン(将来像)
企業が将来どのような姿を目指しているのか、どのような目標を達成したいのかを具体的に描きます。「業界のリーダーになる」「持続可能な社会を実現するリーディングカンパニーになる」といったビジョンを提示することで、企業が長期的に目指す方向性がはっきりと示されます。
ビジョンが明確だと、企業がどのように成長していくか、その道筋がわかりやすくなるため、投資家やパートナーも事業の成長可能性や発展性を具体的にイメージしやすくなります。
■バリュー(価値観)
企業活動の基本となる価値観や行動指針を示します。
「誠実さ」「挑戦し続ける姿勢」「チームワークを重んじる」といった、業務や事業に向き合う姿勢を具体的に記載し、企業文化や行動基準が理解されやすいようにしましょう。
バリューは企業のブランドイメージを形作り、従業員や関係者が共通の基準で動けるようにする重要な要素です。
特に新規事業やスタートアップにとっては、MVVが明確であることが、投資家やパートナーの信頼を得る大きな要因となります。
言葉を選ぶ際には、具体的かつ情熱が伝わる表現を心がけ、企業の特長や強みが自然に伝わるようにしましょう。簡潔で力強いメッセージが、企業の魅力をより引き立ててくれます。
組織体制とメンバー紹介
事業計画書の「創業者・創業メンバーのプロフィール」では、事業を支えるメンバーの経歴やスキルをわかりやすく示すことが重要です。
まず、各メンバーのこれまでのキャリアと実績を具体的に記載しましょう。
特に事業に関連する経験や成果を強調することで、事業を成功に導く力があることをアピールできます。具体的には、「どの分野で何年にわたりどのような成果を挙げたのか」を明確に伝えると効果的です。
また、保有資格や専門スキルについても、事業の信頼性や専門性を高めるために明記するのがよいでしょう。技術や経営関連の資格、特定分野のスキルがある場合、それが事業にどのように役立つかの説明も添えると、説得力が増します。
さらに、メンバーがなぜこの事業に取り組むのに適しているのか、各人の強みがチームとしてどう機能し、事業にどう活かされるのかを具体的に示すことも重要です。過去の経験やスキルが事業の成功につながる道筋を説明し、「このメンバー・このチームだからこそ実現できる」という点をアピールすることで、読み手に強い印象を与えられます。
ただし、事業に直接関係のない経歴やスキルを多く盛り込むと焦点がぼやけるため、記載内容は事業との関連性を意識し、簡潔にまとめましょう。
要点を絞り、具体的かつ明確なプロフィールを作成することで、メンバーの実行力と信頼性が伝わりやすくなります。
事業内容
事業計画書の「事業内容」では、提供するサービスや製品の概要、ターゲット顧客、事業のコンセプトを具体的に説明します。
「誰に」「何を」「どのように」提供するのかを明確に示し、事業の全体像が一目でわかるようにすることが重要です。
また、事業の強みや市場環境、競合分析を踏まえ、自社の競争力や優位性をしっかりと説明し、成功の見通しを伝えます。
■自社の強み
自社の強みは、他社にはない独自のリソースや優位性です。「ヒト」「モノ」「カネ」「ノウハウ」の4つの視点で整理するとわかりやすくなります。
例えば、「経営陣が広範な業界ネットワークをもっている」「独自技術や専門知識を活かして製品を開発している」「十分な資金力を確保している」「事業に関連する特許を保有している」といったことが該当します。
事業の成長に欠かせない強みを優先して記載し、読み手の意識に残るよう、効果的に伝えましょう。
■市場での競争優位性
自社の優位性を示すためには、競合他社との比較が欠かせません。
市場でどのように競争力を発揮しているかを具体的に説明し、「顧客層」「価格」「製品の特徴」「サービス提供のスピード」などを基準に比較することで、自社のポジショニングがわかりやすくなります。
競合との違いを視覚的に伝える際には、比較一覧表やマトリクス図を使うと効果的です。
■優位性を示す工夫
自社の特長がもっとも際立つように、競合と比較する際の軸を工夫して設定することが大切です。
競合が多い市場では、自社の強みが目立つ軸を選び、それにもとづいて比較することで、優位性を示しやすくなります。
また、作成した競合分析表に自社の情報を加えることで、競争力が視覚的に浮き彫りになります。まとめる際は、誰が読んでも理解しやすいよう、具体性とわかりやすさを意識しましょう。
「事業内容」では、事業の概要をシンプルかつ的確に伝えることが求められます。
同時に、自社の強みや競争優位性をしっかりとアピールし、事業の成功戦略を具体的に示すことで、読み手に信頼感を与えます。
テキストと図表を組み合わせて視覚的にわかりやすくすることで、説得力をさらに高めましょう。
ビジネスモデル
ビジネスモデルは、仕入れから製造、販売、収益化までの流れを示し、事業がどのように利益を生むかを視覚的に表現するものです。
文章だけでは伝わりにくいため、全体のプロセスが一目でわかるように図やフレームワークを活用するのが効果的です。
特に新規事業では収益化の仕組みや作り込みが甘く、失敗することも多いため、ビジネスモデルの設計は非常に重要です。
なお、新規事業のビジネスモデルを考える際には、事業の構造を整理し、全体像を明確にするためにいくつかのフレームワークが役立ちます。
以下に、ビジネスモデルの設計に有効な代表的なツールをご紹介します。
■リーンキャンバス
リーンキャンバスは、新規事業やスタートアップのアイデアを整理するためのフレームワークで、事業の重要な要素を1ページにまとめて視覚化したものです。
顧客の課題・解決策・収益モデル・コスト構造などを簡潔に示すことができるうえに、一枚で各要素を俯瞰できるため、課題の発見や迅速な検討・修正に役立ちます。
■バリューチェーン分析
バリューチェーン分析は、製品やサービスが顧客に届くまでのプロセスを細かく分解し、どの部分で価値が生み出されているかを把握する手法です。
業界を問わず幅広い分野で役立ちますが、特に製造業・サービス業・IT業界・流通業など、ステークホルダーが多く、複数のプロセスが絡み合う業種で真価を発揮します。
この分析により、どこでコスト削減ができるか、どのプロセスが競争力の源泉になっているのかが見極められ、より効率的な経営判断と収益性の向上につながります。
ビジネスモデルのアイデアを単に示すだけでは、人を説得できません。
どのような構造で、どのように収益を得るのかまでをセットにして、具体的に示すことが重要です。
また、例に挙げたフレームワークを活用して、事業の構造を整理するのもオススメです。
視覚的にわかりやすい形でモデルを作成することで、投資家やパートナーにとって理解しやすく、説得力のある計画になるでしょう。
市場分析
市場分析はターゲット市場と顧客ニーズを明確にし、事業の方向性を定めるために必要です。
適切な市場選定とターゲット設定を行うことで、事業の成功可能性を伝えられます。
以下に、市場分析のステップを紹介します。
1. 参入市場の選定
まずは進出する市場を明確にしましょう。
市場の選定が曖昧だと戦略も固めにくく、事業の成功は難しくなります。市場選定の際には、規模や成長性、競合の状況などを総合的に考慮し、ビジネスチャンスがある分野を選びましょう。
特に、新興市場やニッチな分野など、競争が激化していないエリアは狙い目です。
2. 顧客層の定義とセグメンテーション
市場を選定した後は、具体的なターゲット顧客を定義します。個人向け事業であれば、年齢・性別・職業・ライフスタイルなどの基準で分類し、狙う顧客層を絞り込みます。
法人向けの場合は、業種・企業規模・所在地・取引先の特性などでセグメント化します。
さらに、顧客の好みや行動パターン、抱える課題を把握することで、提供する商品やサービスがどのように顧客のニーズに応えるかを明確にできます。
3. ペルソナの作成
ターゲット層が定まったら、具体的な顧客像を描いたペルソナを設定してみましょう。
ペルソナとはターゲット顧客を象徴するモデルのことで、「30代の都市部在住の共働き女性」「小規模なIT企業を経営する40代の男性」といった設定をします。
ペルソナを設定することで、商品開発やマーケティングの方向性が明確になり、顧客に響く戦略を立てやすくなります。
4. 商品・サービスの適合性検証
ペルソナをもとに、提供する商品やサービスがターゲットの期待に合致しているかを検証します。事業展開する地域が適切か、商品のデザインや機能、価格がペルソナにフィットしているかを確認し、必要に応じて改善を行いましょう。
また、広告メッセージや販売チャネルにおいてもペルソナに合ったものかを見直し、適切なコミュニケーション手法を選びましょう。
市場分析では、ただ広くターゲットを設定するのではなく、具体的かつ詳細に顧客層を定義し、適切なペルソナを設定することが成功の鍵です。
事前にペルソナを定めることで、商品開発やマーケティングが的確にお客様に届き、事業計画書の説得力も増します。
また、適切な市場選定とペルソナ設定は、投資家やパートナーに対しても、事業の成功可能性の確度をわかりやすく示せます。
市場規模と成長性の分析
市場規模とは、事業がターゲットとする市場の大きさや、その成長の見込みを示す指標です。
事業計画書で市場規模を具体的に説明することは、事業の成長ポテンシャルを投資家やパートナーに伝えるうえで欠かせません。
■市場規模の重要性
市場規模の捉え方は、事業の目的や戦略によって異なります。
スタートアップや急成長を目指す企業にとっては、狙う市場の大きさや成長性が非常に重要です。
市場が拡大しているか、未開拓のニーズがあるかを明確にすることで、事業の成長見込みを示せます。
一方で、小規模なビジネスや地域密着型の事業では、市場全体の規模よりも、特定の顧客層を確実に捉えることが重要になる場合があります。
このように、事業の目標にあわせて市場の見方を調整することが求められます。
■市場規模の推定方法
市場規模の推定には、以下の方法が効果的です。
・フェルミ推定
フェルミ推定は、入手しにくいデータを、いくつかの仮定にもとづいて概算する手法です。
例えば、特定の都市での飲食店市場規模を推定する際、その地域の人口、外食頻度、1回あたりの平均支出をもとに計算します。新規市場に進出する際の初期分析で、特に有効です。
・統計データの利用
市場規模をより正確に把握するためには、信頼性のある統計データの活用が効果的です。
総務省や経済産業省が提供する統計資料は、ターゲット市場の規模やトレンドを理解する際に役立ちます。
こうした公式データをもとに市場規模を説明することで、事業計画書の信頼性が高まり、投資家やパートナーへの説得力が増します。
■TAM・SAM・SOMによる市場評価
市場規模を分析する際、TAM・SAM・SOMのフレームワークを使うと、事業の成長性を示しやすくなります。
・TAM(Total Addressable Market)
TAMは、提供する製品やサービスが理論的に獲得できる最大の市場規模を指します。すべての潜在顧客を対象とした、最も広い範囲の市場です。
・SAM(Serviceable Available Market)
SAMは、TAMの中から特定の顧客層に絞った、実際に狙える市場規模を示します。例えば、地域や特定のニーズにもとづいたセグメントがSAMに当たります。
・SOM(Serviceable Obtainable Market)
SOMは、SAMの中で、競合状況や自社の戦略を考慮したうえで、短期間に実際に獲得できると見込まれる市場規模です。現実的な売上目標として設定されます。
■市場規模の算出例
市場規模を具体的に示すためには「価格 × 顧客数 × 利用頻度」を基本とした計算が有効です。
例えば、サービスの単価が5,000円で、ターゲット顧客が2万人、1年間に3回利用すると仮定した場合、「5,000円 × 2万人 × 3回」で年間市場規模は3億円になります。
このように具体的な数字を提示することで、計画の実現性をわかりやすく示せます。
市場規模を説明する際には、推定の根拠を明確にし、具体的なデータをもとにした計算や数値を示すことが重要です。
また、事業の目標にあわせて、広い市場を狙うのか、特定のニッチに絞るのかをはっきりさせ、適切なフレームワークを使って分析結果を伝えましょう。
一方で、数値情報だけではイメージがしにくいため、視覚的に理解しやすい図やチャートを併用しましょう。
市場環境の分析
市場環境の分析は、事業が成功するために外部環境を正確に理解し、それにもとづいた戦略を立てるための重要なステップです。後述するリスク分析に関連するケースもあります。
市場分析の項目では、市場のニーズ・政策の変化・競合状況などを把握したうえで、自社の強みを効果的に活かすための、的確な戦略を示すことが求められます。
以下に、市場環境分析の進め方のポイントを紹介します。
1. 市場ニーズと政策の動向を把握する
市場のニーズを理解することは、事業戦略の基盤です。消費者が求めている製品やサービスを把握し、トレンドや潜在的な需要を見極めることで、事業の方向性を明確にできます。
また、事業に関連する政策や規制の変更にも注視が必要です。
例えば自然環境への配慮が重視される市場では、今後の法規制や規制水準の高まりを見越し、現状の業界水準より高いエコフレンドリー製品を打ち出すことで、中長期の競争力を高められます。市場環境をよく観察したうえでの戦略が、事業の成功を支える鍵となります。
2. 競合分析と差別化戦略
競合分析では、自社と他社を客観的に比較し、差別化のポイントを明確にすることが重要です。
競合の製品・サービス・価格帯・マーケティング戦略などを徹底的に調査し、強みと弱みを把握することで、自社がどの点で優位に立てるのかが見えてきます。
例えば、飲食店を開業する場合、近隣の競合店のメニューやサービス内容、価格設定、客層などを詳しく調べ、自社が提供する独自の価値を明確にすることが大切です。このような差別化戦略により、価格競争を避け、長期的な競争優位を築けます。
なお、競合を分析する際には決算書を読み解いて、ビジネスモデルを捉えるのもオススメです。
以下の記事では、決算書の読み方や書き方をわかりやすく解説しているので、ぜひご覧ください。
3. SWOT分析の活用
競合を分析する際には、SWOT分析が有効です。
SWOTとは、「Strengths(強み)」「Weaknesses(弱み)」「Opportunities(機会)」「Threats(脅威)」の頭文字を取ったもので、自社と競合の状況を多角的に理解するためのフレームワークです。
例えば、自社が持つ特許技術(強み)を、成長が見込まれる新興市場(機会)で活用することで、競合に対して有利なポジションを築ける可能性があります。
SWOT分析を通じて、事業戦略をより具体的にし、潜在的なリスクにも対策できます。
市場環境の分析では、外部要因を正確に把握し、それをどう事業に活かすかを具体的に示すことが鍵です。
競合との差別化や、独自の付加価値を強調することで、他社との差別化を図り、競争力のある戦略を立てられます。
販売戦略・マーケティング戦略
優れた商品やサービスも、適切に顧客にアプローチできなければ、事業の成功は望めません。
ターゲット層に対して効果的に認知され、購入につながる戦略を立てることが必要です。
そして、そのためには価格設定・販売チャネル・プロモーション活動を具体的に計画し、実行可能な形で示すことが重要です。
また、既に過去の実績や受注見込みがある場合は、それを明記することで、投資家やパートナーに信頼感を与える材料となります。
■価格設定(プライシング)と収益モデル
価格設定は、製品やサービスの市場でのポジショニングと収益性を決定する重要な要素です。
適正な価格を導き出すためには、コストや市場調査をもとにした戦略的アプローチが必要です。
以下の3つの手法を組み合わせて、最適な価格戦略を構築しましょう。
1.コストアプローチ
製造原価に一定の利益を上乗せして価格を設定する方法です。原価が明確で、販売数量の予測がしやすい日用品や食品に適しています。「原価率に対して何%」と一般的に適切とされる水準が固まっていることが多いものの、市場の需要や競合の価格を考慮して調整することもあります。
2.ニーズベースアプローチ
市場の需要にもとづいて価格を調整する手法です。季節や時間帯、場所などの要因で価格を変動させ、収益を最大化します。例えば、ホテルの宿泊料金や航空券の価格は需要に応じて変動します。最近ではAIを活用したダイナミックプライシングが進化し、より精密な価格調整が可能になっています。
3.競合ベースアプローチ
競合他社の価格を参考にして自社の価格を設定する方法です。寡占市場や特定のブランド製品でよく用いられ、競合の動向を注意深く見ながら、自社の強みを活かした価格を設定します。このアプローチは、価格競争を避けつつ差別化を図るのに役立ちます。
なお、商品・サービスを値付けする際には、上記のような手法論だけでなく、「プライシングは顧客とのコミュニケーションでもある」ということも念頭に置きましょう。
なぜなら、価格設定は単に収益を最大化するためだけでなく、顧客との信頼関係を築く役割も果たすものだからです。
市場と調和し、顧客が納得し満足できる範囲で、自社にとって最も利益を得られる金額を設定しましょう。
とはいえ、正確な価格設定を行うのはとても難しいもの。そこで収益性を担保しつつ、精緻な価格設定をしやすくする分析手法をご紹介します。
■収益性を強化するための分析手法
価格設定の精度を高め、収益性を向上させるためには、いくつかの分析手法を併用することが有効です。
・ポケットプライス分析
販売価格からリベートや運送費などの内部コストを差し引き、実際に得られる純利益を明確にする手法です。これにより収益の実態を把握し、コスト削減の改善点を見つけやすくなります。
特定の取引先に対して高コストがかかっている場合、そこを見直すことで利益率を改善できます。
・PSM分析(価格感度メーター)
顧客が感じる価格の適正範囲を把握するための手法です。
「どの価格が高すぎるか」「どの価格が安すぎて品質が心配か」といった質問を通じて、理想的な価格帯を導き出します。
この手順を踏むことで、最適な価格が設定でき、売上の最大化につながります。
・価格弾力性分析
価格変動に対して需要がどの程度変わるかを測定する方法です。
必需品のように価格変動に対する需要の変動が少ない商品は「価格弾力性が低い」とされ、高級品のように価格が変動すると需要が大きく変わる商品は「価格弾力性が高い」とされます。
これを理解することで、価格戦略の調整がしやすくなります。
■マーケティング戦略とプロモーション活動
ターゲット市場に製品やサービスを効果的に届けるためには、魅力を伝えるマーケティング戦略も必要です。オンライン広告やSNSマーケティング、イベントプロモーションなど、顧客に応じたチャネルを駆使して認知度を高めることを示しましょう。
また、期間限定の割引や特典、口コミを促進するキャンペーンを取り入れることで、購買意欲を高められます。具体的な施策を計画に組み込むことで、信頼感のある戦略が完成します。
効果的な販売戦略を構築するためには、ターゲット市場のニーズ、競合状況、コスト構造を的確に把握し、それをもとにした価格戦略を立てることが重要です。
また、収益性を継続的に評価し、必要に応じて戦略を調整することで、競争力を維持し、事業の成長を支える基盤が作られます。
マーケティングと販売戦略をうまく組み合わせることで、競争の中での優位性を確保し、持続的な成長を実現できます。
実行体制
新規事業の実行体制を適切に整えることは、事業の成功に欠かせません。組織の構造や人員配置、外部リソースの活用方法を明確に示し、実現可能な体制が整っていることをアピールすることで、投資家や関係者の信頼を得やすくなります。
1. 組織構成と役割分担
事業を進めるためのチームの組織図を作成し、各メンバーの役割と責任を明確に説明しましょう。
特に新規事業では、迅速な意思決定が求められるため、経営トップが直接関与する体制が理想的です。
トップマネジメントが事業にコミットすることで、意思決定が迅速に行えるだけでなく、組織全体が一貫した方向性を持ちやすくなり、社内のサポートも得やすくなります。
2. 人材戦略と外部リソースの導入
必要なスキルや専門知識が社内で不足している場合は、外部のリソースを活用しましょう。
外部の専門家やパートナー企業と協力する場合、その選定理由や期待される貢献を具体的に示すことが重要です。
3. 従業員計画と採用方針
現時点でのスタッフ数や役員構成を明確に記載し、今後の採用計画も具体的に示しましょう。
事業の成長に伴い、必要な人員も増えるため、適切な人材を確保するための採用戦略を事前に策定することが重要です。
また、採用にかかる費用や人件費の見積もりも記載することで、将来の人員拡充に向けた準備が整っていることを示せます。役員と従業員の役割の違いも明確にして、それぞれの責任範囲を具体的に説明し、実行体制の透明性を高めましょう。
4. 実行体制の強化
実行体制を強化するためには、組織の柔軟性と迅速な意思決定が欠かせません。
経営トップが積極的に関与することで、重要な決定がスムーズに行われ、事業の方向性がぶれることなく進められます。
また、外部リソースを適切に活用し、必要に応じて調整を行う柔軟さも重要です。これらを計画書で示すことで、投資家やパートナーに対して事業の実行力をしっかりとアピールできます。
実行体制の構築では、組織の役割分担を明確にし、外部リソースを効果的に活用することが成功の鍵となります。トップマネジメントの関与が強い組織は、意思決定のスピードが速く、一貫した戦略のもとで事業を進めやすいというメリットがあります。
また、計画における人材戦略やコスト見積もりを明確にし、将来的な事業拡大への準備が整っていることを示せます。
こうした取り組みを通じて、事業の実現可能性を高め、関係者からの信頼を得やすくなるでしょう。
実行スケジュール
実行スケジュールのセクションでは、明確な実行スケジュールを策定し、計画的に進められることを示しましょう。
ここでは事業の進行を管理しやすくするために、「ロードマップ」と「行動計画」という2つの視点から計画を示します。
全体の方向性を示すロードマップを軸に、具体的な行動計画を設定することで実現性の高い計画がつくれます。
■ロードマップと行動計画の違い
まず「ロードマップ」と「行動計画」の違いを理解することが重要です。ロードマップは事業全体の長期的な方向性を示し、主要なフェーズやマイルストーンを時系列で整理します。
これによりチーム全体が共通のビジョンを持ちやすくなり、計画の全体像を把握できます。
一方、行動計画は、このロードマップにもとづき、具体的なタスクや担当者、期限を細かく設定したものです。各作業の順序が明確になるため、業務を効率的に進められます。
■短期・中期・長期の行動計画
実行スケジュールでは、短期(1年以内)、中期(3〜5年)、長期(5年以降)などスパンを区切って、目標と取り組みを整理します。
短期計画では事業立ち上げや市場投入を目指し、具体的なアクションを示しましょう。
中期計画では事業の安定成長や新市場の開拓を進め、長期計画では持続的な発展と市場シェア拡大を見据えた目標を設定します。
■実行工程の具体化
事業を円滑に進めるには、実行工程表を作成し、具体的な作業内容を詳細に示すことが重要です。
どの作業を誰がいつまでに行うのかを明確にすることで、業務の優先順位や進行状況が把握しやすくなります。
WBS(作業分解図)を活用して業務を細分化し、ガントチャートを使って進捗を視覚的に管理することで、重複作業や遅延リスクにも素早く対応できます。
実行スケジュールは、事業戦略を成功に導くための指針です。
ロードマップで大まかな方向性を示し、行動計画で具体的なタスクを設定することで、チーム全体が共通のビジョンを持ちやすくなります。
また、WBSやガントチャートを駆使して進捗をしっかり管理し、必要に応じて計画を調整することで、事業の実現性を高められます。
財務計画
財務計画は事業の収益性を示し、金融機関や投資家からの信頼を得るための重要な要素です。
売上やコストの予測だけに留まらず、以下7つの項目を示すことで、計画の実現性を高められます。
1. 売上計画
売上の予測は「数量×単価」の計算を基本にします。販売数や単価、顧客数と平均利用料といった指標を用いて売上を算出します。
サブスクリプション型ビジネスでは、解約率や1ユーザーあたりの平均収益(ARPU)を考慮することも必要です。予測が難しい場合は、競合や既存の市場データを参考にして、信頼性を高めましょう。
2. 売上原価計画
製品やサービスの提供にかかるコストを売上原価として見積もります。
計算は「製品の原価×販売数量」で算出し、生産数や必要な資材、人員の配分を考慮して計画します。設備投資が必要な場合は、それを含めた計画が求められます。
3. 経費計画
事業運営に必要な経費をリストアップし、予算を組み立てます。
人件費・広告宣伝費・賃料・外注費・光熱費など、発生が見込まれるすべての費用を項目ごとに整理し、詳細な見積もりを行いましょう。
経費が可視化されることで無駄を削減しやすくなり、効果的な予算管理が可能になります。
4. 投資計画
新規事業の立ち上げには、初期投資が不可欠です。
製造業なら設備や機械、IT事業ならシステム構築や開発費など、事業に必要な投資を明確に示します。
さらに、将来の事業拡大に備えた追加投資も想定しておくとよいでしょう。
5. 損益計画
売上と経費の予測をもとに、事業の利益構造を可視化します。
事業の初期段階ではコストが先行するため、黒字化までのタイムラインや利益目標を設定し、成長シナリオを描くことが重要です。
これにより、段階的に進捗を評価しやすくなります。
6. 資金繰りとキャッシュフロー管理
資金の流れを見える化し、必要な資金調達の計画を立てます。
自己資金や融資の確保方法を具体的に示し、安定したキャッシュフローを維持できるよう戦略を整えましょう。これにより、事業の持続可能性を高められます。
7. 投資回収計画
初期投資の回収シナリオを示し、事業の収益性を明確にします。
「投資回収期間=投資額÷年間キャッシュフロー」で計算し、何年で投資を回収できるかを具体的に数値化します。短期間での回収が見込める場合、それが事業の安定性や投資家への魅力を高める要素となります。
例えば、投資額が1000万円で年間キャッシュフローが250万円なら、回収期間は4年となります。
事業上のリスクと対策
事業を成功させるには、潜在的なリスクを予見し、それに対する具体的な対策を事前に整えておくことが重要です。
金融機関や投資家は、事業運営におけるリスク管理の徹底度を見て、計画の実現性や信頼性を評価します。想定される最悪の事態を洗い出し、それにどう対応するかを明確に示すことで、事業計画の信用度が向上します。
また、どのような状況でも持続可能な経営基盤、つまり借入金の返済を確実に行える仕組みを構築することが必要です。
リスクの特定
以下の表は、事業運営における主なリスクとその対策例・相談先の一覧です。
想定される各リスクについて対応策を用意しておくことで、計画の現実性が高まります。
許認可未取得
契約トラブル
知的財産権の問題
法規制の徹底理解とコンプライアンスの遵守
定期的な法務チェック
防災計画の策定
保険への加入
緊急時対応マニュアルの整備
迅速な情報収集
事業計画の柔軟な見直し
売上の変動
キャッシュフローの悪化
資金調達手段の多様化
資金管理システムの導入
労働紛争
離職率の増加
明確な労働条件と契約
職場環境の改善
労働者との定期的なコミュニケーション
主要メンバーの長期欠勤
従業員の健康問題
定期健康診断
ストレスケア制度の導入
リスクヘッジのアプローチ
安定的な事業を実現するためには、個別具体のリスクヘッジ方法を押さえるだけでなく、大きな視点でアプローチの方法そのものを理解しておくことが重要です。
以下のような観点で、リスクを最小限に抑える具体策を講じましょう。
・リスクの分散化
資金調達やサプライチェーンを多様化し、一箇所に依存しない体制を作ることで、想定外のトラブルに強い事業基盤を構築します。万が一の事態が起こってもネガティブな影響の波及を抑えられます。
・保険の適切な利用
火災保険・損害保険・労災保険などを活用すれば、リスク発生時の損失を最小限に抑えられます。必要に応じて、専門家のアドバイスを受けながら適切な保険商品を選定しましょう。
・法務とコンプライアンス体制の強化
専門家と連携し、事業の各プロセスで法的なリスクを回避する体制を整えます。
定期的な法務チェックを実施し、法令遵守や契約管理を徹底しましょう。
・撤退基準の明確化
事業が期待通りの成果を出せない場合、事前に設定した撤退基準をもとに柔軟に事業規模の見直しや縮小を決断します。例えば、一定期間の利益目標未達や資金ショートなど、具体的な指標を設けることで、迅速かつ冷静な意思決定が可能になります。
これらのリスク管理をしっかりと行うことで、事業の信頼性と持続性を高め、投資家やパートナーからの支持を得やすくなります。
【業界別】事業計画書の作成事例
ここからは、事業計画書の事例を業界別に紹介します。
飲食業の事業計画書
この事業計画書は自家焙煎の珈琲と地元野菜を使った料理を提供するカフェを開業するための計画を詳細に記載したものです。
事業のコンセプトは、焙煎にこだわった珈琲と新鮮な野菜料理で、地域の人々がくつろげる空間を作ること。ターゲットは主に子育て世代の女性で、SNSやフライヤーを活用した集客戦略が特徴です。
また、収益見込みや出店エリアの分析も明記されています。
(引用: 飲食業|事業計画書の作成例|J-Net21)
小売業の事業計画書
自宅を拠点にベビー服のネットショップを設立する際の事業計画書です。
赤ちゃんの肌に優しい国産天然素材を使用し、デザインにもこだわった商品を提供しています。ターゲットは、おしゃれで個性的なアイテムを求める子育て中のママたち。主な販売チャネルは自社サイトで、ブログやSNSを活用した集客も計画されています。
元アパレル業界で培った経験とITに詳しい夫のサポートを活かし、安定したビジネスを目指していることが伝わります。
(引用: 小売業|事業計画書の作成例|J-Net21)
サービス業の事業計画書
親子で楽しむ味覚情操教育を通じて、子どもの健全な味覚発達と親子のコミュニケーションを促進することを目的とした事業計画書です。
対象は都市部に住む子育て世代で、室内プログラムや農業体験などの屋外プログラムを通じて学びを提供します。
3年目には2教室目の開設を計画し、主要顧客は年収800万円以上の家庭を想定しています。
(引用: サービス業|事業計画書の作成例|J-Net21)
事業計画書を作成した後のチェックポイント
事業計画書を仕上げたら、内容の効果を高めるために、いくつかのポイントに絞って見直しましょう。
以下のチェックを行うことで、事業計画書の説得力と信頼性をさらに高められます。
独自の強みが示せているかを見直す
独自の強みが事業に反映されているからこそ、他社に負けない競争力と他社に真似のできないオリジナリティがあると判断してもらえます。
なお、強みを示す際には「自社そのものの強み」と「商品・サービスの強み」を分けて伝えましょう。
計画に具体性があるか見直す
計画に具体性がないと成功可能性が低く見積もられ、融資や出資を受けられません。
特に、融資や補助金審査を受けるための事業計画書では、実現可能性がより注視される傾向にあるため、計画に妥当性があるか否かを何度も見直しましょう。
読み手が意識されているかを見直す
事業計画書を作成する際に重要なのは、計画書の「読み手」をしっかりと意識しているかどうかです。
金融機関の担当者や投資家など、異なる読み手に対して、それぞれの関心にあった情報を的確に伝えることが求められます。
見直す際には、以下の点を意識しましょう。
・読み手が求める情報が明確に示されているか
収益性やリスク管理、具体的な実行計画など、読み手が重視するポイントが押さえられているかを確認しましょう。
また、専門的な用語や説明が過剰でないか、逆に不足していないかを見直し、誰でも理解できる内容に仕上げることが重要です。
・ストーリーや独自性があるか
事業の背景やビジョンが明確で、全体を通してストーリー性が感じられるかを確認します。
また、事業の独自の強みや他社にはない魅力がしっかりとアピールされているかもチェックポイントです。
ストーリー性があると読み手の理解が深まり、共感や信頼感を得やすくなります。
・論理が飛躍していないか
各セクションがスムーズにつながり、論理が一貫しているかを確認します。
読み手が疑問を感じたり、論理が飛躍していたりしないよう、根拠がしっかりと示されているか、説明の順序に無理がないかを見直しましょう。
・デザインやレイアウトが見やすいか
どれだけ正当性の高い内容でも、読み手が情報を理解しにくいと、その価値は半減してしまいます。
セクションごとの見出し、適切なスペースや図表の活用など、レイアウトやデザインが読みやすく整理されているかを確認しましょう。
計画書がこれらの視点からチェックされていれば、読み手の関心を引き、理解しやすい内容になっているはずです。
事業計画書のプレゼンのコツ
事業計画のプレゼンでは、単なる説明に留まらず、聴き手に「この事業は投資価値がある」「信頼できる」と思わせることも大切です。
以下4つのポイントに注意して、説得力と魅力のあるプレゼンを目指しましょう。
・心に響くストーリーを描く
単調な説明ではなく、「なぜこの事業に挑むのか」「どのように成功を目指すのか」というストーリーを伝えることで、聴き手の心に残るプレゼンにしましょう。
例えば「困難を乗り越えて見えてきたビジョンとして・・・」「現場で得た確かな手応えとして・・・」といったように、具体的なエピソードを交えることで説得力が増します。
・事前にフィードバックを得て改善する
プレゼンの準備段階で、経験豊富な人からフィードバックをもらいましょう。特に新規事業の経験者や関連部署の意見は貴重です。
少なくとも5人以上から幅広く意見を聞き、事前に想定される質問や指摘を整理し、それを元にプレゼンをブラッシュアップすることで、説得力が格段に上がります。
・視覚的なインパクトと聴き手とのつながりを意識
スライドは情報を補完するためのツールです。重要なメッセージを強調するシンプルなデザインを心がけ、色使いやフォントも視認性を重視して選びましょう。
また、話す際には短く簡潔に伝えることが大事です。プレゼンテーションの前には発声練習をし、聞き取りやすい声を出すことも心がけましょう。
事業計画書が不採択になった場合には?
事業計画書が不採択となった場合、まずは審査員や関係者に不採択の理由を尋ね、具体的なフィードバックを得ましょう。
「事業の独自性が弱かった」「収益モデルが不明確だった」などの指摘があれば、それをもとに改善策を検討します。質問する際は、メールや電話で直接確認したり、オンライン説明会のQ&Aを活用するなど、建設的な対話を心がけてください。
次に、得られたフィードバックを分析し、計画のどこに課題があったのかを明確にします。
例えば、独自性が弱いと指摘された場合は、競合他社の分析を通じて自社の強みを再定義し、価値提案を明確にしましょう。顧客からの意見も参考にし、ターゲット層のニーズにもとづいた説得力のある内容にすることが重要です。
収益モデルの強化が求められる場合は、売上予測やコスト削減のシミュレーションを加え、データで実現可能性を示す工夫をしましょう。
また、次回の応募に向けた準備を進めるだけでなく、クラウドファンディングやベンチャーキャピタルなど、他の資金調達手段も検討することで、事業の成長機会を広げられます。
専門家からのアドバイスを受け、事業計画をブラッシュアップするのも一つの方法です。
不採択は終わりではなく、よりよい事業計画を作り上げるためのステップです。
不採択になった場合には、それを次のチャンスにつなげるための成長の機会と捉えましょう。
事業計画書のテンプレート
事業計画書を作成する際には、テンプレートを使うとスムーズです。
以下の各ページからは、公的な機関が発行しているテンプレートをダウンロードできます。
ここまで解説した内容を意識しつつ、入念に事業計画を練ってみてください。
なお、上記のようなPDF・Microsoft Excel・Microsoft Word形式のファイルを扱う際には、ブラウザーで使用できる「Adobe Acrobat オンラインツール」が便利です。
直感的に編集できるうえに、PDFファイルの圧縮や結合、ページの削除など、PDFに関する25以上の機能を使えます。セキュリティ面にも配慮されていて安全に使えるので、ぜひお役立てください。
また、電子署名やテキストの差分比較機能など、より高度な機能が搭載された「Acrobat Pro」も便利です。
書類業務の効率を高めたい方は、ぜひ一度お試しください。
Adobe Acrobat Proを使って文書業務を効率化しよう
https://www.youtube.com/embed/UcV97C8Jwdw?si=I9RI3tDZRm01xyXi
法人版Adobe Acrobatは、ビジネスに特化したPDFツールです。
PDFの編集や共有、電子サインに至るまで、PDFに関する便利な機能が一つに集約されており、世界中の企業が業務推進に活用しています。
今回は6つの特長をピックアップしてご紹介します。
- PDF上のテキストと画像をサッと編集できる
- ファイル形式を変換できる
- 文書の整理整頓がラクにできる
- 文書を安全に管理できる
- リンクを送信して誰とでも文書を共有できる
- 電子サインの署名・送信ができる
【特長1】PDF上のテキストと画像をサッと編集できる
PDF上のテキストの編集や、テキストの新規追加が可能です。
また、画像や図形の追加や差し替え、フリーハンドでの書き込みなどもできます。
Acrobat Proを使えば、誤字脱字の修正やロゴ画像の差し替えが、あっという間に終わります。
【特長2】ファイル形式を変換できる
Microsoft Excel・Microsoft Word・Microsoft PowerPoint、そしてPNGやJPEGといったファイル形式と、PDFを相互に変換できます。
変換の操作もわずか数クリックだけで済み、状況に応じたファイル形式への変換が可能です。
容量が重く、メールでの送付が難しいファイルも、PDFに変換すればスムーズに送信できます。
【特長3】文書の整理整頓がカンタンにできる
Acrobat Proでは、PDFページの並び替えや削除、PDFファイルの結合などもカンタンに行えます。
これまで使用した提案資料をひとつにまとめたり、日付順に並べ替えたりすることも可能です。
また、Acrobat Proではキーワードで検索し、目的のファイルをすぐに見つけることも。複数ファイルを横断して検索できるほか、大文字と小文字を区別した検索・完全一致による検索なども可能なため、目的の情報に瞬時にアクセスできます。
【特長4】文書を安全に管理できる
PDFファイルにパスワードを設定し、文書を安全に管理できます。
Acrobat Proでは、ファイルを開くためのパスワードと、操作を制限する権限パスワードの2種類の設定が可能です。権限パスワードでは印刷・編集・コピーの制限ができます。
また、Acrobat Proには墨消し機能も搭載されています。Acrobat Proの墨消し機能は、PDFファイル内の情報を削除したうえで塗りつぶしを行うため安心です。
【特長5】リンクを送信して誰とでも文書を共有できる
PDFのリンクを共有し、ひとつのファイルを複数人で、同時に確認できます。
複数人での共同レビューができるため、印刷して紙での回覧も不要です。
また、レビュー状況を視覚的に把握できるため、進捗管理にも役立ちます。
なお、Acrobat ProはPC以外にモバイル端末でも使えるため、いつでもどこでもコメントやレビューが行えます。
【特長6】電子サインの署名・送信ができる
さらに、Acrobat Proでは電子署名や電子署名の依頼も可能です。署名を依頼した人には通知メールが届き、オンライン上で署名が行えます。
なお、署名にはテキスト入力・自筆・画像などが利用でき、ハンコの印影をあらかじめ画像として用意しておけば、紙と同じような感覚で承認印を押すことも可能です。
また、すべての承認が完了すると、関係者全員に確認のメールが届きます。各人の作業状況をリアルタイムで把握できるため、進捗確認の手間もかかりません。
今回は事業計画書をテーマに、作成方法やポイントを解説してきました。
ご紹介した内容を実行できれば、良質な事業計画書が作成できるはずです。
一方で、解説した内容をそのまま踏襲するのではなく、これらのノウハウをどのように活かし、自社の事業計画に取り入れるかを見極めることが鍵になります。
そして様々なツールがある中でも、Acrobat Proにはビジネスシーンに役立つ機能が満載で、誰でもカンタンに使えます。
書類作成・文書管理・業務効率化のためのツールとして、全世界で使われている「Acrobat Pro」をぜひお試しください。
事業計画書のよくある質問(FAQ)
最後に、事業計画書に関するよくある質問に回答します。
事業計画書に適切なページ数はありますか?
適切なページ数は決まっていません。
事業計画書のページ数は、その用途や提出先によって異なります。例えば、補助金や融資を申請する場合は、わかりやすさが特に重要です。
そのため、1枚の用紙にコンパクトにまとめるケースもあります。例えば日本政策金融公庫の創業融資では、A3用紙1枚での提出が標準です。
一方、投資家向けの資料として作成する場合は、内容の詳細を伝えるために15〜30枚ほどのスライド形式になることも少なくありません。
あくまで事業計画を伝えるための書類なので、様式が指定されていない場合でもページ数を起点に考えるのではなく、目的に対して必要十分な情報が盛り込まれているか否かという視点で考えましょう。
市場調査のデータはどこから入手すべきですか?
官公庁・業界団体・民間の調査会社などの資料・データを調べるケースが一般的です。
例えば、以下のようなページを参照してみるとよいでしょう。
事業計画に迷った際、相談する窓口はあるでしょうか?
民間の支援会社はもちろん、お住まいの地域の商工会議所や市役所で事業計画に関する相談を受け付けているケースもあります。
また、創業支援においては日本政策金融公庫の窓口があります。
詳しくは以下の公式ページからご確認ください。
https://milo.adobe.com/libs/img/mnemonics/svg/acrobat-pro-64.svg
ぜひAdobe Acrobatオンラインツールをお試しください
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