
紙の承認フローが定着していて大きな問題を感じていなくても、近年のリモートワークや事業スピードの加速に伴い、「もっと効率的に進められるのでは?」と考えたことはありませんか。紙のやり取りが中心だと、担当者同士が離れた場所にいる場合など、承認作業が遅れたりコミュニケーションに手間がかかったりする場面も増えがちです。
そこで注目を集めているのが、時間や場所に左右されずに承認を進められる「電子承認」です。電子承認を導入すれば、承認プロセスをスムーズに進められるだけでなく、履歴をデジタルで残せるためコンプライアンスの強化も期待できます。また、Adobe Acrobatを活用すれば、複雑な手続きなしに電子承認をシンプルに導入できる点も大きな魅力です。
本記事では、電子承認の基本的な仕組みからAdobe Acrobatを使った具体的な導入手順、運用のメリットや注意点までをわかりやすく解説します。
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電子承認とは
電子承認とは、紙の書類を使用せず、デジタル上で承認・決裁を行う仕組みのことを指します。社内稟議や取引先との契約、従業員の経費精算など、承認を必要とする業務プロセス全般を電子化することで、文書管理の効率化や承認プロセスの透明性向上などさまざまなメリットを得られます。
電子承認には電子サイン(電子署名を含む)、電子印鑑などの手段があり、それぞれ技術的特性や法的効力が異なります。用途に応じて適切な手段を選択することが重要です。
■電子サイン
- 意味:内容について承認したことを認める電子的なサイン全般を指す
- 法的効力:使用する技術により異なる
■電子署名
- 意味:電子サインのうち、デジタル IDや公開鍵暗号などの技術を用いて、文書作成者の本人性や、文書の非改ざん性を証明できるものを指す
- 法的効力:紙と同等の法的効力を持つ
■電子印鑑
- 意味:デジタル形式の印鑑データを指し、単に印影を画像化しただけのものと、識別情報が保存されており信用度が高いものとに分かれる
- 法的効力:印影を画像化しただけの場合は法的効力が限定的。識別情報が保存されたタイプの電子印鑑は、一定の法的効力を持つ
法的効力が求められる契約書や公的な文書に関する承認業務では、本人性や非改ざん性を証明できる電子署名が必要です。
一方、社内稟議や見積書の発行などの手続きでは、簡易的な電子印鑑のみで十分なケースもあります。業務の種類や必要な証拠能力に応じて、適切な電子承認の手段を選択しましょう。
Adobe Acrobatで電子承認を導入する方法
無償版の「Acrobat オンラインツール」を利用すれば、社内の承認フローを無料で電子化できます。さらに、有償版の「Acrobat Pro」を使えば、デジタル IDや公開鍵暗号を活用し、法的効力のある電子署名で承認することも可能です。
以下でそれぞれの手順を解説します。
【無償版】Acrobat オンラインツールで電子サインする手順
Acrobat オンラインツールの「入力と署名」機能を開き、PDFファイルを以下のいずれかの方法でアップロードしてください。
- グレーの破線で囲われたエリアに、PDFファイルをドラッグ&ドロップする
- グレーの破線で囲われたエリアをクリックして、PDFファイルを選択する
アップロードが完了したら、画面左のボタンからAcrobat オンラインツールにログインします。ログイン方法は、Adobe アカウントに加えて、Google アカウント、Facebook アカウント、Apple IDから選べます。
なお、アカウントがない場合は、無料でアカウント作成してください。
ログインが完了したら、画面左のメニューから「署名を追加」を選択します。
ポップアップが開いたら、上部の選択肢から任意のフォーマットを選びサインを作成してください。各フォーマットの意味は以下のとおりです。
- キーボード:入力した文字をサインとして使用
- 手書き:自由に描画した形をサインとして使用
- 画像:アップロードした画像をサインとして使用
「画像」を選択すれば、事前に用意した印影の画像をサインとして使用することも可能です。
作成が完了したら、ポップアップの右下の「保存」ボタンをクリックします。
その後、PDFファイル内の任意の箇所をクリックするとサインを配置できます。サイズを調整したい場合は「A」マークをクリックしましょう。
また、サインの枠線上の円をドラッグすると、さらに細かいサイズの調整が可能です。
サインが完了したら、画像上部の「ダウンロード」ボタンからPDFファイルをダウンロードしましょう。
そのまま他の人にサインを依頼する場合は、画面左のメニューから「招待して電子サインを依頼」をクリックします。
「受信者を追加」の下の入力欄に、依頼先のメールアドレスを入力してください。
入力欄の右に表示される「...」をクリックすると、依頼先の名前や電子承認上の役割、パスワードの有無などを設定できます。
次に「フィールドを追加」からサインのフォーマットを選択します。
「電子サイン」を使用すると、相手の署名、氏名、署名日時からなるフィールドを配置できます。
「メッセージを追加」では、承認依頼のメールの件名、メッセージ、文書の名前、リマインダーの頻度を設定できます。
設定が完了したら、「送信」ボタンをクリックしてください。
Acrobat オンラインツールを使った電子承認の手順は以上です。
続いて、Acrobat Proで電子署名による承認を行う方法を紹介します。
【有償版】Acrobat Proで電子署名する手順
デジタル IDや公開鍵暗号などを用いた「電子署名」を作成するには、Adobe Acrobatの有償版のデスクトップアプリ「Acrobat Pro」がオススメです。
この章では、Acrobat Proを使った電子署名の手順を解説します。
まずは電子署名を入れたいPDFファイルをAcrobatで開き、画面左のメニューから「証明書を使用」を選択します(一部のメニューしか表示されていない場合は「さらに表示」をクリックしてください)。
「デジタル署名」をクリックします。
その状態で、署名を入れたい箇所をドラッグします。
すると電子署名に使用する証明書のタイプを選択するポップアップが表示されるので、任意のものを選んでください。
ここでは、「新しいデジタル IDの作成」を例にとり手順を進めます。
デジタル IDの保存先を選び先に進むと、ID情報を入力する欄が表示されます。名前や電子メールアドレスなどの必要情報を入力して、「続行」をクリックしてください。
デジタル IDの秘密鍵を保護するパスワードの設定が求められるので、推測されづらい複雑な文字列を入力します。パスワードの強度が自動的に判定されて右にメーターが表示されるので、確認しながら安全なパスワードを作成しましょう。
完了したら、「保存」を押してください。このパスワードは電子署名を入れる際に必要になります。
作成したデジタル IDを選択して、「続行」をクリックします。
すると、署名を作成する画面が表示されます。
署名として表示する要素を変更したい場合は、「作成」を押してカスタマイズ画面を開いてください。
設定が完了したら「保存」を押して元の画面に戻ります。
署名に問題がなければ、左下の欄に前の工程で作成したパスワードを入力して、「署名」をクリックしてください。
署名が完了すると、PDFファイルを保存するポップアップが表示されるため、場所を選択して保存しましょう。
以上でAcrobat Proによる電子署名の手順は完了です。
Acrobat Readerを使ってスマホで電子承認する方法
場所や時間の都合でPCを開けない場合、スマホで電子承認を行いたいこともあるでしょう。そんなときは、Acrobat Readerのモバイルアプリ(無償)を使うのがオススメです。
この章では、Acrobat Readerを使ってスマホで電子承認する手順を解説します。
まず、以下からアプリをインストールしてください。
アプリを開くと、Acrobat Readerへのログインが求められます。オンラインツールと同様に、Adobe アカウント、Google アカウント、Facebook アカウント、Apple IDの中から任意の手段でログインしてください。
画面右下のプラスマークから、PDFファイルを開きます。
画面下部のメニューにある「入力と署名」を選択します。
右下の万年筆マークをクリックして、「署名を追加」をクリックしてください。
上部の選択肢から任意のフォーマットを選びサインを作成してください。
各フォーマットの意味は以下のとおりです。
- 描画:自由に描画した形をサインとして使用
- 画像:アップロードした画像をサインとして使用
- カメラ:カメラを起動して、撮影した画像をサインとして使用
任意の場所をタップするとサインを配置できます。
サインが終わったら画面上部の共有マークをクリックして、URLやメールなどで他の人に共有しましょう。
スマホを使った電子承認の手順は以上です。
次の章では、電子承認のメリットを解説します。導入するかを迷っている方はぜひご覧ください。
電子承認のメリット
電子承認を取り入れることで、以下の3つのメリットを得られます。
- 業務効率化を実現できる
- コンプライアンスを強化できる
- コストを削減できる
それでは、各メリットについて詳しく確認していきましょう。
【メリット1】業務効率化を実現できる
承認業務を紙から電子へ移行することで、物理的な文書管理の手間が省けるだけでなく、承認プロセス全体の効率が向上します。
例えば、承認者が異なる拠点にいる場合でも、タイムラグなく文書をやり取りできます。また、承認の進捗が可視化されるため、現在どの段階にあるのかが一目でわかり、必要に応じて迅速な承認を依頼しやすくなります。さらに、承認の過程で文書にミスが見つかった場合、紙の書類では修正に手間がかかりますが、電子文書ならカンタンに修正できます。
【メリット2】コンプライアンスを強化できる
電子なら承認履歴が記録されるため、権限のない人による代理承認といった不適切な処理を防げます。 また、Acrobat Proのような暗号化技術を伴うシステムを使用すれば、データの改ざんが困難になり、コンプライアンスが一層強化されます。
【メリット3】 コストを削減できる
電子承認を導入すれば、紙代・インク代・プリンターの維持費といった紙関連のコストを削減できます。また、社内外での承認のために書類を郵送する必要がなくなり、郵便料金の負担も軽減されます。さらに、紙の書類を保管するためのキャビネットや倉庫が不要になり、オフィスの維持費の削減にもつながります。
このように利点が大きい電子承認ですが、導入にあたっては注意すべき点もあります。次の章では、電子承認の導入時に考慮すべきポイントについて簡潔に解説します。
電子承認の注意点
電子承認の注意点として、以下の2つが挙げられます。
- すべての手続きに適用できるわけではない
- 複雑なシステムだとハードルが高い
【注意点1】すべての手続きに適用できるわけではない
電子承認は多くの業務に対応できますが、法律上の証拠能力が求められる文書には、公開鍵暗号といった技術を伴う電子署名が必要になるケースがあります。用途に応じて適切な仕組みを選択することが重要です。
また、事業用定期借地契約など、法律上電子化できない文書も存在します。自社の業務でどの文書が電子化可能かを事前に確認するようにしましょう。
【注意点2】複雑なシステムだとハードルが高い
電子承認システムには、設定や運用が複雑で、導入に時間やコストがかかるものもあります。せっかく導入しても、組織全体でうまく活用できなければ効果を十分に発揮できません。
その点、この記事で紹介したAcrobat ProやAcrobat オンラインツール、Acrobat Readerは、直感的なUIでカンタンに操作可能です。使いやすいツールでスムーズに電子承認を導入したい方は、ぜひお試しください。
Adobe Acrobatで業務効率を向上させよう
Acrobatなら、電子承認をカンタンに導入できるほか、 多彩なPDF関連機能で業務効率がアップします。PDFの保護や墨消し機能を活用すれば、機密情報をしっかり守りながら安全に文書をやり取りでき、セキュリティやコンプライアンスの強化につながります。さらに、ページの削除・挿入・並び替え、ファイルの結合・分割など、PDFファイルの整理に役立つ機能も充実。Microsoft WordやMicrosoft Excelなど他形式との相互変換もスムーズで、あらゆる業務シーンに柔軟に対応します。
有償版のAcrobat Proは、これらの機能に加え、生成AIによる要約といった高度な機能を回数無制限で利用可能です。7日間の無料体験があるので、ぜひお試しください。
また、ブラウザ上で使える無料のAcrobat オンラインツールもオススメです。インターネット環境があれば、WindowsやMacといったOSや、スマホやタブレットといったデバイスを問わず使えます(一部の機能は、スマホやタブレットで使う際にアプリのインストールが必要です)。
多彩な機能と高い利便性でPDF業務を効率化できるAcrobatを、この機会にぜひお試しください。
(編集:ウェブライダー)
https://milo.adobe.com/libs/img/mnemonics/svg/acrobat-pro-64.svg
ぜひAdobe Acrobatオンラインツールをお試しください
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