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写真を副業にする方法―必要なスキルやコツ―

カメラとパソコン

副業が身近になってきた今、趣味の写真撮影を仕事にしたいと考える人は少なくないでしょう。そこで気になるのが、副業フォトグラファーの需要や仕事内容。プロのフォトグラファーがいる中、未経験者はどんな分野で活躍できるのでしょうか。

今回は、クリエイティブ分野の副業事情に詳しい株式会社クラウドワークスの眞道祐介さんと、フォトグラファー向けの書籍を執筆しているフリーランスフォトグラファーの桐生彩希さんに取材。専門家の知見をもとに、必要なスキルやツール、単価相場といった、副業フォトグラファーを始めるにあたって気になるポイントをご紹介します。

目次

写真の仕事は幅広く、副業でも取り組みやすい

初心者なら現場撮影より、写真販売を

写真の副業に必要な4つのスキル

フォトグラファーの副業に最低限必要な撮影機材

写真副業の単価

写真副業の収入アップを叶える4つのポイント

未経験から写真撮影の勉強をする方法

フォトグラファーとして、副業デビューしよう

写真の仕事は幅広く、副業でも取り組みやすい

風景をスマートフォンで撮影する人

フォトグラファーの仕事は、現場に行って撮影するイメージが強く、「拘束時間が長いので副業にするのは難しい」と考える方もいるでしょう。

しかし、最近ではコロナ禍を背景に、リモート撮影の案件が増えています。また、webサービスのニーズが高まり、ストックフォト販売も需要が拡大しています。これらは作業時間帯や拘束時間を気にせず取り組めるので、副業に適しています。

【眞道】リモート撮影では、料理や小物などの身近なパーツやクライアントから送られてきた商材などを撮影することもあります。依頼内容は様々なので、自分の副業スタイルに合った案件を見つけていきましょう。

初心者なら現場撮影より、写真販売を

写真販売サイトのイメージ画像

現場撮影の仕事では、クライアントに要望された写真をスタジオやロケ地などで撮影します。決められた時間内に必要な写真を撮りきる技術が必要です。また、クライアントはフォトグラファーの実績を見て依頼することが多いため、キャリアがないとそもそも仕事を受けにくい傾向にあります。

そのため、初心者なら「写真販売」から副業デビューをするとよいでしょう。案件ベースで写真を納品する現場撮影に対し、写真販売はフォトグラファーが登録した写真素材の中からクライアントが必要なものを購入する仕組みです。そのため、フォトグラファーは得意な被写体を自分のペースで撮影できます。

また、ストックフォトサイトの審査を通して、写真の需要を知ることができます。写真販売に取り組む中で撮影や編集に慣れ、スキルアップできるのもポイントです。

【桐生】

特に現場撮影が難しいのは、現場でしか知ることのできない「タブー」が多くあること。例えば「ポートレート写真は、人物の首に背景の水平線がかからないようにする」といったものです。ジャンルや媒体によって変わるため、現場撮影をする場合はクライアントに確認しながら、念入りに撮影を進めていきましょう。

写真の副業に必要な4つのスキル

写真編集ソフトで撮影した写真を編集している

では、写真を副業にするには、具体的にどんなスキルが求められるのでしょうか。以下に4つのスキルを詳しく説明します。

撮影スキル

質の高い写真を撮るには、何よりもまず撮影スキルが必要です。構図やライティング、絞りの値(F値)シャッター速度といった一連の基礎は身につけておきましょう。また、撮影ジャンルによって、定番の撮影方法やタブーが変わります。幅広いジャンルに対応できるよう、さまざまな案件に挑戦し、一つずつ学んでいくとよいでしょう。

【桐生】構図やライティングのセンスを身につけるコツは、常に「影」を意識すること。写真を見るときに影の向きや濃さを気にするようにすると、光の当たっている方向や照明の数がわかるようになり、撮り方を学ぶトレーニングになりますよ。

撮影機材に関する知識

撮影するシチュエーションや対象物によって、使用する撮影機材も変わります。物撮りの場合はストロボ(照明)を使用する、柔らかい光の中で撮影したい時はディフューザーを活用するなど、それぞれの役割を把握し、撮影に備えましょう。

【桐生】特に大切なのはレンズワークに関する知識。撮影したい範囲や、ブレやぼかしといった表現によって、レンズの種類や扱い方が変わります。レンズに関する知識を身につけ、使い分けていきましょう。

写真編集スキル

撮影した写真は、使用目的に合わせ、色調や明るさを調整したり、加工をしたりする必要があります。編集ソフトのスキルは身につけておきましょう。Adobe PhotoshopAdobe Lightroomといったソフトが定番です。

PhotoshopLightroomは使い分けることで、作業が効率化します。詳細は、「LightroomとPhotoshop の違いとは?ソフト選定ガイド」を参考にしてみてください。

コミュニケーションスキル

クライアントからの依頼案件では、現場撮影・リモート撮影に関わらず、写真撮影にはコミュニケーションが欠かせません。撮影の仕事は、チームで行うことが多いからです。クライアントや撮影モデルはもちろん、実際に写真を使用するライターやデザイナーといった 、さまざまな人との関わりが生まれます。それぞれの要望を汲み取っていくスキルも重要といえるでしょう。

フォトグラファーの副業に最低限必要な撮影機材

フォトグラファーに必要なカメラやパソコンといったツール

撮影機材は高価なものが多く、こだわるとキリがありません。そこで以下では、写真を副業にしたい初心者が用意すべき、最低限のツールをまとめました。

カメラ

破損に備え、カメラは最低でも2台は準備しておきましょう。レンズ交換式のカメラであれば、幅広いジャンルの撮影に対応できるので、最初は無理に高価なカメラを購入しなくても大丈夫です。

ただし、プロ仕様のカメラを持つことは、クライアントの安心感につながる場合も。ある程度実績を積んだ後は必要な投資と考えて、より高価なカメラを用意してもよいでしょう。

レンズ

人物や静止物、夜景、スポーツなど撮影対象によって、適切なレンズは変わります。初心者の場合、まずは汎用性が高く使いやすいレンズを手に入れましょう。標準ズームが24mm〜70・80mmのもので、F値(絞りの値)がf2.8〜4程度のレンズを目安にしてください。

【桐生】 近年、スマートフォンカメラの発達が著しく、僕も仕事で活用することがあります。ただし、レンズを変えられないため、写真のバリエーションが制限されるというデメリットも。また、スマホで撮影するフォトグラファーに不安を覚える人も多いため、現場撮影の場合はレンズ交換式のカメラの方が無難でしょう。

逆に、写真販売などのフォトグラファー主体で自由に撮影できる仕事では、積極的に活用してみてください。良い被写体を見つけた時に手軽に撮影できます。

ストロボ

ストロボを使用することで、適切な明るさの中で撮影できます。編集での明るさ調整に頼りきらず、きちんとした光の中で撮影することで、写真クオリティも上がります。

【桐生】 ストロボ高価な上に消耗品で、フォトグラファー泣かせな機材。初心者の方はまずLEDライトを手に入れましょう。瞬間的に発光するストロボとは違い、点灯したままにできるので、光の当たり具合を研究するにも重宝するアイテムです。

レフ板

反射を利用して、対象物に光を当てるレフ板は、撮影ジャンル問わず使えるアイテムです。直径30〜50センチ程度のものを用意しておきましょう。

三脚

ブレを防ぎたい時や、同じ画角で連続して撮りたい時は、カメラを固定できる三脚を使いましょう。最初の一本には、カーボン製で強度があり軽量なもの、かつ脚が太く安定するものを選んでください。

パソコンとディスプレイモニター

写真を取り込んで管理したり、編集したりする際にパソコンはマスト。また、写真の色を正しく把握するため、ディスプレイモニターはIPS液晶に代表される「どの角度から覗き込んでも色味や明暗の変わらないもの」を選びましょう。

写真編集・管理ソフト

撮った写真を編集するため、パソコンに編集・管理ソフトをインストールしておきましょう。Photoshopは、写真編集の定番ツールです。写真の色調補正や解像度の調整といった加工からレイヤーを駆使した写真の合成まで、幅広い編集機能を揃えています。

Lightroomは、基本的な編集に加えて、管理機能が充実しています。多くの写真を撮影するフォトグラファーにとって写真の管理は面倒な作業。用途に応じて、どちらのソフトを使い分けていくとよいでしょう。

写真副業の単価

講義を撮影しているカメラ

写真撮影を副業にする際、報酬は気になるところ。例えば、2021年時点では日本最大級のクラウドソーシングサービス「クラウドワークス」での撮影の発注相場は、2万円からとなっています。

ただし案件内容によって報酬に幅があり、拘束時間や撮影難度によって変動します。身近なパーツの撮影など簡易な案件は、1枚500円などで設定されている場合もあります。

【眞道】

例えば、A Iに学習させる素材として、「身近にある〇〇を撮影する」といった案件も。こちらは1枚数十円ほどの報酬ですが、身近なところで手軽に行える案件も実際にありました。自分の状況やレベルに合った案件を受注するのが良いでしょう。

写真副業の収入アップを叶える4つのポイント

さまざまな写真

写真撮影の副業収入をアップさせるためのポイントを、4つご紹介します。

プロフィールを明確にしておく

写真販売 を通して経験を積んだら、現場撮影も視野に入れていきましょう。現場撮影の仕事を探す場合は、稼働できるのは平日・休日か、どの地域で活動しているかなどを、プロフィールにしっかりと明記を。クライアントは撮影現場近くで稼働できるフォトグラファーを探します。クライアントの要望にマッチすれば、声がかかる可能性が上がります。

ポートフォリオを作り、実績を示す

自分の実績がわかるポートフォリオを準備しておくと、クライアントから信頼されやすくなります。最近では、InstagramなどのSNSを活用して、実績をアピールしているフォトグラファーも。人の目に触れる機会を増やし、注目を集めることで、仕事を受けやすくなるでしょう。Adobe PortfolioやBehanceといった、ポートフォリオサイトを利用しましょう。

他のクリエイティブスキルを身につけ、単価アップを目指す

写真はデザインや文章などと複合して、使われることが多いもの。そうしたクリエイティブスキルを身につけておくと、セットで受注できるため単価アップが狙えます。

イベントやSNSで、知り合いを増やす

一つの仕事をきっかけにして、新たな仕事がつながっていくことがあります。そのため、撮影関係のイベントやSNSなどで、積極的にさまざまな人と交流してみるのも一つの手です。また、情報交換ができるフォトグラファー仲間は心強い存在。コミュニケーションを取りながら、信頼できるネットワークを増やしていきましょう。

【桐生】

イベントで会う人との雑談の中から次の仕事が生まれることもあるので、僕は幅広い知識や趣味を身に付けるように意識しています。共通の話題があれば、自分に興味を持ってもらうチャンスが増えます。

未経験から写真撮影の勉強をする方法

女性モデルの写真撮影を練習している未経験フォトグラファー

未経験から副業を目指す人は、まず基本的な撮影スキルを押さえておきましょう。オンライン環境があれば、簡単に撮影スキルを学ぶことができます。

オンラインコンテンツで学ぶ

アドビでは「シャッタースピードとは?絞りと速度の組み合わせで写真の表現を変える」、「ISOとは何か(初心者向け)」といった撮影の基礎についての記事コンテンツを数多く提供しています。

ほかにも、ジャンル別の撮影手法を知りたい場合は、「プロフォトグラファーから教わる、ポートレート写真の撮り方」「初心者向け静物写真の撮り方」といった記事で学ぶことができます。

オンラインスクールで学ぶ

副業自体が初めてで不安な方は、クラウドワークスが運営する自分らしい働き方の実現をサポートするオンラインの学びの場「」の「」を受講するとよいでしょう。一人ひとりの副業スタイルに合わせたアドバイスを受けられます。

クラウドカレッジ

フォトグラファーとして、副業デビューしよう

撮影現場で撮影写真をチェック中

写真の世界は奥深く、ハードルが高く感じるかもしれません。しかし、今では写真販売をはじめ、初心者でも取り組める仕事もあります。PhotoshopLightroomを活用しながら、副業フォトグラファーとしての一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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取材協力:眞道祐介(しんどう・ゆうすけ)

株式会社クラウドワークス・社長室ワーカーエクスペリエンスチーム。地方創生担当として、地域パートナーや自治体と連携してクラウドソーシングの普及促進・ワーカー育成に携わりながら、ワーカー育成のナレッジをもとに、2020年5月にクラウドカレッジを開校。クラウドワークスに登録するユーザーを対象に、スキルアッププログラムの開発・運営を行う。また本業の傍ら副業として株式会社Naegiにてクリエイティブ制作に携わっている。

取材協力:桐生彩希(きりゅう・さいき)

フォトグラファー・レタッチャー・エディター・ライターなどマルチに活躍するフリークリエイター。Photoshopでの画像編集に魅了され、そこからフォトグラファーデビューしたという異色の経歴を持つ。アドビ主催のイベント等で講師としても活動。著書に『はじめてのPhotoshop CC(秀和システム)』『写真が映えるデジタル処理のコツ(玄光社)』など。

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(取材・執筆:守屋和音 編集:ノオト)

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