プロに学ぶ美しい月の写真の撮り方
月の写真は美しくもあり、物悲しさもあります。人を惹きつけるクローズアップ天体写真の撮り方を学びましょう。
撮影:ラミ・アマウン
さまざまな月の写真
月の写真は、宇宙や天体の写真である天体写真の分類に入ります。撮影を始めていくと、わかってきますが、月や夜空の撮影は単にカメラを上に向けるだけではうまく撮れません。
月の写真には、満月の写真、三日月の写真、風景の一部としての月の写真など、数多くのバラエティに富んでいます。いつ、どこで、どのようにして撮影するかはすべて、高品質の写真を撮影するために考慮すべき重要な事柄です。
機材もまちまちです。天体写真家であり天文ファンでもあるラミ・アマウンさんは、月の写真を撮影する際に望遠レンズとカメラの機材を使っていますが、写真家のアダム・ルギエリさんはカメラのみを使います。月の写真は、アート作品として限りないほどの可能性を秘めています。
満月を捉える
地球に面している月の表面が完全に太陽の光に照らされる時、満月になります。満月が昇る時には「ブルーアワー」になることがあり、その時には周囲を照らすに十分な光が満月から発せられます。ブルーアワーの時間帯には、美しい景色を写真に収めることができます。
ルギエリさんは、このような時間帯を考慮に入れて撮影します。「私は主に望遠レンズを使って月の撮影をします。風景、山、木などと共に撮影しますが、月がなるべく大きく見えるようにします。そのため、その大きさを示すような物を加えます」とルギエリさんは語ります。
スーパームーンの魅力を伝える
満月が普通よりも大きく明るく見える時、それはスーパームーンと呼ばれます。スーパームーンは、月が軌道上で地球に最も近づいた時に起きる現象で、巨大な料理皿のような月の表面は、そのディテールをしっかりと捉えるチャンスを十分に与えてくれます。
撮影:アダム・ルギエリ
月の満ち欠けを捉える
天の川、および満ち欠けし、陰影のある月を捉えるチャンスはたくさんあります。このように色々姿を変える月を撮影して魅力ある写真を撮りましょう。
- 三日月
新月を過ぎると、月の表面の半分以下が照らされた状態になります。 - 中秋の名月
秋分の日に最も近い日の月で、1日のうちの早い時間帯に昇ります。 - 十日夜の月
半月と満月の間の月です。 - ブラッドムーン
皆既月食の時、月はこの世のものとも思われないほどのオレンジ色になります。
以上、挙げた月はほんの数例に過ぎません。月は毎晩異なった姿を見せ、その度に新しいシャッターチャンスを与えてくれます。
撮影:ラミ・アマウン
初心者へのコツとテクニック
月の写真を初めて撮る時には以下のステップを覚えておきましょう。これらの基本のステップをマスターすることで、満足できる写真が撮影できます。
撮影プランを立てる
月の写真を撮影するには、他の写真撮影より少し多くの計画が必要です。月の満ち欠けがどの段階にあるか、月が昇るのは何時か、空のどの位置に月があるか、など前もってリサーチしておきましょう。加えて、撮影する場所が夜の撮影に最適な場所であることを確認してください。街の灯りが写真に良い効果をもたらすこともありますが、夜空の写真の美しさを損なうこともあります。
焦点をしっかり合わせ、マニュアルで設定をします
大抵の場合、長い露出時間となるので、カメラを安定させるための三脚が必要になります。カメラの設定と機材の扱いに慣れましょう。シャッタースピードを遅くして絞りを小さくし、撮影に適切なレンズを使えば美しい写真を撮ることができます。
被写体が遠くにあるので、焦点を合わせることが最も重要です。オートフォーカスを必ずオフにして、露出値と焦点距離を変えて何枚か撮影し、月に焦点が完全に合うようにしましょう。
ISOを調整する
ISOの設定を調整するとカメラのセンサーが、光に対してさらに敏感になります。それはつまり、露出時間を短くできるということです。しかしISO値を高くすると、粒子が荒くなるという欠点があります。月の撮影に使われる標準のISO値は100で、美しい写真を撮るためには、1000を超えないようにしましょう。
さまざまな月の姿を捉える
月の美しさは満月の時に限ったことではありません。月の満ち欠けの色々な段階の写真を撮り、光、影、背景が写真にどのような影響を与えるのか感じ取ってください。光が当たっていない月は、その後ろにある星の光をさえぎり、趣のあるビジュアル効果を出します。絞りや焦点距離を変えることで、月を前面に持ってきたり、多くの星の間に収めてみたりと色々楽しむことができます。
撮影:ラミ・アマウン
機材、ツール、方法
月を撮影する場合、絶対に必要な機材もあれば、オプションとして必要な機材もあり、これはどのような天体写真を撮りたいかによります。
カメラを選ぶ
iPhoneで月を撮ることは難しいでしょう。デジタル一眼レフを使うと思い通りの写真を撮ることができます。Canon、Nikon、Sony といったメーカーは、どれも良質のデジタル一眼レフを提供しています。最初はミラーレスカメラで試してみるのも良いでしょう。
レンズを選ぶ
カメラを購入したら、次は望遠レンズです。月のクローズアップを撮影する場合は、200mm か300mm の望遠レンズを使用すると良いでしょう。さらに長い焦点距離、例えば 400mmなどを使えば、月のもっと細かい部分まで撮ることができます。
三脚を使う
そのほかに必要な機材は三脚のみです。多くの場合、シャッタースピードは早くても1秒の1/100で、それよりさらに遅いスピード、例えば1秒の場合もあります。1秒の1/100の場合、Fストップは1.4から2.8にすると効果的です。それより長い場合、例えば1秒の時にはFストップを 8から10にすると良いでしょう。こうした設定にした時は、鮮明な写真にするためにも三脚を使ってカメラを安定させることが必要です。
他のツールを使ってみる
基本の機材が揃ったら、他の望遠レンズやテレコンバーターなど便利なツールを使ってみましょう。しかしながら、最初からこのようなツールを使う必要はありません。「今日、編集技術が進んでいますから、とても高価な機材を揃える必要はありません。もっと安い望遠レンズやテレフォトレンズを使っても、同じような効果が得られます」とアマウンさんは言います。
撮影:ラミ・アマウン
編集で月をさらに美しくする
美しくきらびやかな星や月の写真は、多くの場合、編集によって生まれます。Adobe Photoshop とLightroom には、繊細な作業を行える便利なツールが備わっています。
ノイズの軽減
夜の撮影の場合、大抵は高い ISO値にする必要がありますが、そうするとノイズが発生します。Photoshop には、改良を重ねて進化し続けるノイズ軽減アルゴリズムがあります。しかも、 スマートシャープフィルターを使って微細な調整を行えば、ノイズがほとんど無い、鮮やかな写真となります。
スタッキングと大気の乱れ
大気の乱れにより月の写真がブレて見えたり、歪んで見えたりすることがあります。カメラでは焦点が合っていても、このような現象になることがあります。こうした現象が起きた時、Photoshop に用意されている構図ツールが大変役に立ちます。レイヤーと画像のスタッキングの機能を使うと、数枚の画像を重ねることができ、それを調整して鮮明さを増し、ノイズを軽減して色を鮮やかにすることができます。この処理はブラケットとも呼ばれます。
スタッキング機能はアート風な「ハロー効果」も出すことができます。月の周りの透明感をスタッキングの効果で調整してみましょう。月の周りに輝くようなハロー効果が現れます。
月や天体の写真撮影は、写真技術を伸ばし、さまざまなテクニックを得る最適な方法です。関連するチュートリアルやガイドも豊富にあります。三分割法を使って、月の写真を満足のいく構図にしてみましょう。この不思議な天空の物体である月で見る人を魅了する写真を撮影しましょう。
協力
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