動画に音楽をつけるには?作品のイメージを膨らませよう
動画作品のクオリティをアップさせるには、たくさんの方法があります。そのひとつが、動画に音楽をつけることです。音楽をつけることによって、より作品のイメージを膨らませることができますし、感情移入しやすくなるので、視聴者をより楽しませることができます。これは、映画のような長編作品だけでなく、YouTubeなどで公開されるショート動画にも使えるテクニックです。
ここでは、適切な音楽を探す方法や使い方、タイミング、注意点など、動画に最適な音楽をつける方法について、YouTubeで活躍している高澤けーすけさんに解説していただきます。
多くの動画には音楽がついています。それは音楽をつけることで演出効果が加わり、より見やすく、楽しめる動画になるからです。そのためには動画の雰囲気やイメージに合った音楽をつけることが重要です。
動画のイメージにマッチしない音楽をつければ、視聴者に違和感を与えることになりますし、作品のクオリティも下がってしまいます。
動画に音楽をつけるべき理由と、どのようにして動画のイメージにあった音楽を見つければよいのか、見ていきましょう。
動画に音楽をつけることでイメージを誘導する
作品と相性の良い音楽を探すためには、なぜ「音楽をつけるのか?」を考えることが大切です。動画に音楽をつける理由はたくさんありますが、動画につける音楽の一番大切な役割は「イメージ誘導効果」で、動画の持つ意味を正しく伝えるということです。
例えば、ワクワクしているときにはアップテンポの曲、ハプニングが起きたときにはダウンテンポの曲が使われます。もちろん、動画に音楽がついていなくてもシーンが成立するかもしれませんが、泣きながら笑っているシーンであればどうでしょう。感極まってうれし泣きをしているのか、悲しすぎて逆に笑ってしまうくらいつらい思いをしているのか、判別するのは難しいこともあります。
そこで視聴者に、見ている動画がどういうシーンであるかを理解してもらうために、音楽でイメージを誘導する必要があるのです。
【高澤けーすけ】
イメージ誘導はとても大切です。海の動画をリラックスして見てほしいのか、ノリノリで見てほしいのか、動画を通して何を伝えたいのかを決めると、自ずと最適な音楽が見つかります。もし、伝えたいことが見つからなかったり、音楽を聴いても最適かどうか判断できなかったりするようであれば、インプットを増やることをおすすめします。クオリティの高い動画を作るのであれば、自分の感性に合った動画をたくさん見て、イメージを膨らませることをおすすめします。
動画につける音楽を決めるタイミングは動画のジャンルによって異なる
動画につける音楽をいつ、どうやって決めるのか、悩むこともあるかもしれません。実際に、撮影前と撮影後など、どのタイミングで音楽を決めればいいのでしょうか。これは、動画のジャンルによって異なります。
例えば、ドラマやアニメのオープニング映像であれば、主題歌に合わせた動画を撮影しますし、結婚式やチュートリアル動画などは、撮影した素材のイメージに合わせてつける音楽を探すこともあります。
【高澤けーすけ】
特に、旅行のVlogなどの場合、音楽を最初に決めておくと、動画全体のイメージが決まるので撮影しやすく、編集時にもあまり悩まずに進めることができます。しかし、ハプニングが多数起きるのか、すごくハッピーなことが続くのかなど、どのような旅行になるのかは、実際に行ってみなければわかりません。最初に決めていたプランがあっても、まったく違う音楽をつけることもあります。
動画と相性の良い音楽をストリーミングサービスで探すこともできる
作品と相性の良い音楽を探す場合、YouTube オーディオ ライブラリといった、ストリーミングサービスを利用する方法もあります。
また、Adobe Stockでも動画にあった音楽を探すことができます。Adobe Stockで音楽を探す場合は、Premiere Proから直接アクセスしてダウンロードが可能です。
【高澤けーすけ】
ストリーミングサービスにもよりますが、「ムード(気分)」や「ジャンル」で音楽を探すことができます。例えば、ムードで探す場合、動画に合わせて「コミカル」「リラックス」などをキーワードとして音楽を探すといいでしょう。
そこからさらにジャンルで検索します。例えば、旅行動画で現地に向かう鉄道に乗り込む動画であれば、ムードで「ハッピー」、ジャンルで「カントリー」を検索して最適な音楽を探すといった流れです。
動画に合いそうなムードのキーワードで音楽を見つけたら、同じアーティストや曲名などにも注目して検索してみます。すると、より動画のイメージに合った音楽が見つかることもあります。
Premiere ProでAdobe Stockの楽曲を使用する方法は、下記の記事で詳しく説明しています。
Premiere Pro で Adobe Stock オーディオを使用する | Adobe
動画に音楽をつける際の注意点
動画に合った音楽をつけることも大切ですが、合わない音楽をつけないように注意したいものです。ここでは、高澤けーすけさんが音楽をつける際に注意していることをご紹介しましょう。
曲調の変化に注意する
動画に最適だと思われる音楽を見つけても、曲調が変化していないかどうか、その変化が動画に合っているかどうかに注意が必要です。
【高澤けーすけ】
動画のシーンやイメージが切り替わるのであれば問題ありませんが、同じシーンが続いているのに異なる曲調の音楽を入れないようにしています。音楽の曲調が変わったことにより、動画に「別の意味があるのではないか」と視聴者に思わせてしまうからです。
著作権に注意する
多くの人に見てもらうためにYouTubeなどに動画をアップロードする場合、動画につけた音楽の著作権に問題がないか、確認が必要です。
【高澤けーすけ】
自分の動画に合った音楽であっても、著作権がクリアになっていない音楽は使えません。せっかく動画を編集してYouTubeにアップしても、著作権違反で削除されてしまうかもしれないからです。YouTube オーディオ ライブラリにある曲は著作権がクリアになっていますから、使用しても問題ありませんが、ほかの人の動画と同じ曲を使ってしまうこともあります。
外部の音楽ストリーミングサービスを利用する場合、著作権がクリアになっているものとなっていないものが混在している場合がありますから、使いたい音楽ごとに著作権を確認することが大切です。
ルールや通説は絶対ではないことに注意
会話の多い動画内では、バイオリンなど声と同じトーンの楽器が入る音楽をつけないほうがいいという考え方があります。同様に、動画の邪魔になるという意味では、歌が入っている音楽は使わないほうがいいように感じるかもしれません。ですが、動画のジャンルや内容によって、歌が入っている音楽のほうがいい場合もあります。
【高澤けーすけ】
私の動画は「カフェにいるような気持ち」で見てもらいたいので、歌ありの曲を使うことがあります。特に、ヒップホップの場合は、「アップ」や「ダウン」という低音がしっかり刻まれているテンポが入っており、動画を作りやすいイメージがあるからです。ルールや通説はありますが、自分の作品に合ったコンセプトの音楽を選ぶことも大切です。
ステレオで出力しないように注意
YouTubeなどの動画は、人によって視聴環境が異なります。動画に音楽をつける場合、ステレオにすると音質が良く聞こえますが、視聴する人によっては、ステレオではないほうが良い場合もあるので注意が必要です。
【高澤けーすけ】
外出先で片耳だけヘッドホンをつけてYouTubeを見る人もいますので、音楽がステレオで出力されていて、片側だけ聞こえない状態にならないようにしています。
動画につける音楽を調整する
動画につける音楽は、さまざまな調整が必要になります。具体的にどのような調整が必要なのかご紹介しましょう。
音量を調整する
音楽の音量が大きすぎるとセリフが聞こえませんし、動画を見ている人に違和感や不快感を与えかねません。まずは、最適な音量に調整することが大切です。
【高澤けーすけ】
Adobe Premiere Proなどの動画編集ソフトの音量設定は、最大値が0になっていることがほとんどです。最適な音量を数値的に表すのは難しいですが、一説には声は「-5db」、音楽は「-25db」を目安にするといいでしょう。しかし、これが正解というわけではありませんから、この数値を参考に、最適だと思う音量に調整してみてください。特に、イヤホンで聞く音量とパソコンで聞く音量は異なりますので、イヤホンで聞いてセリフの邪魔にならない音量に調整することもポイントです。
フェードイン・フェードアウトする
動画の長さが、必ずしも音楽の長さと一致するわけではありません。しかし、動画の終わりに合わせて音楽を止めてしまうと、違和感が残る場合もあります。
そこで、音楽が途中で終わるのであれば、フェードアウトして徐々に音量を下げる方法もあります。また、ゆっくりと音楽をスタートさせたい場合は、フェードインを使うのもいいでしょう。
Premiere Pro(ベータ版)では、自動で音楽の長さを調節しながら、動画に合わせてリミックスする機能が加わりました。
【高澤けーすけ】
私の動画は、音楽の長さに合わせて編集することが多くあります。音楽の終わりの部分に合わせて動画を終わらせる場合、音楽によっては頭の部分をカットしてフェードインさせることで、音楽が途中から始まる違和感がなくなるようにしています。
ダッキング機能を使う
Premiere Proには、セリフのあるところは音楽の音量を自動的に下げ、セリフのないところで自動的に上げてくれるダッキングという機能があります。この機能を使えば、セリフの邪魔になるかもしれない音楽の音量を自動的に下げてくれます。
【高澤けーすけ】
Premiere Proのダッキングは優れた機能ですが、セリフの多い動画に適用すると、音楽の音量の上下が激しくなります。セリフの多い動画ではなく、適宜ナレーションが入るくらいの動画に使うと効果的です。
ダッキングについては、下記の記事で詳しく説明しています。
動画に音楽をつけるにはAdobe製品がおすすめ
続いては、動画に音楽をつける方法を具体的にご説明します。ここでは、Premier Pro、Adobe Stockを利用して音楽をつける方法を見ていきましょう。
Premiere Proを使って動画に音楽をつけるには、プロジェクトにオーディオを読み込み、オーディオクリップをタイムシーケンスに追加します。
Premiere Proで動画に音をつける方法については、下記の記事で詳しく説明しています。
音楽は、より良い動画に欠かせない重要アイテムのひとつです。動画のイメージに適した音楽をつけることで、視覚と聴覚から動画のイメージを伝えることができます。最初は、動画にどのような音楽をつければいいか悩んでしまうこともあるかもしれませんが、試行錯誤を繰り返すことで、イメージどおりの動画が作れるようになるでしょう。
YouTube オーディオ ライブラリやAdobe Stockといった音楽ストリーミングサービスを利用して、動画に合うさまざまな音楽を探してみてください。
(取材協力:高澤けーすけ)