魅力的なYouTube動画サムネイルを作るポイント
YouTube動画は作成してアップロードさえすれば見てもらえるわけではありません。数多くの動画のなかからその動画を見てもらうためには、クリックしたくなる、タップしたくなるようなサムネイルが欠かせません。ここではより見る人を惹きつけるサムネイルの作りかたを紹介します。
目次
動画は「まず観てもらう」ことが重要
いまや、1分間に500時間分の新しい動画が公開されると言われるYouTube(DOMO「Data Never Sleeps 8.0」2020年)。
動画のテーマや内容を吟味することはもちろん大事なのですが、最終的に重要なのは“再生してもらう”ことです。
どんなにすばらしい内容の動画も再生されなければ魅力が伝わりませんし、YouTubeの一覧画面では高評価・低評価の数は表示されないので、多くのユーザーは再生数を基準にして、よさそうな動画かどうかを判断する傾向があります。充実した内容の動画でも、再生数(=クリックされた数)が少ないために、おすすめにも表示されないというスパイラルに陥っている例も少なくありません。
そうした状況を打破できる可能性がある取り組みのひとつが「サムネイルの改善」です。
YouTubeでは、アップロードされた動画のなかから特定の位置を抽出してサムネイル画像を自動生成しますが、動画の扱っているテーマや内容があまり伝わらないことも多いのです。
YouTube動画のサムネイルは、言わばお店の広告や看板のようなもの。単に「どうやら飲食店のようだ」程度しかわからないお店より、「多くのスパイスを使った本格的なインドカレー」「あっさり目のスープで女性でも食べやすそうなラーメン」といった料理の内容がわかったほうが入りやすいのは、容易に想像できると思います。
サムネイルは目立つのも大事ではありますが、一番大切なのは自分が発信する動画のテーマに興味を持ち、共感してくれるユーザーとの導線を作ること。それは作り手、受け手双方にメリットがあり、そして単一の動画の再生数にとどまらない、長期に渡るよい関係性を築くきっかけにもなります。
デザインテーマを決めると印象に残りやすく
個々の動画単位ではなく、チャンネルを通して考えたいのが、サムネイルの「デザイン上のテーマ」です。
具体的には配色やフォントの工夫によって、“愉快そう”“役に立ちそう”といったようなイメージを作り出したり、ジャンルやテーマを短時間で伝えられるようにします。
同時に、統一されたサムネイルのデザインによって、ひと目みただけであなたの動画だと認識できるようになると、チャンネルのブランディングにも役立ち、チャンネル登録をしていないユーザーにも、「あれはこの前観て面白かったチャンネルの動画だ」と思い出してもらえる、ゆるやかなフォロー効果も期待できます。
Adobe Creative Cloudの契約ユーザーの場合、日本語だけで100種類以上のフォントが使えるクラウドサービス・Adobe Fontsが有効に使えます。ゴシック体、明朝体といった基本的な書体も、OS標準のものとはニュアンスの違うものが多数提供されているほか、バラエティ番組のテロップで使われるようなインパクトの強いデザインフォントも用意されています。ブラウザ上で自分の好きなワードを入れてプレビューし、表示の印象を確認したうえでインストールできるので、表現したいイメージに合うフォントを効率的に探せます。
配色が苦手という人にはAdobe Colorがオススメです。
ベーシックな配色理論に沿って色を作り出せるツールのほか、トレンドや検索したキーワードから色のパレットを探すことができるので、サムネイル上の文字や背景、枠に使うだけでバランスのとれた配色を行なうことができます。デザインに不慣れな人はもちろん、ベテランでも発想の糸口を探すのに大変役立ちます。
サムネイル画像は写真として撮る
カスタムのサムネイルを作っている場合でも、動画のなかの1コマを抜き出して使っている方が多く見受けられます。
もちろんそれでも問題はないのですが、たとえば同じスマホのカメラでも、動画として撮ったものより、写真として撮ったもののほうが画質がよく、サイズも大きいという場合がほとんどです。
YouTubeのサムネイルは1280×720ピクセル以上となっていますが、スマホも含めて大半のカメラはこの数倍以上の情報量(解像度)を持つ写真を撮れるので、トリミングの自由度が上がる、切り抜きなどの作業が行ないやすいという利点があります。
また、特に人間の表情は、漠然と動画を映り続けているうちの1コマより、写真と意識して撮影したほうが構図や焦点が定まりやすく、より印象の強い絵を撮りやすくなります。色や明るさの調整、細部の不要な部分を消すといった作業も、動画から抜き出した静止画より、写真として撮影したもののほうがサイズが大きく、フォーカスの精度がよいために、最終的な品質は高くなります。
サムネイルに使用する画像は、動画の印象の大半を決める、とても大切な要素なので、スマホでもよいので“写真”として撮影し、最善のものを用意するようにしましょう。
レイアウトはスマホ画面サイズを意識して
先述のように、YouTubeのサムネイルは1280×720ピクセル以上と比較的大きめの画像なので、パソコンの画面上で作っているとついその大きさの印象でデザインしてしまいがちです。
一方、YouTube動画は半数以上がスマホで視聴されていると言われ、実際に表示されるサムネイルは非常に小さなサイズとなります。そのため、あまり小さな文字や要素を詰め込みすぎると、読めない/何が表示されているのかわからないといった状態になってしまいます。
そうした事態を避けるためにも、文字には太めのフォントを使う/背景とのコントラストが大きくなるような色にする/タイトルやコピーは短く簡潔にするのがポイント。キーワードだけ色を変えるといった処理も効果的です。
YouTube動画は基本的に16:9という横長の画面比率となっていますが、サムネイルを作る際にも、この横長の画面にうまくレイアウトする必要があります。
どんな形状の画像・画面にも使えるおすすめのレイアウト手法に「三分割法」というものがあります。これは、画面の縦・横ともに均等間隔で3つずつに分割し、分割の線上、もしくは線の交差した位置に重要な要素を置くと、まとまったレイアウトが作れるというもので、文字や、人物写真の目などをこれに沿って配置すると、見やすい配置にすることができます。
なお、YouTube動画のサムネイルならではの注意点として、右下部分には動画のトータル時間が表示されるため、文字のように“見えないと困る要素”を配置しないようにしましょう。
理想は「処理時間内に作成」。作業を効率化しよう
サムネイルはあくまで動画の概要を把握しやすくするための補助的なものなので、サムネイル作成に時間をかけすぎてしまって動画の制作時間が確保できなくなるのは本末転倒です。
そのためにも、毎回ゼロから作るのではなく、できるだけ使い回しができるようにすると、制作効率を大幅に上げることができます。
たとえば、Adobe Photoshopでサムネイルを作っている場合なら、文字の装飾をスタイルとして登録しておくと、次からワンクリックで再現することができます。ロゴのようによく使う画像素材は「ライブラリ」に登録しておくと、サムネイル作成だけでなく、Adobe Premiere ProやAdobe After Effectsで動画を編集する際にも利用することができ、ほかのパソコン、ほかのユーザーとの共有もかんたんです。
サムネイルで使用する人物の写真は毎回撮影するより、いろいろなバリエーションをまとめて撮影して、切り抜いた写真素材としてストックしておくと毎回の手間も大きく軽減できるでしょう。
YouTubeに動画をアップする際には、数分〜数十分ほどの待ち時間が生じますが、その時間内でサムネイルを作成できるようになると、時間のムダがゼロになり、理想的なワークフローになります。
YouTubeでは、一度アップロードした動画を差し替えることはできませんが、サムネイルはいつでも変えることができます。過去にアップロードして期待ほど視聴数の伸びなかった動画も、サムネイルの変更で挽回できる可能性があるので、ぜひいまの動画サムネイルを見直してみましょう。
(取材協力:大須賀淳)