電子サイン機能や、マルチデバイスでファイルの確認ができる機能を持つ「Adobe Acrobat」。ビジネスで活用する企業も増えていますが、実際に導入するとどのような変化が起きるのでしょうか。
Adobe Acrobatは、文書や図版、画像をまとめて取り扱うことができるデータ形式「PDF」ファイルの編集に特化したソフトウェアです。電子サイン機能「Adobe Sign」やマルチデバイスでファイルを処理・確認できる機能をはじめ、PDFデータの作成・加工・処理に特化した数多くの機能があり、ビジネスシーンでも活用されています。
そんなAdobe Acrobatを導入した企業では、実際にどのような変化が起きているのでしょうか? Adobe Signを中心に、Adobe Acrobatを活用するオークウッド社の例をご紹介します。
2. 【課題】書類は押印してリレー、煩雑で止まってしまうことも
3. 【解決】決裁時間は1週間から半日へ 海外からでもサインが可能に
4. 【効果】Acrobatがもたらした、想定していなかったメリット
ロサンゼルスに本拠地を置く「オークウッド」は、煩雑になりがちな書類管理やワークフローの承認をはじめとした業務プロセス改善のため、Acrobatを導入した企業のひとつ。
オークウッド社が提供する「サービスアパートメント」とは、旅行者やビジネスマンに短期で物件を貸し出す、賃貸業の一種。ホテルと同様の宿泊機能を持ちながらも、数週間にわたる長期滞在を前提としているといった特徴から「ホテルとアパートの中間的な施設」とも言われています。
オークウッド社において、ビジネスの大きな課題になっていたのは「離れた場所で複数の拠点を持つこと」、そして「宿泊客の膨大な個人情報を取り扱う」といった、業態がゆえのものでした。
Before:オークウッド社における当初の課題
・承認を行う決裁者が異なった拠点に点在している
・紙での処理を行っており、承認に手間がかかる
・顧客情報をもっとセキュアな環境で管理したい
After:Adobe Acrobat導入後の変化
・Adobe Signを使用、1週間かかっていた決裁を半日で完了
・よりセキュアな環境で個人情報管理が可能に
・記事チェックや社内資料作成の簡素化など、副次的な効果も
Acrobat導入前のオークウッド社では、稟議書や決算書類の承認手続きにあたり、都内の各拠点で煩雑な処理が発生、業務の遅延を招いていました。
都内だけで11もの物件を管理・運営している同社。営業や経理の担当者、決裁者も、異なった物件を拠点とし、日々の業務を行っています。その状況下では、稟議書に担当者から承認を受けるときも、拠点間をまたぎサインを集める必要がありました。
そのうえ、承認にあたって使用していたのは紙面と印鑑。各拠点の担当者は、「受け取った資料データを印刷して押印」、「押印済みの資料を再びスキャンし、PDFデータ化」、「PDFデータを次の担当者のもとへ送付」、「次の担当者はPDFデータを再び印刷して押印」……と、バトンを回すようにそれぞれの処理を行っていたそう。
この処理のなかで起きてしまうのが、「一人の担当者が連絡に気づかず、書類のリレーが止まってしまう」、「海外出張中などで担当者が不在の間は処理が止まり、担当者の手元に書類がたまってしまう」といったトラブルです。担当者一人が書類を確認するのに非常に手間がかかるため、一つの発議に対してもスムーズに承認が行えず、業務の遅延を招いていました。
また、各担当者の手元で印刷時に必要とされる紙やインク代だけでなく、急ぎの申請を行う場合、書類の受け渡しを行うために利用するバイク便など、本来は不要なコストがかかってしまうことも無視できなくなっていました。
そのうえ、業務内で取り扱う書類には宿泊客の個人情報が記載されたものも多ため、書類を管理・保管するためのセキュアなプラットフォームを準備することも目下の課題。
そもそも、オークウッド社が最初にAcrobat導入を検討するようになったきっかけは、顧客の個人情報保護が大きな要因でした。
実はデータ管理のため、すでに一部のスタッフの間ではAcrobatが導入・使用されており、その効果からより範囲を広げたセキュリティの徹底が検討されるように。しかし、リサーチのなかでAcrobatの電子サイン機能「Adobe Sign」が承認プロセスに有用なことを知り、これが導入を決定づける大きな要因となりました。
まず「各拠点にいる担当者がそれぞれ紙で印刷、押印」という手間のかかる処理が行われていた承認フローへ、Adobe Signを導入。これで、各担当者は紙に印刷せずともPCやスマートフォン・タブレットを通して書類に電子サインを付与できるようになります。もちろん、外出先や海外出張中でも同じやり方で対応が可能に。
その結果、印刷やスキャンを繰り返す必要がなくなり、資料承認のスピードが劇的に改善しました。これまで通常では1週間かかっていた決裁が、およそ半日まで短縮されています。
Acrobat導入のメリットを得られるのは、「承認する側」だけではありません。承認申請をする側の社員からは、Acrobat上から書類の追跡やステータス確認ができることを喜ぶ声も。
自分が申請した書類が人から人へ渡っていくのをただ待っているのではなく、今は誰の承認を待っている段階なのか、申請者が確認できるようになったことで、リマインドやその他の調整も容易になりました。
もちろん、新システムの導入や承認フローの改善にあたっては、社内から不安や難色を示す声もあったといいます。しかし、システム操作も一度覚えれば簡単に処理が行えるものばかりで、こういった点も抵抗なく社内にAcrobatが浸透する大きな要因になりました。
Acrobatの導入により、当初の目的以外にも、想定していなかったメリットが得られました。
まずは、原稿レビューの効率化です。雑誌やWebサイトへの広告出稿、もしくはメディアから取材を受けることが多いオークウッドでは、取引先より送付される原稿のチェック業務が定期的に発生しています。
原稿が確認しやすいフォーマットならば良いものの、時には「掲載予定の紙面をスキャンしただけの画像データ」など、チェックや編集がしづらい形式で届く場合も。そんなとき、以前は画像データを印刷、紙面に手書きでコメントを付け、それをスキャンして再びデータ化、返送する……といった段取りでチェックを行っていました。
Acrobat導入後は、画像データをPDF化し、印刷をすることなくコメント付与と返送が可能に。Acrobatには、画像内の文字をテキストデータ化するOCR機能があるため、読みやすいフォーマットで原稿の確認ができるようになります。
また紙面のスキャンを繰り返すなかで起きがちだった「文字が潰れて読めない」「記載されている内容の誤読」などのミスを防ぐ、副次的なメリットも得られました。
そして、社内資料の作成にも影響が。会議で必要な月次報告書は、内容の大枠はWordファイルをベースに、Excelで作成した図版を組み合わせて作成しています。
もともと同社では2種類の異なるファイル形式が混じった書類を作る際、それぞれのファイルから必要な情報を印刷したあと、内容に応じてページを並び替え、資料を1部ずつ製本していました。
しかし、Acrobat導入後は、すべてのファイルをPDFデータ化して一箇所に集計できるようになります。その結果、手間のかかる製本作業をやめ、現在はデータで資料配布をするようになったとのこと。
Acrobatを利用して社内の承認プロセスをデジタル化、業務効率を向上させたオークウッド社ですが、依然として紙の書類を使わなければいけない業務が残っています。
そのなかでも最も重要かつ使用場面が多いのが、顧客との契約書類。オークウッドが顧客との間に結ぶ「賃貸契約」では、契約を書面で取り交わし、保管しておくことが法律で義務付けられています。世間では電子化が進んでいるとはいえ、完全なペーパーレス化はまだ難しいのが現状です。
しかし、海外からの来訪客は電子契約を希望するケースも多く、現在は、これから先に来るであろうペーパーレス化にむけた準備を少しずつ行っているそう。
国内でも少しずつ進んでいるペーパーレス化を準備し、データをスムーズに処理・活用するためには、十分な機能の備わったプラットフォームが必要不可欠です。
Adobe Acrobatを会社に導入して、これから先の準備を少しずつ進めてみてはいかがでしょうか?
※ 紹介した事例では、Acrobatに標準搭載されている電子サイン機能を使用しています。より高度な機能を使いたい場合は、別途Adobe Signへの申込みが必要になります。
(文・編集=ノオト)
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