同人誌を作ろうと思ったとき、表紙デザインをどうすればいいか、悩む方は多いのではないでしょうか。自身が好きなようにできるのが同人ですが、それゆえに作れる幅も広く、まとめるのも一苦労です。そんな同人ならではの「自由」な表現方法を例とともにご紹介していきます。
同人誌はフォーマットに縛りはなく、個人の自由で設定することができるため、決まったルールなどは特にありません。そのため、「タイトルロゴをどこに置けばよいかわからない」「バランスをうまくとりたい」「配色が決まらない」など、表紙デザインを行うにあたって起こる悩みなども多いです。
そういったときに何を参考にすればよいか、どういった機能を使えばよいか調べようとしても、同人誌の紙に合わせたデザインの記事はなかなか見つからないのが現状です。
この記事では、そういった悩みを少しでも解消できるかもしれない情報を、ケースを交えながらご紹介します。
表紙デザインで一番悩むところはタイトルロゴのデザインという人は多いかもしれません。
タイトルロゴは手書きで作る方もいれば、Adobe Illustratorを使ってパスの変形を行ってロゴを作る方もいます。一定のスキルレベルがあれば、フォントで打った文字をアレンジすることはできるかもしれませんが、そうではない方はハードルが高いと思います。しかし、イチからロゴを作らなくても、イメージにあったフォントをそのまま使うだけでも十分、タイトルデザインは可能です。ここからは、おすすめのフォントやサービスをご紹介します。
まず、同人誌の表デザインにフォントを使用する場合、フリーフォントでもライセンスフォントでもどちらでも言えることですが、「使用許諾」については事前に確認しておきましょう。フォントによっては事前に申請が必要なものもあるため、注意が必要です
今回はフリーフォントではなく、いわゆる購入することで使えるライセンスフォントを中心に2つのサービスを紹介します。
ひとつめはAdobeが提供している「Adobe Fonts」です。こちらはAdobe CCユーザーは全フォントが使用ができるもので、フォントの使用はブラウザでAdobe FontsにログインすることでON/OFFを簡単に切り替えることができます。広告的な綺麗なまとめ方をしたい方にはおすすめのフォントが多く入っており、欧文フォントなども豊富に提供されています。
たとえAdobe CCに契約していなくても、Adobe IDがあれば、Adobeが提供する多くのフォントを利用することができます。
Adobe Fonts
もうひとつは、フォントワークスが提供している「mojimo(もじも)」です。
「mojimo」は、フォントワークスが提案する、フォントの新しいサービスで「ちょうどいい文字を、ちょうどいい価格で」をコンセプトに、各テーマに合わせたパッケージでフォントを年間定額で提供しています。
アニメやゲームで使われている皆さんも一度は見たことあるのではないかと思われるフォントを多く収録しており、イラスト系においては相性がよいパッケージです。
フォントワークス/mojimo-manga
これらのフォントサービスを使って、シチュエーションに合わせたフォント選択をすることで、表紙デザインのクオリティをあげることができます。フォントを無理にいじらなくても、雰囲気に合わせたものを選ぶことで十分にイラストの魅力を引き立たせることができるのがライセンスフォントのいいところです。
イラストに合わせた背景色やタイトルロゴ色、組み合わせの良い配色など色の悩みは常につきまといます。色数を絞ればまとめやすくはなりますが、華やかさやバリエーションは欠けてしまいがちです。
そういった悩みを抱える人は「Adobe Color」を使用してみると配色のアイデアが浮かびやすくなるかもしれません。
Adobe Color(https://color.adobe.com/ja/create)
「Adobe Color」はAdobeが提供するwebサービスのひとつでカラーテーマの閲覧や作成、テーマの共有・公開を行うことができます。
左の「カラーハーモニー」から配色ルールを選び、メインに使いたい色をカラーサークル上で指定すると、その色に合う色を自動的に選び出してくれます。Adobe CCユーザーの場合、ライブラリを経由することで、作成した配色をAdobeアプリでも使えるようになります。
カラーテーマは RGB、CMYK、LAB など、さまざまなカラースペースで作成することができ、Webで使用可能なHEX 値(16進数カラーコード)として表現されます。カラーテーマにはタグやコメントを追加することもできます。
多くの色を同時に使う場合、まずここで色を並べてみて、バランスがいいか確かめることで配色を決めるのもひとつの方法です。
安定した配色自体がわからない場合でも、「ハーモニールール」を切り替えることで、類似色や補色などもすぐに出すこともできます。
Adobe Colorを同人誌の表紙デザインで活用するにはどうしたらよいでしょうか。
イラストメインの同人誌の表紙デザインでは、デザイン論・配色理論にこだわりすぎず、イラストに合わせて配色をしていくほうがうまくまとまります。
イラストに合わせた配色を作る場合、Adobe Colorのタブメニューにある「テーマを抽出」を選び、イラストの画像ファイルを選択することで、イラストのキーカラーを抽出することができます。この抽出されたカラーに合わせて、背景やタイトルロゴの配色を決めるとイラストとの親和性が高まり、表紙全体の配色がまとまります。
iPadなどのタブレットでイラストを描いている場合は、Adobe Captureを使うことで同様の配色を作ることができます。
『うちの子たちはやっぱりかわいい。2』Grove Grow より
フォントや配色などを決めたあとはレイアウトを決めなければなりません。
同人誌の場合、多くは表紙イラストがあり、そのイラストに合わせたデザインをいうかたちになります。そのため、イラストに合わせたレイアウトを意識することで表紙全体のまとめやすくなります。
以下にその例などをあげていきますので、制作の参考にしてみてください。
一番ベーシックなレイアウト方法は、イラストの空いたスペースにタイトルロゴをまとめる方式です。イラストを自由に描いたあとにロゴを配置するのみなので、ロゴの配色に気をつければきれいにまとめることができます。
ただ、イラストのレイアウト(構図)によっては、ロゴ自体の形状、位置が制限されてしまうことにもなるため、ロゴを置く場所を前もって考えた上で、イラストを描いたほうが表紙氏のデザインがスムーズになります。
イラストの空いたスペースへロゴを配置(左『マチカドショウジョインタビュー』hinokist/
右『うちの子たちはやっぱりかわいい。2』Grove Grow)
イラストのスペースの空き方にもよりますが、大幅にあいている場合は、ゆったりと全体を埋めるように段組みにするのも、バランスがよいレイアウトになります。
また、ある程度スペースが限られている場合は、タイトルロゴを固めた上で色数を増やすことでイラストとのバランスを取っていくことでまとめる場合もあります。
例に挙げた2作品はそれぞれイラストのテーマカラー1色からロゴカラーを選定しており、右の例ではタイトルロゴに対して、二重のフチ取りを施すことで、イラストとタイトルロゴを両立させています。
空いた部分にロゴを設置するのみではどうしてもバランスが取れない場合もあります。
その場合、背景に効果やデザインを加えることでバランスを調整し、ロゴのみでは調整しきれない部分を補うこともできます。
このとき、背景の色合いはイラストよりも薄くするほうがまとまりやすくなります。前項でも上げていた「Adobe Color」でテーマを抽出したのち、全体のバランスを見ながら色をあわせるとよいでしょう。
背景デザインを追加することでバランスを整える(『Salt!/Omnibus. 塩本シリーズ総集編』明日葉)
(文:柊椋)
(協力・イラスト:小森くづゆ/Grove Grow、檜坂はざら/hinokist、草田草太/明日葉、佐糖アメ/AMETOPIA)
(掲載の表紙デザインはすべて柊椋/I.S.W DESIGNING)
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